コーティング・クリーニング
更新日:2021.09.03 / 掲載日:2021.08.31
コーティング剤の必要性は?全6種の得られる効果・メリットを解説

「コーティング剤って使う必要あるの?」「ワックスと何が違うの?」と、実際にどのような効果が期待できるのかわからないという方もいることでしょう。
コーティング剤の必要性は、個々の価値観によって大きく変動します。コーティング剤を効果別に大きく分けると6種類あるため、それぞれの特徴などを知らないと、必要かどうかを判断することは難しいでしょう。
当記事では、使用するメリット・デメリットを通して「コーティング剤とは何か」を解説します。種類別の効果も比較するので、ぜひ参考にしてください。
コーティング剤とは?ワックスとは何が違う?

コーティング剤を一言でまとめると、「汚れや傷からボディを守り、艶を持続させるための車用メンテナンス用品」です。しかし、ワックスにも類似する点があり、違いがあいまいでわかりにくいと感じる方は少なくないでしょう。
コーティング剤とワックスの違いを、「固体」「液体」で区分するケースもありますが、基本的には「蝋(ロウ)」の配合量・有無で判断できます。
一般社団法人日本自動車連盟(JAF)は、「ワックスは本来、ヤシから採れる天然カルナバろう100%のものだけ」と定義付けています。つまり、蝋(ロウ)100%ではない商品は、ワックスではなくコーティング剤ということです。
ワックス | コーティング剤 | |
---|---|---|
定義 | 蝋(ロウ)100% | 左記以外(シリコン系などのポリマー成分が配合されたもの) |
効果 | 光沢・撥水 | 光沢・撥水・防汚・傷埋め・傷消し・耐傷など |
歴史 | 1957年発売の「ゴールデンネオワックス」がはじまり | 1970年代の、液状のワックス類を使ったポリマー加工がはじまり |
欠点 | ホコリを吸着しやすい | 費用がかかる |
コーティング剤は、ワックスと比べて耐久性もあり、汚れや傷を防ぐこともできるため、選び方次第ではあらゆるメリットを得られるのが魅力です。
コーティング剤を使う理由・メリット5つ

コーティング剤は必須アイテムではなく、プラスαという立ち位置のため、必要かどうかは人によって意見が異なります。結論としては、「コーティング剤を使わなくても良いが、使ったほうが良い」といったところでしょうか。
ここからは、コーティング剤をおすすめする理由を5つ解説していきます。
年間52時間の短縮!清掃の手間が減る
花粉や煤煙、鳥の糞や虫の死骸の付着など、車は汚れやすいものです。
しかし、コーティング剤を使った車は汚れが付きにくいため、通常の洗車よりも短い時間で終えることができます。簡単な汚れであれば水洗いでも十分に落ちるため、洗車の手間を減らしたい方におすすめです。
例えば、洗車時間が通常約3時間かかるとすると、コーティング剤を使った車は約1時間で済みます。2週間に1度の頻度で洗車する人なら年間約52時間、月に1度の頻度なら年間約24時間の短縮が可能です。
細かい傷が付きにくくなる
車のボディ塗装はデリケートなので、些細なことでも目に見えない細かい傷(スクラッチ傷)が付いてしまいます。
・走行中の飛び石や砂
・硬いスポンジによる洗車
・ボディを滑り落ちる積雪
・車から出たブレーキダストなど
注意深く車に乗っていても防げないことが多いため、塗装間もない購入時にコーティング剤を使っておけば傷を予防できます。細かい傷でも度重なるとボディの艶を奪うため、新車状態をキープしたいときにはおすすめです。
ウロコのような雨染みを防げる
雨水によるシミは、車の塗装色に関係なく悩みの種となる問題の一つです。ホワイト系の車だと薄汚れたような外観になり、ブラック系の車に付着するとウロコのような白いシミが目立ちます。
雨染みには小さなホコリや細かい油などが混ざり、洗車だけで落とせるような簡単な汚れではないため、コーティング剤を使って予防しておくのがおすすめです。
ただし、コーティング剤を使っていても完璧に防げるわけではありません。雨水によるシミには、大きく分けて「ウォータースポット」「イオンデポジット」の2つがあります。ボディにシミができあがるまでの仕組みや対策が異なるので、それぞれの違いを確認しておきましょう。
ウォータースポット | イオンデポジット | |
---|---|---|
仕組み | 水滴がレンズとなって太陽光を集め、塗装が焼けこげる | 水滴が太陽光によって蒸発し、ミネラル成分がボディに残る |
予防策 | 水滴をボディに残さない、小まめな洗車と拭き上げの徹底を心がける | |
解決策 | 板金塗装専門店などによる研磨 | 専用クリーナーで落とす |
紫外線による色褪せを防げる
コーティング剤でカバーしていない車は、紫外線によるダメージをダイレクトに受けます。艶が失われるだけではなく、色あせやひび割れ(クラッキング)、塗装剥がれが起きるため、外観を重視する方は十分な注意が必要です。
紫外線による被害 | 要因・状態 |
---|---|
色あせ | 塗装の分子結合が断裂し、本来の色が出なくなる |
ひび割れ(クラッキング) | 塗装面のうるおいが減り、ひびが入る |
塗装剥がれ | 塗装面の第一層にあるクリア塗装が、紫外線の影響で剥離する |
特に、原色カラー(赤・青・黒など)は紫外線の影響を受けやすく、他の色と比べて艶の低下が目立ちます。
再塗装すると、コーティング剤にかかる費用と比べて2倍近い値段になるため、後々のメンテナンス費用を節約したい方は前もって対策しておくのがおすすめです。
売却時の査定額が上がりやすい
コーティング剤の使用有無に関わらず、使用感のないきれいな車は買い手側が良い印象を抱くため、査定額が上がりやすい傾向にあります。
しかし、コーティング剤を使わずにきれいな状態をキープするとなると、時間もお金もかかりメンテナンスが大変です。
コーティング剤は一度の出費が大きいものですが、手放すときの査定額からトータルで見ると得するケースもあります。なかには、コーティングを十数万円で施工したところ、数年後の査定で20万円ほど高くなった事例もあるそうです。
愛車をきれいな状態で乗り続けるためだけでなく、手放すことを考えてコーティング剤を使っておくと、未施工よりも得られるメリットが大きいでしょう。
コーティング剤を使うデメリット

