故障・修理
更新日:2023.06.30 / 掲載日:2023.06.30
スパークプラグの締め付けトルクに注意!正しい交換方法を専門家が解説

スパークプラグはガソリンエンジンを作動させるために必要不可欠なパーツであり、交換を行う際はトルク(締め付ける力)に気をつける必要があるなど、いくつか注意点があります。
この記事では、スパークプラグの役割や交換の大まかな流れを紹介したうえで、トルクレンチの選び方やミスした際の対処法も解説します。ぜひ参考にしてください。
1.スパークプラグとは
スパークプラグは、ガソリンエンジンを作動させるために必要な点火を行う部品であり、高電圧の放電によって火花を発生させるパーツです。
(1)スパークプラグの仕組み
ガソリンエンジンを始めとする内燃機関では、燃料と空気を混合した混合気に着火させることで作動します。さらに具体的にいえば、以下のプロセスを繰り返すことによってエンジンは動いています。
1.混合気をエンジン内に吸入する
2.混合気をエンジン内で圧縮し、点火する
3.混合気を燃焼爆発させ、膨張させる
4.燃焼したガスをエンジン外へ排気する
スパークプラグは「2」のプロセスにおいて混合気に点火する役割を持っており、正常なエンジンの作動に必要不可欠なパーツです。
(2)スパークプラグの種類
スパークプラグにはいくつか種類があります。
一般プラグ(レジスタープラグ) | 電極にニッケル合金を使用しているプラグ |
---|---|
白金プラグ | 電極に白金合金を使用しており、耐久性に優れたプラグ |
イリジウムプラグ | 電極にイリジウムを使用しており、耐久性に優れ、スパーク性能も高いプラグ |
ほかにも、さまざまな種類があり、車種や車の使用環境などによって適切なものを選択することが重要です。
(3)スパークプラグの交換時期
ガソリンエンジンが作動中、スパークプラグは常に点火を繰り返します。長期間使用すると、自ら発生させる火花により電極が消耗し劣化が進みます。
劣化したスパークプラグは点火力が低下し、混合気を安定的に燃焼させることができなくなります。そのため、定期的な交換が必要です。
なお、スパークプラグの交換は走行距離を目安とします。ただし、以下のように、車両の種類によって異なります。
軽自動車 | 7,000~10,000km ※長寿命タイプの場合:~50,000km |
---|---|
普通自動車(4輪車) | 15,000~20,000km ※長寿命タイプの場合:~100,000km |
バイク(2輪車) | 3,000~5,000km ※長寿命タイプの場合:~10,000km |
2. スパークプラグの交換方法|トルクの締め付け方
スパークプラグを交換する手順は、以下のとおりです。
1.スパークプラグを、六角サイズの合うプラグレンチのソケットにはめ込む
2.ソケットにはめたスパークプラグを、エンジンのプラグホールに挿入する
3.プラグレンチのエクステンションバーを手で軽く回す(軽く回して止まるところまで)
4.ラチェットなどを使って適切な力で締める(詳細後述)
なお、スパークプラグの点検や交換を行う際は、感電や火傷などを防ぐために、必ずエンジンを止め、かつエンジンが十分に冷えた状態で作業するようにしましょう。
3. スパークプラグを交換する際の注意点
スパークプラグを交換する際に必ず知っておかなければならないことが3つあります。
それらを知らずに作業すると、スパークプラグが破損したり、その他の部品が故障したりする可能性があります。それぞれ以下で詳しく解説します。
(1)スパークプラグを正しい角度で回す
スパークプラグをプラグレンチのソケットにはめ、エンジンのプラグホールに挿入する際、プラグに対し、レンチが斜めにはまってしまうことがあります。
その状態でレンチをまわすと、プラグに対して横向きの力が加わり、「碍子割れ(がいしわれ)」が生じる可能性があります。碍子割れとは、プラグの碍子(電気を絶縁する部分)が割れてしまうことです。
細いタイプのプラグを扱う場合や、プラグホール自体が斜めに設置されているエンジンの場合は、特にプラグを正しい角度で回すことを意識する必要があります。
(2)スパークプラグを締め付けすぎない|推奨トルクを守る
スパークプラグは、締め付ける力(トルク)が強すぎても弱すぎてもいけません。
トルクが強いとねじ切れる恐れがあり、トルクが弱いと振動によってプラグが破損する恐れがあり、いずれの場合でもエンジンの正常な稼働を妨げる可能性があります。
トルクを適切に保ってプラグを締め付けるには、以下の2つの方法があります。
1.推奨トルクを守る
2.推奨回転角を守る
トルクレンチを使う場合は、推奨トルクを守る方法で締め付けを行い、ラチェットレンチを使う場合は、推奨回転角を守る方法で締め付けを行います。
なお、推奨トルクと推奨回転角は、プラグごとに決まっており、事前に確認する必要があります。
プラグのサイズごとの一般的な推奨トルクについては、以下の表のとおりです(ガスケットタイプの場合)。
スパークプラグのネジ径 | 締め付け推奨トルク |
---|---|
φ18mm | 35~40N・m(3.5~4.0kgf・m) |
φ14mm | 25~30N・m(2.5~3.0kgf・m) |
φ12mm | 15~20N・m(1.5~2.0kgf・m) |
φ10mm | 10~12N・m(1.0~1.2kgf・m) |
φ8mm | 8~10N・m(0.8~1.0kgf・m) |
※車種によっては異なる場合があります。
