パーツ取付・交換
更新日:2024.09.18 / 掲載日:2024.09.06

トルクコンバーターとは?DCTやCVTとの違い、交換時期などを解説

自動車の進化とともに、トランスミッションの種類も多様化しています。そのなかでも、AT車において重要な役割を担う、トルクコンバーターの仕組みや役割をくわしく理解している人は少ないでしょう。

この記事では、トルクコンバーターの仕組みやメリット・デメリット、交換時期のサインまで網羅的に解説します。

CVTやDCTといった、ほかのトランスミッションについても解説していますので、ご覧いただけると幸いです。

1. トルクコンバーターとは

シフトチェンジしている様子(イメージ)

トルクコンバーターとは、AT車(オートマ車)に搭載されている装置の1つです。トルコンと呼ばれることが多く、エンジンの動力をミッションに伝える役割を担っています。

トルクコンバーターは、MT車(マニュアル車)でいうクラッチの役割を果たしています。しかし、クラッチのように動力を断続するのではなく、流体の流れを使って動力を伝達するのが特徴です。

以下のような仕組みでマニュアル車のクラッチに相当する機能を果たしながら、よりスムーズな発進と変速を実現しています。

1.エンジンの回転でポンプインペラが回り、流体を動かす
2.流体の流れがタービンライナーを回転させる
3.タービンライナーの回転が変速機に伝わり、車輪を動かす
4.ステーターが流体の流れを整え、トルク増幅効果を生み出す

また、アイドリング時の微弱な駆動力も伝えられるため、アクセルを踏まなくても車がゆっくり前進する「クリープ現象」を可能にしています。クリープ現象とは、停止時でもエンジン回転がトルクコンバーターに伝わることで発生する現象のことです。

2. トルクコンバーターのメリット・デメリット

走行途中の車(イメージ)

トルクコンバーターを搭載したAT車には、メリットだけでなくデメリットも存在します。ここでは、メリットとデメリットを解説します。

(1) トルクコンバーターのメリット

トルクコンバーターのメリットは、以下の3つが挙げられます。

①発進・停止がスムーズ

トルクコンバーター式AT車は、発進時や停止時にスムーズな動きを実現できます。

これは、トルクコンバーター内のATF(オートマチックトランスミッションフルード)を介して、エンジン動力(トルク)を伝達する仕組みになっているためです。

エンジン回転数が低くても流体を通じてトルクを伝達できるため、滑らかに発進できます。また、クリープ現象によって、アクセルペダルを踏まなくても車がゆっくりと進みます。

渋滞時など、アクセルペダル操作が頻繁に発生する状況下では、ドライバーの負担を軽減する効果が期待できます。

②変速ショックが少ない

トルクコンバーター式AT車は、発進時や加速時など、変速時(ギアチェンジ時)に発生するショック(振動)が少ないのがメリットです。

これは、トルクコンバーター内のATFオイルが、エンジンとトランスミッションの間でクッションの役割を果たしているためです。

③エンジンブレーキが利きやすい

トルクコンバーター式ATは、エンジンブレーキが利きやすいというメリットがあります。

トルクコンバーター式ATの場合、エンジンブレーキを使うと、ロックアップクラッチが外れてトルクコンバーター内部で流体が回転します。この流体の抵抗が、エンジンブレーキとして作用するため、エンジンブレーキが利きやすくなります。

エンジンブレーキとは、アクセルペダルから足を離した際に、エンジンの回転抵抗を利用して車を減速させる方法です。

フットブレーキの使用を減らすことで、ブレーキパッドの摩耗を抑えたり、燃費向上につながったりします。

(2) トルクコンバーターのデメリット

トルクコンバーターは、滑らかな変速による快適な乗り心地を提供する一方で、いくつかのデメリットも存在します。

①変速速度が遅い

トルクコンバーター式ATは、油圧を利用して動力を伝達するため、CVTやDCTと比較して変速速度が遅くなるのがデメリットです。

トルクコンバーター式ATは、エンジンが生み出す力を油圧に変換し、その油圧でトランスミッションを動作させる仕組みです。

このため、エンジン出力による油圧が実際にトランスミッションに伝わるまでに、どうしてもタイムラグが生じてしまいます。また、油圧を利用する過程では、どうしても摩擦熱が発生し、エネルギーロスにつながるのです。

とくに、スポーティーな走行を求めるドライバーにとっては、変速速度の遅さに物足りなさを感じる可能性があります。

ただし、近年では、トルクコンバーターの多段化や制御技術の進化により、変速速度が向上しており、以前と比べてスムーズな変速が可能になっています。

②燃費性能が劣る

トルクコンバーターは、流体によって動力が伝達される構造になっているため、スリップなどによって効率が悪くなり、燃費性能が劣ってしまう点がデメリットになります。重量が大きい点も、燃費性能を低下させる原因です。

