車検・点検・メンテナンス
更新日:2021.05.07 / 掲載日:2021.05.07
エアロは車のどの部品?各部位の特徴と車検に通る取り付け方

カー用品店などで「エアロ」という言葉を目にするかもしれませんが、具体的に車のどのパーツを指しているのか疑問に思ったことはないでしょうか。
エアロがどういったものか、わかりやすい例を挙げると、トランクに取り付けられた羽のようなパーツです。これはエアロパーツの一種で、「ウイング」と呼ばれています。
このページでは、エアロが持つ効果と、取り付け場所ごとの名称や取り付け方を解説します。併せて、エアロの車検規定も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
エアロとは?

エアロは車に装着される空力パーツです。例えば、バンパーやトランクに取り付けられるスポイラーなどが該当します。
略して「エアロ」と呼ばれることが多いのですが、正しくは「エアロパーツ」であり、英語にすると「Aero Parts(空気・部品)」となります。
日頃の生活では、それほど空気抵抗を気にすることはないかもしれませんが、車は高速道路で時速100km近いスピードを出す乗り物です。空気をきれいに流すことによって燃費が向上したり、空気の力で押さえつけて車を安定させたりと、空気を味方につけることには想像以上の効果があります。
エアロパーツは、低燃費化に重点を置いている現在の車事情からしても、非常に重要なパーツの一つといえるでしょう。
エアロが流行したのは1980年~1990年代?
1980年~1990年代頃はエアロパーツが流行していましたが、近年はエアロパーツを後付けする車は年々減少傾向にあります。
当時は落ち着いたデザインの車が多く、ノーマル状態では、悪くいえば野暮ったいデザインでした。そのため、社外品のホイールやエアロパーツを取り付けることによって一気にスポーティな雰囲気にできるという、そのギャップに魅力を感じるユーザーが多かったのです。
つまり、当時は空力のためというよりも、ドレスアップがおもな目的でエアロパーツを装着していました。実際、メーカー純正のものを除けば、かえって空気抵抗が増大してしまうエアロパーツも珍しくなかったのです。
しかし、やがてドレスアップブームが去り、時代はエコカーへと移り変わっていきます。
エコカーの多くは、もともと空気抵抗を極限まで減らすデザインとなっています。そのため、下手にエアロパーツを取り付けると、燃費が悪化してしまう恐れがあります。
また、そもそも経済性を重視してエコカーに乗るユーザーが多く、「エアロパーツで不必要なコストをかけたくない」という方が増え、今ではノーマル車が大半となりました。
このほかに、エアロパーツの後付けの減少には以下のような理由もあります。
・標準装備でエアロパーツが装着されている
・バンパーに取り付けられたセンサー類などの問題で装着が難しい車体が増えた
エアロの種類は大きく2タイプ
エアロパーツは本来、空気抵抗を減らすことなどを考えて作られたパーツですが、見た目も大きく変わるのでドレスアップ効果ももたらします。そのため、エアロの種類は大きく2タイプに分かれます。
・レーシング用
こちらは、本来の用途である空力性能に重点を置いて設計されたエアロパーツです。
レーシングカーは、大きく張り出したワイドフェンダーや巨大なGTウイング、複雑なフロントバンパーなど、一般的な乗用車とはまったく異なる造形をしています。このようなレーシング用のエアロパーツは、本来の用途どおり空気を味方につけるために装着されるものです。
空力に重点を置いたエアロパーツは、レーシングカーだけでなく一般的な乗用車向けにも販売されています。装着することで高速域での安定感向上などの効果があるので、高速道路を走ると、特にその効果を感じられるでしょう。その他に、サーキットで走行会に参加するような方にもおすすめです。
・ドレスアップ用
こちらは性能よりも見た目重視のエアロパーツです。レーシング用に比べてさまざまなデザインがあるので、デザイン上の好みを追求したいという方におすすめです。
ただし、なかには取り付けることで燃費が下がったり、空力特性が低下したりするものもあるので、選ぶ際は慎重に吟味しましょう。
エアロパーツの効果は?日常運転でもメリットがある?

