車検・点検・メンテナンス
更新日:2018.05.28 / 掲載日:2018.05.28
カーエアコンの仕組みとは?パーツや機能を解説!エアコンメンテ塾

これだけは 知っておきたい カーエアコンの 基本メカニズム
車のエアコンは、夏場には必要不可欠な便利な装置だが、その仕組みは非常に複雑だ。メンテナンス可能なパーツが少ない上、夏場などでエアコンをフル稼働する季節ではトラブルが起こる可能性も高くなる。
そこで今回は、カーエアコンの基本的なパーツ配置や機能について知っておこう。
コンプレッサーやファンの位置を知っておく

家庭用のエアコンでは、部屋の外に置かれた室外機と室内のユニットを置きパイプで繋いで冷房や暖房のための熱交換を行っているが、カーエアコンで室外機に相当するのがエンジンルームにある部品である。
カーエアコンでは、コンプレッサーをエンジンの動力で回して冷媒を圧縮することで車室内のユニットへと循環させている。このコンプレッサーはエンジンに直接取り付けられていて、クランクプーリーからベルトで回される。
冷房や除湿をするためにエアコンのスイッチを入れると、マグネットクラッチによってプーリーの回転がコンプレッサーに伝わって、内部の圧縮機構が作動する。冷媒は耐圧のゴムホースやアルミ配管を経由して、コンデンサーやドライヤーを通過し、室内側へと導かれる。
配管にはエキスパンションバルブを境に低圧側と高圧側があり、低圧側のアルミパイプは太く、高圧側は細くなっている。また、高圧側にはサイトグラスというのぞき窓や圧力スイッチが付いていることが多い。
サイトグラスは、冷媒が圧縮されて液化した状態を見るためのもので、圧力スイッチは低圧過ぎて冷媒がないと判定された時はコンプレッサーを動かさないようにし、逆に作動中に圧力が高くなり過ぎた場合にも作動してコンプレッサーの動きを止める。
なお、ハイブリッドや電気自動車は電動のコンプレッサーを採用しており、モーターが利用されている。
家庭用エアコンでは室外機に相当、カーエアコンのエンジンルームのパーツ配置と機能について



コンデンサーとエバポレーターで熱交換を行う
エアコンの内部には冷媒が封入されていて、温度や圧力によってガスになったり液体に変化し、その際に熱を奪ったり放出したりする働きを行う。
一般的に使われているのがHFC-134aで、沸点は1気圧でマイナス26.07℃。強く圧縮すると相当高温まで液状となり、沸点の数値から分かるように大気圧のような低圧だとマイナス10℃でも気体となっている。コンプレッサーで冷媒を圧縮すると液状でおよそ60~80℃程度に温度が上がった状態になって、クルマの前面にあるコンデンサーで熱を放出する。
コンデンサーは外気で冷やすので、夏場だと35~40℃程度の空気に熱を放出することになる。温度を下げた冷媒は、室内側のエバポレーターの手前にあるエキスパンションバルブで霧状に噴射される。この時に圧力が大きく下がることで吸熱して、エバポレーターが冷やされる。車室内の空気を通すと温度が下がり、膨張して低圧のガスになった冷媒は再びコンプレッサーに吸引されて圧縮される。
なお、エバポレーターが冷媒の膨張で冷やされる時、冷やしっ放しにすると冷えすぎて凝固水が凍ってしまう(フロスト)。空気が通らなくなると冷えなくなるので、凍結しないように調整されている(不具合で凍る場合はある)。そのため、基本的に0℃以下の冷風は出ず、気温が低い場合でも3℃程度である。
カーエアコンの熱交換に使用される主な部品について





POINT!ヒーターは冷却水の余熱を利用

ヒーターはエンジンの冷却水の熱を利用するが、暖房だけでなく温度調整用としても働く。内部のエアミックスダンパーで温度差のある空気を混合して吹き出し口の温度を調整する。
POINT!システム内を冷媒が循環

HFC-134a(CH2FCF3)の冷媒が循環し、液になったりガスになったりする。オイルはコンプレッサーの潤滑や気密性を保つ。
空気の流れを様々にコントロールする室内ユニット

車室内にあるエアコンユニットは、インパネ裏にあって助手席裏からセンター部あたりまでを占めている。このユニットには、空気の取り入れ部、エアコンフィルター、ブロワーモーター部、エバポレーター、ヒーターユニットがあり、温度調整部や吹き出し口の切り替え機構が入っている。またエバポレーターで空気を冷やした時には凝縮水が発生するので、ユニットの下には排水パイプがあり、床下に出すようになっている。空気の取り入れ口や温度調整、吹き出し口のコントロールはダンパーという仕切り部品で行っている。手動式ではレバーやダイヤルからワイヤーで、オートエアコンでは、サーボモーターがダンパーを動かす。
センサー類では、エバポレーターの温度を監視するエバポレーターセンサーや内気温度センサーなども付いている。インパネもエアコン部品の一つで、フロントガラス内側の曇りを取り除くデフロスターのノズル部や、前面側の吹き出し口があり、それらのダクトがインパネ裏に取り付けられている。また、オートエアコンではデフロスターノズル付近に日差しの状況を判断する日射センサーが付いている。外気温センサーは、バンパー内部に取り付けられることが多い。
室内ユニットは、修理を前提にした設計ではないので、部品交換が非常に大変である。
家庭用エアコンでは室内ユニットに相当、キャビン内に隠れているインパネ内部のパーツについて








