パーツ取付・交換
更新日:2024.08.08 / 掲載日:2024.08.03
ブレーキローターとは|役割や種類、交換目安などを網羅的に解説

ブレーキローターとは、ブレーキパッドに挟み込まれることで摩擦が発生し、車を減速・停止させる円盤状の部品です。
しかし、ブレーキローターは使用とともに摩耗が進み、ブレーキ性能が低下するため、定期的に交換する必要があります。
この記事では、ブレーキローターの役割や種類、交換目安などを網羅的に紹介しています。
1.ブレーキローターとは
ブレーキローターは、自動車の安全走行に欠かせない重要な部品です。ここでは、ブレーキローターの概要や種類について解説します。
(1)ブレーキローターとは
ブレーキローターとは、自動車のブレーキシステムである「ディスクブレーキ」の主要部品です。
ディスクブレーキとは |
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ブレーキキャリパーに装着されているブレーキパッドが、ブレーキローターを両側から挟み込むことで車を制動するブレーキシステムのこと |
走行中、ブレーキローターは車輪とともに回転しています。ブレーキペダルを踏むと、ブレーキパッドがブレーキローターを両側から挟み込み、挟み込んでいる際の摩擦力によって回転を止めて車を減速・停止させます。
(2)ブレーキローターの種類
ブレーキローターは2種類あり、構造の違いによりそれぞれ性能や特徴が異なります。
①ベンチレーテッドディスク
現在の車のほとんどは、ベンチレーテッドディスクが採用されています。
ベンチレーテッドディスクは、ブレーキローター2枚を合わせたような形をしているのが特徴です。2枚の間には隙間が空けられており、この隙間に風を流すことでブレーキローターを適切に冷却します。
また、隙間に多数あるフィンが十分な強度を維持しつつ、風の流れをよくすることで熱を外に放出しやすくします。
なお、フィンにも「ストレートタイプ」「カーブヴェーン」「ピラータイプ」などがあり、もっとも一般的なフィンはストレートタイプです。
タイプ | 構造 | 特徴 |
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ストレートタイプ | 直線的なフィンが24〜48本入っている | フィンの数が少なければ軽量タイプで、多ければ耐久性が高いタイプ |
カーブヴェーン | 渦巻き状のフィンが入っている | 冷却風を外部に排出しやすい |
ピラータイプ | フィンではなく、無数の柱が入っている | 風の流れをさえぎるものが少ない |
②ソリッドローター
ソリッドローターとは、1枚のブレーキローターで作られているタイプです。
ベンチレーテッドディスクと比較して放熱性能が劣るため、リア用に採用されることが多いブレーキローターになります。
また、ブレーキローターの表面にスリット(溝)を入れたローターもあります。
これはスリットローターと呼ばれ、スリットによってブレーキパッドとの摩擦力が高くなり、制動力が向上するため、ブレーキの利きがよくなります。
そのため、スポーツ走行する車に多く採用されているタイプです。
スリットにより摩擦力が高くなることでブレーキパッドが削れやすくなるため、パッド表面はきれいな状態を保てますが、ブレーキパッドが削れることで寿命は短くなり、交換頻度は上がります。
2.寿命を超えたブレーキローターの使用は危険
ブレーキローターは、自動車の安全走行に欠かせない重要な部品です。
しかし、使用とともに摩擦で削れていく消耗部品になるため、寿命を超えたブレーキローターはブレーキ性能の低下につながります。最悪の場合、ブレーキが利かなくなる恐れもあります。
具体的には、ディスクローターが劣化すると以下のような症状が発生します。
・ブレーキパッドが異常摩耗する
・ブレーキペダルを踏むとペダルが振動する
・制動距離が長くなる
このように、寿命を超えたブレーキローターの使用は、周囲に危険を与えたり、重大な事故を引き起こしたりするため、定期的な点検と早めの交換が重要になります。
3.ブレーキローターの交換目安

ブレーキローターの交換目安はフロントローターかリヤローターかで異なります。それぞれの摩耗限界値は以下のとおりです。
・フロントローター:片面で約1mm(両面で2mm)
・リアローター:片面で0.5〜0.75mm(両面で1〜1.5mm)
新品の状態からこの程度摩耗すると、ブレーキローターの厚みが基準値を下回った状態になるため、ブレーキ性能が低下します。
ただし、これはあくまで目安であり、ブレーキローターや走行目的などで交換時期は前後します。さらに、ブレーキローターの摩耗は気づきづらいことから、以下のような症状を交換目安にするとよいでしょう。
(1)走行距離100,000kmに達したとき
新品のブレーキローターの場合、走行距離100,000kmが交換の目安です。
ただし、これはあくまで目安であり、ブレーキローターや走行環境、ブレーキの使い方などで交換時期は前後します。