すでにエアロパーツの効果について触れましたが、上記以外にも多くのメリットがあります。エアロパーツのおもな4つの効果について、確認していきましょう。
効果1:自分好みのスタイルにカスタムできる
エアロパーツの組み合わせによって、自分好みのスタイルに仕上げられます。
乗用車にエアロパーツを装着しているユーザーの多くは、ドレスアップが目的といっても過言ではないでしょう。エアロパーツを装着すれば、「ダイナミックなルックスを実現したい」「下回りにボリュームを持たせたい」といった願いを叶えられます。
見た目の変化が大きいエアロパーツは、以下のとおりです。
・フロントスポイラー
・リアスポイラー
・サイドステップ
・リアウイング
効果2:高速走行時の空気抵抗を減らせる
エアロパーツを取り付ける大きな目的として、「空気抵抗の削減」があります。近年の乗用車に標準でエアロパーツが取り付けられているのも、空気抵抗を減らして燃費を良くすることを目的としています。
空気抵抗は速度の二乗に比例して増えていくので、低速域ではその効果はあまり感じられないかもしれませんが、時速80kmを過ぎてくるとその効果が現れてきます。ストップ&ゴーの多い街中では効果が低くても、高速道路をよく走る方であれば空気抵抗削減のメリットを享受できるでしょう。
効果3:ダウンフォースにより操縦安定性が上がる
ダウンフォースとは、車を下向きに押し付ける力のことを意味し、車を地面に押さえつけることで操縦安定性を向上させています。
タイヤが押さえつけられて摩擦力が上がるため、グリップ力が増加してコーナリングスピードも向上します。レーシングカーがエアロパーツを装着しているのも、ダウンフォースを発生させたいからです。
効果4:パーツ交換によって車両重量を軽量化できる
最後の効果は、パーツ交換による軽量化です。ウイングのようにエアロパーツを付け足す場合は重量が増加してしまいますが、もともと付いているパーツを軽量なものに交換した場合は、この効果を得られます。
例えば、ボンネットをカーボン製のエアロボンネットに置き換えることなどが考えられるでしょう。
エアロパーツはどこに付ける?

エアロパーツは車の装着部位によっても、その効果や名称が異なります。ここからは、取り付け部位とその効果について解説します。
バンパー下部:「フロントスポイラー」
車が最初に空気に触れる部分である、バンパー下部に取り付けられるエアロパーツは「フロントスポイラー」と呼ばれます。バンパー一体型のスポイラーもあれば、後付けでバンパー下部に取り付ける「リップスポイラー」というタイプもあります。
フロントスポイラーが持つ効果は、フロア下に入り込む空気の圧力を下げてフロントの揚力を減らすことです。ただし、後述するディフューザーと組み合わせてダウンフォースを生み出す場合は、フロア下に空気を多く取り込むタイプのほうが良い場合もあります。
左右のドア下部:「サイドステップ」
左右のドア下部に取り付けられるエアロパーツは、「サイドステップ(サイドスカート)」と呼ばれます。サイドステップはボディのサイドからフロア下に空気が入り込まないようにして、フロア下を整流する役割があります。
これにより、きれいに後方へ空気が流れ、空気抵抗が削減されてダウンフォースも同時に獲得できます。また、ボディ下部と地面の間が近く見えることから、ドレスアップ効果も持つパーツです。
リアバンパー:「リアアンダースポイラー」
リアバンパーに装着されるエアロパーツは「リアアンダースポイラー」と呼ばれ、車体後方で空気が滞留しないようにする効果があります。空気が滞留するとパラシュート効果で空気抵抗が増大してしまうので、燃費を向上させるうえで非常に重要です。
下記のディフューザーと組み合わされることも多く、その場合はさらにダウンフォースが増加します。
車体下後端:「ディフューザー」
リアバンパーの後端部に装着される「ディフューザー」は、斜め上に持ち上がった底面に縦にフィンが並んだ形状をしています。
この造形によって空気をさらに速く抜き出すことが可能となり、負圧を発生させます。つまり、地面に吸い付くような効果を発揮するということです。さらに、フロントスポイラーやサイドステップとの組み合わせが良ければ、より大きな負圧を発生させられます。
フロア下の空気を整流して、負圧を発生させることを「グランドエフェクト」といいますが、このメリットは空気抵抗を発生させずにダウンフォースを得られることです。燃費を犠牲にせずに安定性を得られるため、近年の車は標準でディフューザーを装備しているものも増えています。
トランクリッド上部:「リアウイング」
エアロパーツのなかで最も目立つのが、トランクリッド上部に設置される「リアウイング」です。後述の「リアスポイラー」と得られる効果は同じですが、こちらは板状の形をしていてより大きな効果を発揮します。
リアウイングは飛行機の羽を逆転させたような形状をしているため、飛行機のように揚力を発生させるのではなく、ダウンフォースを発生させるのです。他の部位に比べると効果が大きく、比較的低速域からでも効果を得られるメリットがあります。
ただし、リアウイングで得られるダウンフォースはグランドエフェクトではないので、空気抵抗とトレードオフの関係にあります。むやみにダウンフォースを追求しすぎると燃費が悪化する恐れがあるので、うまくセッティングしなければなりません。
トランクやリアゲート:「リアスポイラー」
トランクやリアゲートに装備されるのが「リアスポイラー」です。ウイングに比べると小さめといえますが、ダウンフォースを発生させる効果があります。
ウイングに比べるとダウンフォースは小さいものの、その分空気抵抗も小さいので、乗用車に向いているパーツです。メーカー純正で装備されているリアスポイラーも多く存在します。
エアロパーツ購入時のポイント

