故障・修理
更新日:2022.05.18 / 掲載日:2022.05.18
車のバッテリー上がりの原因と対処方法、やってはいけない注意点

車のバッテリー上がりとは、バッテリーの電気不足でエンジンがかからなくなる状態のことです。
バッテリーが上がって電気の供給ができなくなると、セルモーターの起動すら不可能になります。その結果、エンジンスターターボタンを押したりキーを回したりしても、エンジンがかからなくなるのです。
JAFの調査結果によると、車のバッテリー上がりは、JAFの出動理由のなかで最も多いトラブルです。そのため、バッテリー上がり自体は、特に珍しいことではありません。
しかし、旅先などでバッテリーが上がった場合、多くの人はパニック状態に陥ります。ですから、バッテリー上がりに素早く対応するためにも、原因や対処法などを知っておいたほうがよいでしょう。
今回は、バッテリー上がりの原因と5つの対処方法、バッテリー上がりの作業料金などを解説します。後半では、バッテリー上がりの予兆を見分けるコツや、絶対にやってはいけないこともご紹介します。
バッテリー上がりの原因

バッテリー上がりのおもな原因は、バッテリー自体の放電と劣化の2つです。ただし、なかには、バッテリー以外の故障などが原因で、エンジンがかからないこともあります。
ここでは、バッテリー上がりのおもな原因と、注意すべき類似の症状を見ていきましょう。
バッテリーの放電
まず、バッテリーが上がる原因の大半は、自然放電によるものです。
例えば、ずっと駐車場に停めたままの車は、バッテリーの電気を全く使っていないように思われがちです。しかし、実際は、以下のような電子機器のバックアップ電源として、バッテリーから電気が常時取り出されています。一般的な電気の消費量は、一日あたり10~30mAです。
- ・コンピュータ
- ・セキュリティシステム
- ・オーディオ
- ・カーナビ
- ・時計 など
ある程度の距離を一定の速度で走り続けていればバッテリー充電を行なえますが、車を何日も駐車場に停めっぱなしにしておいた場合、電気が減り続けることで、バッテリーが上がりやすくなります。
バッテリーの劣化
車のバッテリーは、定期的な点検・交換が必要な消耗部品です。古いバッテリーをずっと使い続けていれば、バッテリー上がりの症状が出ることもあります。
車種別のバッテリー寿命は、以下のとおりです。
- ・一般的な車:2~5年
- ・アイドリングストップ搭載車:2~3年
- ・ハイブリッド車:4~5年
ただし厳密には、車の乗り方や電装機器の種類・数によって、バッテリー消耗の度合いが大きく変わってきます。例えば、一般車両よりもはるかにたくさんの電装機器を搭載している場合は、それだけ自然放電もしやすく、バッテリーの消耗や劣化が進む可能性も高いでしょう。
バッテリーが上がるそのほかの原因
自己放電や劣化のほかにも、以下の原因でバッテリーが上がることがあります。
- ・エンジンを切り、ヘッドライトを点けたまま車から離れてしまった
- ・エンジンをかけない状態で、エアコンなどを使ってしまった
- ・半ドアのまま車から離れたことで、室内灯が点いたままだった
- ・寒冷地でバッテリー性能が落ちてしまっていた など
バッテリー上がりと類似した症状に注意
バッテリー上がりと似ているものの、実際にはバッテリー上がりが原因ではないものもあります。
室内灯やメーター類は点灯するものの、セルモーターが動作せずにエンジンがかからないケースでは、バッテリーではなく、セルモーターが故障している可能性があります。
また、ガソリンがなくなってしまうとエンジンがかかりませんが、バッテリー上がりが原因だと勘違いする場合もあります。ガソリンがなくても室内灯やメーターが点灯し、セルモーターも音を立てて動作するのであれば、バッテリー上がりではないと判断してかまいません。
そのほかに、シフトレバーがパーキング(P)に入っていないためにエンジンがかからないケースや、盗難防止のステアリングロックが作動しているケースなどもあります。
バッテリー上がりの対処方法5つ

