パーツ取付・交換
更新日:2018.10.17 / 掲載日:2018.10.17

DIYの秋!工作教室2018 ITEM1 本物のカーボンクロスをボンネットに貼ってしまう?

 自作パーツの醍醐味は、なんといっても世界に1つのワンオフ製作にある。しかし、それゆえにリスクも。実際に作ってみないと分からないことが多々あり、問題の解決に手間取ったり、時間的あるいは予算的な制約などから妥協を強いられることがままある。
 このため、使い始めてからここはこうしておけばよかったという反省点が、1つや2つは出てくる。そして、後日改良を加えたり作り直すことも。今回はそんな事例を2つリポートする。

カーボン調フィルムも雰囲気はあるが、本物と比較してしまうとやはり違う……

離れればフィルムでも見分けはつかないが、近くて見たらただの模様。どうせ貼るなら本物のクロスを貼ってしまうという選択肢も!?

【1】並べて比較してみればその差は歴然!
カーボン調フィルムもしっかりした製品ならかなり雰囲気が得られる。しかし、本物を並べてみるとその差は歴然だ。

その本物のカーボンクロスにも織り目の模様が異なる「綾織り」「平織り」といった種類があり、どちらを使うかでもイメージは変化してくる。

見た目の勝負ゆえ美しい模様が得られる綾織りをチョイス

 カーボン糸で織られた布の織り方の違いから、カーボンクロスには「平織り」「綾織り」といった種類がある。
 縦糸と横糸が交互に編み込まれ、繊維がしっかり組み合わさっているクロスが「平織り」で、より強度が求められるパーツによく用いられる。一方、「綾織り」は一度交差したあと一本飛ばしに編み込まれており、平織りと比べて強度は落ちるものの立体的で深みがある美しい模様が得られるため、魅せるパーツに利用される。今回、使用するのもこのタイプだ。

【2】 一般的な1m幅では届かない! そこで……
一般に市販されているカーボンクロスの幅は1mで、ボンネットをカバーすることはできない。が、モデル車は1mあれば前後はOK。そこで、1.5m購入して横に広げることにした。

【3】1枚だと裏が透けてしまう!
カーボンクロスは薄い布地のようなもので、編み目に隙間があって1枚では裏が透けてしまう。このため、貼る面が暖色系だった場合、下地を黒く塗る必要がある。

ボンネットを取り外し、隅々まで水洗いして汚れを落とす

 カーボンパーツには作り方の違いから「ドライカーボン」と「ウェットカーボン」といった種類もある。
 前者は樹脂を染み込ませたカーボンクロスを高温高圧釜で焼き上げた物で、軽く高強度。F1のカーボンパーツもこのタイプで、手間とコストがかかる。後者はカーボンクロスに樹脂を染み込ませて常温で硬化させた物だ。扱いやすいのが特徴。それゆえ無理なくDIYできる。今回の工作のベースとしたのもこのタイプ。ボンネットにカーボンクロスを貼って透明な樹脂で固めてしまおうというワケだ。このため、表面の汚れはキッチリ落としておくことが肝心だ。

【1】フィルムを剥がし、裏面のパーツを取り外す
せっかく貼ったカーボン調フィルムは勿体ないが、端から引き剥がしていく。

表面に残ってしまった糊跡を、アセトンを染み込ませたウエスできれいに拭き取る。

ボンネット裏に組み付けられているウエザーストリップやインシュレーターをすべて取り外す。

【2】ボンネットを取り外し、カーペットなどを敷いた台に乗せる
車載状態では思い切ってポリエステル樹脂を塗り込むことができないため、取り外した状態で作業する。

取り外したら次の工程に入るまでキズ付けないよう、カーペットなどを敷いた上にそっと置いておく。

【3】カーシャンプーで隅々まで水洗いする
バケツに水を汲み、カーシャンプーを投入してシャンプー溶液を作る。

シャンプー溶液をたっぷり吸わせた洗車ブラシで、ボンネット裏を隅々まで擦り洗い。

一通り汚れを落としたらホースで勢いよく水をかけ、洗剤分を確実に流しておく。

表側も同様に隅々まで水洗いして汚れをキッチリ落としておく。

【4】裏端をキッチリ脱脂し、表面は足付けする
ボンネット裏のパネル末端をシリコンオフをたっぷり染み込ませたウエスで拭いて脱脂する。

軽く拭いただけで真っ黒! このような油性の汚れをキッチリ落としておく。

裏返して表面を上にし、塗装面にの細かなキズや凹凸を研磨して平らに均す。

#400でボンネット全体を水研ぎして足付けする。

使用した用品
■輸入綾織りカーボンクロス/m幅×50cm単位 価格2484円(税込)1m幅の安価な輸入カーボンクロス。50cm単位の切り売り販売で、左記の価格は50cm~9m50cmまでの小分け単価となる。

