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更新日:2020.07.16 / 掲載日:2020.07.15

【日産 アリア】新しい時代の幕を開けるEVクロスオーバー発表。航続距離は最大610km

日産 アリア

日産 アリア

文と写真●ユニット・コンパス

 日産が2020年7月15日に発表した初のクロスオーバーEVであるアリアは、非常に野心的だ。それは、1台のクルマとしてもそうだし、日産というメーカーにとってもそう。間違いなく、ターニングポイントとなる存在である。

日本仕様はフェンダーパネルとトレッドをナローにして全幅1850mmに抑えている

日本仕様はフェンダーパネルとトレッドをナローにして全幅1850mmに抑えている

 核心に迫る前に、まずは、アリアがどのようなクルマなのかを紹介しよう。アリアのボディサイズは、全長4595mm、全幅1850mm、全高1655mm。日産はアリアをクロスオーバーと呼ぶが、そのサイズ感は、RAV4やCX-5、フォレスターといった人気モデルが顔を連ねるCセグメントSUVに属する。ライバルたちに比べて全高がわずかに低く、より乗用車的なフォルムを持っている

クラスで唯一となる電気SUV。価格は実質500万円から

アリアの価格は、補助金を差し引いた状態で500万円程度を予定している

アリアの価格は、補助金を差し引いた状態で500万円程度を予定している

 最大の特徴となるのが、電気自動車であること。SUVの電気自動車というくくりでは、日本車では唯一の選択肢となる。輸入車を含めても、サイズ的にもっとも近しいジャガー Iペイス(全長4695mm、全幅1895mm、全高1565mm)が1000万円級であるのに対して、アリアは各種補助金を差し引いた実質購入価格が500万円からとなる見込みだというからライバルとはなり得ない。また、日本未導入のテスラ Yと比べても、アリアはよりコンパクトでおそらく価格も安い。一方で同価格帯のモデル3よりも室内にゆとりがあるため優位性があると日産は主張している。

バッテリー容量は2種類で、航続距離は最大で610km

バッテリーは65kWhもしくは90kWhの2種類を用意。航続距離は、WLTCモードで最大430kmから610km

バッテリーは65kWhもしくは90kWhの2種類を用意。航続距離は、WLTCモードで最大430kmから610km

 EVの性能と航続距離を支配するバッテリーについては、65kWhもしくは90kWhの2種類を用意。パフォーマンスは、65kWh版が最高出力218馬力、最大トルク30.6kgm、90kWh版が最高出力242馬力、最大トルク30.6kgm。駆動方式は1モーターで前輪を駆動する2WDと前後に搭載したモーターで4輪を駆動するAWDの2タイプで、パワートレインはバッテリー容量とかけ合わせた合計4タイプがライナップされることになる。加速性能はもっともパワフルな90kWhバッテリー搭載車のAWDで5.1秒。最高速度は200km/hとかなりのハイパフォーマンスが期待される。

 航続距離は、WLTCモードで最大430kmから610kmというから、現在販売されているEVのなかでも優秀な部類で、ライバルたちに比べて同じバッテリー容量でも10%ほど航続距離は長い。これは空力を含めた各要素のブラッシュアップで実現しているという。また、AWDモデルでも走行シーンにあわせて駆動力を切り替えて無駄を省き、さらに後輪用モーターも回生ブレーキに活用することで、2WDモデルと航続距離の差を最小限に抑えている。

今後登場する日産車を牽引する旗印

2019年に開催された東京モーターショーに出品されたアリア コンセプト(写真:日産)

2019年に開催された東京モーターショーに出品されたアリア コンセプト(写真:日産)

 アリアがなぜ日産にとってターニングポイントとなりうる存在なのか。

 ひとつは、新しいデザインランゲージの採用がある。「タイムレス ジャパニーズ フューチャリズム」と表現されるそれは、シンプルでありながら、モダンで力強い表現が特徴。日本的な美意識をベースに未来志向で作られたもので、クリーンさとなめらかさとを融合させたエクステリアは、フロントからリアへと一気通貫したプレスラインのシャープさも見事。インテリアもEVだからこそ可能になった広々とした足元空間で、新しい時代のラグジュアリーを提案している。内外装ともに前回の東京モーターショーに出品されたコンセプトモデルを上手にトレースしており、まるでコンセプトカーそのものが路上を走っているかのような先進性とインパクトがある。