バッテリー上がりを起こしてしまっても、対処法を知っていればエンジンをかけることができます。
バッテリー上がりを起こした際の対処法5つについて、見ていきましょう。
ケーブルを救助車とつなげる(ジャンピングスタート)
ジャンピングスタートとは、ケーブルを他の車(救助車)とつなげて電気を分けてもらい、エンジンをかける方法です。
ジャンピングスタートは、基本的に以下の手順で行ないます。
1:赤いケーブルを故障車のバッテリーのプラス端子につなぎ、反対側を救助車のバッテリーのプラス端子につなぐ
2:黒いケーブルを救助車のマイナス端子につなぎ、反対側を故障車の金属部分(エンジンやフレーム)につなぐ
エンジンが始動したらしばらく切らずに放っておき、バッテリーが充電されるのを待ちましょう。
小型バッテリーとつなげる(ジャンプスターター)
ジャンプスターターと呼ばれる小型バッテリーを使うと、自力でエンジンをかけられます。
ジャンピングスタートには、救助車とケーブルが必要です。一方で、ジャンプスターターの場合は、救護車を呼ばなくても自分でエンジンをかけられるのがメリットとなります。
知らない土地で起こる万が一のバッテリー上がりに備える場合は、ジャンプスターターを入手し、車に積んでおくことも検討してみましょう。
バッテリー本体を取り出して充電する
バッテリーを車から取り出して、直接充電する方法もあります。
バッテリーを充電する基本的な方法は以下のとおりです(バッテリーの種類によって多少異なる場合もあります)。
1:車からバッテリーを取り出してから、液口栓を取り外す
2:充電前にバッテリー液量を確認し、低下している場合は補水する
3:説明書の記載にしたがって充電する
4:液口から盛んにガスが発生したら、ガスが抜けるまで待つ
5:液口栓をバッテリーに取り付ける
バッテリー充電に不慣れな場合は、思わぬ事故につながる可能性があるので、無理をしないように注意しましょう。
ロードサービスや修理業者を呼んで助けてもらう
自力でバッテリーを回復させるのが難しい、バッテリーを回復させるための持ち物がない場合は、ロードサービスを呼んで助けてもらう方法があります。
具体的な作業料金や仕組みは、のちほど紹介します。
新しいバッテリーに交換する
バッテリー上がりを根本的に解決するための方法は、バッテリーを新しいものに交換してしまうことです。
バッテリー上がりが発生するということは、使用中のバッテリーが損耗している可能性が高いといえるでしょう。
この場合、充電などによって一時的に回復したとしても、いずれやって来るであろうバッテリーの寿命を避けるのは困難です。
一方で、バッテリー自体を新しいものに交換すれば、劣化や寿命によるバッテリー上がりを根本的に解決することにつながります。
しかし、メンテナンス初心者の場合、自分で行なうバッテリー交換に難しいイメージがあるかもしれません。
この場合は、車の定期点検やメンテナンスを得意とする専門業者に相談するのがおすすめです。
バッテリー交換をしてくれる業者を探すなら、最寄りの整備工場を検索できるだけでなく、充実した店舗情報で比較検討も簡単にできる、グーネットピットがおすすめです。せひご活用ください。
バッテリー上がりの作業料金

