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更新日:2021.06.02 / 掲載日:2021.05.01
新型ヴェゼルのすべて
ついに正式デビューとなった、新型ヴェゼル。クローズドながら、4WDの性能を確かめる機会も設けられた。今回分かった実力のすべてを、月刊自家用車ライター陣がお伝えする。クルマとしての出来栄えを、ジャッジメント!
価格含めて遂に正式発表!
HONDA 新型ヴェゼル e:HEV プレイ
■主要諸元(e:HEV プレイ) ●全長×全幅×全高(mm):4330×1790×1590 ●ホイールベース(mm):2610 ●車両重量(kg):1400 ●パワーユニット:1496cc直4DOHC(106PS/13.0kg・m)+モーター(96kW/253N・m) ●トランスミッション:2モーター内蔵変速比固定式(電気式無段変速機) ●駆動方式:FF ●WLTCモード燃料消費率(総合モード):24.8km/L ●ブレーキ:ベンチレーテッドディスク(F)ディスク(R) ●サスペンション:マクファーソン式(F)車軸式(R) ●タイヤ:225/50R18
「月刊自家用車」ライター・川島&まるもが新型ヴェゼルの実力を徹底解説!!
川島茂夫月刊自家用車メインライターのベテランジャーナリスト。ユーザーニーズと市場動向を背景とする様々な視点からの多角的な分析に定評がある。
まるも亜希子月刊自家用車でもおなじみのカーライフ・ジャーナリスト。子育て中のママでもあり、家族のくらしに視点を置いたレポートが共感を呼んでいる。
新型ヴェゼルの見所
SUVのある暮らしの「わくわく」 を大切にしたモデルだ【川島】
気軽な街乗りにも長駆レジャーにも使いやすく、オンロードもラフロードも無難にこなす。実用性を重視しながらも道具然とした無味に陥らず、一歩踏み出す好奇心を刺激する。新型ゆえの期待値込みが前提だが、実車やスペックを見て得た正直な感想である。先代よりも生活や趣味/レジャーに寄り添ったモデル、あるいは市場のトレンドよりもSUVのある暮らしの「わくわく」を大切にした印象を受けた。適応用途は違っているが、ステップワゴンやフィットが提示した家族や友人と楽しむモビリティをコンパクトSUVに展開したと見るべきだろう。 主構造部のハードウェアではハイブリッドがパラレル式のi-DCDからシリーズ式ベースで高速巡航域でのエンジン直動機構を備えたe:HEVに代わったのが一番の注目点。電動の特徴をフルに活かせるe:HEVの長所はすでにフィットが証明しているが、ヴェゼルへの最適化がどのようになっているかが興味深い点だ。 また、シャシー関連ではAHA(アジャイルハンドリングアシスト)が全車に標準採用されたことにも注目。AHAの単独効果ではないが、ホンダの次世代の走りでは鍵となる技術のひとつ。フィットにも採用されているが、実際の走りはより洗練されたものになっていることだろう。
初代の魅力を何ひとつ損なわず全方位的にレベルアップ【まるも】
コンパクトで運転しやすく、スポーティで若々しいデザイン、広く快適な後席と荷室を持つクロスオーバーSUV。それが初代が支持されてきた理由だとすると、新型はそれを何ひとつ犠牲にすることなく、よりファッショナブルになった内外装と、充実の安全性、2モーターハイブリッド投入による爽快でパワフルな走り。これを新たに手に入れていると感じる。また、コネクテッド機能や4WD性能も高まり、乗る人のライフスタイルに合わせて、豊かなカーライフを広げてくれる1台ではないだろうか。 とくにトップグレードのプレイは、SUVを選ぶ人たちが必ずしもクルマに詳しいマニアばかりではないことから、外観やインテリアの上質感、遊び心といったファッションアイテムのような選び方にもマッチするキャラクター。それでいて、顔に直接風が当たらないような工夫のエアコンや、足の動作で開閉する予約ロック付きのバックゲート、静電タッチ式のLEDルームライトなど、ワンランク上の快適性がしっかり手に入る。そうした「おもてなし機能」とも言えるホスピタリティ的な部分は、間違いなく現時点でコンパクトSUVクラスのトップレベル。ひと昔前に音楽を「ジャケット買い」するなんて言ったが、見た目で買ってもしっかりいいクルマなのが新型ヴェゼルだ。
4WD体験の印象
アウトドアレジャー程度の悪路なら申し分のない性能【川島】
