車検・点検・メンテナンス
更新日:2024.08.23 / 掲載日:2024.08.09
車のエーミングとは?基礎知識や必要な理由、作業内容などを網羅的に解説

ASV(先進安全自動車)車両が事故したり、車検を受けたりする場合、今後はエーミングが必要になります。
エーミングとは、車両に搭載された電子制御装置を校正・調整する作業のことです。
この記事では、エーミングの基礎知識や必要な理由、作業内容などを網羅的に解説します。
1. 車のエーミングとは
車のエーミングとは、車を安全運転するうえで重要な技術です。新型車の多くに搭載され始めているASV(先進安全自動車)の機能を発揮させるためには、エーミングと呼ばれる作業が欠かせません。
(1) エーミングとは
エーミングとは、車両に搭載された「電子制御装置」を正常に動作させるための校正・調整作業のことです。
例えば、センサーやカメラなどの位置や動作を調整し、車両が周囲の状況を正しく認識できるようにすることで、衝突被害軽減ブレーキやレーンキープアシストなどの先進安全装置が正しく作動します。
(2) ASV(先進安全自動車)車両とは

近年、衝突被害軽減ブレーキやレーンキープアシストなど、安全運転を支援するシステムを搭載した車が普及しています。このようなシステムを搭載した車をASV(先進安全自動車)車両といいます。
主な先進安全装置は以下のとおりです。
1.衝突被害軽減ブレーキ(AEB)
衝突が予測される場合に自動でブレーキをかける
2.レーンキープアシスト(LKAS)
車線から逸脱しそうになった際に、ステアリングを自動操作して車線を維持する。
また、車線に沿って走行するようにアシストする
3.アダプティブクルーズコントロール(ACC)
設定した速度で走行し、前方の車両との車間距離を自動で保つ
4.ブラインドスポットモニター(BSM)
後方の死角にいる車両を検知し、ドライバーに知らせる
5.リア・クロス・トラフィック・アラート(RCTA)
後退時に左右や後方から接近する車両を検知し、ドライバーに知らせる
これらの先進安全装置は電子制御されているため、センサーやカメラなどの位置がずれると、正確な情報を取得できず、誤作動を起こしてしまう恐れがあります。
2. エーミングが必要なケース
エーミングが必要なケースをご紹介します。
(1) 事故や修理後の再調整
事故などによって車両を修理する際に、レーダーやカメラを外したり交換したりする場合はエーミングが必要です。
事故による衝撃や飛び石、修理、部品交換などの影響によって、カメラやセンサーなどの電子制御装置の位置や感度がずれてしまうことがあります。
位置がずれると、先進安全装置が正常に作動せず、安全性が損なわれてしまいます。
そのため、事故や修理後は電子制御装置を校正・調整し、先進安全装置を正常に稼働させることが重要です。
(2) 車検時における点検項目
2021年11月以降、国産新型車は衝突被害軽減ブレーキの搭載が義務化されています。
それにより、2024年10月以降、国産新型車(2021年11月以降に販売された車)は車載式故障診断装置(OBD)を使った車検の実施が義務付けられました。
そのため、OBD検査によって不具合が見つかった場合や、エーミングの対象車両においてエーミングされていなかった場合は車検にとおりません。
なお、2021年10月以前の年式の国産車は、現在OBD検査の対象外になっています。
対象 | 衝突被害軽減ブレーキ | 車検時のOBD検査 |
---|---|---|
国産新型車 | 2021年11月以降、搭載義務化 | ・2024年10月から義務化 ・対象:2021年11月以降の新型車 |
国産継続車 | 2025年12月以降、搭載義務化 | 現在対象外 |
輸入新型車 | 2024年7月以降、搭載義務化 | ・2025年10月から義務化 ・対象:2022年10月以降の新型車 |
輸入継続車 | 2026年7月以降、搭載義務化 | 現在対象外 |
OBD検査については、こちらで詳しく解説しています。
3. エーミングの作業内容
エーミングに必要な道具と作業内容をご紹介します。
なお、エーミングは2020年4月1日に施行された「道路運送車両法の一部を解説する法律案」によって、特定整備に定義されました。
そして、国が行う「電子制御装置整備の整備主任者等資格取得講習」を受講し、試験に合格した整備士のみがエーミングできます。
(1) エーミングの作業内容と必要な道具
エーミングの作業内容と必要な道具は以下のとおりです。
