巷で噂の「ロケットストーブ」は「ヒートライザー」と呼ばれる断熱された煙突部で生じる高温で強烈な上昇気流が起こり、焚き口からどんどん空気が吸い込まれることで完全燃焼が促進されるため、少量の薪で強力な火力が得られる。
最も一般的に作られているペール缶を利用した基本形は以前、DIY企画で製作。ゴォーと唸りを上げて燃えるその燃焼力には正直驚かされた。
そこで、前回は発展形の鋼管を利用した断熱なしのシンプルなタイプで、廃油を燃やすシステムに挑戦した。が、廃油ストーブとしては正直、失敗だった。試行錯誤の結果、燃焼室を断熱することで薪はよく燃えるようになったものの廃油の燃焼が、今1歩安定しなかったのだ。
「その廃油システムの改良はどうしたの?」という声も聞こえなくはないが今回、さらなる発展形にチャレンジする。燃焼室を横に延ばしてUターンさせる構造のロケットストーブ製作例を見つけたのだ。高温になる燃焼室を横に広げれば鉄板を置くスペースを確保できる。そこで、アウトドアで重宝する鉄板焼きが可能なロケットストーブを作ってみた。
使用した用品
★100×100mm 角パイプ6mの定尺売りで購入したものの使い切れずにガレージに保管しておいた100mm角パイプ。
★300×300×3.2mm 鋼板パイプ末端を塞ぐ材料で使用量はそれほど多くない。このためPART4でカットした厚み3.2mmの鋼板の余りでまかなった。
★3×30×30mm Lアングル材30×30mmのLアングル材で、使用量はこれまた少ないためガレージに保管してあった端材を使用した。
★耐火レンガ窯炉などの高温で使用される構造物の素材として用いられる高温に耐えられるレンガ。ストーブの置き台用に2個利用した。
【1】鉄板が余裕で載せられるサイズにカット
市販の小型鉄板が載せられるギリギリのサイズとして全長500mmに設定。
端から500mmの目盛りに直角定規をあてがい、直角に交わる切り出し線を角パイプにケガク。
高速切断機にセットしてカットし、切断面に残ったバリをキッチリ処理する。
同様にして全長500mmの角パイプをもう1本切り出す。【2】燃焼室をU字にターンさせる!?
500mmにカットした角パイプは横に並べ、左の焚き口から右に向かって炎を流し、右端でUターン。隣のパイプに導いて左に向かわせ、焚き口の隣に設置した煙突から排気させる。
【3】Uターン路に切り抜く範囲をマーキング
Uターン路はパイプ末端の側面をパイプ断面サイズにカットして設ける。
まず、端から100mmの位置に直角定規をあてがい、直角に交わる切り出し線をケガク。
受け側のパイプにも同様に切り出し線をケガき、パイプ末端までの切り抜く範囲を石筆でマーキングしておく。 さらに、受け側パイプ末端の煙突を設置する面に、パイプ断面の内面に合致する切り抜き面をマーキングする。
【4】印した範囲をジグソーで切り抜く
Uターン路にマーキングした切り抜き範囲の内側にジグソーの刃をはめる作業穴を開ける。
サイズは直径10mmで、切り出し面からはみ出さない内面位置にポンチで誘導穴を開ける。直径10 mmドリルで2か所、穴を開ける。
ジグソーに金属切り刃をセットし、作業穴同士を繋ぐようにカット。
両端を末端に向かってカットし、四角く切り抜く。
煙突面は四隅に作業穴を開け、その作業穴同士を繋ぐように4面カットする。
そして、パイプ端をわずかに残した状態で四角く切り抜く。【5】切り口に残ったバリをきれいに処理する
「研磨布ディスク」をセットしたディスクグラインダーで研磨してバリを落とすと共に、ケガキ線まで削り込んで正四角形に仕上げる。
向かい合わせるパイプとの接触面を研磨して塗料を剥がしておく。 【6】ピッタリ密着させて溶接で接続する
焚き口の煙突側末端が面一になるようピッタリ密着させ、バイスグリップでクランプしてロックする。
Uターン路の境の合わせ面を同様にバイスグリップでクランプしてロックする。
バイスグリップを外してズレがないか確認。OKならUターン路の接続面を隙間なく本溶接してキッチリ接続する。 【7】Uターン路まで届く燃焼台を製作する
構造上燃焼室が奥まった位置にくるため、通気路を兼ねた焚き口からUターン路末端まで届く燃焼台を製作する。天板は75mm幅の帯状鋼板の余りを500mmにカット。足にはLアングル材を使用。端材の残りが600mmあったため半分の300mmに切り分けた。
【8】Uターン路まで届く燃焼台を製作する
Uターン路の開口部に鋼板を宛がい、パイプ外周を石筆でなぞることで現物合わせで切り出し線を記入する。
ケガキ線が台端からはみ出すよう、クランプを利用して作業台に固定。ジグソーでケガキ線に添ってカットする。
切りだした鋼板をUターン路の開口部に宛がい、まずは点溶接で仮固定する。
横に倒し、実はここで失敗を犯していた。Uターン路の境の合わせ面を溶接し忘れたのだ。 【9】ピッタリ収まるサイズに組み上げて溶接
向かい合わせたLアングルの上に帯状鋼板を載せて焚き口にはめ込む。
自由に出し入れできる幅に調整してマグネットホルダーで動かないよう仮組みし、左右の接触面端を点溶接して仮固定する。
Uターン路側に引き出してLアングル末端部を点溶接する。なお、Uターン路側の末端はLアングルの切り端を横向きに配置して支える。