新型ヴェゼルのFF車(e:HEV X)の車重は1350kg。これは、フィットのFF車(e:HEV ベーシック)より170kg重く、インサイト(LX)より20kg重い。電動機の最高出力はインサイト同等で96kW、最大トルクはフィット同等で253N・m。減速比は電動機駆動もエンジン直動も共通。最終減速比とタイヤ径の差異を含めた総合減速比はフィットとほぼ等しく、先代ヴェゼルよりも約8%低い。パワースペックを比較してみてもフィットとインサイトの折衷案的な値だ。プレミアム志向の強いインサイトに対してヴェゼルは実用性や多用途性も重視したモデル。スペックからしても街乗りから高速長距離用途まで柔軟に対応できる動力性能とドライバビリティを備えているのは間違いない。 SUVとして気になるポイントの一つとして4WDの性能があるが、片輪氷路相当やモーグルの特設路で試した踏破性は良好。ブレーキLSDやトラコンの介入は遅めであり、相応のホイールスピンを伴うため泥濘路や深雪などハードな状況にはちょっと厳しいかもしれないが、190mm(Z)の最低地上高もあり、和気藹々のアウトドアレジャーくらいの悪路走行には申し分ない踏破性能を持っている。また、構内での段差乗り越え時の足回りの動きもしなやかさを感じさせるものだっただけに、実際の公道での試乗に大いに期待したいところだ。
後輪にダイレクトにトルクを伝え、片側空転状態からも難なく脱出【まるも】
新型ヴェゼルのメインであるe:HEVは、1.5LのアトキンソンサイクルDOHC i-VTECエンジンと、発電用と駆動用の2モーター、エンジン直結クラッチを搭載。エンジンはインテーク形状の最適化により高出力化を実現し、最高出力106PS、最大トルクは13.0kg・mに。高精度バルブコントロール技術によって走りと燃費を両立し、WLTCモード燃費は最高25.0km/Lを達成している。 そしてモーターだけでも最高出力131PS、最大トルク253N・mと先代より大幅にアップし、モーター走行をメインとしたなめらかな発進と、高い静粛性が魅力。ただ、ホンダのハイブリッドらしく、車速と連動したエンジン音のチューニングや、走行モード選択もできるため、ただ静かなだけでなく走る楽しさも感じられるハイブリッドとなっている。 また1グレードのみとなった1.5Lガソリンモデルは、軽快感と素直な扱いやすさを目指して開発された。ブレーキ操作ステップダウンシフトなども採用されているため、コーナリングも楽しめそうだ。 今回、モーグル風の傾きと片側1輪・2輪の空転からの脱出を4WDで体験したが、後輪に大トルクをダイレクトに伝えられることで、まったく苦労なく脱出できて驚いた。雪道を走るのが楽しみになったくらいだった。
パワートレーン解説
4WDはプロペラシャフトで直結した“ストロングAWDシステム”を採用
プレイを除いて4WDをラインナップ。今回試したのは疑似モーグルとローラーによる片側空転。必要十分な性能をみせてくれた。なおタイヤの状態はメーターに表示が可能。
「SUV用」に最適化、パワーアップしたe:HEV
ハイブリッドシステムはe:HEVに進化。フィットと完全に同じではなく、「SUV」用にチューン。エンジンは高出力化、ギヤレシオをローレシオ化。IPUはセル数を増やした。
●1.5L ガソリン車
●1.5L ガソリン車
ガソリン車もインマニやレゾネーターを最適化。フィットにも採用のCVTは、新型ヴェゼル用に最適化。伝達効率も向上させた。
超高張力鋼板の利用率を先代よりも拡大。構造や取り付け部の強化で剛性を向上。振動や騒音の低減も、基礎ボディのレベルから注力。
IPUとPCUを刷新、荷室下にあったPCUはエンジンルームに移動。空いた所により多くのバッテリーセルを配置し、より大きなモータートルクを実現。
走行モードスイッチはシフトノブの手前に用意。e:HEVには減速セレクターを標準装備。減速度合いは4段階で調節可能。
ヒルディセントをホンダ国内初採用
急勾配も安心のヒルディセントコントロールを採用。
アジャイルハンドリングアシストは全車に標準。4WDでも旋回性を高めた。
パッケージングの評価
角ばったデザインは力強さの演出でもあるが、室内の広さにも寄与【川島】
全高が最大25mm低下し、全幅も一部グレード比で20mm拡大しているが、車体外寸はほぼ同じ。しかし見た目の印象は大きく変化。先代はクーペ的な、スポーティハッチバック車のフォルムをSUVの全高に合わせたスタイル。曲面を用いて前後の絞り込みも強めだ。 一方、新型は先代と比べると角張った印象を受ける。ルーフラインもリヤウインドウ周り、フロントマスクも平面を繋げて面取りしたような感じだ。もちろん、現代の乗用車らしく何処も微妙に変化する三次曲面で構成しているのだが、最近のトレンドからすれば「箱」っぽい。ひとつは鎧的な造形によるSUVらしいタフネスの演出だが、絞り込みを減らしてキャビンスペースの拡大を図っている。言い方を換えるなら後席の居心地と荷物の積載性への配慮が利いている。見晴らしと開放感を高めるリヤサイドウインドウが雄弁だが、乗員の受ける圧迫感を減らすルーフやリヤピラー形状や嵩のある荷物を積みやすいリヤウインドウなど実用的なスタイルだ。 個性的なフロントマスクは好き嫌いが分かれそうだが、実車を見るとスリット状の開口部は車体色によって目立ち具合が異なり、フロントマスクの印象も違ってくる。SUVやコンパクトの定番色と違った車体色がとても良く似合うのもこの個性ゆえと言えよう。
