中古車購入
更新日:2017.12.14 / 掲載日:2017.12.05
レクサス IS-Fは現代のTE27だ!
「IS-Fは現代に蘇ったニーナナである」
カローラのボディに当時としてはハイパワーの1.6Lを搭載したTE27
【本記事は2007年11月にベストカーに掲載された記事となります。】「IS-Fは現代に蘇ったニーナナである」byマッドドッグ三好。ということなのだ。以上。……というのじゃ何にもわからないだろうから噛み砕いてみる。小さなボディにでっかいエンジン、両車、まんまこのコンセプトだ。ビューンと速いクルマ作るにはわかりやすいくらい明快な答えである。TE27にはラリーの世界で王者として君臨していたフォード・エスコートを叩きのめすという使命が与えられていた。IS-Fは当然、打倒BMW M3でしょう。両車ともにでっかいライバルが控えていたからこそ思いきったクルマに仕上がったのだ。そんでもってともにFR。アクセル、ガンッでリアがキュルキュル、キュルってゴキゲン通り越して昇天しそうなクルマだ。TE27がでた当時、オイラは中学生だったけど、クルマの本を見ると「ジャジャ馬」だの「強烈な加速」、「まっすぐ走らないクルマ」などいったいどんなクルマなのだろうという修飾語が並んでいた。ラリーの大先輩、竹平サンは普通に現役で乗ってたけど、オイラは中古で手に入れた。
「こいつはワルだ」
VDIMをスポーツモードにしてATをMモードで走り出せば、超本格派スポーツカーもビックリ!! の走りを雨の富士でも余裕を持って体感することができたのでした
IS-Fのイメージカラーはブルーらしいんだけどオイラ的には黒がいいね。富士スピードウェイのピットレーンに並んだ黒いFを見た時「こいつはワルだ」と思った。低く構えたフォルムから凄みを感じたんだ。今までのレクサスは上品だけどこいつには速さのオーラがある。ドライバーズシートに乗り込むと大きなメーターが目に飛び込んでくる。ほぼ黒一色の室内は豪華さが激しく違うとはいえTE27からつながるスポーツモデルの雰囲気をかもし出している。いわゆるドライバーをその気にさせるコックピットって奴だ。スターターボタンをプッシュしてエンジン始動。VDIMは安全方向に振った「ノーマル」モードからスイッチの切り替えで「スポーツ」へ。ATのシフトレバーはDレンジから右へ倒してマニュアルモード。ピットロードを飛び出し、メインストレートに出て本格的にアクセルを踏み込む。比較的抑え気味だったエンジンサウンドが急激に高まってくる。「オッ、オオーッ」初めて乗ったら声を上げるだろうね。急にクルマの性格が変わったかのような野太い音から回転が高まっていくと高音質に昇華しレッドゾーンを迎えるのだから。
「魔性の女」
エンジンは3500回転を過ぎたあたりから突如音質がかわり、「クォォォォォォ~ン」と気持ちのいい吸気音を響かせながら7000回転まで一気に吹け上がる。この音、レスポンス、パワー感は完全にスポーツカーのものといっていいレベル。ダイレクトなATにも感動した
その源たる5L、V8エンジンは排気量の大きさのイメージとは異なる軽快さが特徴。切れ味鋭い刃物のイメージで、ストレスなくタコメーターの針を跳ね上げる。欲をいえばもう1000回転、赤い表示のところに切り込んでほしいところだが、4000~7000回転の領域は「魔性の女」のようだ。300Rという高速コーナーがある。ドライならほぼ全開で走り抜けるコーナーだが当日の路面はウェット。Fはここのアプローチで4速、4000回転、150km/hといったところ。アクセルを踏み込みながらコーナリングを開始する。タコメーターとスピードメーターの針がシンクロして上がっていく。とてつもなく速い!そして恐怖も感じる!しかしIS-Fは「呼ぶ」のである。もっといける! もっと踏め! もっと攻めろ! と!!この高速コーナーでリアタイヤはわずかにスライドしながら立ち上がる。その時、タコメーターはレッドゾーン直前。そしてスピードメーターは180km/hを指していた。まるでドライバーの綱渡りを楽しむような挙動を見せるクルマだが、綱のあっち側に行くとどうなるか? そこにオイラが「スポーツ」に切り替えたVDIMの答えがある。ある程度の挙動変化を許容する。アクセルオンでのパワースライド、FRならではのソリッド感溢れる姿勢変化を楽しむ事ができる。そしてそれがオーバードリフト気味になると制御モードが立ち上がりスライドを収束させる。だからこそウエットでも怖さに直面しつつコーナーを攻めたてられる保険も内包している。保険という意味では速いクルマだけにブレーキも充実している。高速レンジでガチッときくフロント6ポッド/リア2ポッドブレンボはサーキットではもっと太いタイヤが欲しいほどの制動力を発揮する。そしてF1を開催するハイスピードサーキットでこれだけのパフォーマンスを見せたクルマのトランスミッションはトルコンを使ったATという驚きが残った。パドルシフトを駆使しての全開走行。しかしそこにATであるストレスがない。それ以上に変速スピードの速さに驚愕し、シフト操作の面白さを堪能。アクセル全開のままでのシフトアップでも変速ショックはほとんどない。実はこのミッションの電子制御技術がこのIS-Fの一番の目玉かもしれない。
猫をかぶったジャジャ馬
