故障・修理
更新日:2021.03.31 / 掲載日:2021.03.31
RENAULT サンクターボ公道復帰計画 その2
サンクターボ1のみに採用されているマリオ・ベリーニがデザインを担当した斬新なL形スポークのステアリングに、メーターパネル。色使い、素材の使い方がポップだ。スピードメーターは240km/hまで刻まれている。
お洒落なリビングにあるモダンファニチャーのようなシート。リクライニングはしない。取り外されたシートは思ったより軽かった。色褪せた赤いカーペットは敷き換えられる予定。青と赤の鮮烈なコントラストが蘇るはず。
オリジナルサンクは3穴のホイールだがサンクターボは4穴のワイドホイールに変更されている。前190/55VR340、後220/55VR365と前後違うサイズを履く。見慣れないサイズ表記にとまどう。
まさに積み込まれているという表現がピッタリのサンクターボのエンジンレイアウト。ギャレット製のインタークーラーターボで武装された1397ccOHVエンジンは160馬力を絞りだす。
元はエンジンがあったフロントにスペアタイヤが積まれている。思いのほか小さいラジエーターだがミッドに積まれたエンジンまでホースが延びている為、冷却水の容量は十分にある。荷物はほぼ積めない。
スペアタイヤを取り外した様子。現在は外されているが重心を落とすためだろうか最下部、センターにバッテリーが納まる。消火器はノンオリジナル?運転席から操作できるようになっている。
「20歳の頃、都内で信号待ちをしていた青いサンクターボを見て一目惚れしたんですよ」
今回レストアをするルノー・サンクターボのオーナー近さんは、信号が青に変わり、風を残し走り抜けて行ったサンクターボを見えなくなるまで見続けた。
欲しい、乗りたい、でも高くて手が出ない。これが近さんの憧れのサンクターボとの出会いだったという。
時は経ち、サンクターボが中古車市場に出回り始めた。半ば諦めていたサンクターボへの想いが再燃し、近さんはサンクターボを探し始めた。
いざ探してみると、赤いサンクターボはあるのに青はなかなか見つからない。
年々情報は減っていく。諦めかけていた時、破格の価格で青いサンクターボをネットで見つけた。場所は四国だった。「ついに見つけたと、心臓がバクバクして手が震えましたよ」
それもそのはず、探し始めて20年の歳月が経過していたのだ。すぐに購入したいと電話をかけ、四国に足を向けた。
飛行機で松山空港に降り立った近さんはレンタカーを2時間走らせ、待ち合わせの場所に着いた。
青にこだわり探し続けた、サンクターボが目の前にある。倉庫で保管されていたため、ボディの状態も良い。走行距離は49000km。近さんは興奮した。ところが運転席の真後ろに鎮座するエンジンは、かなり錆びており、不安がよぎった。
もし最悪走れなくても、1/1ミニカーでもいいかと、手付金を払い帰路についた。
翌日からサンクターボをレストアしてくれるショップを探し始めたが…。「何件も電話をかけたんですが、ルノー車を中心に取り扱っているショップでさえ、諦めた方がいいと言われました」
希少車の上、生産中止後かなり経っている車、部品もどれだけ出てくるかも分からない車を引き受けるショップはそう簡単に見つからない。しかしその中。「サンクターボのノウハウはないですが、直せますよ。クルマですから。部品も無かったら作ればいいんだから」
心強い回答をした電話の向こうにいたのは、埼玉県戸田市にある、シージークラフト代表の小林和夫氏だった。
受け入れ先が決まり、近さんは早速、サンクターボ搬送の手配をした。
四国からフェリーに乗せられ東京港に着いたサンクターボは積載車に積み込まれシージークラフトに向かった。
ここからブルーのフレンチロケット、サンクターボ公道復帰計画が始まるのだ。
エキスパートに教われば大抵のことはできるようになるという考えのもと自ら数々の技術を習得し、現在では欧州車の販売からエンジニアと全方位で活躍中。クルマの修理指導も推進している。20代からアメリカ、イギリス、ドイツなどで車の買い付けを行い、海外とのパイプも太い。国内では入手困難なパーツでも、古くから付き合いのある海外のショップから取り寄せることができ、ワンオフパーツ製作にも強い。現在、幻の「MG-B Le-Mans」を製作中。社員総出で取りかかっている。