バッテリー上がりの作業料金は、タイヤ交換やオイル交換などの一般のメンテナンス項目と比べて、明確な金額の算出や比較が難しいです。
その第一の理由は、車のバッテリーが上がった場合、トラブルの発生場所まで業者に来てもらう必要があるからです。
例えば、カーショップの徒歩圏でバッテリーが上がった場合、業者にほかの予約さえなければ、無料~低料金の訪問料ですぐに駆け付けてもらえる可能性が高いでしょう。
一方で、例えば、店舗から離れた山奥でバッテリーが上がった場合、そこに来てもらうまでの時間やガソリン代がかかることになります。
また、バッテリー上がりの場合、その場で直せるものと直せないものがあります。
例えば、新しい車が、室内灯の点けっぱなしでバッテリーが上がっただけの場合、業者の救護車とつなげてジャンピングスタートをすればすぐに作業完了です。
一方、バッテリーの劣化がかなり激しく、ジャンピングスタートでの回復が難しい場合、バッテリー交換が必要になる可能性もあるでしょう。この場合、交換しない限り走行できないわけですから、工賃のほかに車をレッカー移動させる費用がかかるかもしれません。
このように、バッテリー上がりの作業料金には、オイル交換などのように一律にすることが難しい特徴があります。そのため、バッテリー上がり作業の比較をする場合、以下のようにさまざまな要素から総合的に判断する必要があるでしょう。
- ・どの業者に依頼するか?
- ・業者にどこまで来てもらうか?
- ・簡単な修理で自走可能なトラブルか?
- ・昼間の営業時間内か?深夜か? など
ここでは、バッテリー上がりで利用されることの多い3つの依頼先から、作業料金やサービスの一般的な特徴を紹介します。
自動車保険に付帯しているロードサービスの場合
自動車保険のロードサービスは、保険に自動で付帯されることが多く、バッテリー上がりでも比較的利用しやすいサービスです。ただし、具体的な作業料金や利用条件は、以下のように保険会社によって大きく異なります。
- ・保険期間中1回だけ無料
- ・30分以内の作業分だけ無料 など
自動車保険のロードサービスで注意したいのは、上がったバッテリーが復活しない場合のレッカー費用です。多くの保険会社では、以下のようにレッカーサービスの無料の範囲を独自に設定しています。
- ・35km
- ・60km
- ・100km
- ・15万円
- ・30万円 など
自動車保険のロードサービスの場合、保険会社が指定する最寄りの整備工場が対応してくれるのが一般的です。
そのため、例えば、整備工場から数十km離れた場所でバッテリー交換が必要になった場合、契約するロードサービスによっては、レッカー費用無料の範囲を超えた一部が実費になることもあるでしょう。
民間のロードサービスの場合
民間ロードサービスとは、JAFなどのことです。民間の大きな魅力は、入会金と年会費を払って会員になることで、何度でも原則無料でサービス利用できる点になります。JAFの場合、入会金と年会費は、会員の種類によって異なります。
- ・個人会員:入会金2,000円、年会費4,000円
- ・家族会員:入会金無料、年会費2,000円
- ・法人会員:入会金2,000円、法人特定会費2,000円、車両特定会費2,000円
例えば、JAFに未入会の人がバッテリー上がりでJAFを呼んだ場合、昼間・一般道での応急始動作業で13,130円の費用がかかります。一方でJAF会員の作業料金は無料です。
ただし、バッテリー交換が必要な場合、バッテリーなどの部品代は実費請求されます。レッカー移動は15kmまで無料となっており、15km超過1kmごとに730円かかる仕組みです。
カー用品店や修理業者の場合
以下のような業者でも、ジャンピングスタートやバッテリー交換などの作業は可能です。
- ・カーディーラー
- ・カー用品店
- ・ガソリンスタンド
- ・整備工場
ただし、これら業者の場合、まず、バッテリーが上がった場所まで出張してくれかどうかの確認が必要となります。
例えば、自動車保険のロードサービスと提携する整備工場の場合、ロードサービスと同様に24時間の出張修理に対応している可能性が高いでしょう。一方で、ガソリンスタンドの場合、出張修理は行なっていないところがほとんどとなります。
修理業者のバッテリー上がり対応も、やはり作業料金は「どの場所で、どのような対応をするか?」で変わってきます。
グーネットピットの実績では、お客様側でバッテリーを購入済みで、近隣市町村での出張修理だった場合、5,000円(出張料3,000円+バッテリー交換料2,000円)で対応できた事例もあります。
一方で、自走不可能な車が積載車での入庫となった場合、工賃+バッテリーなどの部品代+車両運搬料で相応の費用がかかることもあるでしょう。
バッテリー上がり対応の料金相場や作業の流れが気になる人は、グーネットピットの作業実績一覧も参考にしてください。
バッテリー上がりでやってはいけないこと

