車検・点検・メンテナンス
更新日:2018.05.30 / 掲載日:2018.05.30
エアコンメンテ塾 マニホールドゲージの使い方

エアコン診断に欠かせないマニホールドゲージの使い方
エアコンが性能をフルに発揮するためには、システムに封入されている冷媒の状態が設計通りに変化する必要がある。その冷媒の状態を端的に示すのが冷媒圧力。マニホールドゲージは低圧と高圧の2つの圧力を測定して、良否判定に役立てるものだ。
ストレート
マニホールドゲージセット
HFC-134a
27-324
エアコンの冷媒回路には、冷媒を圧縮するコンプレッサー、コンデンサーやエバポレーターの放熱器、液の冷媒を噴射するエキスパンションバルブなどがあり、正しく作動すると内部の冷媒圧力も外部環境(温度や湿度)に合わせた標準的な状態になる。どこかに異常があると、圧力が狂ってくることが多い。その冷媒圧力を測るのがマニホールドゲージだ。
このゲージで一般的なものは、低圧と高圧の2種類のメーターがあり、本体の下側には低圧および高圧用と真空引きや冷媒充填を行うため合計3本のチャージングホースが繋げられる。メーターの下にはバルブがあり、これを開くと中央のチャージングホースとの通路が開いて真空引きや冷媒充填が行える。
このゲージのチャージングホースをクルマのポートに繋ぐと、低圧・高圧それぞれの圧力が測れる。冷媒の圧力は温度やエアコンの作動状態で変化するが、エアコンが正常に働いている時は、低圧側で0.15~0.25MPa、高圧側で1.37~1.77 MPaになる。よくあるエアコンの不具合では冷えの弱さがあるが、単なる冷媒の不足であれば低圧と高圧側の圧力が規定よりも低く示される。しかし、いつも冷媒不足とは限らず、実際には不適切なサービスで過充填されたことで異常な高圧になったことで冷え不良が起こる場合もあるし、コンデンサーの冷え不足などのトラブルが起こっている場合もある。そのため、初期診断としても圧力診断は欠かせない。冷媒の圧力は外部の環境をはじめ、部品の経年劣化や放熱性能の低下などで、微妙に標準値から外れてくる場合がある。数値を判断するにはある程度の経験が必要となるので、正常なクルマでも何度か測ると勘所がつかみやすくなる。
マニホールドゲージ各部の機能や形状をチェック





ゲージの接続

ボンネットのフックなどに吊り下げて、両方のバルブを閉じておく。チャージングホースのネジも本体側、ゲージ側共にしっかり締めておこう。作業者は手袋やゴーグルを装着しよう。ネジが緩んだりした際に、勢いよく冷媒が飛んできたり、オイルが飛散する危険があるためだ。大気に噴射された冷媒は低温になるので素手で触らないこと。




ゲージの読み取りとエアコンの良否判定



効きが弱い場合のゲージ指示値例(A/Cオン時)


ガス圧はエアコン内外の温度でも大きく変わる



車種ごとの数値を確認しておくのが理想

冷媒を補充する場合(漏れがないこと)







冷媒を入れすぎても性能は上がらないので注意
マニホールドゲージを使って冷媒を補充する場合は、ゲージ本体の中央にもチャージングホースを繋ぎ、さらに缶切りバルブを接続する。まずは通常の圧力測定と同じように、両方のバルブを閉めた状態でチャージングホースの青と赤を低圧と高圧のそれぞれに接続する。エンジンを掛けてA/Cオンにすると、低圧側の圧力が下がって、0.2MPa前後になるはずだ。冷媒を充填する際は、チャージングホースが確実に接続されていることを再度確認し、冷媒のサービス缶に取り付けた缶切りバルブを右に回して缶の上部に穴を開けてから、左に戻すと缶の中からチャージングホースへと圧力が加わった状態となる。
次にゲージのエアパージバルブをマイナスドライバーの先端などで押して、冷媒が少し出て霧状になる程度に出してチャージングホースや本体内の空気を排出する。ここから低圧側のバルブをゆっくり開いていくと、サービス缶側の圧力が高いため冷媒が充填されていく。この時、缶を逆さまにしないようにする。なお充填作業では高圧側のバルブは絶対に開かないこと。開くと高圧側の高い圧力が缶に逆流して破裂する恐れがあるからだ。充填のしすぎもよくないので、高圧側の圧力が基準値を超えないようにする。さらに充填作業と同時にサイトグラスの泡の状態や室内の吹き出し口温度を測っておく。サイトグラスがある場合、冷媒が透明になり、コンプレッサーが止まった時に泡立つくらいが適正だ。
最後に充填(または計測)が終わったら、バルブを閉じ、A/Cオンで低圧側の圧力が低くなった時に低圧ポートのカプラーを取り外す。高圧側はエンジンを止めて冷やして圧力を1.0MPa程度に下げてから外す。
POINT 補充が必要な場合はまず点検・修理

冷媒の補充は定期的にする必要がないので、もしシーズンごとなど頻繁な補充が必要になる場合は漏れていると考える。漏れの発見にはリークテスターやUVライトなどが必要だし、熟練が必要なのでプロの電装品店に依頼する方がいい。
提供元:オートメカニック