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更新日:2018.11.09 / 掲載日:2018.11.06
自動運転&安全システムが彩る次世代の運転サポート技術

自動運転の話題も飛び交う昨今、注目を集めているのが先進安全&支援システム=運転サポートだ。現在メーカーが最も注力している分野と言ってもよく、事故への備えに留まらず、もてなしを受けているようなくつろぎ感まで実現されつつある。
実際の恩恵に留まらず所有感といった面でも車選びの重要ポイント
リスクコントロールは運転の基本であり、これを無視した無謀な事故は論外。とはいえ気を付けていても一瞬の気の緩み等々の不注意で事故は起きるもの。そこをカバーするために生まれたのが最近注目されている先進的安全&運転支援機能であり、まとめて自動運転化技術とも言われる。
衝突回避と衝突時被害軽減を目的にしたAEBSを「自動ブレーキ」と広告したせいもあって誤解しているドライバーもいるかもしれないが、AEBSはあくまでも衝突回避を目的とするシステム。自動運転機能ではない。ペダル踏み間違いによる事故を予防する急発進防止システムも同様である。これらは不注意事故対策の安全装備で、部分も含めて運転操作を代行するシステムではない。ただ、AEBSの歩行者対応の有無など、総合的な安全性向上ではクルマ選びの要点のひとつだ。
運転支援機能の進化度を測る装備がACCとLKAである。ACCでは対応車速域が評価のポイントのひとつ。ひと昔前は30km/h以上と使用できる最低速度があったが、今では停車までサポートする全車速型が標準になりつつある。前走車追従時の加減速や前走車がいなくなった時の加速も、新しい設計のものほど滑らかで同乗者へのストレスや燃費に優しい制御を採用する。つまり、ACCの運転技量が高まっているわけで、これは乗り心地にも影響する。
LKAは車線認識による操舵の自動化を図るシステムだが、手放し運転は認められていない。現在のLKAは大きく2タイプに分かれる。ひとつは車線逸脱予防機能に限定したもので、これは逸脱しそうになった時のみ自動操舵が介入する。もうひとつは走行ラインを車線に沿ってコントロールするタイプで、実質的な操舵代行に当たるが、横G制限があり高速道路の制限速度以下での走行が基本になる。また、車線逸脱防止型でも補正操舵の度合いは車種によって差がある。
このほかに自動車線変更システムや自動駐車システムなどもあるが、使用できる条件や支援機能は様々。使い方も含めてまだまだ発展途上の段階だが、そういったシステムが次世代標準となるのは既定路線と言ってもいい。
先進安全&運転サポート早わかり
まさに日進月歩の分野であり、多様なシステムが存在する。車選びに役立つ基礎知識と汎用的なシステムを中心におさらいしておこう。
関連ワードひとこと解説
【サポカー】

自動ブレーキ搭載車を「サポカー」、ペダル踏み間違い防止機能も付加されれば「サポカーS」となる。また「サポカーS」は搭載技術によりワイド、ベーシック+、Sベーシックに分かれる。
【自動運転レベル】

ジュネーブ道路交通条約などの法規制の問題があるため、現在実現しているのはレベル3までの技術。今後の動向が気になるところだ。
【主なセンサー】周囲を見張る「目」と「耳」
運転サポートの前提となるのがセンシング(感知)技術だ。いわば車が目と耳を持って周辺情報を集めることで、安全システムや快適支援システムを支える。ここに挙げたもののほか、ステアリングやペダルの操作、ドライバーの表情などもセンシングの対象となる。
【カメラ】素材を問わず“見える”が、悪条件に弱い

電磁波の反射を利用するレーザーやレーダーとは異なり、人や自転車も感知できる。カメラは単眼のほか、視差による距離判別に優れるステレオ(2眼)タイプもある。最近はカラー認識も進み、前走車のブレーキランプの点灯まで判別する。弱点は夜や霧など、人の目と同様だ。
単眼カメラ
ステレオカメラ
【赤外線レーザー】
安価に衝突被害回避・軽減自動ブレーキを実現できるが、検知距離が短い。応用としてライダーが注目される。
【ミリ波レーダー】
天候に左右されず、検知距離も長いため高速域でも信頼性が高い。システムサイズとコストがネック。
【超音波ソナー】
空気の振動を捉えて壁などの障害物を認識。車庫入れなどごく限られた範囲での使用が前提だ。
特性の異なるものを 組み合わせて精度UP

あらゆる距離や素材をひとつで検知するセンサーはなく、精度向上させるためには複数のタイプを組み合わせて使うことが必要となる。異なる領域を担当することでより広い領域で精度が確保され、重なる領域では相互バックアップによる確実性の向上も期待できる。
主流となっているのはカメラ+レーダーの組み合わせ。写真はホンダセンシングの例だ。
アウディA8のレーザースキャナー。ライダー+反射鏡で周囲を高速スキャンして3次元で把握。
【主なアシスト】認知・判断・操作をサポート
各種のセンサーで得た情報を元に、車載コンピューターが周囲の状況や危険性を判断し、ドライバーの運転行為を補完。音や光で注意・警告をしたり、操舵やブレーキ操作をアシストしたり、さらにはドライバーが操作していない(できない)減速や操舵を代行する場合もある。
【目視を支援】見逃しや死角の監視を行う