室内の圧迫感はなく、座面の高さも乗り降りしやすく設計されている【まるも】
賛否両論あったという、ボディ同色グリルを採用したフロントマスク。まずこれに関しては、新しい提案とともに、フレンドリーな雰囲気を残しつつスタイリッシュに進化したという点で、個人的にはとても好印象だった。これ見よがしのエアロパーツを装着せず、空力性能をさりげなくデザインに同化させていることで、とてもスマート。そして伸びやかな弧を描くクーペのようなルーフラインと、ファストバックのように低く傾斜したリヤガラスで、より流麗かつスポーティな印象も高まっていると感じる。 と同時に、先代よりも後席の居住性やラゲッジスペースは狭くなっているんじゃないか、という疑問が湧いてきた。が、後席に座ってみると、足元も頭上も余裕のあるスペースで、まったく圧迫感はない。サイドシルの張り出しを抑えたというだけあって、足をサッと地面から引き上げやすく、座面の高さも適切で、乗り降りもスムーズにできた。 また、かなりこだわりを感じたのがボディカラー。ラインナップ色は多くはないが、ファッションのトレンドを意識した「サンドカーキ・パール」や、鮮やかさと陰影感を両立する「プレミアムクリスタルレッド・メタリック」、プレイのみの2トーンなど、どれも洗練されたカラーばかりだ。
エクステリア&パッケージング解説
先代同等のサイズながら後席は拡大
・新型の全長×全幅×全高:4330×1790×1580~1590mm・先代の全長×全幅×全高4330~4340×1770~1790×1605mm
e:HEV プレイ
最上級のプレイは2トーンカラーとなり、トリコロールの「ホンダカラー」を取り入れるなど、遊び心のあるデザインだ。
e:HEV Z
アルミホイールはプレイと同じ、ブラック+切削の18インチ。ボディカラーはモノトーンとなり、よりすっきりとしたデザインに。
e:HEV X
e:HEVのエントリー、X。上位に標準のLEDシーケンシャルターンランプではなくなり、アルミホイールは16インチのものに。
空力性能も考え設計
ホンダの研究施設、HRD Sakuraの風洞でクラストップの空力性能を追求。エアロパーツ追加ではなく、デザインと融合させた。
見上げ角を考え、爽快感にこだわったパノラマルーフはプレイに標準装備。先代同様、リヤドアハンドルは目立たないよう配置。
外観からすると低く、狭く見えるかもしれないが実際に乗り込んでみると室内は広々。とくに後席周りは先代よりも拡大しているという。
ボディカラーバリエーション
※★1は4万9500円、2は2万7500円、3は6万500円、4は3万8500円高。e:HEV プレイは2トーンのみの設定。
プレイ
プレイ以外
ユーティリティ評価
コスパの検討が必須だがホンダコネクトでは車内Wi-Fiに注目【川島】
大きな填め込み部品を組み合わせたドアトリムなど内装の仕立てはプレミアムコンパクト相応。グレージュの2トーン専用内装のプレイは高級感もランクアップ。G/XからZへのアップグレードはシートの仕立てと素材感がメインで、遠目には似たような印象。ところがプレイはウインドウ越しにも別仕立てなのが分かる。 室内有効長は同様全長では最大級。後席レッグスペースに余裕があるので前席下センタータンクの張り出しも気にならず、大柄な男性でも寛いだ着座姿勢が取りやすい。また、雨天等でも泥跳ねのズボンの裾汚れを軽減するサイドシルカバー式のドア設計により向上したドア設計も好感。 ホンダセンシングはフィットと近い機能。もちろん、全車標準装着で、ZとプレイにはBSMも装備。グレード展開も含めてコンパクトSUVクラスではトップクラスの安全&運転支援機能だ。 ホンダコネクトでは車内Wi-Fiが注目。事故時にエアバッグ展開と連動して発信するSOSコールやスマホによる施解錠やエンジン始動が可能になるデジタルキーなどの安心便利機能が中心だが、実用面の大きな変化はなし。その点、Wi-Fiは実践力が高い。ただ、従量課金になるのでポケットWi-Fiやスマホのテザリングサービスとのコスパ比較が必須だろう。
実際に載せるものを想定した荷室や実用的な収納類が揃っている【まるも】