日産自動車の新しいロゴマークを初めて採用

EVであるためグリルはなく、その代わりにシールドと呼ばれるパネルが備わる

EVであるためグリルはなく、その代わりにシールドと呼ばれるパネルが備わる

 フロントマスクには、かつては強力なエンジン出力を想起させたラジエーターグリルに代わり、運転支援のためのセンサー類を守る「シールド」をイメージした透明のカバーを配置。その中央に掲げられるのは、20年ぶりに刷新された日産自動車の新しいブランドロゴ。新しいデザイン言語とロゴの採用は、日産がこのアリアから新しい道を進んでいくという決意表明ともいえるだろう。

新開発のEVプラットフォームは今後の発展性にも期待

EVプラットフォームを新規で開発(写真はアリア コンセプトのもの)

EVプラットフォームを新規で開発(写真はアリア コンセプトのもの)

 そしてもうひとつ注目すべきなのが、アリアが搭載する技術だ。

 まずはプラットフォーム。新たに開発されたEV専用プラットフォームは、ホイールベースのなかにバッテリーを搭載し、前後アクセルにモーターを配置するというもの。このEVプラットフォームは違うボディサイズのクルマにも対応する設計となっており、今後の展開にも期待が膨らむ。アリアには2種類のバッテリー容量がラインアップされるが、65kWh版であれば床面だけで、90 kWh版でも後席座面下にバッテリーが収まるため空間効率は非常に優れている。

新型プラットフォームを活かしたフラットフロアが特徴

まるでリビングのようなフラットで広々とした足元空間が特徴

まるでリビングのようなフラットで広々とした足元空間が特徴

 メカニズム部分のコンパクトさも特徴で、ヒートポンプ式エアコンなどのユニットを新設計しダッシュボードは非常に小型に作られている。これと薄型バッテリーの採用により、フラットで広々としたフロアを実現した。とくに前席はダッシュボードの下がほとんど開けた空間で、センタートンネルがないことも相まって斬新な雰囲気が漂っている。このヒートポンプシステムなどを活用してバッテリーの温度を一定に保つ仕組みも投入。バッテリーの長寿命化に貢献している。バッテリー温度の上昇は急速充電の利用でも起きる問題のため、使いやすさという側面で大いに歓迎されるだろう。

7個のカメラと5個のレーダー、12個のソナーを搭載。運転支援技術も高精度に

高速道路における同一車線での手放し運転を可能にする「プロパイロット2.0」など先進装備も充実(写真:日産)

高速道路における同一車線での手放し運転を可能にする「プロパイロット2.0」など先進装備も充実(写真:日産)

 日産は先進技術についても「ニッサン インテリジェント モビリティ」というコンセプトを掲げ注力してきたが、アリアはその集大成ともいうべき盛り沢山の内容となっている。

 高速道路における同一車線内での手放し運転を実現させた先進運転支援システム「プロパイロット2.0」はさらに進化し、新たに準天頂衛星システムなどの高精度位置情報を受信することで自車位置精度をさらに高精度に把握。駐車支援システムである「プロパイロット パーキング」には、車外からの操作で駐車できる「プロパイロット リモートパーキング」機能も追加された。

音声入力の採用やAmazon Alexaとの連携もトピック

音声入力を使ったインフォテインメントやクルマと家を繋ぐコネクティビティを採用

音声入力を使ったインフォテインメントやクルマと家を繋ぐコネクティビティを採用

 インフォテインメント技術も音声認識を使った操作に対応。「ハローニッサン」と呼びかけることで、空調やナビゲーションなどの操作が行える。さらにAmazon Alexaも搭載されており、この2つが連携することで自宅とクルマとをシームレスにつなぐことが可能になった。例えばスマホで目的地を検索して設定すると航続可能距離を考慮したルートセッティングを行い、充電が必要な場合には適切な充電ステーションも提案するといった具合だ。一方でクルマでの帰宅途中に、運転しながら自宅のエアコンや照明をコントロールすることもできてしまう。 これらの操作や表示は大型液晶を2枚使ったインパネとヘッドアップディスプレイを使って行うが、その操作もスマホライクで、クルマに詳しくない人でも直感的に操作できるよう作られている。左側に表示している画面を、スワイプ操作で右側の画面に移動するかのように切り替えられるのもユニーク。

