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更新日:2022.07.19 / 掲載日:2022.07.19
エンジンブレーキとは?使うメリットやフットブレーキ・ハンドブレーキとの違いを解説

「エンジンブレーキ」は急激に止まるのではなく、ゆっくりと速度を落とせるのが特徴で、オートマ車・ミッション車を問わず機能する仕組みです。
例えば下り坂を走る際や、高速道路で減速する際などでの使用が推奨されており、教習所でも習うため、日常的に使っているドライバーも多いでしょう。
しかし車に詳しくなかったり、ペーパードライバーだったりすると、特徴やメリットなどを忘れてしまっている方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、エンジンブレーキの概要やメリット、使用すべきタイミング・場面などを解説します。また、他のよく似たブレーキシステムとの違いも紹介します。
エンジンブレーキをうまく使いこなせば安全かつ効率的に運転できるので、ぜひ参考にしてみてください。
エンジンブレーキとは

エンジンブレーキはペダルやボタンなど特別な装置を使う必要はなく、アクセルの踏み込みを止めるだけで作動するのが特徴です。
アクセルの踏み込みを止めると燃料の供給も止まるため、タイヤの回転も減少して走行スピードが下がります。ちなみにギアを下げれば下げるほど、より強くかかる仕組みです。
大きく速度を落とす力はありませんが、緩やかにスピードを落としたい際にエンジンブレーキは有効です。適度に使えば、滑らかにドライブできます。
エンジンブレーキとフットブレーキの違い
フットブレーキとは通常使うブレーキのことで、足でペダルを踏むことから、そう呼ばれます。
車の種類にもよりますが、基本的にはアクセルペダルの左側に配置されており、車の減速・停止に欠かせません。
踏み込みの強弱でブレーキの強さを加減できるため、幅広い状況で活用されます。駐停車の際はもちろんですが、カーブ時のスピード調整などにも使用されます。使用すると車体後部にあるブレーキランプが点灯するのも特徴です。
基本的にはこちらをメインとして使用します。急な下り坂などを除き、エンジンブレーキはあくまで補助的な存在です。
エンジンブレーキとハンドブレーキの違い
ブレーキは他にも、ハンドブレーキというものもあります。サイドブレーキやパーキングブレーキとも呼ばれます。
ハンドブレーキはエンジンブレーキとは違い基本的に走行中には使用しません。停車時に車を静止させた状態に保つために使用され、輪留めのような役割を果たします。
かつては運転席横にあるレバーを手で引くタイプが一般的でしたが、足で踏み込む形式(オートマ車のみ)が増えており、フットブレーキの横に配置されています。
発進の際にはハンドブレーキを解除する必要があり、うっかり解除し忘れると思うようにスピードが出ません。警告灯が点灯するまで、気づかず走行するケースもあります。
この問題を解消するのが、近年普及してきている電動式(電子式)タイプです。スイッチを押すだけでブレーキがかかり、発進する際はアクセルを踏めば自動で解除されるため、解除し忘れることがありません。
バッテリーが上がると解除できないのが欠点ですが、インテリアがスッキリしたりシートアレンジしやすくなったりするため、今後さらに普及していくでしょう。
以下、ここまで解説したエンジンブレーキとフットブレーキ、ハンドブレーキの特徴をまとめました。
・エンジンブレーキ:アクセルの踏み込みを止めることで作動する補助的な減速手段。
・フットブレーキ:ブレーキペダルを踏むことで作動するメインの減速手段。
・ハンドブレーキ:減速ではなく、車を静止させた状態に保つために使われる機能。
それぞれの特徴を理解して、状況によって使い分けましょう。
エンジンブレーキとフットブレーキの使い分けのポイント

安全かつ効率的な運転のためには、エンジンブレーキとフットブレーキの使い分けが欠かせません。
両者を使い分けるポイントとして挙げられるのが、車の走行スピ―ドです。
エンジンブレーキは減速させる力があまり大きくないので、軽く速度を落としたい際や緩やかに速度を落としたい際などに有効です。逆に、メリハリを付けた加減速が必要な場合や、前方の車が急減速した場合など、突発的に減速したい場合はフットブレーキが適しています。
後ほど詳しく解説しますが、エンジンブレーキを使うべき場面は急な下り坂や高速道路、信号前などが挙げられます。そういった場面においてもフットブレーキとの併用が基本であり、エンジンブレーキだけに頼ることは基本的にできません。あくまで補助的な減速手段だと認識しておきましょう。
エンジンブレーキを使うメリット

