ブレーキ踏むと「ゲコゲコゲコ～」っと。ハブロックナットの締結力抜けが影響です。原因はワッシャーの錆？。ミツビシ：ミニカ｜車検・点検・修理のグーネットピット

「おっかなくて乗ってないんです」とご相談。走行４０Ｋｍ以上からブレーキを踏むと「ゲコゲコゲコ～」と音が出ています。３ケ月程前に、Ｔ様がＤＩＹで、フロントのハブベアリング関係、ブレーキパッド、ローターを交換。１ケ月前位からこの音が出てきて、イロイロ見たけど原因が判らないと修理依頼です。お車はミツビシ：ミニカ。Ｔ様のお母さんが普段使うお車です。
症状と一連の状はこちら↓↓

結論は、ハブロックナットの締め付けが緩んだ為でした。
組付け時の状況をお聞きすると、締め付けトルクは調べて行った・・との事です。
あくまで予想になりますが、錆付いたワッシャーを再利用した為、組付け時は大丈夫だったが、錆が取れ、締結力が抜けたのでは？と考えます。
たったそれだけ？と思いますが、部品構成から考えると、何となくわかります。
実施した点検を、順をおってご紹介します。
異音が確実に出ている、左前輪の、ブレーキ廻りをチェック。
試運転で、ブレーキ時に、何かが遊んでる感覚がありますので。

ジャッキアップし、タイヤを揺すってのガタは、ショックのアッパーマウント部分で少々感じます。が、あの音には、ならないと思います。
ブレーキローター、ブレーキキャリパー、の取付に、問題はありませんでした。し、ハブとローターの接触面で、腐食の盛り上がりや、異物の噛み込みもありませんでした。
ハブベアリングの取付（ナックルへの４本）も、問題はありません。
ドライブシャフトブーツから、若干ですがグリス漏れが始まってました。が、関係無いでしょう。で、今の所、原因特定に至っておりません。
ホイール用クリップナットの、テーパー面が荒れていたました。
とりあえず、ナットを交換し、再度、試運転してみる事に。
ただ、経験上の話で、乗用車用のスチールホイールの場合、スプリング効果が加わるので、よっぽど酷い状態で無い場合は、ホイールが遊ぶ事はありません。（アルミホイールや、トラック用スチールは、平面接触なので別になります）
少しの望みをかけて、と、新たな発見？になるのか、ホイールナット交換のみで試運転。

結果は、
なにも変わらずの「ゲコゲコゲコ～」と。ナットたちに罪は無し。
じゃあ何？よ？で、もう一度、部品図をジっ～と。
ステアリングナックル廻りの部品構成で、ドライブシャフトがハブベアリングのインナーレースに圧入。で、ハブがドライブシャフトのスプラインに入り、ロックナットで固定。
という事は、
車重を、ドライブシャフトの先ッチョが請け負う、といった構造になってます。（構成図掲載）
同年代のスズキ：アルトを参考にすると、「ココ」と印したハブ形状の違いが。車重をハブとベアリング全体で、支えてるイメージです。
なので、ナットの締めトルクも違います。
ミニカが「３０４Ｎ・ｍ」で、アルトは「１７５Ｎ・ｍ」。ミニカはバッチリギュッが必要。
ちなみに、似た方式で、ホンダ：アクティ（軽トラック）のリヤブレーキドラム。こちらは、奥側で軽圧入、にプラスで、テーパー状コーンで押さえ、重さに対応する構造です。ナットは「１９７Ｎ・ｍ」（20kg-m）の締めトルクです。
と、いう事で、最初に確認してないハブロックナット。
着地状態ですが、規定値で締め直してみます。

感覚で約30°位締まりました。「おおッッ」もしや・・。
これで試運転。
結果はオッケー！です。どんな速度からのブレーキでも、静かです。
たったそれだけ？かもしれませんが、構造からすると、ハブを押さえる、ナットの締め力が担う役割は、ミニカの場合大きいんですね。
Ｔ様に、こうなった理由の予想をご報告です。ワッシャーの錆っスね。
引き続きの整備方法です。できれば、動いて擦れてしまい、摩耗が予想されてる事を考えると、ハブ、ドライブシャフト、ハブベアリング、の一式取替は理想です。が、高額。
原因がわかったので、モロっと取替は再発時に考える事になりました。
今回は、ハブロックワッシャと、ロックナットを、新品に取替し、規定のトルクでシッカリ締め付ける、の内容で対応する事に。
念の為、左右とも取替（ハブは左右行ったとの事）をご依頼です。
では早速、

折り返しで取付っと、行く所でしたが、ハブ側のワッシャー接触面の荒れと、錆移りが見られます。中心に近い所は、ここが動いてたって形跡がわかりますね。
スコッチブライトベルトで、出来る限り清掃。
車重が掛からない状態で、ロックナットを規定値に締める為、「ハブストッパー」を使います。
確認で最終試運転。大丈夫ですね。良かったです～。
これで治ります・・と、Ｔ様にお伝えしてるので、この確認が出来るまでは、正直ドキドキしてました。ホッとしてます。

余談ですが、
もし、ＤＩＹの際、ワッシャーを新品にしてた場合や、錆取りを行ってた場合、この現象に、なる事はなかった？とも言えます。
触診でいうと、ジャッキアップ状態で、タイヤを手で揺すった時のガタ付になります。が、一切感じ取る事はできませんでした。車重と、走行による慣性力が加わり、ブレーキローターをブレーキパッドで挟んでの制動時に、ハブとベアリングに隙間が出来て～の、金属がシナるレベルでは、想像以上の力が加わってると言えます。（人の腕では猫パンチな感じですかね）
結果論ですが、パッとの見た目は同じでも、構成部品の役割範囲が異なります。今回レベルの締結抜けであれば、スズキ：アルトの場合は、ここまでの音が出る事は無かったと思います。
奥が深いっスね～。勉強になりました。