車線変更や前進・後退など、様々な場面でセンサーの情報をドライバーに伝える。レーダー類の情報により他車や障害物の存在を知らせるほか、カメラ映像を直接モニターに映し出す機能もおなじみだ
【操作を支援】運転ミスのフォローを基本に 一部の運転操作の代行も
オートキャンセルウィンカーやオートライトといった操作支援は古くからあるが、先進的運転支援では、ステアリング、アクセル、ブレーキなど、車の挙動に関わる、運転操作そのものにシステムが介入する。
【ブレーキ】衝突の回避が避けられないと判断すると警告を行い、それでも危険を回避できなければ自動でブレーキを掛ける。
【加減速】一定の車間距離を保って前走車に追従。作動速度は様々だが、危険回避時以外にも便利な機能だ。
【操舵】車線などの認識にしたがって操舵力を発生させる。逸脱を防ぐほか、車線内走行をキープするものもある。
【統合】加減速や操舵の制御を統合し、特定条件下で継続走行を行う。日産プロパイロットなどがこれに当たる。
「そうだったのか!」基礎的略語ノート
【ACC】
定速走行・車間距離制御装置。高速道路などで車間距離を一定に保ちつつ、定速走行を自動で行う。
【LKA】
高速道路走行時などに白線や黄線を認識し車線維持を補助。警告や操舵補助を行う。
【CTA】
後退時に左右から近づく車両などを検知し、ドライバーに注意を喚起するシステム。
【AEBS】
前方車両を検知し、運転者に警報を行い、衝突回避・被害軽減を目的にブレーキを自動作動させる仕組み。
【BSM】
一定速で走行時、隣車線の側方や後方から接近する車両を検知し、運転者に注意を促すシステム。
メーカー呼称アレコレ
効果が同様でも呼称は様々。「セーフ/セーフティ」や「パイロット」のほか、検知に重点を置いた「センス/センシング」や先進性の「アドバンス」、知能化を表す「インテリ/インテリジェント」といった単語やその組み合わせが多く使われる。
【プレミアムのツボ】運転サポートがもたらす新たな価値
安全性や快適性といった中心価値を押さえつつ、先進装備ならではのプレミアム感について考察してみよう。
【プレミアムポイント】長持ち

購入時には平均的で満足できる装備内容でも、時間が経つと…。写真のN-BOXのように先進装備が満載なら、そうすぐには後続の他の軽カーに見劣りするということにならないだろう。
「次世代標準」は時代遅れになりにくい
エコ性能もそうだが、次世代標準をいち早く取り入れた技術はコスト高を伴う。次世代標準になれなければ「先物買いの銭失い」になってしまうが、標準化が確実な先進的機能や性能は時代遅れになるまでの猶予期間に繋がる。時代が追い付いてくるまで長く乗り続けられるわけだ。
「標準」以上か以下は買い換えタイミングの重要な決定要因である。先進的運転支援機能はその代表のひとつだ。発展途上ゆえに出来不出来はあるにしてもACCやLKAが装備されていれば、非採用モデルより1モデルライフくらいは長く使っていられる。また、年配のドライバーにとっては加齢による衰えを運転支援でカバーできる。若年ドライバー以上に長く使い続けるために重要な機能と言えよう。
【プレミアムポイント】安心
状況把握で人の能力をバックアップ

進行予測線や車両全周の表示で安心度アップ。ドライバーの死角を映し出したり警告を行ってくれればより安全だ。
「安心」とひと言でまとめても、どの時点で感じるかで価値も違ってくる。システムに「おんぶに抱っこ」で得る安心はドライバーの注意力低下を引き起こしかねないので非推奨。ここで言いたいのは信頼できるバックアップとしての安心だ。すでに普及している俯瞰表示全周モニターなどが好例である。
直接視認の重要性は言うまでもないが、死角をモニターで確認できることで安心は倍増。こういったシステムは隣接車線車両監視のBSM等々、安全&運転支援機能に伴うセンサー類の進化で増加。正しく使えば無死角での運転が可能になる。また、ACCやLKAも前走車との速度差や認識状況、支援レベルの情報を表示するタイプも登場。走行状況が確認できることで安心を高めてくれる。
【プレミアムポイント】快適

