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車検・点検・メンテナンス
更新日:2017.12.07 / 掲載日:2017.12.07

HONDA BEAT 「実用と趣味」両極端の愉しさ

現在では軽自動車カテゴリーにもホンダS660 やダイハツ コペンといったオープンスポーツカーがすっかり定着しているがその先駆者となったのが今回の主役となるのがホンダビートだ。バブル経済がしぼみ始めた1991 年春、兄貴分のNSX 同様ミッドシップレイアウトを採用し、幌式のフルオープンボディで我々の前に姿を現したビートは、軽自動車というジャンルを超えて、多くのクルマ好きから好評を博した

NAのままで64PSを誇るホンダらしい軽スポーツカー

 バブル経済はさまざまな問題をその後の日本にもたらし負のイメージが強いが、趣味的なクルマに関していえば決してそんなことはない。ご存じの通りバブル期に誕生した多くのクルマが、今や名車として日本国内だけでなく世界中でクルマ好きから熱い視線を集めている。
 そんないい意味でのバブルの波は、本来は実用車である軽自動車にも及んだ。ミニマムなボディサイズとエンジンながら、普通車にも負けない、いや、むしろ普通車をも凌ぐ運転する楽しさを有する、本格的な2シータースポーツカーを3モデルも誕生させたのだ。ビート、カプチーノ、AZ-1(キャラ)がそれだ。
 それらの先陣を切って登場したのが今回の主役となるビート。リヤミッドシップレイアウトを採用する幌式のオープン2シーターで、それまでの軽自動車とは次元の異なるしっかりとした走りを実現している。搭載されるエンジンは、軽自動車の自主規制値である64PSを発揮するが、他メーカーが過給器に頼って64PSとしていたのに対し、ホンダはNAのまま660ccから64PSを絞り出す。
 絶対的な速さこそ過給器付きのライバルに敵わないものの、NAならではのレスポンスを味わえるエンジンと、ミッドシップならではの高い旋回性能、普通車と同等のしっかりしたシャーシ性能を備えるビートはゆっくり流しても、本気で走り込んでもドライバーを飽きさせぬ、リアルスポーツカーであった。

2017年現在のビートの最注視すべきメンテナンスポイントは冷却水関連

法定12カ月点検がベースのカミムラ流点検項目

 趣味性が強いモデルだけに、ビートは1991年に登場した直後から熱狂的ファンが多い。そんなファンのいる車種だけに、旧くからビートを得意とする専門店は数多く存在し、それらからその時代ごとのビートの定番となるウィークポイントが発信されてきた。ここではビートの専門店としては後発(といってもビートを扱いはじめて16 年経過しているし、旧車ショップとしていえば昭和の時代からある超老舗だが)となるボディショップカミムラで、よく知られる定番トラブルも踏まえつつ、今現在増えてきた新定番を中心にメンテポイントを伺った。「25 年も経っているので、完全を求めると、どこがウィークポイントというより全て手をいれたい部分という状況になってます。だからウチでは法定12 カ月点検をベースにビート用に作った点検項目をオーナー立ち会いでチェックしていき、出てきた不具合部分に優先順位を付けて、車検などの機会にメンテしてもらうようにしています」 その優先順位で最近1 番になる部分は?「最近は冷却系ですね。冷却水路の途中に劣化やサビなどが原因でクーラントが漏れる部分が多発しています。それからブレーキ関係も、今まで不具合が無かったせいか一度もメンテされていないことも多く、要整備時期に来ているようです。今後もビートを調子よく乗り続けたいなら、長期のメンテナンス計画を立てて整備していくのがいいと思いますよ」

エンジン 昔ながらの定番に加えて水まわりも。

エンジンへのアプローチが面倒

ミッドシップのオープンカーということもあり、エンジンへのアプローチは少々面倒。まず幌を閉め、リヤスクリーンを空け、ボルト固定のエンジンフードを外してやっとアプローチできる。

搭載されるE07A のいわゆる定番トラブルとしてはタイミングベルト切れやオイル減りがある。上村さんによるとタイミングベルトは5 万km を超えたら交換したい。

トラブルはデスビが絡むものが多い

デスビに関するトラブルが多い。まずオイル漏れ。付け根O リングからオイルが漏れる。

他にはデスビ内がサビが発生しやすく、長くエンジンを掛けないままにしておくとデスビシャフトが固着してしまう。

固着したままエンジンを始動するとデスビを駆動するカムのギヤ部がズレ(= 点火タイミングがズレる)たり、最悪はタイミングベルトが切れる。

各センサーやハーネス関係のトラブルは?

エンジンに関するところではEACV(アイドリング)からの冷却水漏れと機能障害がある。機能の方は始動時やエアコン使用時のアイドルアップが不安定になる。

スロットルポジションセンサーも出力電圧が規定値を外れていたり、ズレているものが多くなってきているそうだ。それからメインリレーが頻繁に壊れるという定番トラブルもあり。

ガソリン漏れによる火災に注意

インジェクターのクッション(下側)とO リング(上側)からのガソリン漏れが最近よくある。またホースもカシメ部から漏れも同様。周囲に赤いシミがあったら要注意。

マウントも交換時期作業のついでに交換を/冷却系の定番トラブル部分

マウントは前後左右に4 箇所。交換歴のない車体も珍しくないので、そろそろ交換したい。エンジンを搭載したままでも交換できるので、他のついでに交換するのもあり。

樹脂製のエクスパンションタンクがに白濁して液量のチェックができなくなる。またホースの挿さるニップル部の根元にクラックが入ったり(出口側)、折れてしまったり(戻り口側)して冷却水漏れが発生する。