エーミングは、専用のツールや道具を用いて行います。ここでは、代表的な道具とその用途をご紹介します。
1.調整前の作業
・水準器: 作業場の床の水平度を確認する
・アライメント測定器: エーミング前に車輪の角度を調整する
・タイヤ空気圧の調整:規定値に調整する
2.車両の位置決め・水平確認
・水糸:車両の中心を出すために、下げ振りを引っ掛ける
・下げ振り: 車両の前端と後端に水糸を使用し、車両の中心を出す
3.ターゲットの位置決め・測定
・整備書: 各車種のターゲットの位置などが記載されている
・レーザー距離計: ターゲットと車両との距離を正確に測定する
・メジャー: ターゲットを設置する位置を測定する
・デジタルプロトラクター: ターゲットの向きや直角の正確さを測定する
4.エーミング作業
・ターゲット・リフレクター: カメラに読み込ませるための標的
・スキャンツール(外部診断機): 車両と接続し、スキャンツールの指示に従ってエーミングを実施する
(2)エーミングに必要な作業環境
エーミングを実施するには、適切な作業環境を整える必要があります。
1.水平な床面と無風な環境
自動車メーカーが作成する整備要領書には、多くの場合、水平な床面でエーミングを実施するよう記載されています。
もし、水平な床面を準備できない場合は、水準器等を使用し、車両とターゲットを正対させる「疑似的に水平な」環境を用意する必要があります。
また、エーミングは繊細な作業になるため、無風の環境を用意しましょう。
2.車両サイズに合わせた十分な広さ
エーミングする際は、車両サイズに応じた床面積を用意する必要があります。
各車両サイズに対して、エーミングに必要な作業場の広さ(奥行×間口)は以下のとおりです。
・軽自動車:5.5m(うち屋内4m)×2m
・普通乗用車:6m(うち屋内3m)×2.5m
・普通大型自動車:16m(うち屋内7m)×5m
3.反射物や光沢物を排除し、明るさが十分にある環境
エーミングは、カメラやセンサーなどを使用するため、周囲の環境に影響を受けやすくなります。
とくに、反射物や光沢物は、カメラやセンサーが誤検知を起こす原因になり、正確にエーミングできない恐れがあります。
そのため、作業場から反射しやすいものや光沢物は遠ざけておきましょう。
また、作業場が暗すぎるとカメラやセンサーがターゲットを正しく認識できない場合があるため、作業場に照明を設置するなどして十分な明るさを確保する必要があります。
4. エーミングを業者に依頼する場合
エーミングは、専門の設備や環境、知識、資格などが必要になるため、業者に依頼することになります。ここでは、エーミングを依頼できる業者と費用について解説していきます。
(1) エーミングを依頼できる業者
エーミングは、「電子制御装置整備認証」を取得した整備工場に依頼する必要があります。
認証整備工場は適切な設備や環境が整っており、エーミングに対応する整備主任者が在籍しているため、安心して作業を任せられます。
エーミングを依頼できる業者は以下のとおりです。
・カーディーラー
・カー用品店
・ガソリンスタンド
・整備工場
電子制御装置整備認証を持たずに、エーミングを受けることは基本的に考えられませんが、一部の整備工場では、電子制御装置整備認証を取得せずにエーミングしている可能性があります。
そのため、エーミングを依頼する際は、必ず電子制御装置整備認証を取得しているかを確認することが重要になります。
(2)エーミングを依頼する場合の費用
エーミングにかかる費用は、10,000〜15,000円が相場になります。
ただし、車種や業者、調整する部品によって費用は変動します。そのため、事前に複数の業者から見積もりを取り、比較検討することが重要です。
5. エーミングはグーネットピットにお任せください

エーミングは、ASV(先進安全自動車)の機能を適切に発揮するために欠かせない作業です。
センサーやカメラなどの位置や動作を調整し、衝突被害軽減ブレーキやレーンキープアシストなどの機能を正しく作動するようにします。
なお、エーミングは国の認証を受けた整備工場でしか実施できません。また、作業する整備士はエーミングに関する講習を受講し、資格を取得する必要があります。
グーネットピットでは、全国の認証整備工場からニーズに合った整備工場を見つけられます。もし、愛車の修理や整備が必要な際は、グーネットピットをご利用いただけると幸いです。
エーミングの必要有無を適切にチェックし、必要な場合は安全と快適なドライブをサポートできるよう丁寧に作業いたします。