輸入車
更新日:2021.03.04 / 掲載日:2021.01.06
フィアット 500/気になる中古車【試乗判定】

2013年モデル フィアット 500 ツインエア ポップ
文●竹岡圭、九島辰也、ユニット・コンパス 写真●ユニット・コンパス
(掲載されている内容はグーワールド本誌2021年2月号の内容です)
※中古車参考価格はすべてグーネット2020年12月調べ。
※ナンバープレートはすべて、はめ込み合成です。
一般ユーザーが乗っている使用過程車をテストすることで、新車ではわからない実力をチェックするのがこのコーナー。売れ線中古車の本当のトコロを厳しい目線でインプレッション! 果たしてその結果やいかに!?
Member Profile
自動車ジャーナリスト【竹岡 圭】
人気TV番組「おぎやはぎの愛車遍歴」の進行役としてもお馴染みの、人気自動車ジャーナリスト。2020-2021 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。自動車ジャーナリスト【九島辰也】
長年にわたり男性ファッション誌や一般誌などでも活躍し続ける自動車ジャーナリスト。その知見は広く、プライベートでも各国のクルマを乗り継ぐ。
毎年コンスタントに売れ続けている傑作コンパクト

ステアリングを握ればイタリアがわかる!

編集部●気になる中古車を実際に試乗することで、その実力をチェックしようというのがこのコーナー。今回は2008年に上陸し、いまなお売れ続けているイタリアンコンパクト、フィアット 500が登場です。お借りしたクルマは2013年モデルで、グレードは「ツインエア ポップ」、走行距離は6万3000kmです。
竹岡●今回は、ヨーロッパ製コンパクトカーの直球だね。
九島●このクルマを語らせたらウルサイよ。なんせ1台持ってるし(笑)。
編集部●そうでした(笑)。フィアット 500は凄いクルマで、なんと上陸してからもうすぐ13年だというのに、いまだにコンスタントに売れ続けています。
竹岡●そうらしいね。でも、今日も思ったけど、なぜか飽きない(笑)。
九島●フィアット チンクエチェントってクルマは、日本人が思っている以上に価値があると思うんだよね。
竹岡●空冷時代の2代目が爆発的なヒットでイタリアの偉大な国民車になったといったストーリーもそうだけど、いまだにヨーロッパでは山ほど走ってるもんね。
九島●売れていることはもちろんなんだけど、世界中の高級ブランドがイタリア車とコラボするときに、必ずこのクルマが出てくる。
編集部●フェラーリやマセラティといった名だたるメーカーがあるにもかかわらず、ですね。
九島●だから僕らの想像以上に、このクルマに対する畏敬の念を、イタリアの人たちは抱いているってことなんだと思う。以前、仲良くしているジローラモさんから「イタリア人の家の庭には、必ず古いチンクエチェントが1台あって、それをレストアするところから男の子は始まるんだ」って話を聞いて、妙に納得した。
竹岡●それで運転も覚えるわけね。なんかいきなりお洒落な話(笑)。本国では新型モデルがEVとしてデビューしていて、来年には日本に上陸するけど、それでもその状況は続きそう。
九島●イタリアのスピリットそのものなんだよね、きっと。
編集部●これだけ長期にわたって販売されてるフィアット 500ですが、ラインアップはとてもシンプルです。エンジンはすべてガソリン。年式にもよりますが、1.2Lと1.4L自然吸気の直4に加えて、0.9L直2ターボのツインエアの3タイプで、これに屋根がスライドして開くオープンタイプの500C、また装備によっていくつかのグレードが展開されています(アバルトは除く)。
竹岡●特別仕様車や限定車も定期的にリリースされていて楽しいよね。
編集部●そうなんです。で、その詳細を……と思ったんですが、特集が組めちゃうほどあまりに膨大な数なんで、グーネットのカタログページ参照ください!ということで割愛させていただきます。
九島●マジか(笑)。
竹岡●でもこのクルマって、サイズ的にも見た目的にも女性が乗るには最高だと思うんだけど、男性にもいいよね。ライフスタイルに対するこだわりが伝わってくるし、つまらない人には絶対見えない(笑)。
九島●アバルトも絶好調だしね。
編集部●それでは試乗のほう、よろしくお願いいたします。
九島「イタリア車のキモがギュッと詰まっている」
竹岡「女性だけではなくむしろ男性にもオススメ」
DETAIL CHECK

