新車試乗レポート
更新日:2022.07.11 / 掲載日:2022.07.11

bz4X&ソルテラ、ロングドライブリポート

国内外でニューモデルの登場ラッシュが続き、
急激な盛り上がりを見せる新時代のクルマ「BEV」。
従来の給油に比べ、充電にある程度の時間が必要になり、
航続距離等で気になる点もあるが、
現在の最新モデルの実力はいかほどのものなのか? 
トヨタとスバルの共同開催によるロングドライブのインプレッションをお届けする。

●文:川島茂夫 ●写真:トヨタ自動車(株)、月刊自家用車編集部

TOYOTA bZ4X & SUBARU SOLTERRA ロングドライブリポート

最新BEVで巡る初夏の東京〜静岡

●今回のロングドライブコースは「東京〜御殿場〜静岡」:東京・水道橋からbZ4Xでスタートし、御殿場でソルテラに乗り換えて静岡駅前までの行程約230㎞が弊誌の担当した第1区間である。その後、第2区間は静岡〜名古屋、第3区間は名古屋〜金沢、第4区間は金沢〜軽井沢と繋いで、最終の第5区間で軽井沢〜東京・水道橋に戻ってくる。合計約1100㎞に及ぶ駅伝形式の超ロングドライブ企画である。

BEVとの付き合い方を改めて
考えさせられたドライブだった
 先日、トヨタとSUBARU共同主催の長距離試乗に参加する好機を得た。全体としては、南関東と中部地方を囲うような日本横断のコースである。山あり谷あり海ありの約1100㎞の設定だ。さすがに長距離すぎるため、全行程を5区間に分割し、試乗できるのはその中の1区間。本誌は取材等で馴染みのある東京~静岡を選択。これまでの試乗等で得た経験が活かせると考えたからだ。
 試乗条件のひとつが面白かった。区間途中で乗り換えを行うが、中間地点到着時の残航続距離を200㎞以上とするというのだ。カタログ値からすれば余裕なのだが、最初に乗り込んだbZ4Xの計器盤に表示された残航続距離は270㎞。蓄電量は急速充電による満タンと同等の約80%。エアコンを切れば320㎞程度に伸びるが、初夏を感じさせる陽射しと気温のため、それはさすがに厳しい。
 乗り換え地点までの行程距離は約120㎞なので無充電では届かない。取り敢えず距離的には近いが海老名SAで急速充電を行うことにした。幸いにも急速充電スポットには空きがあった。スタートから10%も消費していなかったが、表示された充電時間は20分程度。実際には15分弱で終えたが、蓄電量が多い状態での急速充電は時間的にやはり非効率。しかしこれもBEVの現状だ。
 再び残航続距離270㎞。乗り換え地点までの距離は60㎞ちょい。ざっくり計算では届くはずだが少々心配ではある。
 そして、ドライブモードを「エコ」に設定して再出発。トルクフルで即応性も高いが、暴れ馬ではない。駐車場出口のような登坂発進停止を繰り返すような状況でもペダルワークに神経質になる必要もない。速度変化の激しい交通状況でも浅く緩やかなペダルワークで追従。深めに素早く踏み込めば切れよい瞬発力だ。「エコ」と謳ってはいるが体感的にはノーマルモード相応だろう。ただ、全方位的に優等生なドライバビリティは印象が薄い。ノーマルモードを選択するとペダル踏み込み量の減少や踏み増し初期加速の切れが向上。「スポーツ」ほどではないが、加速に少し刺激を加えた感じだ。
 しかし、全開加速だろうと高速だろうと静かなのはさすがだ。半面、ロードノイズや車外騒音が気になる。同格ミドルSUV相対でみればロードノイズも車外騒音も抑制され、PCU等の電動系の制御音も目立たない。静粛性に優れているのは間違いないが、透過感は車格プラスα程度。もっと厚みや重みが欲しくなる。そうなれば車格アップも必要。いたちごっこなのは分かっているが……。
 小田原から大観山付近までは連続登り勾配。残航続距離減も著しい。この消費ペースでは残航続距離200㎞は不可能。大観山以降は下り勾配になるにしても御殿場周辺の標高を考えればかなり厳しいので、オンルート上の急速充電スポットを検索。道の駅「箱根峠」で急速充電。箱根峠での充電時間は約25分だ。充電中にテスラがやって来た。やはり充電予定だったようで、少々焦ってしまう。
 山岳路におけるbZ4Xはサイズや車重をあまり感じさせないハンドリングを示した。操舵初期の回頭反応がよく、SUVにしては切れ味がいい。回頭と旋回力の若干のタイムラグや接地荷重変動があるのが気になったが、軽快感の演出としては悪くない。
 御殿場乗り換え地点着の残航続距離は255㎞。箱根峠からは下り基調の勾配。消費激減で減った航続距離は約15㎞だ。計算値の減少幅はバッテリー容量の5%足らず。起終点の標高差が電費に大きく影響しているのが明確だ。
 次はソルテラだ。パワートレーンのドライブモードはひとつ増えてエコ/ノーマル/パワーの3モード設定。開発陣曰く「エコ」はbZ4X/ソルテラ共通。bZ4Xの「ノーマル」とソルテラの「パワー」が等しくなる制御とのこと。とはいえモード名のイメージからなのかソルテラの「パワー」が多少ながら活発に感じる。とはいえ、「エコ」が品よく落ち着いていてイチオシなのはbZ4Xと同じ。
 興味深いのはフットワークの違い。bZ4Xに比べると姿勢変化や接地荷重変動が抑えられている。操舵初期回頭反応が穏やかになり、ロール等のストローク速度も低め。bZ4Xの切れや軽快感に対して、ソルテラは腰と据わりを重視した味付け。GR86とBRZほどの相違はないが、ソルテラのほうがツーリング志向となっていた。
 前走車との車間距離と速度差に応じて回生力を自動制御する運転支援機能などもあり、山岳路もストレスを感じずに走れる。段差突き上げではロープロタイヤの硬さも意識させられるが、粗野な印象はなく、路面を問わず爽快に走れるタイプである。
 途中、撮影のための停車や極低速走行によるエアコンロスなど非効率な状況もあったが、後半は残航続距離も余裕。途中充電や標高も配慮しなくていいので精神的なストレスも激減。逆に言えば満充電300㎞以上のドライブでは経路上の急速充電スポットの確認は必須だろうし、内燃機車ほど気軽には使えない現状も痛感させられた。短所も含めて理解を深めるトヨタとスバルのBEVに対する誠実さを実感した試乗であった。