バッテリーが上がってしまったときに間違った行動を起こすと、車の故障や思わぬ事故などにつながる可能性があります。
ここでは、バッテリー上がりのトラブル時に、絶対にやってはいけないことを解説しましょう。
バッテリー上がりは長時間放置しない
バッテリー上がりは長時間放置しないようにしましょう。その理由は、長時間放置すると、バッテリーがダメージを受けて劣化してしまうからです。
劣化したバッテリーは充電できる量が少なくなります。充電量が少なくなったバッテリーを使い続けた場合、充電をしても元の状態まで回復できず、再びバッテリー上がりを引き起こしやすくなります。
自分で対処できないときは無理に触らない
バッテリー上がりに自分で対処できそうにない場合は、無理に触らないようにしましょう。
無理をしてバッテリー上がりに対処しようとすると、思わぬ故障や事故などの原因になる可能性があります。
例えば、バッテリー上がりの対処法の一つに、ブースターケーブルと呼ばれるケーブルを他の車につなぐ方法があります。もし、ケーブルをつなぐ場所や順序を間違えてしまうと、バッテリーのみならず、車自体が故障してしまう可能性があるため、注意が必要です。
また、ハイブリッド・PHEV・電気自動車などは基本的に救助車として使用できません。使用する車を誤ると、二度手間や故障の原因になる可能性があります。
充電直後に電飾機器をフルで使わない
バッテリーを充電した直後は、エアコンやカーナビなどの電装品をフルで使わないようにしましょう。
例えば、車のエアコンはコンプレッサーという部品を使って空気を形成していますが、コンプレッサーはエンジンの回転によって動作します。
エアコンを使うと、エンジンの回転によるパワーをコンプレッサーに回さなければならないので、バッテリーの充電の妨げになってしまう可能性があるのです。
バッテリーを十分に充電できなくなる可能性があるので、充電中は他の装置の使用をできるだけ控えるようにしましょう。
バッテリー上がりはしばらく待つと復活する?

バッテリー上がりは、しばらく待てば復活する場合がある、といわれることがあります。
しかし、しばらく待てばバッテリーが復活するケースは決して多いとはいえません。しばらく待つ方法でバッテリーが復活する可能性があるおもなケースは、気温が低い場合と、過放電の場合です。
気温が低いとバッテリーの放電性能が低下し、一時的にバッテリー上がりの状態になります。しかし、この状態で気温が上がると、放電性能の回復によってバッテリーが使えるようになる場合があるのです。
また、過放電によって電圧が低下すると、エンジンがかからなくなることがありますが、しばらく待つと電圧が回復し、エンジンをかけられるようになる可能性があります。
ただし、バッテリーの自然復活は多くの時間がかかるうえに、確実に復活するとはいい切れません。外出先などで時間に余裕がない場合は、当ページで紹介した別な対処方法を模索したほうがよいでしょう。
バッテリー上がりを予防!前兆を見分けるコツ

バッテリー上がりが発生する前に異変を感知できると、バッテリー上がりを防げるだけでなく、発生を予防することにもつながります。
そこで、一般にバッテリー上がりの前兆である可能性が高い症状を、いくつか見ていきましょう。
まず、エンジンがかかりにくい、パワーウィンドウの開閉が遅い、アイドリングストップしないような場合は、バッテリー上がりの前兆の可能性があります。
また、走行時と停車時でヘッドライトの明るさが違うなど、ライトが暗くなってしまった場合は、バッテリー上がりの前兆の可能性があるといえるでしょう。
この判断ができる理由は、ハロゲンランプの場合、バッテリーが原因で電圧が下がってしまうと、ライトがその分暗くなってしまうからです。
そして、バッテリー上がりを予防するには、こまめにエンジンを回してバッテリーを充電し、電力の消費を抑えることが重要となります。
まとめ
車のバッテリー上がりの多くは、バッテリーの放電もしくは劣化が原因で起こることが多いです。ただし、毎日の走行で新しいバッテリーを定期的に充電していても、以下のような原因でバッテリーが上がることもあるため、注意が必要です。
- ・室内灯やヘッドライトをつけたまま、車から長時間離れてしまった
- ・半ドアのまま、車から長時間離れてしまった
- ・寒冷地でバッテリー性能が落ちてしまった など
バッテリーが上がった場合、以下の方法で対処するのが一般的です。
- ・ケーブルを救助車とつなげる(ジャンピングスタート)
- ・小型バッテリーとつなげる(ジャンプスターター)
- ・バッテリー本体を取り出して充電する
- ・ロードサービスを呼んで助けてもらう
- ・新しいバッテリーに交換する
バッテリー上がりの作業料金は、「どのような業者が、どの場所で、どのような対応をするか?」で変わってきます。バッテリー劣化で自走できない場合、レッカー代を含めて多額の料金がかかることもあるでしょう。
外出先で急なバッテリー上がりに悩まされないためにも、車の定期点検は必ず行なうようにしてください。