コーティング剤を使う際は、下処理や仕上がりを考えるとプロに依頼するのがおすすめです。費用はかさみますが、失敗するリスクを考えれば正しい判断だといえるでしょう。
コーティング剤が硬化するまでは、水分が付着しない屋内での保管が必須です。特に、ガラスコーティングは表面硬化だけで約12時間を要します。
また、新車でも引き渡しまでに1~3日かかる業者も珍しくありません。生活に車が欠かせない場合は、代車を手配しているかどうかも事前に確認しておきましょう。
なお、コーティング剤を使っても洗車は必要です。洗う時間が短くなっても洗う頻度は減らないので、従来と変わらず定期的に行ないましょう。
コーティング剤の種類6つ

コーティング剤の種類は、ワックスを含めて6つあります。種類によって効果、性能、持続性、価格などが異なるため、求める仕上がりに合わせて選びましょう。
1:艶出し効果に優れた「油脂系コーティング(ワックス)」
特徴 | カルナバ蝋(ロウ)を使ったワックス |
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価格 | 約2,000~3,000円 |
メリット | 艶を出すのに優れていて、油膜による撥水性能を期待できる |
デメリット | キープ力がなく、熱に弱い。ホコリが付きやすく外観維持が難しい |
持続性 | 2週間~1ヵ月 |
カルナバ蝋(ロウ)を使ったワックスです。価格が安く扱いやすいため、セルフ施工に向いています。ワックスに含まれる油分で光沢を出せますが、太陽光などの熱によって溶け出し、最後にはシミとして残るのが難点です。
2:施工しやすい「樹脂系コーティング(ポリマー)」
特徴 | フッ素やシリコンなどの高分子体化合物を含んだコーティング剤 |
---|---|
価格 | 約6,000円 |
メリット | 一度や二度の雨では落ちないキープ力がある |
デメリット | 耐熱性は低いため、時間とともにコーティング剤が剥がれる |
持続性 | 3ヵ月~1年 |
「液体ワックス」とも呼ばれ、価格も扱いやすさもワックス寄りの位置にいます。ワックスよりもキープ力が高いうえに、施工時間が約2時間と短いのが特徴です。ディーラーやカー用品店でも施工を依頼できます。
3:持続性が良い「ガラス系コーティング」
特徴 | ガラス繊維と有機溶剤を混ぜ込んだコーティング剤 |
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価格 | 約2万~5万円 |
メリット | 自然な艶(光沢)があり、熱や汚れ、傷を防止できる |
デメリット | 紫外線や酸性雨によるダメージを防ぎきれない |
持続性 | 6ヵ月~2年 |
シリコンや油分などの有機溶剤を含んでいるため、有機物質の劣化によってもダメージを受けます。キープ力がやや弱めですが、熱や汚れ、傷に強いため短期間であれば十分なメリットを得られるでしょう。
4:熱や雨に強い「ガラスコーティング」
特徴 | ガラス被膜を作り出すコーティング剤(無機溶剤) |
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価格 | 約5万~10万円 |
メリット | 艶、熱、汚れ、傷に加えて、紫外線や酸性雨にも強い |
デメリット | 施工が難しく、専門店で行なう必要がある |
持続性 | 約3年 |
ガラス系とは異なり、有機物を含まないコーティング剤です。完全無機質のガラス被膜を作り出すため、トータルの耐久性がアップします。
ただし、なかには「ガラスコーティングと記載しているのにガラス系だった」という事例も多々発生しているため、コーティング剤や業者選びには十分な注意が必要です。
5:薬品でも剥がれない「セラミックコーティング」
特徴 | セラミック分子化合物を含むコーティング剤 |
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価格 | 約10万~20万円 |
メリット | 被膜硬度が高い。熱、傷、汚れ、紫外線、酸性雨に加えて薬品にも強い |
デメリット | 施工費が高額で対応業者が少ない。薬品では剥がれない |
持続性 | 約5年 |
コインで塗装面を削っても傷が入りにくいほど、硬化強度・耐久力に優れているコーティング剤です。セラミックコーティング剤は、薬品を使っても剥がせません。駐車環境問わず、紫外線による劣化や酸性雨によるシミ、インクでの落書きからもボディ塗装を守れます。
6:特殊な被膜を形成する「自己修復コーティング」
特徴 | 50度以上の熱で傷を修復できる、セラミックコーティング剤 |
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価格 | 約30万円 |
メリット | 細かい傷(スクラッチ傷)をコーティング剤で修復できる |
デメリット | 施工費が高額で、対応業者が限られている |
持続性 | 約5~7年 |
50度以上の熱を加えると、細かい傷を約80%自動回復します。傷をすべて消せるわけではありませんが、他のコーティング剤と比べてメンテナンス時間の短縮が可能です。
なお、セラミックコーティング剤に限らず、国内メーカーでは自動回復塗料を施した車も登場しています。
トヨタ自動車は「セルフストアリングコート」、日産自動車は「スクラッチシールド」と、メーカーによって呼び名が異なります。気になる方は、ぜひチェックしてみてください。
コーティング剤における撥水・疎水(滑水)・親水の違い