■硬化剤MEKPO/100cc価格 486円(税込)ポリエステル樹脂、ポリエステルパテ、ゲルコート、トップコートなどの硬化剤。添加量は樹脂100に対し0.7~2%。

■[ブラック]80g/ポリトナー価格972円(税込)ポリエステル系樹脂の不透明着色剤で、ゲルコート、トップコート、積層用樹脂、樹脂パテなどにしっかり色をつけられる。

■トップコートイソ系クリアー1kg価格2268円(税込)FRP製品用のトップコートとしても使え、骨材を混ぜて塗布すれば滑り止めにもなる耐候性に優れる防水用トップコート。

■透明性FRP積層用UVカットハイクリアレジン2価格4428円(税込)透明性と耐熱性が必要なカーボン製品やFRPの中間積層に最適な高透明性無白濁で硬化後もべたつきが残るノンパラ積層用ポリエステル樹脂。

一度貼り付けてしまったらやり直しは利かないので注意!

 カーボンパーツを製作する時は、カーボン繊維をアピールするために透明性に富むポリエステル樹脂をチョイスする。カーボンクロスを貼り付けるベースに塗るポリエステル樹脂(1層目)も同じ物を利用するため、ベース色が白や暖色系だとクロスの目地の隙間から下地の色が透過してしまう。このような透けを防止するため、1層目はポリエステル系樹脂の着色剤で着色する。
 また、1層目はカーボンクロスの粘着剤として機能させるためにパラフィンが含まれていない積層用のノンパラ樹脂を選択する。ノンパラ樹脂は硬化後も表面にベタつきが残り、カーボンクロスをのせて押さえ込むとしっかり貼り付くからだ。
 つまり、カーボンクロスをのせてしまったら貼り付いてしまうわけで、目地が歪んだからといって無理に剥がすと歪みがさらに広がってしまう。特に「綾織り」は歪みやすく、イジリ過ぎると目地がばらけてくるので要注意! 一度貼り付けたらやり直しは利かない。それを念頭に慎重に作業を進めたい。

【1】末端から10mmほど残してマスキングする

剥がれを防止するため、クロス端は内側に巻き込んで引っかかる形状に仕上げる。その巻き込み面にポリエステル樹脂を塗るため、必要以上にはみ出さないよう端から10mmほど残してマスキングする。

【2】レジンにポリトナーを添加して色を付ける
ハイクリアレジンを50cc、紙コップに取り出す。

ポリトナー(ブラック)を10%(5cc)添加しよく混ぜ合わせる。

レジンの1%、0.5ccの硬化剤MEKPOを添加。

ミキシングバー(なければ割り箸でOK)でよく撹拌して混ぜ合わせる。

【3】末端に色付けしたレジンを塗布する
ボンネット裏末端の全周に色付けしたハイクリアレジンをムラなく塗り込む。

1度塗りでは薄いため、全周に塗ったら再度、ムラなく重ね塗りする。

丁寧に重ね塗りしていこう。

均一に塗り込めたら、ゲル化するまでそのままの状態で放置して硬化させる。ゲル化したなら裏返し、塗布面が作業台に接触しないよう浮かした状態で安定させ、次の作業に入る。

