故障・修理
更新日:2020.03.10 / 掲載日:2020.03.10

バッテリー&オルタネーター完全リフレッシュ 【9】

最低限必要なパーツを交換するだけで十分 分解して消耗パーツを交換する

熱に弱いレクチファイヤーのDIY分離はリスクが高すぎ

 オルタネーターのオーバーホールを整備マニュアル通り進めるとなると、レクチファイヤーからステーターを分離する必要がある。

 しかし、レクチファイヤーの接続端子にハンダ付けされたスターターのリード線の分離には100W以上の強力なハンダコテが必須。しかも、手早く外す必要があるが、これが難儀! なかなか溶けないため熱しすぎてしまいがち。レクチファイヤーは熱に弱いため、作業に精通していないとDIYでは熱破壊させてしまうリスクが限りなく高い。

 このため、充電不良に陥っていたならまだしも、規定の電圧/電流が出力されてまだ使える状態のオルタネーターを予防整備で分解するなら、ブラシとベアリングの交換に留めておいたほうがよい。

分解編 各パーツの状態をチェックしながらバラしていく

最低限必要なパーツ

ローターを支えるフロントベアリングとリヤベアリング、そしてブラシセットを用意する。なお、同一車種でもオルタネーターの製造メーカーが異なるとブラシ形状が違ってくる。このため、部品発注時は注意が必要だ。

スルーボルトを外しハウジングを分割する

ドライブエンドハウジングから。

側面を貫通する形にセットされている。

スルーボルト4本を取り外す。

リヤハウジングのリヤベアリング挿入部をヒートガンで加熱する。

ステーターコアとドライブエンドハウジングの隙間に-ドライバーの先を押し込み。

交互に左右からコジり上げていって分離。

ステーターコアごとリヤハウジングを引き抜く。

20万km近いのにブラシはまだある!?

ブラシホルダーから飛び出しているブラシの残量は、まだ十分残っているように見える。

スリップリングの根元にはブラシの削れカスがたっぷり堆積し、段付き摩耗しているものの走行距離の割に摩耗量は少ない。

ステーターを分離する

レクチファイヤーを点検するためには、ターミナル部にハンダ付けされてるステーターを分離する必要があるが、リヤハウジングにはまったままでは困難。

そこで、レクチファイヤーごとリヤハウジングから引き抜いてしまうことにした。

まず、ステーターを引き抜く。

作業しやすいようハウジングを外してしまう

ICレギュレーターの左右端のスクリューを外し、レクチファイヤー端のスターターが被さっている固定スクリューはステーターを横にズラして取り外す。

リヤハウジングからレクチファイヤーをスターターごと分離。

ICレギュレーターのスクリュー面にはめ込まれたカバーを取り外す。

ハンダを溶かしスターターリード線を分離する

スターターのリード線がハンダ付けされているレクチファイヤーの接続端子をハンダコテで熱してハンダを溶かす。

溶けだしたら端子中心部に-ドライバーを差し込みつつコジって。

V字状のはめ込み部の幅を広げる。

リード線幅に広がったところで再度軽く熱し。

リード線を引き抜く。

同様にして3本のリード線をレクチファイヤーから分離する。

端子に残ったハンダを処理する

ハンダ吸い取り線を利用してレクチファイヤーの接続端子に残ったハンダを取り除き。

組み立て時にステーターのリード線が容易にはまるよう処理しておく。

ローターを固定してプーリーを取り外す

ローターをウエスで保護して。

万力に挟んで固定する。

スピンナハンドルに24mmのソケットをセット。プーリーを固定しているナットを緩めて取り外す。

かなり強く締まっているため、スピンナハンドルは高トルクがかけられるロングタイプの利用がベスト。

プーリーをまっすぐ引き抜く。

ドライブエンドハウジングを引き抜いて分解完了。

組み合わさっていた順に並べるとこうなる。

点検編 ハンドテスターでショートしていないか確認する

 DIYで無理なくチェックできる点検内容はこの程度。ブラシが残っているにもかかわらず充電不良など、明確な不具合が生じていたならまだしも、規定の電圧/電流が出力され問題なく機能していたならハンドテスターで判定できるほどの不具合は正直、露呈することはない。

 このため、熱破壊のリスクがあるレギュレーターからのスターターの分離は、DIYであれば無理して行う必要はない。

レクチファイヤーが正常に機能しているか点検する

テスターを抵抗測定モードに設定。レクチファイヤーの3つの接続端子それぞれと右下の四角い端子、およびB端子間の導通を極性を変えて両方向について点検する。

そして、一方向のみ導通があることを確認する。

もしも、両方向に導通があったら要交換だ。

スターターの各リード線間に導通があるか確認

抵抗測定モードにハンドテスターで。

3本ある各リード線間に導通があるか確認。

OKなら各リード線とスターターコア(コイルが巻かれている金属フレーム部分)間に導通がない(ショートしていない)ことを確認する。

ローターのスリップリングがショートしていないか確認

次にローターをチェックする。

まず、スリップリング間の抵抗が基準内に収まっているか測定する。基準値は1.8~2.1ΩでOKだ。

スリップリングとローター間に導通がないことを確認する。

スリップリングとシャフト間に導通がないことを確認する。

ブラシの残量を確認する

ブラシホルダーのカバーを外す。

コードブラケットの接続端子部に盛られたハンダを。

ハンダ吸い取り線で取り除く。接続端子が剥き出しになったらコードをコジって分離し、ブラシホルダーから抜き出す。

左が新品で、右が取り外したブラシ。

取り外したブラシの長さは約14mm。

新品の基準長は19mmで限度値は5mmゆえ、1/3減ったにすぎない。これなら20万kmは余裕。驚異の耐久性だ。

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グーネットピット編集部

ライタープロフィール

グーネットピット編集部

車検・点検、オイル交換、修理・塗装・板金、パーツ持ち込み取り付けなどのメンテナンス記事を制作している、
自動車整備に関するプロ集団です。愛車の整備の仕方にお困りの方々の手助けになれればと考えています。

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