TOYOTA bZ4XZ(4WD)

●車両本体価格:650万円 ※リース専用車 ●ボディカラー:ブラック×エモーショナルレッドⅡ(有料色9万9000円高) ●問い合わせ先:0800-700-700(トヨタ自動車お客様相談センター)

【bZ4X ミニインプレッション】

トヨタの良いトコロを凝縮!
洗練された乗り味が魅力だ
 エコモードにおけるパワートレーンのコントロール感覚はトヨタ製HEVを洗練して余力をさらに高めたような特性だった。トヨタユーザーにはとても馴染みやすく、市街地の渋滞から高速、山岳路まで扱いやすい。操縦性は車重を意識させない軽快感と切れが印象的。それでいて、スポーティな操る手応えもあり、走りが好きなドライバーにもおすすめだ。

■主要諸元:bZ4X Z(4WD)
●全長×全幅×全高(㎜):4690×1860×1650 ●ホイールベース(㎜):2850 ●車両重量(㎏):2010 ●パワートレーン:前モーター(最高出力80kW、最大トルク169Nm)、後モーター(最高出力80kW、最大トルク169Nm) ●駆動用バッテリー:リチウムイオン(355.2V/71.40kWh) ●充電ポート仕様:普通充電AC200V、急速充電DC(CHAdeMO規格対応) ●駆動方式:4WD ●トランスミッション:eAxle ●交流電力消費率(Wh/㎞)WLTCモード:148(OP設定タイヤ装着) ●一充電走行距離(㎞)WLTCモード:487(OP設定タイヤ装着) ●サスペンション前/後:マクファーソンストラット/ダブルウィッシュボーン ●ブレーキ前/後:ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク ●タイヤサイズ:235/50R20(OP設定タイヤ) ●試乗車両本体価格:650万円(モデル価格帯:600〜650万円 ※リース専用車です。個人の場合はKINTO取り扱いになります。)