Lアングル末端部を点溶接したところで末端を支えるLアングルをバイスクリップで仮固定。
位置を決めるために点溶接で接続する。
燃焼台を引き出し、両サイドのLアングルの途中数か所を点溶接する。
Uターン路ではこのように通気路が横に口を開けた状態となる。
燃焼テストの結果によっては改造が必要となるため、要所を点溶接した状態で完成とした。 【10】煙突側の側面を隙間なく塞ぐ
煙突部側面の開口部に鋼板をあてがい、現物合わせで切り出し線を記入。ケガキ線に沿ってカットする。
切り出した鋼板を開口部にあてがい、点溶接で仮固定する。ただし、上面の煙突との接触面はそのままにしておく。
鋼板と開口部の接触面を上面の煙突との接触面を残して隙間なく本溶接する。 【11】溶接面の塗料を削り落とし、溶接する
煙突端の外周に付着している塗料を、端から10mmほどディスクグラインダーで削り落とす。
研磨した面を下にして煙突取り付け部にあてがい、点溶接で仮固定する。
煙突上から内部を覗き見て、開口部の中心に収まっているのを確認。OKなら開口部との接触面を隙間なく本溶接する。 前回、製作した鋼管を利用した断熱なしのロケットストーブは、完全燃焼に持ち込むため最終的には断熱を行った。
その経験から断熱なしで燃焼を安定させることの難しさは重々承知していた。それゆえ、断熱なしに加えて燃焼室を横に延ばしてUターンさせるという奇抜な構造で、本当に勢いよく燃やすことができるのか? 正直、疑問を抱いていた。
そこで、火を焚ける状態まで組み上がったところで燃焼テストを行うことにした。その結果、不安は的中。このシステムは燃焼が安定せず、燃やし続けるのが難しい。そこで、薪の使用は諦め、不本意ながら燃えやすく、火持ちのよい市販燃料を利用することにした。
【12】溶接面の塗料を削り落とし、溶接する
燃えやすいダンボールを火種として、細く割った木片を詰めて火をつける。
「ヒートライザー」がまだ暖まっていないとはいえ、ある程度火が回った状態でも炎が逆流。ちょっとヤバそうだ。
バナーで加熱して燃焼を促進させても燃焼状態が改善される兆しはない。吐き出される煙の量が増える一方と、明らかに不完全燃焼を起こしている。 【13】燃焼台に空気穴を追加加工!
とりあえず1次燃焼を促進するべく、燃焼台に空気穴を複数設けた。
これによって前より燃焼状態はよくなり、Uターン路に炎が吸い込まれるようにはなった。
とはいえ、勢いよく燃えるのはUターン路の手前付近に限られ、煙突から炎を吐き出すほどの勢いはない。燃焼も長くは続かない。 【14】Uターン路の手前まで縮め、隙間を塞ぐ
そこで、燃焼台にさらに手を加えることにした。
先端部の支えを取り外してUターン路手前で傾斜させることで、燃焼の容積を増やす。
また、燃焼させた時溶接し忘れたUターン路の境のわずかな隙間から炎が見えたため、これの対策として上下の接触面を隙間なく溶接して埋めることにした。 【15】不本意ながら燃料を市販品に変更
燃焼を促進すべく燃料に「オガライト」を使ってみることにした。これはおがくずを固めた薪の代替燃料で、長時間安定した火力が得られるという。
バーナーで直接炙って火をつけ、燃えだしたところで燃焼室に押し込んだが、燃焼が安定しない。
そこで、単独で燃料としても使える「防水ファイアーライター」という名称の着火剤を投入。
「オガライト」を短くカット。風上に着火剤を置いて着火し、セットする。 【16】ペレット代わりの猫砂も追加投入する
着火剤はそれ自体が勢いよく燃える。しかも、利用した製品は火持ちもよく「オガライト」にも火が回ったことで燃焼状態は格段に向上。残る問題は燃焼時間。木質系の燃やせる猫砂を試してみる。
勢いよく燃えている部分に送り込めるよう、余った鋼材で細長いひしゃくを製作。
猫砂投入後は火が回るまで炎は衰える。
火が回ると煙突まで炎が。これならなんとかなる。 【17】煙突に五徳(ごとく)を設置して完成!
完全燃焼すると炎は煙突まで達するため、煙突上にやかんをセットしておけば鉄板焼きと同時に湯を沸かせ、鍋を載せれば煮物もできる。そこで、煙突を塞ぐことなくセットできるよう、余った鋼板で五徳を製作した。
鋼板を150×40mmの帯状にカットし、十字型に二枚を交差する切れ込みと組み合わせた時に煙突上端にはめ込む切れ込みを入れる。
十字に組み合わせて煙突上部にセット。 目標の鉄板焼きは問題なくクリア!
ホームセンターで売られていた「ニューアイガードグリドル」のSサイズのバーベキュー用鉄板。これがジャストサイズだった。
完全燃焼時、直火ではないもののガンガンに加熱され、牛油を落としたら溶けて跳ね回る。
鉄板焼きの熱源としては申し分なし。焼きそばやウインナーも問題なく焼くことができた。 断熱なしでは基本形でもロケットストーブとしての燃焼力を引き出すのは難しい。それだけに燃焼路をUターンさせるという今回の試みは無謀な挑戦だった。
案の定、燃焼が安定せず、燃やし続けるのが難しかった。が、なんとか完全燃焼に持ち込めた。ロケットストーブ本来の燃焼力ではなく、市販燃料で無理やり燃やした感はぬぐえないが。目標の鉄板焼きもクリアできた。とりあえず成功!?