車検・点検・メンテナンス
更新日:2025.04.24 / 掲載日:2025.04.24
車検時のヘッドライト検査項目とは?新基準の内容と対策を紹介

2024年8月から、車検におけるヘッドライトの検査方法が大きく変わりました。これまで原則ロービームで検査していましたが、やむを得ない場合はハイビームが検査に通れば車検に合格していました。しかし、8月以降はロービームのみで検査することになっています。
この変更は、より実態に即した安全性を確保するためのものです。そこでこの記事では、従来の検査方法との変更内容や、具体的な検査項目、車検に通らない原因と対策を紹介しています。
ヘッドライトに関する疑問や不安を解消し、安全なカーライフを送るためにお役立ていただけたら幸いです。
1. 従来の検査項目と新基準における変更点
2015年9月以降、車検時のヘッドライト検査はハイビームとロービームで実施されています。しかし、ロービームが検査不適合となった場合には、ハイビームが検査に合格すれば車検に通っていました。
しかし、2024年8月からは新基準が導入され、検査方法が変更になっています。
(1) ヘッドライトの検査項目が変わる理由
ヘッドライトの検査方法がロービーム検査に変わる理由は、ロービーム検査のほうが、夜間走行時の視界に適した検査ができるからです。
現代の道路環境では、街灯の整備や対向車の増加により、ハイビームを使う機会が減っています。そのため、多く使われているロービームの性能を検査することで、夜間走行時の視界確保を強化する狙いがあります。
(2) 従来の検査項目と新基準における変更点
2024年8月からの新基準では、ロービームでの検査で保安基準に満たなさければ、車検には通らなくなります。
2024年8月以降に車検を受ける場合、初回検査・継続検査どちらも、ロービームが車検基準を満たさない場合は車検に通りません。
(3) 一部地域では2026年8月1日に延期
一部地域では、新基準への対応が2026年8月1日からと延期されています。延期の理由は、各地域の周知不足や対象車両の多さなどが挙げられています。
移行時期 | 地域 |
---|---|
2024年8月から完全移行 | 北海道、東北、北陸信越、中国の陸運局 |
2026年8月から完全移行 | 関東、中部、近畿、四国、九州、沖縄の陸運局 |
猶予期間が設けられた地域では、2026年7月までに順次新しい基準に移行します。ただし、初回検査の場合は新基準での検査になります。
そのため、お住まいの地域や車検を受ける場所によって、適用される基準が異なる点に注意が必要です。引越しなどで居住地が変わった際は、最新の情報を確認しましょう。
2. 車検時のヘッドライトの検査項目
ヘッドライトの検査項目は、大きく分けて「光量」「光軸」「色味」の3つです。これらの項目が基準を満たしていないと、車検に合格できません。
それでは、具体的に見ていきましょう。
(1) 光量1灯あたりの明るさ
ヘッドライトの光量とは、ライトを点灯したときに前方を照らす明るさのことです。
基準値は、1灯あたり6,400カンデラ(cd)以上と定められています。カンデラとは、特定方向へ向かう光の強さを表す単位です。
ここで注意したいのは、単純にバルブ(電球)が明るいだけでは不十分だということです。バルブの光がリフレクター(反射板)で適切に反射され、前方を照らす明るさが重要になります。
なお、光量にはルーメンといわれる、光の総量を表す単位がありますが、カンデラとは異なる概念です。
(2) 光軸|カットオフラインの位置
ヘッドライトの光軸とは、光が照射される方向のことです。さらにロービームでは、カットオフラインと呼ばれる光の照射範囲を区切る境界線ができます。これにより、上方への光を遮光して対向車への眩しさを防ぎ、路面を十分に照らします。
また日本では左側通行のため、カットオフラインを左上がりにすることにより歩道をより遠くまで照らし視認性をよくしています。
この光軸(カットオフライン)が規定の位置からずれていれば車検に不合格となるため、調整が必要です。
(3) ライトの色味
ヘッドライトの色の基準は、道路運送車両法で「白色であること」と定められています(参照:道路運送車両の保安基準の細目を定める告示 第198条|国土交通省)。
純正部品であれば、基本的にこの基準を満たしています。社外品のヘッドライトのなかには、黄色や青色が強いものがあり、車検に通らない場合があります。ヘッドライトのカバーが汚れていると、色味が変わってしまうこともあります。
ヘッドライトの色味はケルビン(K)という単位で表され、数値が低いほど黄色っぽく、高いほど青白くなります。
なお、車検に通るヘッドライトの色は、一般的に4,000~6,000ケルビンとされています。社外品のヘッドライトを選ぶ際は、ケルビン値が4,000~6,000ケルビンの範囲内であることを確認しましょう。
3. ヘッドライトが車検に通らない主な原因と対策