例えば、頻繁にスポーツ走行するような場合は、一般走行よりもブレーキローターへの負荷が大きいため、交換時期が早くなるでしょう。
(2)ブレーキからキーキー音がしているとき
ブレーキを踏んだ際に「キーキー」とブレーキ鳴きがする場合、ブレーキローターの摩耗が原因の可能性があります。
ブレーキローターが摩耗すると、ブレーキパッドとの摩擦力が低下し、ブレーキの利きが悪くなります。ブレーキパッドの摩耗が早まる原因にもなるため、ブレーキ鳴きが発生したら早めにブレーキローターの交換を検討しましょう。
ただし、ブレーキ鳴きする原因はブレーキローター以外にも考えられます。そのため、ブレーキ鳴きなど異音が発生したら早めに業者へ点検を依頼することをおすすめします。
(3)ブレーキパッド交換するとき
国産車の場合はブレーキパッド2〜3回交換ごとに1回、外国車の場合はブレーキパッドを交換するたびに交換しましょう。外国車の場合、制動力が高いためディスクローターの摩耗が早くなります。
ブレーキパッドとディスクローターのどちらかが劣化したら、適切なブレーキ性能を発揮できません。ブレーキ鳴きや異常摩耗の原因にもなるため、ブレーキパッドを交換するときはディスクローターを点検し、劣化していれば同時に交換しましょう。
(4)ブレーキペダルを踏むとペダルが振動する
ブレーキローターは長期間の使用により歪み、ブレーキペダルを踏んだ際にペダルが振動することがあります。
歪みが発生するとブレーキローターとブレーキパッドが均一に当たらなくなるため、ブレーキが正常に利かなくなる恐れがあります。
ブレーキペダルを踏んだとき、常にペダルに振動を感じた場合は業者に点検を依頼しましょう。
(5)ブレーキローターが錆びているとき
ブレーキローターは鋳鉄製のため、サビやすくなっています。多少のサビであれば、ブレーキをかけたときの摩擦により表面のサビも削れるため問題ありません。ただし、潮風や融雪剤による塩害、長期間車を使用しなかった場合、サビが進行し腐食します。ブレーキローターが腐食すると、ブレーキが正常に利かなくなったり、ブレーキパッドが異常摩耗したりします。
このような状況になった場合、ブレーキをかけたときの摩擦だけではサビを落とせないため、ブレーキローターを交換しましょう。
(6)ブレーキローターにクラック(ヒビ割れ)が発生しているとき
ブレーキをかけたときの制動熱により、ブレーキローターが長時間高温にさらされると、クラック(ヒビ割れ)が入ることがあります。
このヒビ割れをヒートクラックといい、とくにサーキットなど高温になる環境下では起こりやすい症状です。ブレーキ性能の低下につながる恐れもあるため、早めに業者へ点検、交換を依頼しましょう。
4.ブレーキローターの交換方法
ブレーキローターを交換する方法をご紹介します。
ただし、ブレーキローターの交換は道路運送車両法の特定整備にあたり、走行安全性に大きな影響を与える作業になるため、業者に依頼することを強くおすすめします。
なお、特定整備は、地方運輸局長の認証を受けた整備工場でしか行えません(参照:道路運送車両法 第七十八条丨e-Gov法令検索)。
車の使用者であれば、ブレーキローターの交換を自分で行えますが、自動車整備士並みの知識や経験のない初心者が安易に交換作業をするのは大変危険です。
(1)必要な道具
ブレーキローターの交換に必要な道具は以下4つです。
・ジャッキとジャッキスタンド
・レンチ
・大きめのS字フック
・M8サイズのボルト
・ブレーキクリーナーなど
・スピンナーハンドル
・作業用手袋
(2)フロント側ブレーキローターの交換手順
フロント側のブレーキローターの交換手順をご紹介します。
①ホイールを取り外す
ブレーキローターを交換する際は、車体からホイールを取り外す必要があります。
車を安全な場所に停止させてエンジンを切ったら、ホイールを取り外しやすいようにレンチでホイールナットを緩めておきます。
ジャッキとジャッキスタンドを使用し、車体を持ち上げたら、ホイールナットを完全に外し、ホイールを取り外しましょう。
②ブレーキパッドを取り外す

ホイールを取り外したら、ブレーキローターとブレーキキャリパーが現れます。
ブレーキローターを取り外すには、ブレーキキャリパーとブレーキパッド、キャリパーブラケットを取り外す必要があります。取り外す手順は以下のとおりです。
1.ブレーキキャリパーのボルトを外す
ブレーキキャリパーを固定している2本のボルトを取り外します(ブレーキホースを固定しているボルトは外さない)。
2.ブレーキキャリパーを持ち上げる
ブレーキキャリパーが落下しないように、外したブレーキキャリパーをストラットのスプリングなどにS字フックで吊り下げます。
3.ブレーキパッドを外す
ブレーキキャリパーを吊り下げたら、ブレーキパッドが見えるので取り外しましょう。
4.キャリパーブラケットを取り外す
スピンナーハンドルなどを使用し、キャリパーブラケットを固定している2本のボルトを取り外します。キャリパーブラケットを取り外すことで、ブレーキローターを取り外せる状態になります。