スニーカーのような気軽さとイタリア車らしいキビキビ感!
編集部●トコトコトコっと、走り去る姿がいきなりカワイイことに加えて、追走していて気がついたのは、意外なキビキビ感。
九島●僕は普段乗っているから、圭ちゃんの印象から聞いてみよう。
竹岡●改めて乗ると、ホントにラクだよね(笑)。私は普段MINIに乗っているのだけど、ビジネスシューズからスニーカーに履き替えたときのような、気軽さと開放感がある。あと、この個体は6万kmを超えているけど、クルマがクタクタになっている感じがしないのはなぜだろう。整備がきちんとされているからかな。
九島●さっき外から見ていてキビキビ感があるって話が出たけど、僕がいちばん気に入っているのは、じつはそうしたハンドリングなんだよね。とにかくフロントが軽いから、クイクイ!っと狭い道でも臆することなく入れるし。イタリア人って、キュン!と曲がって、バシッ!と止まる。そんなメリハリの利いた走りを好むから、まさに彼らがイメージする運転の楽しさが、このクルマには詰まってるよね。
編集部●慣れないと違和感があると言われることの多い、シングルクラッチのデュアロジックはいかがでしょうか?
竹岡●たしかにその指摘はあるあるだけど、私はこれで十分だと思う。
九島●もう慣れて体に馴染んでいる(笑)。でも、このクルマがトルコンATを積んでいたら、重くなるしさっきのキビキビした印象は薄まるかもしれない。5年所有しているから自信を持って言えるけど、MTありきのシングルクラッチのほうが、このクルマのキャラクターには合っていると思う。ところで、中古車市場はどんな感じなの?
編集部●グーネットで検索すると、800台以上流通していて、価格も30万~250万円と選り取りみどりな状態です。あと傾向としては、500Cとツインエアが、若干高くなります。
竹岡●カラフルな特別仕様車がたくさんあるから、色でターゲットを絞るのも楽しいかも。
九島●とにかくコンパクトカーをチェックしているなら、いちどは試し乗りする価値はあると思う。
どのクルマとも似ていないオリジナリティある運転席

コンパクトカーにありがちな、「リーズナブルなクルマだから仕方ないよね」といった諦め感がまったくない。むしろコストを抑えつつ、安っぽく見せない工夫がここかしこに見られ、感心する。ただし、最近のトレンドである運転支援機能はない。
特に前席は大人がゆったりと座れる広さ

フロントシートはクッションも肉厚でほっこりした運転環境を提供してくれる。また、リアシートは大人も座れるが、ボディが絞り込まれることもあり、頭上空間の余裕はあまりない。長時間乗車では我慢を強いられるから、2+2的な使い方が理想といえる。
オーソドックスな4気筒か独特なテイストの2気筒か

フィアット500のエンジンバリエーションは、1.2L/1.4Lの自然吸気4気筒と、0.9Lの2気筒ターボ(ツインエア)。今回の撮影車は後者だが、トコトコトコっと発進し、上までキッチリまわるエンジンでとにかく運転していて楽しい。試乗した二人とも、こちらをオススメしている。
絶対容量は限られるが工夫次第で意外に積める!?