ヘッドライトが車検に通らない原因はいくつかあります。主な原因と対策をまとめましたので、車検前に確認しましょう。
1. ヘッドライトに黄ばみやくもりがある
2. ヘッドライトのカバーが破損している
3. ヘッドライトの内部リフレクターが劣化している
4. 社外部品のヘッドライトバルブを使っている
順にご紹介します。
(1) ヘッドライトに黄ばみやくもりがある
ヘッドライトに黄ばみやくもりがあると、光量が基準値を下回り、車検不合格の原因になります。夜間の視界不良を招き、安全運転を脅かす危険な状態です。
黄ばみやくもりは、主に紫外線による樹脂の劣化が原因です。洗車時の摩擦や飛び石、付着した汚れなども劣化を加速させます。
黄ばみやくもりが軽度の場合は、市販のヘッドライトクリーナーや耐水ペーパーを使用すれば除去できます。除去できない重度の場合は、専門業者に依頼しましょう。
(2) ヘッドライトのカバーが破損している
ヘッドライトのカバーが破損していると、車検に通らない可能性が高くなります。小さなひび割れでも車検に通りません。
なお、樹脂製のカバーは、ガードレールなどに軽く接触しただけでも破損します。ひび割れから雨水が浸入すると、バルブの電極間に過剰な電流が流れ、ヒューズが切れる恐れもあるでしょう。
小さなひび割れでも、カバーの破損を見つけた場合は放置せず、早めに交換することが大切です。カバーが割れてしまった場合、ヘッドライトユニットごと交換しなければなりません。DIYでは作業難易度も高く、光軸調整が必要になるため、交換が必要な場合は専門業者に依頼しましょう。
(3) ヘッドライトの内部リフレクターが劣化している
ヘッドライト内部のリフレクターは、バルブ(電球)の光を効率よく前方へ反射させる、いわば鏡のような役割を果たす重要な部品です。
リフレクターが劣化すると、光が正しく反射されなくなります。高ルーメンの明るいバルブを使っていても、光量不足や光軸ずれといった問題を引き起こす可能性があります。
ヘッドライトの表面をクリーニングすることで、多少の改善は見込めます。ただし、リフレクターの劣化は、時間の経過とともに進行する経年劣化や、バルブの熱、太陽光に含まれる紫外線などが主な原因です。
そのため、クリーニングで改善が見られない場合は、カバーが割れたときと同じくヘッドライトユニットごと交換が必要になります。
(4) 社外部品のヘッドライトバルブを使っている
社外部品のヘッドライトバルブを使用している場合、車検に通らない可能性が高まります。その理由は、バルブとリフレクターの適合性に問題があるためです。
ヘッドライトのバルブは、その光をリフレクターで反射させて適切な配光を作り出し、前方を照らします。社外部品のバルブは、純正品とは形状や発光点が異なるため、車種ごとに設計されたリフレクターとの相性が悪い可能性があります。
相性が悪いと光が正しく反射・集光されず、光量不足や光軸にぼやけが生じてしまうため、車検不合格となるのです。
もし、社外部品のバルブを使用している場合は、業者に相談し、適切な対応を依頼しましょう。
4. ヘッドライトの交換時期・金額
ヘッドライトの交換時期に、決まった年数はありません。使用状況や環境によって変化しますので、光量が不足して暗いと感じたり、黄ばみやくもりが発生したりすれば業者に相談し、交換を検討しましょう。
ヘッドライトの交換費用は、バルブの種類、ユニットごと交換するかによって大きく異なります。
バルブの種類 | バルブの費用相場 | ヘッドライトユニットの費用相場 |
---|---|---|
ハロゲンバルブ | 2,000〜5,000円 | 30,000〜60,000円 |
HIDバルブ | 10,000〜20,000円 | 30,000〜60,000円 |
LEDバルブ | 基本的に交換不可 | 100,000円以上 |
純正部品は社外部品よりも高価ですが、品質や安全性が高いというメリットがあります。社外部品は比較的安価ですが、品質にばらつきがあるため注意してください。
DIYでの交換も可能ですが、光軸調整や全体チェックなどもしてもらえるため、業者に依頼するのがおすすめです。
5. ヘッドライトに関することは、グーネットピットにご相談ください
ヘッドライトに関する基準が変わりましたが、純正部品を使用している場合は基準を満たしています。しかし、経年劣化や損傷によって基準を満たさなくなる場合もありますので、日ごろからヘッドライトの状態をチェックしておきましょう。
また、社外部品のヘッドライトやバルブに交換している場合は、基準不適合になる可能性があります。車検前に、交換した部品が基準を満たしているか、専門業者に確認することをおすすめします。
もし、ヘッドライトに関するお困りごとがあれば、お近くの整備工場にご相談ください。
ヘッドライトに関する豊富な知識と経験を持つ整備士が、状態を丁寧に診断し、最適な解決策をご提案します。