パワー感の無い原因は触媒の詰まり。滅多に無いですがゼロではありません。原因は蓄積したカーボンと予想。トヨタ：ブレビス｜車検・点検・修理のグーネットピット

「何か力無いのよ～」とご相談です。Ｔ様が、やっとの事で探し入手した車両（中古車）との事です。お車はトヨタ：ブレビス。走行距離は４万㌔台の低走行です。
「６気筒モデルにしては遅い感じがするし、走行していると途中からどんどんパワーダウンしてる？気がします」との内容です。
試運転で症状確認といった所、パワー感がありません。２.５Ｌのエンジン？？な加速です。そうしてる内に「これヤベーっす」な状況に・・。登り坂をズーっと走ってるとみるみるパワーダウン。イヤな予感で路肩に止めてボンネットオープン。イブ臭さが立ち込めエンジンルームを除くと・・触媒周辺が真っ赤になってます～。正直マジ焦りました。このまま無理に走行してたら～と思うとゾッとします。冷えてからゆっくり工場に帰還。
触媒が真っ赤という事は、燃焼が異常という事です。
ここから早速点検となるのですが、点検箇所と順序を決めて行っていきます。
履歴が全く無いので、見る場所多数になります。
まずは、燃料不足の可能性からの燃圧確認。

エンジンはＤ－４で燃料を筒内直噴方式です。シリンダーヘッドのカムで高圧ポンプを動かしインジェクターにかかる燃圧を上げてます。スキャンツールで値は確認できます。が、その高圧を直接測定する計器は持っていません。
燃料タンク内のポンプから高圧ポンプの間に燃料計を割り込ませて。数値は悪くは無さそうです。が、ブレが大きく低圧側（タンク側）へ戻される率（バルブ抜け）が大きいのでは？と、一つの懸念です。ただ、そこまでの不具合にはならない気もしますが・・。
次は、燃料タンク内の確認。
以前の経験で、燃費を上げる為に固形の燃料改善剤？を多量に入れたものが砕け粒子状になり、走行している内にポンプのフィルター部分に集まり（吸われ）、燃料が徐々に不足する事例がありました。その他、燃料泥棒？の残したホースがフヤけてボロボロの粒子になって～や、中の錆で、同様な症状が多数ありました。
燃料ポンプを取外してタンク内の確認。

燃料タンクの中は綺麗でした。
では、なにかヒントは無いか？との事で、お車に付いていた整備記録簿を見てみます。
すると、「タイミングテンショナー」の取替と記載が。
何故必要だったのかは不明ですが、タイミングベルトにコマズレの可能性です。
早速確認。結果は、問題は有りませんでした。
ＶＶＴのアクチェータも確認。問題ありませんでした。
他には、バルブクリアランスの異常、点火タイミングの異常、などなど、異常燃焼を起こす要因を、走行距離からのメカニカルなトラブルは考えずらく、いわゆる「ハマリ」の状況になってます。

何かヒントが無いか・・と、Ｄ－４エンジンの概要や記事を調べていると。
超希薄空燃比で成層燃焼と記述が。それを実現する為、ピストンヘッドにクボミを作り、そこに直接燃料を噴射する事で～との事。その他に、長時間のアイドルや低速走行を繰り返すと煤が溜まり易く・・・と。
という事は、個人的な捉え方ですが、強烈なフンワリ過ぎるアクセル操作や、極端な燃費走行はヨロシク無いエンジンなのですか？という解釈です。
早速、ピストンヘッドのクボミを確認する為、スパークプラグを取外し。
目視では真っ黒。カメラで覗いても何だかわからず状態です。
本来であれば、シリンダーヘッドを外しての分解清掃が一番です。ただ、確認も取れないままの着工に、現時点で自信が無い段階でした。
そこでいつもの、エンジンコンディショナーを直接注入の漬け置き一晩、です。
翌日、エアブローで飛び散らない様、ウェスで押さえてシューっと。
物凄い量の、溶けたカーボンです。
やっと、カメラでピストンヘッドが見えました。
インテークマニホールドも清掃したいので、ここもコンディショナー注入。
直噴なので、インテークバルブに届けの勢いでタップリとです。

補足です。直噴エンジンの場合、ガソリンは筒内に噴射です。一般的なエンジンの多くは、インテークバルブより前に噴射します。ので、ガソリンっ気が、バルブに少なからず付着するため、汚れ蓄積率が少な目に。直噴のＩＮバルブはそうなりません。
ここで一旦組み戻し。試運転です。
周辺を軽くですが走行。入庫時よりは若干良いが、まだ決定的な何かが違う。です。
レーシングしてると、マフラーの中で時々、カラカラっていう時があります。
こうなったら、マフラー外して確認。
構造ですが、６気筒の、前３と後ろ３で、エキゾーストマニホールドが分かれてます。そしてそれぞれに、触媒が取り付いてます。
まずはフロントパイプを降ろします。で、ビックリです。エキマニの触媒後ろの配管の汚れが全く違います。
下の画像で、左側の煤っけが多く、触媒はないのか？です。

フロントパイプは２ｉｎ１です。エキマニからくる２本にまた夫々触媒が取り付く構造で、高級車らしい贅沢な仕様になってます。
エキマニの無くなった触媒は？で、
音が出ていたフロントパイプを、縦に揺すった動画はこちら↓↓

砕けたカスがポロポロ出るので、動画を撮っていた所、触媒を支えてたであろう、金属メッシュが出てきました。こころ構えは無く、驚きで一瞬固まってます。
エアーが通ろらず、詰まってます。中でどうなってるのか？
切開してみます。（どうせダメですので）
で、エアーの通らない方は、目が無くなってました。これでは、排気ガスが出られません。ので、力が無い理由です。

確認の為、中を砕いて取り除き、溶接して蓋をします。（本来はダメですが確認の為）
この状態でエンジン始動。吹け上がりが全く違います。
軽く近場を試運転。エンジンは力強く、これが２.５Ｌの６気筒モデルと言えます。
ここまでの経緯から、あくまでも結果論です。ピストンヘッドのクボミにカーボン（煤）が蓄積した事で、正常な燃焼が出来す、徐々に不調となっていった。触媒へ清浄機能を越えた煤が蓄積。異常燃焼での未燃焼ガスがＯ２センサーで拾われ、ＥＣＵがインジェクターから噴射される燃料を絞る事で、よりシリンダーヘッドが高温になって～の悪循環が、触媒を損傷させる原因となったのでしょうか。
そして残念な事に、中古車として出回（手放した）った理由の一つに、エンジンの調子が崩れて～の可能性もありますね。
ここで、状況をご報告。
触媒は前後で良品が必要になった事。と、高圧ポンプは中古ですが交換させて頂きたい事。と、「ワコーズのレックス（RECS）」は最低限施工させて頂きたい。内容で。
高圧ポンプ取替後、測定針のブレは少なくなった模様です。（直接不具合に影響しているかは断定できませんが、懸念は減らして置きたいので）

フロントパイプは中古、エキゾーストマニホールドは新品に。
希少なモデルですし、T様がこれから大切に乗りたい意志が伝わってきます。
一時はどうなるのか、途中で何度も不安になりました。ご満足いただけるレベルになれて、ホッとしています。
今後ともよろしくお願いいたします。
当方も勉強になりました。
ありがとうございます。