エンジンルームはカバーによってメカニカルな雰囲気はしない。専用開発のV8、5Lは423馬力、51.5kgm
ドライバーをその気にさせ、その影で電子デバイスにより安全を確保。しかしビッグパワーのリアドライブというパフォーマンスは充分に過激な味わいを残している。そしてその完成度に比例してプライスタグも当然、豪華。最後に結論。内外装の豪華さと安全性では「TE27論」は撃沈されてしまうが、その思想の一部はTE27からつながるものがあると確信した。猫をかぶってはいるが、IS-Fは充分にジャジャ馬だ。
IS-Fさらに細部をチェック!! IS-Fここが凄い!! 評論家5人の証言
IS-Fさらに細部をチェック!! IS-Fここが凄い!! 評論家5人の証言現代に蘇ったTE27の心意気、IS-Fの凄さをさらにお伝えしたい!! ということで、走りにうるさいこの面々のインプレッションをお届けいたします。さてさて……!?・斎藤聡「もの凄く楽しいクルマ!!」これまでのトヨタ車とは一線を画するクルマに仕上がっている。正直、IS350では足がキチンと動いていなくて、このままオーバー400馬力のエンジンを搭載したら大変なことになるぞ、と思っていた。けど、実際に乗ってみたらIS-Fはしっかりと動く足になっていて、423馬力、51.5kgmというハイパワーをキッチリ吸収している。よくできている。エンジンも凄くいい。3600回転から上に回すと「クォォォォ~!!」と豪快な吸気音を奏でながら吹け上がるのだが、これがまた快感。ちゃんといいモノを作れば本当にいいモノができるということだ。ATがまたビックリ。最初、ちょっとバカにしていたのだ。いくら全段ロックアップだの、ダイレクトだといっても、所詮はトルコンATだろってね。でも、Dレンジでは普通のATとして快適でスムーズな走りを実現し、いっぽうMモードではシフト操作に間髪入れずバシュバシュと反応(シフトアップは0.1秒だという)し、固定されたギアではMTとまったく同じフィールで、微妙なアクセルワークも受け付けるほどダイレクトな繋がり感を味わえる。これはホント、感動モノ。766万円という価格は絶対値としては高くてボクには手が出ないんだけど、買える人にとっては絶対にオススメです。・桂伸一「AMGやBMWのMと肩を並べるスポーツサルーン」既存のボディを使ってハイパワーエンジンを載せるという手法はベンツやBMWのお得意パターン。IS-Fも同じ手法で作り上げられているのだが、これがよくこなれているのだ。シャシー、サスペンションをキッチリ仕上げているので、本当にハイレベルのスポーツセダンに仕上がっている。大げさではなく、AMGやM3、M5、アウディのRS4などと同じ次元で語ることのできるクルマになっている。エンジンはとにかくパワフル。5LのV8は最高出力423馬力、最大トルク51.5kgmを発揮するのだが、排気量が大きいのでどこからアクセルを踏んでもドンとトルクが立ち上がる。3600回転を過ぎるとエンジンの音質がかわり、鋭い勢いでレッドゾーンまで吹け上がるのだが、この吹け上がりの感覚もスポーツカーそのもの。ATは上手いことやっているなと思った。「この手があったか!!」と目からウロコが剥がれ落ちましたね。Mモードでのダイレクト感、シフトチェンジのシャープなフィールはトルコンATではなく、ランエボのSSTのような2ペダルMTと同じ感覚だ。ATで乗った時はごく普通のATなので、そのギャップも面白い。・日下部保雄「いろんな意味でトヨタらしくないクルマ」まずは凄い楽しいクルマだ、と素直に評価する。4ドアセダンにパワフルなエンジン積んで、でも直線番長ではなく曲がったり止まったりといった運動性能もキッチリ仕上げている。423馬力というハイパワーエンジンをちゃんと生かし切れるシャシーなのはお見事。トヨタらしくないというのは、トヨタの技術力の話ではなく、トヨタというメーカーは、社内的に非常に厳しい制約があり、ああいった、手間とお金のかかるクルマを作りにくい環境があるという、そういう話。見事なダイレクト感とシフトフィールを実現した8速ATも、もの凄い精度が要求されるはず。あれほどのモノを製品として市販するには、大きな苦労があったはず。よくぞ作ってくれたな、と感謝したい気持ちだ。ただ、せっかくここまでやったんだから、エンジンをあとひと伸び回るようにしてくれたらもっとよかった。7000回転でもの足りないといったら失礼かもしれないが、M3なんて8000回転まで回るのだから、IS-Fも頑張ってほしかった。・松田秀士「世界で勝負できる本格的なスポーツサルーン」LSが高級サルーンとして世界に打って出たクルマだとしたら、IS-Fはスポーツサルーンとして初めて世界で勝負できるレベルに仕上がったクルマといっていいだろう。AMGもMもまとめてかかってこい!! そんなクルマですね。サーキットでしか乗っていないので、一般道での乗り心地など、確認したいことはまだあるにせよ、動力性能とハンドリングのバランスのよさはしっかりと確認できた。423馬力、51.5kgmのパワーとトルクをFRで成立させるシャシーとVDIMの制御も絶妙。制御が過剰に介入しないのもいい。気持ちよくエンジンを回して、それでも雨の富士でガンガン走ることができるのだからお見事だ。8速ATのチューニングも絶妙。Mモードでは2ペダルMTと同等にダイレクトなのだがDレンジではスムーズなAT。