故障・修理
更新日:2020.12.23 / 掲載日:2020.12.23
アウディのエンジンOHに挑戦!2
僅かな傷もつけられない!繊細に汚れを落としていく。
シリンダー上部にカーボンが残っているとピストンをスムーズに挿入できないので、できるだけ取り除く。
コンロッドベアリングの状態はまずまずで再使用も可能だ。極端なオイル消費で常に新油を継ぎ足したおかげかも?
エンジンを降ろさずにオイルパンを外すことができれば、作業のハードルはかなり下がる。ところがアウディのエンジンのオイルパンは、後ろ側に取り付けボルトがあるので、ミッションを取り外さないことには抜けないのだ。
どうしてこんな取り外しの難しいところにボルトが……と、ベンツちゃんのエンジンOHの時にも感じていた造り手の厄介なこだわりを感じながら作業を進めていく。ドイツ製ツールメーカーには、工夫された小回りが利くツール類が多いが、こうした修理しづらい構造のクルマあってのことなのだろう。
ともあれ、懸念のオイルコントロールリングの状態を確認する。スラッジがビッシリとこびりついたリングを洗浄すると、リング円周上の無数の針の穴ほどの小さなオイル戻し穴が姿を現した。本来であればシリンダーウォールのオイルはこの小さな穴を通って、リング溝の底のオイル戻し穴からクランクケースに戻っていく構造だ。しかし、多くの穴がスラッジで詰まったため機能を失い、極端なオイル消費を引き起こしたのだろう。
ベンツちゃんのピストンリングを購入したチェコスロバキアのショップから、オイル消費対策済みの社外ピストンを購入。ありがたいことにリングも装着済みだったことが地味に嬉しかった(笑)。
リング装着済みなので、エンジンに組み付け後にリングの上下が気になることがない(笑)。オイルを塗って挿入準備もバッチリ。
リングが正しく圧縮されピストンリングコンプレッサー全面をブロックに密着させ上から軽く叩く。
“スポンッ”と軽く入ればOK。
ピストンをシリンダーに挿入したら、コンロッドボルトを仮締めした状態で引っ掛かりがなくスムーズに回るかを確認する。
規定トルクで締め付けてから、ボルトにマーカーで印をつけて角度締め付け法で締め付ける。
新品ボルトなので安心感がある。
締め付け後に、再びクランクを回してスムーズに回るかを確認。さらにTDC状態でのクランクの位置も再確認しておく。
オイルシールの接触部が溝状に摩耗した場合は、シールの位置を僅かにずらす裏ワザもある。ただこのシール形状では無理だ。
漏れを恐れるばかりにシール剤を塗布しすぎると、オイルパン内部にはみ出たシールが脱落して異物化するので、ほどほどが重要。
オイルストレーナーがスラッジや変形(オイルパンの変形も)で詰まると油圧低下を引き起こすので洗浄&点検も必須。
オイル吐出量を変化させる複雑なオイルポンプには不具合はない。分解するリスクがあるので、そのまま再装着する。
番外編メンテなのに延長戦へ(笑)。次回は難所のヘッドまわりに挑みます
幸いにも腰下は復活。ただ、複雑怪奇なカム機構を採用するヘッドを間違って取り外したことが原因で、思わぬ長期メンテへ……。次回はハードメンテになりそうです(涙)。