車の歴史
更新日:2021.03.16 / 掲載日:2021.03.14
HONDA 初代シビック 1200RSを大解説! パワートレーン

フルタップ車高調に変更というとローダウンを思い浮かべる方が多いと思うが、この車両の場合は、純正足回りのヘタりにより落ちてしまった車高を戻すのが目的のひとつとなっているそうだ。
四輪独立懸架を採用した“志”の高い足
フルタップ式車高調の装着されたフロントの足回り。フロントブレーキは下級グレードはドラム式で、上級グレードはディスク。この車両のパッドはデッドストックの新品に交換されている。
ストラット式となるフロントのサスペンションアーム類もしっかりメンテ済み。ガタのあったボールジョイントは中古の良品に交換され、ブッシュ類は社外のウレタンブッシュに交換されている。
ステアリングギヤボックスはラックアンドピニオンを採用する。それに繋がるタイロッドのボールジョイントブーツも純正部品が出ないため、汎用品を流用して整備を行っているとのことだ。
リヤのストラットもフロント同様にフルタップ車高調に変更されている。ブレーキはリーディングトレーリング式のドラムブレーキとなる。こちらはRS以外のグレードとも共通の装備となる。
リヤサスペンションもストラットで独立懸架となる初代シビック。ロアアームは逆Aアームといえる特徴的な形状のものを採用。リヤもフロント同様に各ブッシュは社外のウレタンに交換されている。
アップライト(ナックル部)への各アーム類やストラットの装着方法はかなり凝った構成となっている。余談だがストラットを外すにはサイドブレーキワイヤーを取り外す必要があるという。
RSのキャブレターはSV式が2基装着されるツインキャブ。アイドリング不良が発生したことがあり、原因はスローカットソレノイド。ちなみにそれは2基のキャブのうち、片方にのみ装備されているそうだ。
エンジンとエンジンルーム内の左側パネルの間にあるのが、現在でもしっかり可動中の純正クーラーのコンプレッサー。タイミングベルトカバーの隣にあるため、タイベル交換時の整備性に支障あり。
マフラーは純正のまま。錆でサイレンサーとパイプの接続部が分離してしまったことがあり、溶接で修理されている。またマウントゴムも切れる寸前だったが純正部品がなく、汎用品で代用している。
エンジン右側(運転席側)に付くミッション。クラッチが滑り出した際に、クラッチ板交換を行っている。同時にクランクシールなどもリフレッシュされたようで、きれいな状態を保っている。
車両の左側に位置するクランクプーリー部に冷却水が漏れ出してきたタイミングで、ウォーターポンプやタイミングベルトなどを一気にメンテナンスしたそう。部品は欠品が多くあり汎用品などでなんとか対応。

型式EB1
エンジン形式水冷直列4気筒横置OHC
ボア×ストローク70.0×76.0
総排気量1169cc
圧縮比8.6:1
燃料供給装置CV型×2
点火装置バッテリー点火
最高出力76ps/6,000rpm
最大トルク10.3kg-m/4,000rpm
細かな部品探しも大変
「足回り以外ですと、クラッチディスクの交換や、ラジエーターやエンジン本体側からの冷却水滲みや漏れの修理、ホーンやウインドウウォッシャー液が出ないなどの電装系の修理、オイル下がりとは別症状となるエンジンのアイドリング不良の修理などを行っています。何をするにしても純正部品の供給がほとんどないので、部品探しに時間が掛かりましたね」。
そんな部品収集、例えばタイミングベルトの交換時には、オーナーさん自らが社外品でタイミングベルトとウォーターポンプ、ガスケットセットを用意しているほか、カムシールは適合するものを探し出し、クランクシールも実測して汎用部品を手配。さらにタペットカバーのシーリングワッシャーは軽自動車のアクティやビートに搭載されるE07用の純正部品を流用……といった感じで、ひとつひとつ合う部品を探さないとならなかったそうだ。
このように現在では一般的なメンテナンスを行うことすらハードルが非常に高くなってしまった初代シビックだが、広納さんが整備を続けることで、オーナーの清水さんは当分シビックの走りを楽しめるはずだ。