POINT!クーラーは液化した冷媒を噴射した時の気化熱を利用している

図はクーラー作動でのガスの流れ。現在の主流は右側のサブ・クール・システムで、レシーバードライヤー部がコンデンサーに付属しているものだ。冷媒の状態は、コンデンサーの後半からエキスパンションバルブまでは高圧の液状で、エキスパンションバルブからエバポレーターを経由しコンプレッサーまでは低圧低温のガスとなる。この時に吸熱が行われている。コンプレッサーからコンデンサーまでは圧縮されて高圧高温のガスが送られ、コンデンサーで冷却されて液化する。
カーエアコンには様々なトラブルがあるが、予防法がないものも…。
クルマのエアコンは、家庭用と違って四季の変化の中で移動しながら使うために、非常に過酷な条件で使われる。そもそも限られたスペースで家庭用の2倍程度の空調能力を持つうえに、エンジンや走行時の振動、高温のエンジンルームでの作動という厳しい使用環境となっている。さらに風雨や塩害、飛び石や排ガスといった腐食性物質や物理的なダメージも受けたりする。当然、それらに対応するための作りにはなっているが、完全なトラブルフリーとするのは難しい。クルマの仕様によってはエアコンの性能や耐久性が厳しくなっているクルマもある。
エアコンシステムそのものは、他の機能部品やデザインなどのためにメンテナンスしにくい位置にレイアウトされているため、冷媒漏れなどが起こった場合の点検やパーツ交換が行いにくく、故障した際の修理費用がかさむことが多い。特に室内のエバポレーターやヒーターラジエーターを交換する場合は、インパネを外す必要がある車種が多いので、部品自体が安くても工賃が非常に高くつく。冷媒が循環する部品を交換する場合は、必ず真空引きや冷媒の充填やシステムの診断が必要なので、高い技術と特有の工具や設備を用意する必要がある。DIYでも交換できるパーツはあるが、冷媒がらみのトラブルはプロにまかせるのが無難だ。
カーエアコンで壊れやすいパーツとは?
カーエアコンは過酷な環境下で使用されるため、壊れやすいパーツも存在します。以下では壊れやすいパーツについて、交換難易度やパーツの値段も併せて解説します。
コンデンサー
- ・交換の難易度 ★★★☆☆
- ・パーツ代のみの目安 2万~5万円
フロントバンパーやグリルの開口部から見えるコンデンサーは、雨水や飛び石、虫、塩分、振動、熱などにさらされる。飛び石のあたり方や腐食の進行によっては小さな穴が開くことがあり、衝突での破損もある。整備ミスでドライバーが刺さるなんてことも。また、周辺のスポンジが劣化すると冷却性能が低下する。


エバポレーター
- 湿気を除去する際の水分やホコリで腐食
- ・交換の難易度 ★★★★★
- ・パーツ代のみの目安 2万~3万円
室内ユニット内に内蔵される熱交換器。外気や内気からのホコリが入る他、クーラー使用時は空気を冷やした時に発生する凝縮水でビショ濡れになっている。そのため腐食しやすく、振動や熱収縮の繰り返しによるストレスでアルミ接合部が破損し冷媒漏れを起こすことがある。フィルター装着でホコリの付着量は大幅に減ったがトラブルフリーではない。


コンプレッサー
- 高回転の使用や冷媒補充の繰り返しが×
- ・交換の難易度 ★★★☆☆
- ・パーツ代のみの目安 3万~5万円
コンプレッサーは真夏だと20気圧前後で冷媒を圧縮しており100℃程度になる。特に、熱いエンジンルーム内で高回転下での使用は寿命にも影響し、冷媒が漏れているのに補充を繰り返すとオイルがなくなって焼き付くこともある。また、マグネットクラッチの焼損やシャフトのオイルシールからの冷媒漏れなどもある。

エキスパンションバルブ
- 詰まりが発生すると能力が大幅に低下
- ・交換の難易度 ★★★☆☆
- ・パーツ代のみの目安 5千円~1万円
エバポレーターの冷媒入口にあって、冷媒を霧状にする部品だが、オリフィス部に摩耗粉やレシーバードライヤーから出た異物が詰まることがある。エアコン修理後の真空引きが不十分な場合、湿気が凍って詰まる場合もある。この場合は、周期的な冷え不足や圧力変動を繰り返す。接続部のOリングが不良になり冷媒漏れを起こすこともある。

クーリングファン
- 多走行車は能力低下や故障しやすい
- ・交換の難易度 ★☆☆☆☆
- ・パーツ代のみの目安 5千円~2万円
クーリングファンはラジエーターだけでなく、エアコンのコンデンサーを冷やすためにも欠かせない。エンジン駆動型のファンでは中央のカップリングがへたって送風力低下を起こす場合があり、電動ファンではモーターやリレーの不具合がある。その他、ファンやコンデンサーおよびラジエーター周辺のスポンジやゴム類の劣化も冷却風が逃げる原因になる。


その他パーツ

配管の接続部にはOリングがあるが、劣化したり配管の緩みがあると冷媒漏れを起こす。

コンプレッサーの駆動馬力は非常に大きい(3~4馬力)ので、ベルトのチェックは重要。劣化や張りの良否を見ておこう。

オートエアコンには各種センサーが搭載される。写真は日射センサーだが車種により不具合を発生する場合がある。

ブロワーファンの特定の段だけ動かないというトラブルでは、ファンレジスターという抵抗が切れていることが多い。
POINT!修理時にリビルド品を使うと安上がり
エアコン修理はなにかと高額になりやすいが、コンプレッサー交換の場合はリビルド品の活用で値段を抑えることもできる。ただし、注意したいのがコンプレッサーの焼き付きトラブルでは、その摩耗粉が冷媒回路内部に回っている可能性があること。その場合は、システムのフラッシングや配管類の交換、洗浄が必要となる。
提供元:オートメカニック