インテリアでもやはり、まず目を引くのはプレイに採用されている、ライトグレージュとブラックのハイコントラストな2トーンコーディネート。座面についているタグも、プレイとX/Zでは違っていて面白い。センターコンソールのバーミリオンの挿し色や、シートのアクセントテープなど、あちこちに遊び心が散りばめられている。 そして空間としても、ドライバーや同乗者の所作を美しく引き立てるように設計されており、安心感と包まれるようなリラックス感がとてもいい。エアコンのダイヤルは、回すとカチッとした操作感があったり、通常の吹き出し口のほかに、風が拡散して乗員を包み込む「そよ風アウトレット」があったりと、どの席でも快適だ。 収納は、ホイッと小物が置けるトレイや、荷物を隠せるボックスが揃っていて、必要十分な印象。USBポートが前席だけでなく後席にもあるので、便利に使えそうだ。 ラゲッジは、数値より実際に積む荷物を想定して開発したとのことで、ゴルフバッグや特大スーツケース、自転車などが積みやすい形状になっている。シートアレンジも6:4分割で座面のチップアップとダイブダウンができ、多彩な使いやすさを実現。これなら日常の買い物から、アウトドアなどのレジャーまで大活躍しそうだ。
ユーティリティ&装備・機能解説
インテリアも質感高し! 外観より親しみやすいデザイン
e:HEV プレイ
外装同様、内装も水平方向に軸をとって「流れ」を演出。身体に近い部分に柔らかな素材を用いるなどして、親しみも感じさせるインテリアだ。
e:HEVは7インチの液晶と速度計が並ぶメーター。ガソリン車はシンプルな2眼タイプ。ホンダコネクトディスプレーはプレイに標準装備。
単純な容量は先代より若干減少したが、よりスクエアにするなどして使い勝手に配慮したラゲッジルーム。ハイブリッド車でも大きめの床下収納を用意。
座面チップアップは健在。ハンズフリーアクセスパワーテールゲート(予約クローズ機能付き)はe:HEV Z以上に標準装備。
充電用USBポートを多数用意
e:HEV Z以上は後席にも2個、急速充電対応USBを用意した上、前席にワイヤレス充電器も用意(グレード別)。
ホンダセンシングは先代にない新機能も
最新広角カメラと高速処理チップの採用により、従来よりも各機能が向上。また後方誤発進抑制、近距離衝突軽減ブレーキ、オートハイビームの各機能を追加している。
コネクト機能を強化。地図自動更新も!
スマホがキーになる、ホンダデジタルキー機能を用意。エアコン操作、「クルマを探す」、ロックのし忘れ通知機能なども。
【結論】新型ヴェゼルの評価
SUVらしい性能や実用性などを高水準でバランスさせたモデル【川島】
遊びに出掛けて盛り上がる要素が多いプレイは、新型ヴェゼルの楽しみ方をよく表している。ただ、悪路走行を前提にSUVを選ぶならFF限定なのが弱点である。SUVに期待される性能や実用性を、高水準で全方位的にまとめたのが新型ヴェゼルの特徴。ならば4WDは欠かせない条件だ。コスパ優先ならガソリン車を選ぶのも手だが、動力性能のゆとりや燃費ならe:HEV車。実用本位ならXでもいいが、価格と装備の差を考慮するならZが無難。
【川島のおすすめ】e:HEV Z・4WD
・車両本体価格:311万8500円※写真はFF
先代同様のサイズながらさらに魅力ある「スペシャリティ」に【まるも】
見ただけで「乗ってみたい」と思わせるデザインやカラーを、先代とほぼ同じボディサイズで実現したことがまず、素晴らしい。室内の快適装備や先進の運転支援技術も抜かりなく、コンパクトSUVとして間違いなく一歩先をいくモデルになるはず。イチオシグレードはやはり、デザイナーのこだわりや遊び心を余すところなく味わえるプレイだが、4WDの設定がないため、雪道などを走りたい人はe:HEV Zでパワフルな4WDを堪能して欲しい。
【まるものおすすめ】e:HEV プレイ・FF
・車両本体価格:329万8900円
■主要諸元(e:HEV Z・4WD) ●全長×全幅×全高(mm):4330×1790×1590 ●ホイールベース(mm):2610 ●車両重量(kg):1450 ●パワーユニット:1496cc直4DOHC(106PS/13.0kg・m)+モーター(96kW/253N・m) ●トランスミッション:2モーター内蔵変速比固定式(電気式無段変速機) ●駆動方式:4WD ●WLTCモード燃料消費率( 総合モード):22.0km/L ●ブレーキ:ベンチレーテッドディスク(F)ディスク(R) ●サスペンション:マクファーソン式(F)ド・ディオン式(R) ●タイヤ:225/50R18
●文:川島茂夫/まるも亜希子 ●写真:奥隅圭之/澤田和久