なぜエンジンブレーキを使う必要があるのかというと、大きく以下3つのメリットがあり、安全かつ効率的に運転できるからです。
・フェード現象を回避できる
・べーパーロック現象を防げる
・燃費の向上につながる
それぞれ詳しく解説していくので「なぜエンジンブレーキを使うべきなのか、いまいち理由がわからない」という方は、ぜひ参考にしてみてください。
フェード現象を回避できる
エンジンブレーキを使うことで「フェード現象」の発生を抑えられ、安全な走行が可能になります。
フェード現象とは、フットブレーキを多用することで徐々に効きが悪くなり、最終的にはブレーキペダルを踏んでも減速しなくなる現象のこと。車が止まらなくなるため、追突や転落など、重大な事故につながりやすいです。
フェード現象はフットブレーキの連続使用により摩擦材が限界を超えて過熱され、ガス化することで起こります。ガスの塊が潤滑剤になって、摩擦力を弱めてしまうのが原因です。
これは下り坂などで通常のフットブレーキを頻繁に使うことで引き起こされますが、エンジンブレーキを活用してフットブレーキの連続使用を控えれば、フェード現象を回避しやすくなります。
べーパーロック現象を防げる
べーパーロック現象も上述のフェード現象と同じく、ブレーキが効かなくなる危険な症状です。
べーパーロック現象の場合、ブレーキの過剰使用による摩擦熱でブレーキ液が沸騰するのが原因です。沸騰して発生した気泡がペダルの踏み込みを伝える油圧を阻害するため、いくらペダルを踏んでも力が伝わらず、フットブレーキが効かなくなります。
こちらもフェード現象と同様に、エンジンブレーキを併用してフットブレーキの過剰使用を控えれば防げるものです。
燃費の向上につながる
エンジンブレーキを適切に使うと、重大な事故を防げるだけでなく、燃費の向上にもつながります。
アクセルから足を離すと、エンジンに送られる燃料はカットもしくは大幅に減少するので、燃料を節約することにつながりエコです。特にハイブリッドカーや電気自動車の場合は、バッテリーも充電されるので、燃料の削減に加えこまめに充電されて、走行可能距離を伸ばせるようになります。
安全面だけでなく環境面・経済面からも、エンジンブレーキを適度に使うのがおすすめです。
エンジンブレーキのかけ方・コツ

エンジンブレーキはペダルやボタンなど、何らかの専用装置を使ってかけるわけではありません。基本的にはアクセルペダルから足を離すだけで作動しますが、知っておくと便利なかけ方のコツがあるのでご紹介します。
また、オートマ車とミッション車とで、かけ方のコツに違いがあるので、そちらも知っておくと安全運転に役立つはずです。
1.アクセルペダルから足を離す
最もスタンダードな方法は、アクセルを離すこと。足を離すだけで自動的にエンジンブレーキが作動します。
オートマ車であればギアを「D(ドライブ)」に入れたまま、ミッション車であれば「ニュートラル以外」のギアに入れたまま、アクセルペダルを離すだけでエンジンブレーキがかかります。
2.ギアチェンジする
より強くかけたい場合は、ギアを下げましょう(シフトダウンする)。
ギアが低くなるほど、よくエンジンブレーキが効くようになります。アクセルを離してすぐにギアを下げるとより強くかかります。
ただし一気に下げず、一つひとつ段階的にギアを下げていくのが鉄則です。一気に下げると強くかかり過ぎて、急ブレーキになってしまうかもしれません。後続車による追突や玉突き事故など、大きな事故につながるので注意してください。
ちなみにギアチェンジのコツはオートマ車・ミッション車によって方法が異なります。
・オートマ(AT)の場合
通常走行時の「D」から「2(セカンド)」「L(ロー)」と下げることで、エンジンブレーキをより強くかけることができます。
また最近では「D」の下に「2」や「L」ではなく「M」と書かれているものも。これは意図的にギアを上げ下げできるもので、ミッション車に近い感覚で運転できます。
Mモードには「+」と「-」の表記がありますが、シフトレバーを「-」に傾けると、ギアが下がります。
オートマ車のシフトレバーは車の種類によって仕様が大きく異なるため、事前に確認しておくと安心です。
特にカーシェアやレンタカーなど、普段とは違う慣れない車に乗る際は、使用時にわからず慌ててしまうかもしれません。確認し忘れないよう注意しましょう。
・ミッション(MT)の場合
車の種類によって異なりますが、ギアを落とすとより強くエンジンブレーキを効かせられます。
4速よりも3速、3速よりも2速といったように、ギアの数字が小さいほど強くなり、1速でマックスになります。
例えば長い坂道と急な坂道では、求める強さが異なるはず。状況に応じて、使い分けましょう。
エンジンブレーキを使うべきタイミング・場面