  • 2枚の液晶モニターは段違いとなっていて、シートから身体を離さずに操作できる

    2枚の液晶モニターは段違いとなっていて、シートから身体を離さずに操作できる

  • 加飾パネルに一体化したスイッチ類によりシンプルで先進的なイメージを創出

    加飾パネルに一体化したスイッチ類によりシンプルで先進的なイメージを創出

  • 上質でクリーンなテイストでまとめられたインテリア

    上質でクリーンなテイストでまとめられたインテリア

  • ルーフラインを後方まで伸ばしたことで後席は頭上にも余裕がある

    ルーフラインを後方まで伸ばしたことで後席は頭上にも余裕がある

  • ラゲッジ容量は408L(AWD)から466L(2WD)とCセグメントSUVとして十分の容量が確保されている

    ラゲッジ容量は408L(AWD)から466L(2WD)とCセグメントSUVとして十分の容量が確保されている

日産が築きあげてきた走りの楽しさを電気自動車でも受け継ぐ

新しい4輪制御技術「e-4ORCE」を搭載した試作車

新しい4輪制御技術「e-4ORCE」を搭載した試作車

 性能面では、「e-4ORCE」と呼ばれる4輪制御技術が新しい。これは、前後のモーターや4輪それぞれのブレーキを協調制御すことで、タイヤの能力を引き出したり、車体の姿勢変化を抑えて快適性を高めたりするもの。以前テストコースで「e-4ORCE」を搭載するテスト車両を試乗する機会があったが、その旋回性能は非常に高く、旋回スピードの速さに加えてステアリング操作に対する正確性にも光るものを感じられた。さらに加減速時に頭が揺すられにくいといった快適性面でのメリットもあり、市販車のアリアにも大いに期待できるだろう。

 アリアはまさに日産の技術の集大成であり、エンジン車を含めて、今後登場してくるニューモデルの旗印という意味合いも与えられている。

アリアの日本発売は2021年中頃を予定

会見を行った社長兼最高経営責任者である内田 誠氏(写真:日産)

会見を行った社長兼最高経営責任者である内田 誠氏(写真:日産)

 インターネットを通じて行われたアリアの発表会では、社長兼最高経営責任者である内田 誠氏が登壇し、次のように語った。
 「アリアは、クロスオーバーの快適さと電気自動車の運転する楽しさを合わせ持つ自信作です。クロスオーバー市場の先駆者である日産が自信作を投入することで、EV市場をもっともっと広げたいと思っています。日産が得意とする走り、想像を超えるワクワクする運転体験を提供します。加速性能はフェアレディZに匹敵します。私も運転しましたが、驚きました。その一方で安定性があり、静かでした。アリアは日産の新たな扉を開くモデルです。世界初の量産電気自動車であるリーフの発売によって電気自動車のビッグデータを活用したノウハウが蓄積されました。そして、お客様の貴重な声をいただきました。この声を開発に活かし、新しいEVプラットフォームを開発しました。アリアを皮切りに、この新しいEVプラットフォームが無限の可能性を生み出していきます。日産は今後年間100万台以上の電動車を販売していきます。日産は自動車を通じて社会に貢献していきたい。気候変動のリスクが高まっているが、電気自動車は災害時には動く蓄電池になります。クルマに乗っているときも乗っていないときも社会につながっている社会のパートナーにしていきたい。よりクリーンで安全で人に寄り添うものにしていきたいと考えています」

 新しいデザイン、新しいプラットフォーム、新しいインターフェースとコネクティビティ。すべてが新しく、また魅力的なクロスオーバーEVアリア。発売は2021年中頃を予定とまだ先の話だが、新ロゴマークとともに発表されたこのニューモデルが、1年間ユーザーを待たせるだけの自信作であることは伝わってきた。

アリア e-4ORCE 90kWhバッテリー搭載車(電気的無段変速)データ

■全長×全幅×全高:4595×1850×1655mm
■ホイールベース:2775mm
■車両重量:2200kg
■バッテリー総電力量:90kWh
■航続可能距離(WLTCモード):580km
■モーター最高出力:242ps
■モーター最大トルク:30.6kgm
■サスペンション前/後:ストラット/マルチリンク
■タイヤ前後:235/55R19、255/45R20

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グーネットマガジン編集部

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