インパネ中央のワイドディスプレイが目を引くが、特徴的なのは運転席のアウトホイールメーター。航空機のような印象だ。
4WDモデルは前後モーターともに最高出力80kW、最大トルク169Nmだ。
海老名SAで早めの充電を行った。新しい高出力型充電器だったため時間も短縮できた。

SUBARU SOLTERRA ET-HS(4WD)

●車両本体価格:682万円 ●ボディカラー:ブラック×プラチナホワイトパールマイカ(有料色8万8000円高) ●問い合わせ先:0120-052215(スバルお客様センター)

【SOLTERRA ミニインプレッション】

SUBARU流の味付けが施された
大人っぽい走りが特徴的だ

 アクセル特性のドライブモードがひとつ増えているが、目立ってドライバビリティが変わった印象はなく、動力性能はbZ4Xと共通だ。走りの違いで注目すべきなのはフットワークである。減衰感の利いたストローク制御で穏やかな回頭と的確なラインコントロール性を両立。bZ4Xと比べると軽快感はやや劣るが、逆に大人っぽい落ち着きが感じられる味付けである。

■主要諸元:SOLTERRA ET-HS(4WD)
●全長×全幅×全高(㎜):4690×1860×1650 ●ホイールベース(㎜):2850 ●車両重量(㎏):2050(メーカーOP装着) ●パワートレーン:前モーター(最高出力80kW、最大トルク169Nm)、後モーター(最高出力80kW/4535-12500rpm、最大トルク169Nm/0-4535rpm) ●駆動用バッテリー:リチウムイオン(355.2V/71.4kWh) ●充電ポート仕様:普通充電AC200V、急速充電DC(CHAdeMO規格対応) ●駆動方式:4WD ●交流電力消費率(Wh/㎞)WLTCモード:148 ●一充電走行距離(㎞)WLTCモード:487 ●サスペンション前/後:ストラット/ダブルウィッシュボーン ●ブレーキ前/後:ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク ●駐車ブレーキ:電気式 ●タイヤサイズ:235/50R20 ●試乗車両本体価格:682万円(モデル価格帯:594〜682万円)

試乗車は上質感溢れるタン色×ブルーステッチの本革シート仕様。bZ4Xとの違いはステアリングの中央のブランドロゴ程度だ。
試乗車はメーカーOPの電動ロールシェード付きパノラマムーンルーフを装備。開放感が魅力だ。ET-HSなら太陽光発電を行えるソーラールーフも選べる。
運転席正面に配置された視認性に優れるアウトホイールメーター。ソルテラ用のアニメーション表示を備えている。
この記事の画像を見る

この記事はいかがでしたか?

気に入らない気に入った

内外出版/月刊自家用車

ライタープロフィール

内外出版/月刊自家用車

オーナードライバーに密着したクルマとクルマ社会の話題を満載した自動車専門誌として1959年1月に創刊。創刊当時の編集方針である、ユーザー密着型の自動車バイヤーズガイドという立ち位置を変えず現在も刊行を続けている。毎月デビューする数多くの新車を豊富なページ数で紹介し、充実した値引き情報とともに購入指南を行うのも月刊自家用車ならではだ。

この人の記事を読む

オーナードライバーに密着したクルマとクルマ社会の話題を満載した自動車専門誌として1959年1月に創刊。創刊当時の編集方針である、ユーザー密着型の自動車バイヤーズガイドという立ち位置を変えず現在も刊行を続けている。毎月デビューする数多くの新車を豊富なページ数で紹介し、充実した値引き情報とともに購入指南を行うのも月刊自家用車ならではだ。

この人の記事を読む

img_backTop ページトップに戻る

ȥURL򥳥ԡޤ