近年では、多段化やロックアップ機構の採用などにより、トルクコンバーターの燃費性能は向上しています。しかし、構造的な問題から、CVTやDCTと比較すると依然として燃費性能で見劣りする点は否めません。

③故障しやすい

トルクコンバーターは、AT車の動力伝達を担う非常に複雑な部品です。油圧と遠心力を利用して滑らかな変速を実現する一方、その構造上、経年劣化や使用状況によって故障のリスクがあります。

トルクコンバーター内部のATFオイルは、使い続けることで熱や摩擦で劣化し、性能が低下します。劣化したATFを使い続けると、部品の摩耗や油圧系統の不具合の原因になるのです。

また、誤った種類のATFオイルを使うことも故障の原因となります。適切な粘度のATFオイルを使う必要があるため、できるだけ純正を使用するようにしましょう。

3. CVT・DCTとの違いを比較!それぞれのメリット・デメリット

トルクコンバーター式ATと並んで、近年採用されることが多いCVTとDCT。それぞれどのような特徴を持つのでしょうか。

ここでは、CVTとDCTの仕組みやメリット・デメリットを紹介していきます。

(1) CVT (無段変速機)

CVT (無段変速機)の仕組みとメリット・デメリットについてご紹介します。

①CVTの仕組み

CVTとは、「Continuously Variable Transmission」の略称で、日本語では「無段変速機」と呼ばれます。

無段変速機は、ギアを用いて段階的に変速するMT車やAT車とは異なり、ギアの代わりに2つのプーリー(滑車)と金属ベルトを使うのが一般的です。

1つ目のプーリーは入力側としてエンジンにつながっており、エンジンの回転数が上がると、入力側のプーリーの幅が狭くなり、金属ベルトは外側に押し出されます。

2つ目のプーリーは、出力側としてタイヤにつながっており、入力側のプーリーの幅が狭まると、出力側のプーリーの幅が広がる仕組みです。

金属ベルトの位置によってプーリーの円周の長さが変わり、回転速度が変わります。

タイヤ側のプーリーが開いてエンジン側が閉じると、プーリーの円周が大きくなるため高速になり、逆にタイヤ側のプーリーが閉じてエンジン側が開くとプーリーの円周が小さくなるため低速になります。

くわしくはこちらの記事で解説していますので、こちらもご覧ください。

②CVT(無段変速機)のメリット・デメリット

CVT車はギアを使用していないため、エンジン回転数が上がってもタイムラグや変速ショックを感じにくく、スムーズな走りを実現できるのがメリットです。

また、街乗りが多い軽自動車やコンパクトカーの場合は、トルクコンバーター式AT車より燃費がよくなるでしょう。ただし、高速走行時は燃費が悪くなりやすいのがデメリットです

また、エンジンからの出力が大きくなると滑りやすくなるため、排気量2,000ccを超える大きな車には向いていません。

(2) DCT (Dual Clutch Transmission)

DCT (Dual Clutch Transmission)の仕組みとメリット・デメリットについてご紹介します。

①DCTの仕組み

DCTはDual Clutch Transmissionの略称で、有段自動変速機の一種です。2つのクラッチを持つトランスミッション構造をしていることから、この名称が付けられました。

輸入車に採用されていることが多く、MT車のクラッチペダル操作を不要にし、自動で変速できるのがDCTです。

2つのクラッチはそれぞれ奇数段と偶数段に接続されており、運転状況に応じて自動で切り替わります。

たとえば、1速で走行中に2速への変速タイミングになると、あらかじめ2速側のクラッチが接続準備状態となります。そして変速のタイミングで1速側のクラッチが切れ、2速側のクラッチがつながることで変速が完了します。

このように、2つのクラッチを交互に切り替えることで、滑らかで素早い変速を実現しています。

②DCTのメリット・デメリット

DCT車は、2つのクラッチを備え、それぞれが奇数段と偶数段のギアを交互に切り替えることで、素早い変速と高い伝達効率を実現するトランスミッションです。

MTのようなダイレクト感とATの利便性を兼ね備えている点がメリットとして挙げられます。また、燃費のよさもメリットです。

一方、DCTは2つのクラッチを交互に切り替える仕組みのため、変速時にどうしてもわずかなショックが発生しやすくなります。

そのため、変速時の熱や発熱などによる変速ショックが大きくなりやすく、滑らかな発進や停止が難しいのがデメリットになるでしょう。

(3) トルクコンバーター式ATが選ばれやすい理由

CVTやDCTが登場したことで、燃費性能の面で不利になったトルクコンバーター式ATですが、近年では技術革新により再び注目されています。

ここでは、トルクコンバーター式ATが選ばれやすい理由を解説していきます。

①電子制御技術の進化

トルクコンバーター式ATは、電子制御技術の進化によって、ロックアップ機構の制御精度が向上し、伝達ロスを大幅に軽減できるようになりました。

その結果、燃費性能も向上し、従来のトルクコンバーター式ATの燃費性能がCVTやDCTに劣るというイメージを払拭することに成功しています。

②コストが安い

トルクコンバーター式ATは、CVTやDCTに比べて構造がシンプルであるため、コストが安価に抑えられます。

CVTやDCTは機構が複雑なため、どうしても製造コストが高くなってしまいます。また、小型化が難しく、部品点数も多くなるため、その点でもコストがかかってしまうのです。

