車検・点検・メンテナンス
更新日:2018.05.29 / 掲載日:2018.05.29
車のエアコンが冷えない!点検・修理方法を解説 エアコンメンテ塾

エアコン修理見積もり25万円!冷えないエアコンのDIYリペア
エアコントラブルの典型パターンは、なんといっても冷えが悪くなってくること。冷えが悪い=ガスと考えがちだが、キチンと点検することが重要である。ここでは、目立った冷媒漏れがないのに性能が低下した、走行16万kmオーバーの初代フィットのエアコン修理にトライ。
エアコンを修理するかクルマを買い替えるか!?
●エアコンON後冷え出すが、すぐぬるくなる
●クルマの走行中は少し効く
●A/Cスイッチのランプが点かない
新車からワンオーナーの初代フィットだが、昨年のいつからかエアコンの効きが極端に悪くなってきた。ディーラーに持って行くと精密な検査をしない概算ではあるものの修理には25万円くらい掛かるでしょう……との見積もり。車の年式からいって、それだけの金額を掛けてエアコン修理するかどうかで非常に悩むところである。
幸いAMガレージに入庫することになり、セカンドオピニオンも兼ねて診断してみることになった。年式と走行距離からすると、どんなトラブルが起こっていても不思議ではない車だ。
まず、エアコンスイッチを押すとカチッというコンプレッサーのマグネットクラッチの音がするので、最低限作動する冷媒は入っているはずだ。最初は少し冷風を感じるが、ある程度安定してくると1分も経たないうちにコンプレッサーが止まってぬるい風が出てきてしまう。コンプレッサーがオンになった時のショックやエンジン回転の変動が大きく負荷が高いようである。作動中の異音はないが、コンプレッサーが焼き付き寸前の可能性も考えられる。
エアコンの基本点検

設定条件:ドア全開、内気循環、風向きVENT、設定温度最低、エアコンON、ブロワー速度最大、エンジン回転:1500rpm、気温は30℃
エアコン診断で重要なのが上記の条件に設定すること(車種で微妙に違ったりはするが)。サイトグラスの泡の出方も全く違ってくる。
POINT!一人でエアコン点検する際のアイドルアップ法


エンジン回転を1500rpmにするために、ホームセンターにある突っ張り棒をシートとの間に入れて、適度に長さを変えてアクセルを押す(サイドブレーキは確実に!)。
エアコン点検開始!まずはエンジンルームでの状態変化を確認









エンジンルームでの状態変化を確認した結果、システムは異常なし。電動ファンの不良と診断!
エアコン点検の結果…モーターの寿命でコンデンサーを全く冷やせなくなっていたことが判明!
最近の車は電動ファンにも無段階制御を取り入れているものがあり、低速で作動している時は騒音が小さくなっているが、この車のファンはオン-オフ制御だけである。電動ファンはラジエーター用とコンデンサー用があるが、コンプレッサーがカチッと接続されてもファンが回らないのだ。リレー自体は作動していて、モーターのコネクターまでは電圧が来ている。となるとファンモーターが寿命になっている可能性が高い。
この状態で、マニホールドゲージを接続して冷媒の圧力を調べてみる。すると、低圧も高圧も高い圧力で、特に高圧側はコンプレッサー作動と共に天井知らずで圧力が上がっていき、3MPaを超えたところで高圧スイッチがオンになり、ようやくコンプレッサーが止まるというもの。コンデンサーで80℃になっているからコンプレッサー側では100℃を軽く超えているのではないかと思われる。
試しに扇風機の風をバンパー越しにコンデンサーにあててみると、継続してコンプレッサーが動くようになり、冷えもよくなってきた。それでも高圧側の圧力は2MPa程度だからかなり高いといえる。昨年から異常な高圧を繰り返し掛けていたのだから、冷媒の漏れはほとんどないはずで、コンデンサーの冷却をしっかりやれば冷えるようになると判断。フィットの電動ファンだと中古品も出回っているので、なるべく走行距離の少ないものから合いそうなものを購入した。
電動ファンの脱着は簡単なように思えたが、フィットのエンジンルーム内は部品が密集して余分なすき間がない。そのため、バンパーを外してコンデンサーを一旦前側にずらしてやり、そのすき間から取り出すことになる。この辺の難易度は車種によって全く違ってくるだろう。
コンパクト設計のフィットでは意外に手が掛かる。電動ファンの交換とコンデンサーのクリーニングを実施



















今回のエアコントラブルは、エアコンがオーバーヒートしていたようなもの?
エアコンの効きが悪かった原因は、コンデンサーファンの寿命だが、年式と走行距離からして電動ファンを交換するだけでは本来の性能に戻らないと考えられる。冷媒の熱を放熱するためのコンデンサーのフィンは飛び石で曲がったり、虫の死骸や砂が詰まっているので、放熱性能が低下しているのだ。
フィットでは、電動ファンの交換はバンパーを外すことになって作業には手間が掛かるが、これによってコンデンサー前面が露出されることになるので、ついでに掃除をやろうかという気になる。そういう意味では、この設計は悪くない。
ファンモーターを交換して電動ファンを元に戻して動作確認を行う。そうするとエアコンスイッチがオンの状態であれば、イグニッションスイッチをオンにしただけでもファンが回り出す。しかもラジエーターファンも同時に回転するのだ。
エンジンを掛けてエアコンテストの条件に設定してから、再度マニホールドゲージを見ると高圧側の圧力が1.2MPaへと大きく減少。コンデンサーの冷却がいかに大事なのかがよく分かる。それまでは軽いオーバーヒート状態になっていたのである。
室内の吹き出し口温度も12℃になり、冷えてはきたもののキリッとした冷えではない(外気温は27℃)。サイトグラスを見ると泡が流れているし、高圧側の圧力が低めなので、冷媒を補充してもよさそうだと判断。高圧側のゲージも見ながらサイトグラスに継続的に見える泡切れ点まで冷媒を入れていくと冷えがグンと強くなって5℃になった。これ以下に温度は下がらないし、高圧側圧力は1.6MPaなので適正値になったと判断した。
また内部のオイルが残っていないと後々トラブルの原因となるが、これは診断キットでオイルが入っているのも確認している。確かに、高温にさらされたためかオイルは若干変色しており、酸化が進んだ形跡があったが、まだ数シーズンは快適に過ごせるはずである。
フィンの変形や目詰まりで放熱性能は低下。コンデンサーを冷やす風の流れを回復させる為掃除を開始!








POINT!劣化したフィンの破損に注意
エアコンのコンデンサーもアルミ製で、フィンは薄くてデリケートだ。長期間使用で酸化して脆くなっているので、高圧洗浄機やエアを近接して吹き付けず、流水ですすぐ程度が無難だ。
A/Cボタンのスイッチを交換




冷えと冷媒圧力が不足気味のため温度測定しながら作業。冷媒の補充を実施して冷房能力を回復させる


エアコン修理の結果は?



提供元:オートメカニック