エアロパーツを実際に購入する際は、いくつか注意すべきポイントがあります。購入後に悔いることがないよう、事前に確認しておきましょう。
車体と同じ色に塗装されているか
未塗装のエアロパーツを購入した場合、塗装料金が別途かかります。最初から純正のボディカラーに塗装されたエアロパーツも販売されており、そちらのほうがおすすめです。
ただし、すべての純正カラーに対応しているとは限らないので、事前に確認しておきましょう。
純正メーカーのパーツであるか
社外品のエアロパーツのなかには、デザインを優先した結果、車高を上げないと段差で擦ってしまうものもあります。車高を上げると、せっかくのドレスアップ効果が損なわれることにもなるので、注意が必要です。
純正メーカーのエアロパーツであれば、走行に支障が出ないように設計されているので、取付け後のトラブルが心配な方は純正をおすすめします。
造形の自由度が高い素材か
エアロパーツの多くはFRPという素材でできていますが、なかにはウレタンやABS樹脂の製品もありします。ウレタン製やABS樹脂製のものは高い精度を持ちますが、その代わりに破損した際の修復が困難です。
必ずしもFRPが優れているわけではありませんが、「デザイン重視なので下側を擦ってしまうかも……」などと修復する可能性がある場合は、造形の自由度が高いFRP製のエアロパーツをおすすめします。
エアロパーツの取り付け方法

前提として、エアロパーツは車種専用であっても、無加工でピッタリ合うことはまずありません。どうしても製品誤差があるので、細かな合わせ込み作業が必要です。
この項目では、自分で取り付ける場合と業者に依頼する場合、それぞれ取り付けの流れを紹介します。
自分で取り付ける場合
自分で取り付ける場合、製品誤差を合わせ込むために加工が必要ですので、まずは以下の道具を用意しましょう。
・プラスドライバー
・電動ドリル
・鉄板ビス(ネジ)
・マスキングテープ
・サンドペーパー(#80)
道具が用意できたら、いよいよ加工作業です。車種やパーツによって違いはありますが、ここではフロントスポイラー(リップスポイラー)を例に進めていきます。
1.作業しやすいように車をジャッキアップし、リジットラック(通称:ウマ)を使って固定する
2.バンパーに傷が付かないように、先にマスキングテープで保護する
3.スポイラーを仮で取り付ける。1人での作業は難しいので2人で行なうことを推奨
4.バンパーに当たる面をマーキングし、隙間があるところをサンドペーパーで削って合わせる
5.塗装後、必要な箇所にビスを打ち固定する
6.傷防止のマスキングテープを剥がし、ジャッキを降ろしたら作業完了
業者に依頼する場合
業者に依頼する場合、まずディーラーやカー用品店へ持ち込むことを考えるかもしれませんが、これらの業者は持ち込みのエアロパーツ取り付けに対応していない可能性があります。実際に問い合わせて対応可能であれば問題ありませんが、複数の業者に問い合わせるのは手間でしょう。
そういったときは、ぜひグーネットピットをご利用ください。エリア別で作業内容から対応可能な業者を検索できるので、業者を探す手間がかかりません。
https://www.goo-net.com/pit/
なお、工賃はエアロパーツの部位によって変わります。塗装が必要な場合は塗装料金も別途必要です。相場の目安として、以下の表を参考にしてください。
装着部位 | 取り付け工賃(1個あたり) | 塗装工賃 |
---|---|---|
フロントスポイラー | 8,000円~ | 1万5,000円~ |
サイドステップ | 1万3,000円~ | 3万円~ |
リアアンダースポイラー | 8,000円~ | 1万5,000円~ |
リアスポイラー | 8,000円~ | 1万5,000円~ |
※金額は記事制作時点(2021年3月)のものです。
エアロパーツの後付け時に注意したいこと

エアロパーツには保安基準があり、取り付け方によっては車検に通らないリスクがあります。せっかく取り付けたのに、車検時に取り外さなければならない事態を防ぐためにも、保安基準はしっかりと確認しておきましょう。
エアロパーツの保安基準を一部紹介します。
・最低地上高9cm以上であること
・長さ±3cm、幅±2cm、高さ±4cm、重量は軽自動車・小型自動車は±50kg。普通乗用車は重量±100kgまでであること
・自動車の最前端、最後端および最外側となっていないこと
・翼状のオーバーハング部(ウイング)を有していないこと
・半径が2.5mm未満の角部を有さないものであること
・車体に確実に取り付けられている構造であること
まとめ
今回はエアロパーツについて、その効果や各部位の特徴などを解説しました。近年の車は標準でエアロパーツが装着されていることもあり、後付けするユーザーは減少傾向にありますが、自分好みのスタイルを追求する方には価値のあるカスタムです。
エアロパーツを購入する際は、ボディと同色で純正メーカーのものを選ぶのがおすすめです。こだわりのある方は、社外品を塗装して装着してもよいでしょう。
保安基準に従った安全な範囲で、オリジナルのカスタムを楽しんでください。