冷却水パイプが錆びて水漏れが発生する

前部のラジエーターと後部のエンジンをつなぐ冷却水パイプ。このパイプにサビが発生し、そこから冷却水が漏れるというトラブルが最近多く発生している。

そのサビはやっかいなことにパイプ上側に発生するので、漏れを発見するのが難しい。

センサーの不具合でファンモーターが壊れる

ファンモーター駆動用センサーが最近よく壊れる。しかもオンになるがすぐに切れるという中途半端な壊れ方が特徴。

当然電動ファンがオンオフを繰り返すので、モーターに負担がかかり、壊れてしまうことも。しかも現在ではモーターは部品供給がないという。

パッキンの劣化に注意/コアからの漏れが多発

ビートはラジエーターキャップが前後に2 個存在する。前方はフロントバルクヘッド部に。後方はエキスパンションタンクに付く。シールのゴムが劣化し冷却水路の圧を保てない状態の車体が結構目立つそうだ。

樹脂製のタンクを備えるビートのラジエーターだが、漏れが発生するのはコア部分が多い。少し前まではタンクの部品供給があったが、現在ではお客様相談パーツに。

内装 電装系にトラブル多し

メーターやスイッチに難あり/シート表皮の破れとヤレ

内装関係の機能部分でトラブルが発生しているのが、各スイッチ類やメーター。スイッチはハンドルコラムの灯火&ワイパーやパワーウインドウで、新品を入手できないものが多い。

メーターも同様だがカミムラではオーバーホールで対応してくれる。

これはビートに限らないが運転席シートのサポート部分が乗降時に擦れて破れていることがほとんどだ。純正表皮は入手困難だ。

駆動系 減らないクラッチが大トラブルの原因に!

定期メンテでトラブル無し/クラッチはダンパースプリングがヘタる

ミッションはオイル交換さえ定期的に行っていれば不具合が発生することはまずない。もちろん乗り手側の問題もあるが、普通にMT を操れる人が乗っていたなら今でもOH せず使える状態にある。

パワーに対して十分な容量を持つビートのクラッチ。よほどヘタな人が乗っていない限りディスクが減って交換することはないという。

しかし摩材より先にダンパースプリングがヘタり、そのガタから振動による異音が発生する。それを放っておくとミッションのメインシャフトのベアリングに影響を及ぼすことになるので、後部からの異音には要注意。

スレーブシリンダーのフルード漏れ

クラッチは油圧式を採用するビート。最近スレーブシリンダーからのフルード漏れが多い。

マスターシリンダーは目に付きやすい部分にあり漏れがあっても確認しやすいが、スレーブシリンダーはミッション上部に位置し、デスビキャップなどが覆いかぶさっているため漏れても確認し辛い。

そろそろOH などした方がいい時期となっているようだ。

足回り ブレーキが要メンテナンス時期に

前側足回りのメンテポイントは?

フロントの足回りのアーム類のブッシュは、ストラットのアッパーマウントがお客様相談パーツとなっているが、それ以外は現在でも入手可能だ。

純正ショックは現在供給が止まったまま。アッパーマウントやバンプラバーやブーツなども同様。そんな状況なので上村さんはアッパーまでがセットの無限の足回りを代用する。

ロワアームの新品供給が現在ないので、ロワアームボールジョイントの補修は重要。ブーツの破れがあればすぐに交換しておきたい。ロワアームの新品供給が現在ないので、ロワアームボールジョイントの補修は重要。

フロントのハブガタ/今まではノーメンテが通用したが

ハブもブレーキなどと同じように、今まで問題がでることが無かった部分。しかし最近になってフロントにガタが発生している車体が増えてきたという。音が出ているなら即OH。

ビートのブレーキは非常に優秀だが、さすがにそろそろ限界のようでピストンが固着したり、ホースがひび割れたりしてきている。車検時などにしっかりとリフレッシュするのが正解だ。

ラックブーツの破れはビートに限らず要整備箇所。問題はビートの場合、ラック本体の供給がないこと。だからブーツを切れたままにすると面倒なことになるので要注意。

外装 雨漏りは幌の縮みが原因

リヤフェンダーとステップが定番サビ部分

分解&部分開放したステップ部。左が表面パネルだが、その断面と右の骨格部分の切断面を比べると、骨格部の部材の厚さがわかる。

サビやすい部分はステップ部とリヤフェンダーアーチ部。ステップは水抜き穴が詰りが原因。写真のような小さいサビなら表面のパネルのみの切り貼りで修復可能な場合が多い。

それ以上酷くなると、ステップ内部の骨格材がサビて修理不能になることも。

カミムラ製幌だと雨漏り対策も

ビートの魅力であり、弱点ともなるオープンルーフ。キャンバス地の幌は時間の経過と共に縮みが発生する。

これにより元々は幌地に覆われていたサイドウインドウの上部が露出してしまい雨漏りが発生するのだ。カミムラ製の幌はその部分を長くし、雨漏りを対策。

給油口の水抜き穴も詰まりに注意

給油口のキャップが新車時から付いているものならパッキンにひび割れが発生している。そんなキャップが付いたビートは要注意。

給油口の水抜き穴が詰まっているとゲリラ豪雨など大雨に見舞われると、給油口内に水が溜まりタンクに水が浸入してしまう。新品キャップと水抜き穴もメンテで対策しよう。




提供元:オートメカニック



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グーネットピット編集部

ライタープロフィール

グーネットピット編集部

車検・点検、オイル交換、修理・塗装・板金、パーツ持ち込み取り付けなどのメンテナンス記事を制作している、
自動車整備に関するプロ集団です。愛車の整備の仕方にお困りの方々の手助けになれればと考えています。

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