ACCは普及が進んでいる装備だが、停止に対応するものはまだ多くない。
精神的&肉体的な疲労を軽減

パーキングアシストは、運転が苦手な人にとって日常的にありがたみを感じられる機能だ。
後方を監視すれば前方や側方の注意が希薄となり、自車速度や前走車との速度差を注意すれば、その他のチェックが疎かになる。安全走行に状況確認は重要だが、同時進行ですべてを同じくチェックするのは不可能で、最大限の注意力を発揮すれば加速度的に疲労が溜まる。疲労は精神的にも肉体的にも、安全確認を含めた運転能力低下に繋がりやすい。
ドライブを楽しむ上でも疲労度は重要で、運転者本人はもちろん、同乗者に与えるストレスも変わってくる。例えば黙々と運転に集中して話しかけても応える余裕さえないドライバーの運転では同乗者も緊張するだろう。不注意を容認するわけではないが、ACCやLKAなどによって、ドライブの楽しさも1ランク以上アップするのだ。
あって当然の安全性だが、そこをリードすることがプレミアムを名乗るに必要な資格と言えるだろう
安心や快適性はクルマの基本機能や性能にとって必須要件である。必須であるものをプレミアム性として評価するのは正しくないかもしれないが、先進安全&運転支援機能については、すべての車にあって当然というわけではなく、技術的にも日進月歩で変化している最中だ。そうした発展途上期にあっては、機能の有無や性能の違いはクルマの基本としての「格」に直結してしまう。近未来に当たり前になるはずであっても、今はまだ贅沢というわけだ。もっとも、安全であることを贅沢と考えるようでは認識不足も甚だしいが。
言い方を換えるなら、プレミアムを自称していても先進的安全&運転支援機能が充実していないようなら、そこで謳われるプレミアムはひと昔前のレベル。もちろん、昔というのは伝統的なプレミアムという意味でもない。重要な部分が他より見劣りするものをプレミアムと呼ばないのは今も昔も代わらない。
これから必須となるものを積極的に採用して、クルマに求められる価値感をリードしてこその「プレミアム」なのだ。
【来るか? 自動運転時代】未来のクルマの進む道

かなり高い確率で「完全自動運転の時代は来ない」と予想している。走行給電など専用レーンでの部分的な完全自動運転はあっても、全行程を自動運転でこなすのは事故や違反の法的責任の所在などの問題から、交通インフラ革命でも起こらなければ不可能だろう。一方、技術的には限りなく完全自動運転に近づくと予想されるが、それでも問題は山積だ。
中でも大きな問題はドライバーの運転技術の維持である。過度な運転支援では10年毎日乗っても技量はペーパードライバーと同レベルという事態にもなりかねない。走行制御に関わる自動化技術は次世代の必須条件だが、まだまだ手つかずの問題点も多いのだ。
「守備範囲がますます拡大中」思わぬ状況にも備えを用意
完全自動運転へ進むには、あらゆる状況への対応が必要となる。検知の範囲や対象の拡大が必須だし、起こり得る事故形態は無限にある。無条件の自動運転は、技術面だけでも相当ハードルが高いことなのだ。
衝突以外への対応も進む。例えばボルボは路外逸脱時に事前に乗員保護が働くシステムを実用化。
同じくボルボの例。検知範囲が広がり、人や自転車だけでなく、大型動物も検知できるように。
【コレがオススメ!】「プレミアム」で選ぶサポカーセレクション
様々な運転サポートカーから、得られるプレミアム性をもちろん、用途や実用性、存在意義も考慮してセレクト。
【普及の要】TOYOTA カローラスポーツ

●価格帯:210万6000~268万9200円
カローラを名乗りつつクラウン並みの装備

スポーティキャラとそれに見合ったパワートレーン展開のためコンパクトカーではプレミアムに分類されているが、運転支援機能でもクラスをリードする。トヨタ・セーフティセンスはクラウンと並びトヨタの最新仕様であり、全車速型ACCや走行ライン制御式LKAを採用。全グレードに標準装着され、同価格帯ではトップレベルの充実度。運転支援機能でもひとクラス上の安心と快適を得られる。
【高機能タイプ】MERCEDES-BENZ Cクラス

●価格帯:449万~1513万円
多彩なラインナップで最高水準の機能が選べる

自動車線変更システムや一般路と高速道を認識した渋滞追従制御、LKAの走行ライン制御等々の主な機能は上級クラスのE/Sクラスとほぼ同じ。実効性の高い機能の数も制御の巧みさも現在の最高水準といっていい。しかも、セダン/ワゴン/クーペ/カブリオレの4タイプ構成で用途や嗜好への対応力も高い。ただ、高機能運転支援がAMG車以外はオプション設定となるのが珠にキズである。
【安全へのこだわり】VOLVO XC40

●価格帯:389万~549万円
先進装備以前からのこだわりの現在形

車体周辺監視の充実や様々形態の事故への対応力など総合的な安全&運転支援機能でトップクラスに位置する。中でも全車速型ACCの表示機能が秀逸。前走車の認識や設定車速だけでなく、前走車の車速も表示。ドライバーの感覚では認識が難しい部分もACCを通して分かるだけでなく、システムの稼働状況確認の安心感もある。あくまでも運転支援にこだわって高機能化を進めるボルボらしい。
【車格を超越】HONDA N-BOX

●価格帯:138万5640~208万80円
軽カーだからこの程度ではなく全車充実装備

機能や性能を比較すれば突出した長所はない。ACCは高速対応であり、LKAの精度レベルも並みである。ただ、歩行者衝突回避操舵アシストなどの必要性の高い機能を軽乗用で、しかも全車標準装着で展開しているのが凄い。ホンダの良識と見識を感じさせるモデルだ。軽乗用でプレミアムというのも違和感があるかもしれないが、こういった部分を矜恃として捉えられるのもプレミアムだ。