参照:プラグの正しい取り付け方丨NGKスパークプラグ製品サイト
なお、ガスケットのないコニカルシートタイプの場合、一般的な推奨トルクは10~20N・m(1.0~2.0kgf・m)です。
推奨回転角については、プラグの商品箱などに記載されてあることが多いですが(箱に記載がない商品もあります)一般的な数値としては以下のとおりです。
推奨回転角 | ||
---|---|---|
新品の場合 | 再締め付けの場合 | |
φ18mm・φ14mm(※) | 1/2~2/3回転(180°~240°) | 1/12回転(30°) |
φ12mm(※) | 1/2回転(180°) | 1/12回転(30°) |
φ10mm(※) | 1/2回転(180°) | 1/12回転(30°) |
φ8mm (※) | 1/3回転(120°) | 1/12回転(30°) |
平板タイプガスケット | 1/12回転(30°) | 1/24回転(15°) |
コニカルシートタイプ (ガスケットのないタイプ) | 1/16回転(22.5°) | 1/16回転(22.5°) |
※一部例外あり
参照:プラグの正しい取り付け方丨NGKスパークプラグ製品サイト
推奨トルクや推奨回転角を明確に確認できない場合は、メーカーなどに問い合わせましょう。
(3)ネジの潤滑剤は使用しない
スパークプラグを締め付ける際、ネジ部に対して潤滑剤を使用しないようにしましょう。
潤滑剤を使用すると、プラグの締め付け過ぎが生じやすく、ネジ部分がねじ切れる可能性があるからです。
しかし、スパークプラグによっては最初から潤滑剤が塗布されている場合や、むしろ塗布が必要な場合もありますので、各メーカーの指示に従いましょう。
4. トルクレンチの選び方
上述したとおり、スパークプラグの締め付けをする際、トルクレンチがあると便利です。
トルクレンチは、大きく分けて以下の4つの種類があります。
種類の名称 | 概要 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
プリセット型 | 回転方向を一定に保ちやすいタイプ 設定したトルク値に達すると、小さなショックとクリック音で知らせてくれる | ・狭いところや入りくんだところで作業しやすい ・逆回転させると空回りするので、繰り返し作業がしやすい ・ソケットを替えて使用できる | ・トルク計測ができない |
ダイアル型 | 左右両方向でトルクの設定ができるタイプ | ・トルク値の検査や測定がしやすい | ・同じトルクで繰り返し作業がしにくい |
デジタル型 | トルクの値をデジタル表示するタイプ 設定したトルク値に達すると、デジタル音で知らせてくれる。リアルタイムでトルク値がわかる商品もある | ・作業者のスキルの影響を受けにくく、初心者でも作業しやすい ・トルク値の検査・測定をする際に使いやすい | ・費用が高い |
予算に余裕がある初心者の人はデジタル型のトルクレンチを選ぶのがおすすめです。慣れている人はプリセット型を選ぶとよいでしょう。
なお、トルクレンチは、商品によって設定できるトルク範囲が異なります。そのため、トルク範囲の異なるトルクレンチをいくつかそろえておくのがベストです。
スパークプラグの締め付けに使うのであれば、現在のプラグのトルク値を確認したうえで、以下のように比較的小さいトルク値を設定できる商品を選びましょう。
種類の名称 | 商品 | トルク設定範囲 |
---|---|---|
プリセット型 | AP 1/4DR プリセット型トルクレンチ TQ031 | 5~25N・m |
AP 3/8DR プリセット型トルクレンチ TQ029 | 20~110N・m | |
デジタル型 | 9.5sq.デジラチェ Type rechargeable GEKR030-C3A | 2~30N・m |
9.5sq.デジラチェ Type rechargeable GEKR060-R3 | 12~60N・m |
5.スパークプラグのネジを切ってしまった場合は…?
前述したとおり、スパークプラグの締め付けが強すぎた場合、プラグのネジ部分が切れてしまうことがあります。
そのような場合には、エキストラクターという特殊工具によってプラグを抜き取ります。切れたプラグにドリルで穴をあけ、そこにエキストラクターを打ち込み、タップハンドルなどを用いて回転させると、プラグを抜き取ることができます。
プラグを抜き取りにくい場合には、浸透液などの潤滑剤を吹きかけて作業するとよいでしょう。
6.エンジン側のネジが損傷した場合は…?
エンジン側のネジが損傷している場合は、タップと呼ばれるネジ穴を作成する工具を用いて、ネジ穴を再生する必要があります。
なお、タップを使用する際は、スパークプラグ専用の規格かどうか必ず確認しましょう。
また、ネジ穴を作成する際、切削くずが生じますが、くずがエンジン内に入ると故障する恐れがあります。初心者など慣れていない人は専門業者に相談するのがおすすめです。
7.スパークプラグの交換ならグーネットピットにお問い合わせください
スパークプラグの交換を行う際は、適切な締め付けトルクで取り付けなければなりません。また、プラグの脱着の際は、専用のプラグレンチを使用しなければ、プラグが破損する可能性もあります。
そのため、整備に慣れていない人は、専門の業者に依頼するとよいでしょう。
しかし、業者を選ぶ時間がない、信頼できる業者にお願いできるか不安……という人もいるはず。そんな場合はぜひ、グーネットピットにお問い合わせください。車のメンテナンスに関して知識豊富なスタッフが的確なアドバイスをいたします。