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更新日:2023.03.23 / 掲載日:2023.03.23
電気自動車(EV車)の購入意向を調査/カギを握るのは充電設備
環境意識の高まりと政府の後押しもあり、電気自動車(EV)の普及に向けた動きが活発化している。こうした中、今後さらにEVの普及を促進するためには「住宅への充電設備の整備」が大きく関わっていることが2つの調査結果で明らかになった。
EV「まだ先」から「そろそろ」へ⁉
J・D・パワージャパンは2022年7月、20~69歳の2800人を対象に「購入検討する車のエンジンタイプやEV購入意向」に関するアンケート調査を実施した。
自家用車を購入する際に検討するエンジンタイプを聞くと、「ガソリン車」が49%、「ハイブリッド車」が48%、「EV」が25%の順になった。EVに着目すると、購入予定時期は「3年以内」が24%、「6年後以降」が25%でほぼ同水準だった。
21年調査では購入予定時期が先であるほど検討意向は高くなっていたが、22年調査では購入予定時期による検討意向の差はほとんどなくなった。この1年で軽自動車のEVが発売されるなどラインアップが増え、「EVはまだ先の話」から「そろそろ次のマイカーとして検討してみよう」と気持ちに変化している様子がうかがえる。
EVを次回購入の検討とする理由を聞くと、「ガソリン代がかからない」が51%、「環境に配慮している」が46%、「電気自動車が主流になりつつある」が42%、「補助金や優遇税制がある」が38%となった。
燃油高騰が続く中、ガソリン代がかからないという経済的なメリットが一番の理由になっている。また、カーボンニュートラルへの取り組みが進む中、環境意識の高まりとそれに伴うEVの普及促進の流れや補助金など税制上のメリットが響いている。
車両価格の高さと充電インフラがEV普及の大きな課題

一方、EVを検討しない理由は、「充電スタンドが少ない」が53%、「車の価格が高い」が48%で上位を占めた。以下、「充電に時間がかかる」が38%、「自宅に充電設備を用意できない」が37%、「航続距離に不安を感じる」が35%で続いている。
SSで数分で給油できるガソリン車に慣れている人にとって、充電スタンドの少なさ、充電時間の長さ、ガソリン車やハイブリット車と比べた場合の航距離などが不安材料となっている。また、補助金や優遇税制があっても車体価格の高さが懸念材料となっている。
EVの検討派と非検討派を比較すると、環境性能について検討派は「環境に配慮している」が46%と半数近くが挙げた。また、非検討派は「環境に配慮していると思わない」が11%と1割程度だった。このことからEVの環境性能については、検討・非検討に関わらず多くの人の共通認識であることが分かる。
コスト面については、検討派の「ガソリン代がかからない」(51%)、非検討派の「車の価格が高い」(48%)が共に約半数という結果から、ガソリン代がかからないことがメリットであるのとは裏腹に、購入価格の高さがデメリットになっている。
EVの課題である「航続距離」については、検討派の「航続距離が伸びた」(28%)に対し、非検討派は「航続距離に不安を感じる」(35%)と依然として航続距離が不安要素となっている。
充電スタンドについては、非検討派では「充電スタンドが少ない」が53%、「自宅に充電設備を用意できない」が37%。一方、検討派では「充電スタンドが増えた」が26%、「自宅に充電設備を用意できる」が21%といずれも低い割合にとどまっていることから、充電インフラは十分に整備されているとは言えず、大きな不安要素となっている。
EVが環境に配慮した車であることは多くのユーザーの理解を得ているが、非検討層にとっては特に充電インフラに関する課題や懸念が大きく、ガソリン代がかからないことよりも購入価格の高さがネックになっている。こうしたことからEV購入の検討に踏み切れないという心境がうかがえる。
EVは購入価格よりも住宅の充電環境が最も影響

日産自動車は22年10月26日~11月1日、集合住宅居住者でEVの購入意向がある30~50代の男女400人を対象に「EVと住環境についての調査」を実施した。
EV購入の検討時期で最も多かったのは「1~3年前」が43%、次いで「1年以内」が34%、「半年~1年前」が25%となり、ここ数年で購入意向が高まっている。 購入検討理由は、「環境にやさしいから」が63%、「ガソリンが高騰しているから」が51%と社会的な背景が大きく影響している。
一方、EVの購入で迷うポイントで最も多いのは「自宅で充電できない」が58%で、購入価格よりも住宅の充電環境が最も影響している。次いで「費用が高額」が57%、「周辺の充電環境が整っていない」が45%で続いている。特に集合住宅では、充電設備がないと購入は難しいが89%となった。
3年以内に購入を検討している人でも、住環境(充電設備がない)が理由でEVの購入をあきらめた経験者は51%いて、EV普及のためには集合住宅との連携が必要なことが浮き彫りになった。

現在、集合住宅でEVを保有している50人の充電方法は「自宅外」が52%、自宅の駐車場で充電しているは16%しかなく、充電スポットが自宅から徒歩30分以上かかる人が30%と手間がかかっている現状も明らかになった。
EVを購入する場合でも自宅以外の充電設備の利用予定者が74%と高くなっており、充電場所を「自宅の駐車場」と想定している人が少ないことからも、充電環境の整備が課題であることが分かる。
実際に、「EV充電が気軽にできる集合住宅があるとしたら住む前に体験したいか」という質問に81%が「体験したい」と回答しており、住環境への関心の高さがうかがえる。
日産ではこの調査結果から、自宅で簡単に充電できる利便性を体験できる場作りや、EVに最適化した住環境の整備を推進していくこととし、課題解決に取り組む新たなプロジェクトを1月中旬から始動した。
出典:アフターマーケット 2023年 2月号