故障・修理
更新日:2021.06.23 / 掲載日:2021.06.23

W123ベンツちゃん復活大計画 vol.23最終回-2 「専用ツールを買うべきなのか?」

 北米で出会ってから5年。時には失敗、時には笑いといろいろあったレストアも今回で完了。ボロボロだったベンツちゃんも生まれ変わることができました。往年の姿と走りを取り戻したベンツちゃんの勇姿を3つの記事でお届け。第2弾はリヤドライブシャフトのブーツ交換!
●文&写真:ハリー山崎

専用ツールを購入するべきか?悩ましい選択に直面

 リヤのドライブシャフトの脱着作業は最近のFR車と基本的に同じ。ただ、ベンツちゃんのCVジョイント周りは、スチール製のカバーも分解しないと、ブーツを交換できない複雑な構造。できればスチール製のカバーは分解せずに済ませたい。サイズの合う“分割式ブーツ”の流用や、ストレッチタイプのブーツをギューと伸ばして被せる方法もあるが、オリジナルに沿った方法で交換に挑戦することにした。

 まずカバーを分解するためにブーツを取り外したら、内部からオイルが漏れ出てきた。内部のグリースが半世紀の年月の間に劣化して“液化”したとしたら、内部のジョイント構成パーツも液状化している可能性が……。ただ整備書を見る限り、この年式のW123はグリースではなくオイルでCVジョイント部を潤滑しているので、摩耗の心配はしなくて良さそうだ。

 カシメた部分は、内部のCVジョイントに傷をつけないようグラインダーで削り落とし、スチール製カバーの分解はどうにか成功。次はスチールボールとアウターレースを取り外してシャフト上に残ったインナーレースを抜き取る作業へ。

 最近のクルマだと、インナーレースがシャフトから抜けないようにスナップリングが使われていることも多いが、この年式のW123はインナーレースはシャフトに“圧入”されているので、取り外しにはプレスが必要らしい。思わず格安なDIY向けプレスをクリックしそうになったが、本当にこれが必要なのだろうか……。

 知り合いの工場にお願いするか、もしくはプレスを貸してもらうでも、ことは足りそう。どちらにするべきか? 悩ましい選択だ。

今にも破けそうなブーツだけど今、交換すれば問題なし
今にも破けそうなブーツ。ブーツ交換には専用工具が必要なので、放置されたのだろう。完全に破ける前に交換するので、ブーツ交換のみでなんとかなるはずだ。

デフオイルを抜き取り、ドライブシャフト抜け防止のスナップリングを取り外す。オイル漏れはないが、念のためドライブシャフト部分のオイルシールも同時に交換した。

ブーツからオイル?のような謎の液体が……。経年劣化で液体に変化したと本気で思ったが、整備書を見ると当時のベンツのCVジョイントはオイルで潤滑されていたことが判明。

カシメ箇所はグラインダーで削る
問題のカシメ箇所をグラインダーで削り、スチール製のカバーを分解する。カバー内側のアウターレース部分に傷をつけないように慎重に作業を行う必要があった。

インナーレース、アウターレース共にスチールボールが接する部分に指で触って段付きを感じるような摩耗はないので、再使用は可能と判断した。

このベンツちゃんに装着されていたドライブシャフトのインナーレースは、シャフトに圧入されているタイプ。念のため、再装着後に取り付位置が変わらないように印をつける。

知り合いの工場でプレス機を拝借
ネットで格安のDIYプレスをクリックする気持ちを抑え、知り合いの工場でプレスを借用することに。大型プレスなのでレバーを軽く下げただけであっけなく挿入できた。

付属ツールが充実するマイレはかなりお得
マイレのCVジョイントリペアキットには、交換作業に必要な専用グリースやパーツが含まれているので便利。左下のOリングは、カバーの合わせ目からの漏れ防止用になる。

ブーツやカバーを装着する順番を再確認。OKであればインナーレースをシャフトに打ち込む。インナーレースはヒートガンで温めて、ハンマーで打ち込んだ。

最後の一個を入れようとすると、他の一個が転がり出てしまい、なかなかうまくいかない。スチールボールと格闘すること約30分、どうにか組み上がった。

整備書では、スチール製カバーは純正プレス工具を使用してカシメると記載されるが、ネット動画を参考にポンチでカバー円周全体を折り曲げる。Oリングがあるので密閉性は確保されるはず。

軽油で空気漏れをチェック!無事に作業完了
きちんと密閉されているかを確認するために、軽油を注いで漏れをチェック。漏れはなかったので、ブーツを装着後にバンドで固定して完成となる。

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グーネットピット編集部

ライタープロフィール

グーネットピット編集部

車検・点検、オイル交換、修理・塗装・板金、パーツ持ち込み取り付けなどのメンテナンス記事を制作している、
自動車整備に関するプロ集団です。愛車の整備の仕方にお困りの方々の手助けになれればと考えています。

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