③古いブレーキローターを取り外す
多くのブレーキローターはハブにはまっているだけなので、引き抜けば取り外せます。ただし、ほとんどの場合はブレーキローターとハブがサビで固着しているため、手で引き抜くだけではブレーキローターを取り外せません。
そのため、M8サイズのボルトをブレーキローターに空いている2カ所の穴に差し込み、ラチェットレンチなどでボルトを均等に少しずつ締め込みます。すると、ブレーキローターがハブから引き離されて前に出てくるため、取り外せるようになります。
また、ブレーキローターが皿ビスでハブに固定されている場合は、先に皿ビスを外してからブレーキローターを取り外します。
④新しいブレーキローターを取り付ける
ブレーキローターを取り外したら、新しいブレーキローターを取り付けます。
なお、新しいブレーキローターは防錆処理されているため、ブレーキクリーナーなどで脱脂してから取り付けましょう。脱脂しなければ、防錆処理剤に含まれる油分によって摩擦力が発生せず、ブレーキが利かなくなる恐れがあります。
⑤新しいブレーキパッドを取り付ける
ブレーキパッドも交換する場合は、ブレーキローターを取り付けてから新しいブレーキパッドを取り付けます。
ブレーキパッドを交換した場合、ブレーキフルード(ブレーキオイル)の量を確認し、液量が多い場合はスポイトなどで減らし、不足している場合は補充しましょう。
ブレーキパッドを取り付ける方法とブレーキフルードの補充方法は、こちらの記事で詳しく解説しています。
⑥ホイールを取り付ける
ホイールを取り付けます。ホイールナットを仮締めしたらジャッキダウンし、ホイールナットを規定トルクで締め付けます。
締め付けトルクが不足していると、走行中にホイールが外れてしまう危険性があります。規定トルクは車種によって異なるため、必ず取扱説明書を確認しましょう。
⑦ブレーキの動作確認と試運転をする
ブレーキローター交換後、安全に走行するためには動作確認と試運転は欠かせません。
1.エンジン始動前にブレーキペダル踏み込む
エンジンをかける前にブレーキペダルを30回程度踏み込み、ピストンがブレーキパッドを押せる状態にします。
2.安全な場所での試運転
安全な場所でゆっくりと車を走らせ、ゆっくりとブレーキをかけながらブレーキのかかり具合を確認します。
3.異音・振動・違和感のチェック
最後に異音(キーキー音など)がしていないか、異常な振動、違和感がないかを確認します。
少しでも異常を感じたらすぐに運転を中止し、お近くの整備工場に相談しましょう。自身の安全のためにも、これらの確認作業は重要です。
5.ブレーキローターの交換を業者に依頼する場合
ブレーキローターの交換を業者に依頼する場合の費用相場と、業者を選ぶポイントをご紹介します
(1)業者に依頼する場合の費用相場
業者に交換を依頼する場合、部品代と作業工賃がかかります。
費用相場は車種やブレーキローターの種類、業者によって異なりますが、一般的には以下のとおりです。
・ブレーキローター:10,000~30,000円(2枚)
・作業工賃:10,000~20,000円
※フロント、またはリアのブレーキローター左右2枚を交換する場合
費用相場はあくまで目安であり、業者によって大きく異なる場合もあるため、具体的な費用は業者に見積もりを依頼し、確認しましょう。
(2)業者を選ぶポイント
交換を依頼する業者を選ぶ際には、以下のポイントを確認しましょう。
ポイント | 内容 |
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①料金体系の明確さ | 作業内容や部品代など、料金の内訳を明確に提示してくれるか |
②実績 | これまで多くのブレーキローターを交換してきた実績があるか |
③保証の有無 | 万が一、作業後に不具合が発生した場合に備え、保証期間が設定されているか |
上記以外にも、口コミや評判を参考に、信頼できる業者を選ぶことが大切です。
6.ブレーキローターに関することはグーネットピットにご相談ください
ブレーキローターは、車を安全運転するうえで重要な部品です。
走行中、車輪とともに回転しているブレーキローターをブレーキパッドが両側から挟み込み、ブレーキローターの回転を止めることで車は減速・停止します。
ただし、ブレーキローターは使い続けると摩耗し、ブレーキ性能が低下したり、異音が発生したりします。最悪の場合、ブレーキが利かなくなる恐れもあるでしょう。
そのため、定期的にブレーキローターを点検し、劣化が進んでいたらすぐに交換しましょう。
交換時期の見極めが難しい、点検や交換を依頼したい場合はグーネットピットにお任せください。
ブレーキに関する知識や経験を豊富に持つスタッフがブレーキ周りを点検し、最適なブレーキローターの交換をご提案します。
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