故障・修理
更新日:2023.11.30 / 掲載日:2023.11.30
車高調ブラケットを加工してキャンバー角をつけるには?手順とよりおすすめの方法を紹介

車のキャンバー角は、車高調のアッパーマウントの角度を調整することでつけられますが、通常より角度をつける方法として、車高調のブラケットを加工する方法があります。この記事では、その手順について、詳しくご紹介しています。
ただ、車高調のブラケット加工は、施工の難しさや安全に対するリスク、費用対効果の低さなどから、あまり推奨されていません。アッパーマウントの角度調整でできる以上にキャンバー角をつけたいとお考えでしたら、キャンバーボルトを使うことをおすすめします。
この記事では、上記の理由も説明していますので、車の安全性と走行性能を向上させたい人は、ぜひ最後までお読みいただけたら幸いです。
1. 車高調ブラケットを加工してキャンバー角をつけるには
車のキャンバー角(車を正面から見たときのタイヤの傾き)は、車高調のアッパーマウントの角度を調整するとある程度つけられますが、もしそれ以上に角度をつけたいとなった場合の方法として車高調ブラケットの加工があります。
具体的には、ロア側のブラケット部分についている長穴を横に広げます。これによって、ナックルアームをずらして固定できるようになり、キャンバー角がつきます。
なお、ロア側のブラケットには上下に二つ穴が空いていますが、ネガティブキャンバーにする(タイヤを内側に倒す)ときは、「下の穴を外側に広げる」のが一般的とされています。

「上の穴を内側に広げる」ことでも調整できますが、車高調とタイヤを接合するナックルが車高調(正確にはショックアブソーバー)に接触し、あまり角度がつけられないためです。
(2)加工するときに必要な道具
車高調のブラケットを加工するときは、以下の道具を用意するとよいでしょう。
1.リューター:穴を広げるために必要な工具
2.ビット:リューターの先にセットして削るための工具
3.棒ヤスリ:加工後のバリを取るための工具
4.メジャー、ノギス、スケールなど:正確な寸法を測るために必要
5.マーキングツール:ボディ補修用のタッチペイントや油性のペイントマーカーなど、加工する位置をマークするために使用
6.キャンバーゲージ:キャンバー角を調整するための道具
(3)加工の手順
車高調のブラケットを加工するときの大まかな手順は、以下のとおりです。
1.車高調のブラケットに、どの程度まで加工するのか目印を付ける
2.リューターを使って穴を横に広げる
3.目印まで穴を広げたら、棒ヤスリを使ってバリを丁寧に取り除く
穴を広げるときは、削りすぎるとブラケットの強度が低下してしまうので、少しずつ様子を見ながら慎重に削りましょう。また、広げるのは横方向のみで、上下に広げてしまわないように気をつけてください。
2. 車高調ブラケットの加工におけるデメリット
車高調のブラケットを加工すれば、車のキャンバー角をつけることが可能です。ただし、以下のようなデメリットがあります。
(1)施工が難しい
車高調のブラケットを加工するときは、まず車の操縦性や車高調の耐久性、それぞれのタイヤとのバランスなどを考えながら、適切な加工位置を見つける必要があります。
さらに、専門的なツールを使い、見つけた加工位置とズレがないように加工しなければいけません。
これらができていないと車両の走行性能に影響を及ぼし、最悪の場合、事故につながる可能性もあります。
(2)費用がかかる
自作で車高調ブラケットの加工を行う際の費用は、必要なツールの購入費用が発生します。特にリューターを購入するときに、数万円程度の費用が必要となる可能性があります。
また、専門の業者に依頼する場合、施工費として数万円必要となることもあります。
(3)走行中にキャンバー角がズレる可能性がある
車高調のブラケットを加工すると、、路面からの強い衝撃によってロアブラケットとナックルアームがずれ、キャンバー角が変わってしまう可能性もあります。トルクレンチを使用して、規定トルクで締め付けるようにしてください。
3. キャンバー角の調整はキャンバーボルトの使用がおすすめ
車高調のブラケットを加工してキャンバー角をつける方法は、上記のようなデメリットがあるため、専門的な知識や技術を持っている、あるいは特別なこだわりがあるなどがないかぎり、行わないほうが無難です。
アッパーマウントを調整したうえで、さらにキャンバー角をつけたいのであれば、まずはキャンバーボルトを使ってみましょう。
(1)キャンバーボルトとは?
キャンバーボルトとは、キャンバー角の微調整ができる偏芯ボルトです。もともとついていた純正ボルトのひとつと入れ替え、「爪」と呼ばれる部分の向きを変えることでキャンバー角がつけられます。また、取り付けたあとは、ボルトを回転させて「カム山」と呼ばれる部分を動かすだけで、キャンバー角の調整ができるのも特徴です。
キャンバーボルトは、車高調ブラケットの加工と比較して特殊な技術や工具を必要としません。また、2,000~10,000円程度で販売されているため、ブラケット加工よりも調整そのものの費用をおさえることができます。
(2)キャンバーボルトの取り付け方法
キャンバーボルトを取り付けるときは、各タイヤのキャンバー角をそろえられるように、カム山の向きを示す印をボルトに事前につけておきましょう。
そのうえで、以下のような手順で取り付けます。
1.車をジャッキアップする
2.タイヤを外す
3.純正のボルトを外す(交換しないボルトのほうも少し緩める)
4.キャンバーボルトを差し込む
5.キャンバー角を調整する
6.キャンバーボルトをトルクレンチを使って固定する(締め付けはボルトの頭ではなく、ナット側を締め付けること)
なお、キャンバーボルトでの調整を含め、キャンバー角を変えると、トー角がずれるので補正(アライメント調整)する必要があります。ただし専門的な技術や道具が必要になるので、整備工場やディーラーに依頼するのが一般的です。
トー角とは |
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車を上から見たときのタイヤ先端の向き。タイヤの向きによって、「トーイン」もしくは「トーアウト」と呼ばれる ・トーイン:タイヤ先端が内側に向いている ・トーアウト:タイヤ先端が外側に向いている |
4. キャンバーボルトの選び方
キャンバーボルトを購入するときは、次のポイントをおさえておきましょう。
(1)キャンバーボルトは基本的に純正品を選ぶ
キャンバーボルトは、車のメーカーと同じ製品(メーカー純正品)がおすすめです。
純正品はメーカーが、自社の車に最適な製品を、一定以上のクオリティを担保しながら設計・製造しているため、取り付けたことで走行性能が悪くなるなどの心配がありません。
また、その車に合った製品を簡単に購入でき、「取り付けるときになって初めて、自分の車に適合しないキャンバーボルトだと気づいた」といったトラブルが起きにくいメリットもあります。
(2)純正品以外でおすすめのキャンバーボルト4選
純正以外のキャンバーボルトでは、以下の製品がおすすめです。
①MONROE(モンロー):マジックキャンバー