【4】中央合わせの合いマークを付ける
ボンネットの中心を割り出し、その位置を作業台に印す。

ボンネットの位置がズレても判断・修正できるよう、作業台からのはみ出し量を測定するなど設置位置を明確にしておく。

カーボンクロスを2つ折りし、中心に目印のテープを貼っておく。

【5】 ボンネット表面にムラなくレジンを塗布
色付けしたハイクリアレジンを200cc用意し、ボンネットの表面に塗り込んでいく。

塗料を刷毛塗りする要領でムラなく均一に塗布。

全面に塗布したらゲル化するまで、このままの状態で放置する。

【6】慎重に中央を合わせ、貼り付ける
中心マークを合わせつつ、カーボンクロスの目地とボンネット端が平行になるよう慎重に位置決めしボンネットにそっと乗せる。

シワがよったり目地が歪まないよう、中心から外に向かってカーボンクロスをなでつけていく。

曲面部は周囲からクロス端を均等に引っ張って伸ばして形状を合わせながら少しずつ貼っていく。

大きくはみ出している面を端から50mmほど残してカットする。

【7】末端を裏面に折り返して押さえ付ける
シワがよったり弛みが出ないようクロス末端を引っ張りながらボンネット裏に折り込む。

端面に塗布しておいたハイクリアレジン面に貼り付ける。

貼り付け面から大きくはみ出す面を10mmほど残してカット。

クロス端が浮き上がらないよう、マスキングテープを貼って押さえ付ける。

【8】レジンに硬化剤を混ぜ、裏端面に塗布
ハイクリアレジンを50cc、紙コップに取り出す。

レジンの1%、0.5ccの硬化剤MEKPOを添加し、よく混ぜ合わせる。

ハイクリアレジンに浸したFRP用刷毛で、クロス面を押し付けるように塗り込み、硬化したらボンネットを裏返す。

【9】裏返して表面にムラなく塗り込んでいく
ハイクリアレジンを200cc紙コップに取り出して2ccの硬化剤MEKPOを添加して混ぜ合わせる。そして、レジンに浸したFRP用刷毛で、クロス面に押し付けるようにムラなく均一に塗り込んでいく。

全体に均等に塗布したら脱泡ローラーを軽く転がして表面を平らに均しつつ空気を抜く。

1時間ほど放置後、ハイクリアレジンを200cc用意し、2度塗りする。

【10】硬化したらトップコートを用意する
紙コップを持ち手の部分を残して底から20mmほどの位置でグルッとカットし、簡易的なおたま(杓子)に加工。

それを利用してトップコートを紙コップにすくい取る。

紙コップに1杯ずつ400cc取り出し、それぞれに2cc(1%)の硬化剤MEKPOを添加してよく混ぜ合わせる。

【11】垂らすつもりでたっぷり塗り込む
トップコートは1度塗り。

FRP用刷毛にたっぷり染み込ませ、クロス面に垂らすように落として塗り広げる。

末端は垂れ落ちるくらいたっぷり塗り込む。

全体にムラなく塗ったら、1晩放置して完全に硬化させる。

【12】クロス末端をカットして形を整える
トップコートは硬化すると表面がカチカチに固まり、靄がかかったような状態になる。

ボンネットを裏返し、折り込み端を留めていたテープを剥がし、レジンが染みていないクロス端をカット。

硬化面はカッターをセットしたリューターで切り取り、形を整える。

【13】隅々まで研磨して平らに均す
#120のサンディングディスクをオービタルサンダーにセット。硬化したトップコート面を研磨して平らに均す。

表面の凹凸が削れて平らになるまで研磨するが、部分的に削りすぎるとクロスが露出するので注意。

あともう少しと思ったところが引き際だ。

【14】仕上げにウレタンクリアを塗布する
使い捨て容器にマルチトップクリアー(ウレタンクリア)を取り出す。

10%に相当する量の硬化剤を添加し、攪拌してよく混ぜ合わせる。

シンナーを加えて希釈(希釈率は10~20%)し、スプレーガンの塗料カップに注入。

ダンボール片に試し噴きして噴射パターンを調整。

研磨した面にムラなく塗布する。

これで艶が復活。

プレスラインやエッジ面は意識して厚めに塗り、最後は自分の姿がクッキリ映り込むまでキッチリ塗り込む。

【15】エンブレムを組み付けて完成!
エンブレムの取り付け穴位置をドリルでもんで穴を広げる。なお、レジンが硬化したあとだと穴位置の判別は難しいため、クロスを貼り付けた段階で穴に目打ちを差し込んで凹ませておくことが大切だ。

アンカーをはめ、傘の部分が密着するまで確実に押し込む。

エンブレムを組み付けて完成! 元通りクルマに組み付ける。

完成!

見た目は紛れもなく「カーボンボンネット」!

 時間がなかったため磨きがあまく細かな凹凸がまだ残っている。また、「綾織り」は目地が歪みやすく、プレスラインに合わせるべく引っ張ったとき歪みも生じてしまった。
 このため、いかにもDIYという仕上がりになってしまった。が、見た目は紛れもなく「カーボンボンネット」。カーボン調フィルムでは決して得られない、立体的で深みがある美しい模様が輝いている。しかも、ベースはノーマルボンネットゆえボンピンは不要。閉めた状態で確実にロックがかかるため、日常でも手軽に安心して使える。
 ただし、ポリエステル樹脂は強力な粘着力があるものの、どんなに丁寧に作業しても剥離方向(引き剥がす方向)の力を加えれば剥がれる可能性がある。それゆえ、クロス末端は可能な限りボンネット裏に折り返すことで、パネル端に引っかっかかるよう加工しておくことが肝心だ。

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グーネットピット編集部

ライタープロフィール

グーネットピット編集部

車検・点検、オイル交換、修理・塗装・板金、パーツ持ち込み取り付けなどのメンテナンス記事を制作している、
自動車整備に関するプロ集団です。愛車の整備の仕方にお困りの方々の手助けになれればと考えています。

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