故障・修理
更新日:2022.10.18 / 掲載日:2022.10.18
超長寿命化されてもメンテナンスは必要 LLCの適切な点検・交換で路上トラブルを防ぐ
近年、LLC(ロングライフクーラント)を積極的に交換しようという風潮は薄れているように感じる。最大の理由は、交換時期を長期化した「スーパーLLC」が主流となったことで、メンテナンス意識が希薄化しているためだ。しかし、LLCは全くメンテナンスしなくてもいいものではない。事実、走行中に冷却系統にトラブルが発生し、JAFのお世話になっているユーザーは少なくないようだ。長寿命化が図られているからこそ、LLCは適切にメンテナンスすることが望ましい製品だ。
冷却装置の故障は一般道路で6位、高速道路で5位

国土交通省は日本自動車連盟の協力のもと、2021年9月から11月までの間に発生した自動車の路上故障について、「装置別および部位別の故障発生状況」の分析を行った。
その結果、路上故障発生件数は8万4791件で前年同期比6.5%(5854件)減となり、2年ぶりに減少した。道路別にみると、「一般道路」は8万4169件
で6.0%(5405件)の減少、「高速道路」は622件で41.9%(449件)の大幅減少となった。高速道路は新型コロナウイルスの影響で前年に88.3%(8047件)減と記録的に減少したが、今回もコロナの影響を受けて大きく減少した。
路上故障発生件数に占める装置別の割合をみると、構成比が最も高かったのは「電気装置」で39.8%。以下、「走行装置」が32.6%、「燃料装置」が8.4%、「エンジン本体」が8.2%、「動力伝達装置」が4.2%、「冷却装置」が3.4%と続いている。
これを道路別にみると、一般道路では「電気装置」が40.0%で最も多く、以下、「走行装置」が32.4%、「燃料装置」が8.4%、「エンジン本体」が8.2%、「動力伝達装置」が4.2%、「冷却装置」が3.4%と続いている。
高速道路は「走行装置」が49.4%で2位以下を引き離して断然トップとなっている。以下、「燃料装置」が13.5%、「電気装置」が10.8ポイント、「エンジン本体」が10.6%、「冷却装置」が5.8%、「動力伝達装置」が4.8%となっており、一般道路とは順位が入れ替わっている。
冷却水の不具合は一般道路で4位、高速道路で3位

今回の分析結果で、冷却装置の故障は一般道路で6位、高速道路で5位となった。これは、高速走行によって大きな負荷がかかるため、通常走行では現れない故障が発生するためと考えられる。
また、「故障部位別発生件数」の割合をみると、一般道路では「タイヤ」が32.1%で最も多く、以下、「バッテリー」が29.7%、「オルタネータ」が4.9%、「冷却水」が1.8%、「クラッチ」が1.3%と続いている。
高速道路でも「タイヤ」が49.0%で最も多く、以下、「オルタネータ」が4.3%、「冷却水」が4.0%、「潤滑油」が3.7%、「トランスミッション(A/T)」が2.4%と続いている。
冷却水は一般道路で4位、高速道路では3位となっており、発生割合は一般道路の1.8%から高速道路では4.0%に上昇している。主な故障状況は「不足」「水漏れ」「汚れ」「凍結」である。
プロの整備士によるLLCの点検、適切な整備が必要
市場の実態として、冷却水=LLCの管理不足により、これだけの路上故障が発生していることが分かった。主な故障状況である「不足」「水漏れ」「汚れ」「凍結」などは車検時に点検すれば発見することができる。不足と水漏れがあれば、原因を探して適切に修理する必要があり、汚れていれば全量交換する。また、凍結は凍結防止性能の低下またはLLCの濃度が使用地域に適していないことが原因と考えられるので、濃度を測定したうえで全量交換するか、適正濃度に調整する必要がある。これを行うのは素人ではとても難しい作業で、プロの整備士に見てもらうのが最も適切だ。
LLC交換のポイントは「全量交換」と「エア抜き」だ。ラジエーター部分のLLCだけを抜き取って交換しても、エンジン冷却系統内に古いLLCが残ったままだと、新液と旧液が混ざって本来の性能は得られない。また、「エア抜き」をしっかりと行わないと、冷却系統内にエアが混入して使用過程でオーバーヒートし、エンジン内部を破損させてしまうこともある。こうしたトラブルが発生しないように、しっかりと全量交換することが望ましい。

出典:アフターマーケット 2022 年 9月号