ドイツの品質保証機関「TUV」の認証を受けているキャンバーボルトです。キャンバー角を約プラス3度~マイナス3度の間で調整できます。
②J-LINE:キャンバーボルトプロ

材料にSCM435(クロムモリブデン鋼)を使用し、優れた耐久性を持つキャンバーボルトです。最先端の塗装技術「DISUGO」によって、耐食性が高いのも特徴として挙げられます。
2~3度調整できるレギュラータイプと、3~4度調整できる鬼キャンタイプの2種類が展開されています。
※鬼キャンとは、ネガティブキャンバーのなかでも、鬼のようにキャンバー角がついていること
③アムテックス:キャンバーボルト SPC EZカムXR

出典:81240 SPC EZカムXR 10mm(キャンバーボルト 2本入り)丨アムテックス
ドイツの品質保証機関「TUV」の認証を受けた、高品質なキャンバーボルトです。取り付け方が動画でわかりやすく説明されています(キャンバー調整ボルト〈EZカムXR〉の取り付け/交換方法)。調整幅は、約プラス1.5度~マイナス1.5度です。
④Largus(ラルグス):キャンバーボルト

多くのユーザーから高い評価を受けているキャンバーボルトです。スタンダードで品質の高い製品のため、迷ったら検討してみるとよいでしょう。約プラス1.75度~マイナス1.75度で調整できます。
5. 車の足回りに関してお悩みがありましたらグーネットピットにご相談ください
車高調ブラケットの加工は、アッパーマウントを調整したとき以上にキャンバー角をつけることができます。
ただし、デメリットが大きく、あまりおすすめできる方法ではありません。本記事で紹介したように、キャンバーボルトの利用をぜひ検討してみてください。
グーネットピットでは、車の足回りに関して専門知識を有するスタッフが多数在籍しています。キャンバーボルトに取り替えたいが自信がないなどをはじめ、足回りに関するさまざまなお悩みにお応えできますので、もしよろしければ一度ご相談いただけたら幸いです。