コーティング剤の水弾きは、「撥水・疎水・滑水・親水」と大きく4つのタイプに分かれます。弾き方の違いを知るうえでポイントとなるのが、接触角度の違いです。疎水と滑水の接触角度は同じ範囲なので、まとめてご紹介します。
水が粒状態に転がり弾くのが「撥水性」
特徴 | 球状の水滴がコロコロと転がる弾き方 |
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接触角度 | 90度以上 |
メリット | 水を弾くため、拭き取りがしやすい。汚れが落ちやすい |
デメリット | 水滴がレンズ化しやすい(ウォータースポットになりやすい) |
中間に位置するのが「疎水(滑水)性」
特徴 | 複数の水滴が集まって、膜状にゆっくり流れる弾き方 |
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接触角度 | 40度~90度 |
メリット | イオンデポジットが発生しにくい。膜状に集まり、水切れが良い |
デメリット | 撥水性ほど水を弾かない |
水が膜状になじんで弾くのが「親水性」
特徴 | 水滴にならず、膜状にゆっくりと広がりなじむ |
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接触角度 | 40度以下 |
メリット | 膜状に水が落ちるため、イオンデポジットが発生しにくい |
デメリット | コーティングを施した実感を得にくい。拭き上げに手間がかかる |
【Q&A】コーティング剤に関する疑問に回答!

最後に、コーティング剤に関するよくある疑問に回答します。
Q1:コーティング剤を使う時期はいつがおすすめ?
A:ダメージを受ける前(購入時)に施工するケースが多い傾向にあります。施工技術・環境が整っているのであれば、基本的に季節は問いません。ただし、業者によって見解が分かれるため、失敗リスクの少ないタイミングを相談するのがおすすめです。
Q2:コーティング業者はどのように選べば良い?
A:屋内に整備工場を持つ、コーティング実績の豊富な業者がおすすめです。コーティング剤の種類にもよりますが、コーティング専門店、ディーラー、ガソリンスタンド、カー用品店で受け付けています。希望に合った業者を見つけるには、ホームページや口コミを参考にして選ぶとよいでしょう。
Q3:コーティングの費用はいくらかかるの?
A:コーティング剤の種類、施工面積、新車か中古かによって異なります。ガラスコーティングを軽自動車に施工する場合は、約4万円~6万5,000円と見ておくとよいでしょう。
Q4:コーティング剤はボディ以外にも使えるの?
A:ホイール、ナンバープレート、窓ガラスなどもコーティングが可能です。商品によって対応可否が分かれるので、使用前に確認しましょう。
Q5:コーティング剤を使ったら洗車の仕方を変えたほうが良いの?
A:洗車は必要ですが、軽い汚れは水洗いでも落ちるため、メンテナンスの手間を減らせます。洗剤は、水洗いで落ちない汚れが付着しているときに使ってください。
その他、コーティング剤についての困りごとや悩みなどがあるなら、専門業者への相談がおすすめです。グーネットピットでは、全国各地の整備工場から最寄りの店舗を検索できるので、ぜひご活用ください。
まとめ
コーティング剤の必要性は、人によって意見が割れますが、未施工よりも施工済みのほうがきれいな状態を維持しやすく、メンテナンスの手間も省けます。
今回ご紹介したとおり、コーティング剤には多くの種類があります。「効果をどの程度維持したいのか」「コーティング剤に何を求めているのか」など、自分の希望に合わせて選択しましょう。