ナンバープレート上部のスイッチを押して開くラゲッジルームはけっして大容量というわけではないが、5対5で分割可倒するリアシートを駆使すれば、思いのほかたくさんの荷物を積み込むことができる。リアゲートそのものも軽く開閉もラクだ。
試乗判定レビュー

※各項目に対して5点満点評価。 ※ナンバープレートは、はめ込み合成です。
竹岡 圭
とってもファニーなクルマだけど、単なるコマーシャルビークルではなく、2気筒エンジンに代表されるメカニズム的なユニークさもあったりなど、本物感がイイ。コンバーチブルやアバルトなど、さまざまな展開があるうえに、特別仕様車で絶えずいろいろなボディカラーや装備のクルマが登場しているので、自分だけの1台を見つけられるのも高ポイント。
いわゆるイマドキの最新鋭安全装備などは手薄な感じだし、もちろん快適に過ごせるようにはなっているけれど、華美な装備はまったくないのが現状です。でもそういうクルマあってもいいよね!と思わせるだけのブランド力があるのがこのクルマのスゴイところ。だからグッチなどのハイブランドも、コラボレーションモデルを出すのだと思います。
クセのあるシングルクラッチタイプのトランスミッションや、トコトコと走るのは得意だけれど……という2気筒エンジン等々、こだわりは満載だけれどパワフルさや新しさはあまりないにもかかわらず、乗ってみると意外にこれで十分じゃない?!と思えてしまうのが不思議なところ。特にこの個体はクセがまったくなくて、市街地を走るには超好印象でした。
- 平均点 4.5
-
- ポジショニング 5.0
- 装備 4.0
- 走り 4.5
九島辰也
今となっては、単純にコンパクトカーという枠を超えた存在といえるよね。僕も普段フィアット500ではなく、あえてチンクエチェントと呼んでいる(笑)。昨年まで、それこそ散々イタリアに足を運んだけど、もはや景色の一部といえるほど街に溶け込んでいる。そういう意味では偉大。彼らにとって、いかにこのクルマが特別な存在なのかってことがわかる。
まさに必要にして十分。デビューが古いこともあって最新の安全装備はついていないけど、もう新型がお目見えしているし、そこは割り切るしかない。こないだ空冷のフィアット 500に触れたけど、そのころに比べたら、エアコン、オーディオ、パワステ、エアバッグと、想像を超える高級車だ(笑)。でも、最新安全装備が気になる人は、ほかのクルマを選ぶしかないかな。
個人的に最も気に入っているのがハンドリング。フロントが軽いから、ハンドルを軽く切っただけで、スッとクルマが向きを変えてくれる感じが、プライベートで5年乗っているけど、まったく飽きない。ツインエアはエンジンもバイクみたいな吹け上がりでリズミカル。圭ちゃんが言っていたけど、ほんとにスニーカーみたいで気兼ねなく走れるのがいい。
- 平均点 4.7
-
- ポジショニング 5.0
- 装備 4.0
- 走り 5.0
グーワールド 編集部
世界中にコンパクトカーは数あれど、これほどキャラクターがはっきりしているのは、もはやフィアット 500とMINIくらいだろう。現行モデルは13年近く販売し続けていて、コンスタントに売れ続けている事実も凄い。スペース的な都合から今回は触れていないが、アバルトの500シリーズも根強い人気を誇っている。これぞまさに、名車といえる存在といえる。
現在、各社の最新モデルは、衝突安全要件や各種装備でますます大きく、重くなる傾向にある。そんな状況のなか、逆にシンプルでプリミティブなコンパクトカーとなると、現行フィアット 500はがぜん輝いてくる。中古車価格もリーズナブルになっていて、国産軽自動車といい勝負。ファッションアイコンとしての魅力もあるから、あえて選ぶ価値は高い。
全長3545×全幅1625×全高1515mmのスリーサイズで、重量は約1トン。これだけでもフィアット500がいかにコンパクトカーとして優れた資質があるのかがわかる。エンジンはそれぞれけっしてパワフルではないが、目一杯性能を使い切るような走りができるのは、逆に美点。クルマとの距離もグッと近くなるし、相棒感と愛着も増してくる。
- 平均点 4.8
-
- ポジショニング 5.0
- 装備 4.5
- 走り 5.0