エンジンブレーキの仕組みや役割、メリットがわかったところで、どのようなタイミング・場面で使うべきなのかも押さえておきましょう。
エンジンブレーキを使用すべきタイミング・場面を把握していれば、安全かつ効率的にドライブを楽しめます。
長い・急な下り坂
長い下り坂や急な下り坂は、スピードを落とす回数が多くなるため、フェード現象やべーパーロック現象が起きやすい場所です。エンジンブレーキを使って、通常ブレーキの使用回数を減らしてあげましょう。
長い下り坂や極端に急な下り坂の場合は、エンジンブレーキを強める必要があります。運転している車のタイプによって、エンジンブレーキの強め方は以下のように異なります。
・オートマ車:通常走行時の「D」から「2(セカンド)」「L(ロー)」にギアを下げる
・ミッション車:坂道の傾斜に合わせギアを小さくする
いずれもギアを下げることでエンジンブレーキを強めることができ、安全に走行しやすくなります。
ちなみに、最近の車はブレーキ性能の向上などの影響で、フェード現象が起こりにくくなっています。そのため通常のフットブレーキの使用を過度に控える必要はありません。エンジンブレーキにこだわるあまり、カーブを曲がり切れず事故を起こすなど、不測の事態も考えられます。スピードを確実に落としたい場面ではフットブレーキを適切に使用するのが安全です。
あくまで通常ブレーキの負担を和らげるような意識で、補助的にエンジンブレーキを活用してください。
高速道路
高速道路は一般道より走行スピードが速く、減速に時間がかかるため、通常のブレーキとエンジンブレーキを併用することで緩やかな減速が可能になります。
通常のブレーキを多用するとブレーキランプが頻繁に点灯するため、後続車も頻繁に減速せざるを得ず渋滞につながりやすくなります。
エンジンブレーキで速度を落とせば、滑らかな走行が可能になるうえに、周囲への迷惑にもなりません(後続車からの追突を防ぐため、車間距離には十分余裕を持たせてください)。
高速道路の乗り口・降り口やSA・PAに入る際など、スピードダウンしなくてはならないタイミングは多くあるので、エンジンブレーキは役立つでしょう。
赤(黄)信号の前
赤信号や黄信号で停車する際にもエンジンブレーキの活用がおすすめです(JAFもこの方法が推奨しています)。
進行方向の信号が黄色や赤に変わり、停車することがわかったら、アクセルペダルから足を離して(ギアのシフトダウンは不要)エンジンブレーキを効かせましょう。徐々に減速していき、停車位置に近づいたらフットブレーキで完全に停止させます。
安全に停止できますし、燃費にも良い影響が期待できます。
参考:減速時のエコ運転術(誰でもできるエコ運転術) | JAF
エンジンブレーキを使う際に知ってきたい注意点

エンジンブレーキはブレーキパッドの摩耗を抑えられたり平均的な燃費を改善できたりするメリットがありますが、注意点もあります(万能な装置ではない)。
エンジンブレーキを使わずフットブレーキだけに頼るのも問題ですが、同じように、エンジンブレーキを過信して多用しすぎるのもまた問題なのです。
例えば、エンジンブレーキを使ってもブレーキランプは点灯しないため、スピードダウンしたことが後続車に伝わりにくいです。車間距離に余裕がない状況では、速度の変化に気付かなかった後続車に追突される危険があります。
エンジンブレーキをかける際は、後続車との車間距離に注意が必要です。もし後続車が近い場合は、フットブレーキを軽く踏みブレーキランプを点灯させて合図を送るなど、うまく伝える必要があります。
また、ブレーキパッドの摩耗を抑えるためにエンジンブレーキを無理に使っているケースもあるかもしれませんが、それもあまりおすすめできません。フットブレーキの使用頻度を減らせばたしかにブレーキパッドやブレーキローターは消耗しづらくなりますが、エンジンブレーキを多用することでエンジンやミッションへの負担が増してしまい故障リスクが高まります。これでは本末転倒というものです。
エンジンブレーキに過度に頼らず、基本的にはフットブレーキをメインで使用し、要所要所でエンジンブレーキを活用するのがおすすめです。
エンジンブレーキを効果的に使って安全かつ快適なドライブを楽しもう
エンジンブレーキとは、アクセルを離すことで使用できるブレーキのことです。
アクセルペダルから足を離すだけで作動するので、別途専用のペダルやボタンが備わっているわけではありません。
フットブレーキとは違い緩やかに速度を落とすことができるため、うまく活用すれば滑らかな走行が可能です。
またフットブレーキの酷使で発生する「フェード現象」や「べーパーロック現象」などの防止にも有効。補助的なブレーキとして、重要な役割を担っています。加えて無駄な燃料の消費を抑える効果もあるので、うまく活用すれば燃費の向上も期待できます。
もちろん、エンジンブレーキは万能ではないので、あらゆる場面でエンジンブレーキが適しているわけではありません。フットブレーキとの使い分けが必要です。
エンジンブレーキを適切に使って、安全かつ快適なドライブを楽しんでください。