③高出力なエンジンに対応しやすい

トルクコンバーターは、高出力なエンジンに対応しやすいという特徴があります。

これは、トルクコンバーターが流体を使って動力を伝達する機構であるためです。流体を使うことで、エンジンからの大きな力を滑らかに伝え、変速ショックを吸収できます。

一方、CVTは金属ベルトでを利用して動力を伝達するため、高出力では金属ベルトが滑りやすく、耐久性にも不安が残ります。

④滑らかな発進・変速が可能

トルクコンバーター式ATは、流体を使って動力を伝達するため、滑らかな発進・変速が可能です。

一方、CVTやDCTは、トルクコンバーター式ATに比べて、発進時や変速時にショックや振動が発生しやすいことから、国産車の多くはトルクコンバーター式ATを採用しています。

4. トルクコンバーターの交換時期と費用

車を整備している様子(イメージ)

トルクコンバーターは、AT車にとって重要な部品ですが、使用していくうちに劣化し、交換が必要になることがあります。

ここでは、トルクコンバーターの交換時期のサインと、交換にかかる費用について解説します。

(1) トルクコンバーターの交換時期のサイン3つ

トルクコンバーターの寿命は走行距離約15万kmといわれていますが、以下のようなサインが出たら交換時期が来ているかもしれません。

以下のようなサインが出たら、早めの点検をおすすめします。

①発進時や加速時に異音がする

トルクコンバーター内部の部品が摩耗することで、異音が発生することがあります。

とくに、発進時や加速時に「キュルキュル」や「ゴロゴロ」「ガラガラ」といった音が聞こえる場合は、トルクコンバーターの故障が疑われます。

②変速時に滑りやすくなる

トルクコンバーターが劣化すると、変速時に滑りが発生しやすくなります。滑りとは、変則が上手くいかずに、タイヤに力がうまく伝わらない状態のことです。

変則が上手くいかなければ、加速が鈍くなるなど、車の性能に悪影響を与えます。

③燃費が悪くなっている

トルクコンバーターの劣化は、燃費の悪化につながります。

トルクコンバーターが滑りやすくなることで、エンジンの力が無駄に消費されてしまい、無駄なエネルギー消費が発生しているためです。

(2) トルクコンバーターの交換方法・費用

トルクコンバーターを交換する場合、基本的には専門の整備工場に依頼することになります。

交換費用は車種や交換する部品、作業工賃によって異なりますが、70,000〜100,000円が相場です。

また、トルクコンバーターを交換する際には、ATF(オートマチックトランスミッションフルード)も同時に交換するのが一般的です。

ATFはトルクコンバーターに関する潤滑や冷却、動作を伝達する重要な役割を担っており、古いATFを使い続けると、トルクコンバーターが故障する原因になります。

ATFの交換費用は車種や依頼する業者にもよりますが、15,000〜20,000円が相場です。

トルクコンバーターの交換は比較的高額な修理となります。しかし、異音や変速の不具合を放置すると、ほかの部品にも悪影響を及ぼし、さらに修理費用がかさんでしまう恐れがあります。

そのため、少しでも異常を感じたら、早めに整備工場に相談するようにしましょう。

5. トルクコンバーターの交換や修理でお悩みなら、グーネットピットにご相談ください

トルクコンバーターは、使い続けることで劣化したり、故障したりするため、定期的に交換する必要があります。

「発進・加速時の異音」「変速時の滑り」「燃費の悪化」といった症状は、トルクコンバーターの交換時期が来ているサインかもしれません。

これらの症状を放置すると、ほかの部品にも悪影響を及ぼし、修理費用がさらに高額になってしまう可能性もあります。

そのため、少しでも異常を感じたら、早めに整備工場に相談することをおすすめします。

グーネットピットでは、全国の優良整備工場を検索できるサービスを提供しています。

お近くの整備工場を簡単に見つけられるため、トルクコンバーターの交換や修理に関する相談、見積もり依頼など、お気軽にご利用いただけると幸いです。

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グーネットピット編集部

ライタープロフィール

グーネットピット編集部

車検・点検、オイル交換、修理・塗装・板金、パーツ持ち込み取り付けなどのメンテナンス記事を制作している、
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