故障・修理
更新日:2022.02.28 / 掲載日:2022.02.28
ブレーキフルードとは?役割や適切な交換時期について解説

ブレーキフルードとは、自動車の油圧式ブレーキを作動させるために使用するオイルです。自動車を運転するにあたって、ブレーキは絶対に欠かせない機能なので、当然ながらブレーキフルードも重要となってきます。
しかし、自動車を運転する機会は多くても、実際のところブレーキフルードについて詳しく知らないという方も多いのではないでしょうか。
ここでは、ブレーキフルードの役割や種類を踏まえつつ、適切な交換時期や交換にかかる料金相場など解説しています。
ブレーキフルードとは?

ブレーキフルードとは、一般的な自動車に搭載されている、油圧式ブレーキの内部を満たしているオイルのことです。わかりやすく“ブレーキオイル”と呼ばれることもあります。
ブレーキペダルを軽く踏むと、自動車を停止させるための制動力が発生しますが、これはブレーキフルードによる油圧がペダル踏力を増幅させるおかげです。自動車は、その重量や構造から自転車のように人力だけで制御できないので、油圧によるサポートが欠かせません。
エンジンを切った状態でブレーキペダルを踏むと、運転中より固い・重いと感じるようになりますが、これは油圧がエンジンの力を借りて作られているからです。エンジンを停止している場合、油圧が効かなくなるので、ブレーキペダルを踏むときのフィーリングも変わります。
ブレーキフルードへの理解を深められるよう、役割や種類についてもまとめたので、ぜひ参考にしてみてください。
ブレーキフルードの役割
ブレーキフルードの役割を理解するためには、前提知識として油圧式ブレーキがどのように作動するのか、基本的な仕組みを知っておかなければなりません。
ブレーキペダルを踏むと、ブレーキブースター(倍力装置)によって増幅されたペダル踏力が、マスターシリンダーに伝わります。このマスターシリンダーがペダル踏力を油圧へと変換して、ブレーキラインという配管に伝達されることを押さえましょう。
ブレーキライン内はブレーキフルードで満たされており、油圧の力をブレーキキャリパーへとさらに伝達します。最終的にブレーキキャリパーのピストンを押し出して、ブレーキローターを挟み込むことで制動力が発生するのです。
油圧式ブレーキにおける力の伝達の順番をまとめたので、こちらも一緒にご確認ください。
1.ブレーキペダルを踏む
2.マスターシリンダーが油圧に変換
3.ブレーキライン(配管)のブレーキフルードに伝達
4.ブレーキキャリパーのピストンを作動
これらはディスクブレーキが作動する仕組みですが、ドラムブレーキもドラム内にピストンがあるので、油圧の使い方は同じと考えて問題ありません。
上記をまとめると、ブレーキフルードはペダル踏力を各ブレーキ装置に伝える橋渡し役といえるでしょう。
ブレーキフルードの種類と規格
ブレーキフルードと一口にいっても多種多様であり、数多くの製品が出回っていますが、大きく分けると「グリコール系」「シリコーン系」「鉱物油系」の3種類があります。一般的に使われているものは、ブレーキフルードとしての安定性が高く、シールなどゴム系素材との相性も良いグリコール系です。
また、種類とは別に規格も存在しますが、こちらは日本工業規格(JIS)と米国連邦自動車安全基準(FMVSS)の2種類に分類されます。特に後者の「DOT規格」が有名ですが、一般的に「DOT3」か「DOT4」が使われることが多いと覚えておきましょう。
ブレーキフルードを交換する場合、基本的に各メーカーの純正品と同じ規格の製品を使えば問題ありません。街乗りだけならDOT3を、スポーツ走行を楽しむならDOT4を選びましょう。
ブレーキフルードは交換が必要?放置するとどうなる?

エンジンオイルと同じく、ブレーキフルードも定期的に交換しなければなりません。なぜ交換する必要があるのか、放置すると何が起こるのかなど詳しく解説します。
ブレーキフルードを交換すべき理由とは?
エンジンオイルほど寿命は短くありませんが、ブレーキフルードも時間経過で劣化してしまいます。そのままにしておくと性能が少しずつ低下して、最終的にはペダル踏力の伝達という本来の目的を果たせなくなってしまうため、大事故につながりかねません。
ブレーキフルードが劣化する原因としては「吸湿性」が挙げられます。一般的に使われているグリコール系のブレーキフルードは、吸湿性が非常に高く、空気中の水分を取り込んでしまうのです。
ブレーキフルードの劣化が勝手に改善されることはないので、タイミングを見計らってきちんと交換しましょう。
ブレーキフルードの劣化は放置厳禁!
自動車を長時間使用すればするほど、ブレーキフルードは多くの水分を取り込んで劣化してしまいます。すると、ブレーキフルードの沸点も低下してしまいますが、これこそが懸念すべき大問題といえるでしょう。
油圧式ブレーキが作動する過程でブレーキフルードには熱が伝わりますが、沸点が低いと、その分だけ液体は沸騰しやすくなります。ブレーキフルードが沸騰した場合、液体内に気泡が発生しやすくなりますが、この気泡が圧力の伝達を妨げてしまうのです。
油圧が各ブレーキ装置に伝わりにくくなると、結果としてブレーキペダルを踏んでも効きにくいという事態に陥る可能性があります。劣化したまま放置すると、最終的にまったくブレーキが効かなくなる「ベーパーロック現象」が起きかねため、そうなる前に必ず交換しなければなりません。
ブレーキは自動車のドライバーや同乗者だけではなく、周囲の通行人の命にも関わる重要な装置です。大事故を未然に防ぐという目的も踏まえつつ、ブレーキフルードの適切なメンテナンスを行ないましょう。
ブレーキフルードの適切な交換タイミングは?

自分で自動車を整備したことがない、あるいは整備経験が少ない場合、ブレーキフルードの交換タイミングに迷ってしまうこともあるかもしれません。
そこで、ブレーキフルード交換のタイミングの目安や、劣化を見分ける交換サインについても解説します。
ブレーキフルードの交換タイミングは2~4年
一般的にブレーキフルードの寿命は2~4年程度といわれているので、交換タイミングもそれが目安となります。車種や走行距離、使用環境によっても変わるため、実際は車検ごとに交換するケースが大半です。
特に普段から定期点検を受けていない場合、車検以外でブレーキフルードをチェックすることはなかなかないので、それを踏まえても車検は適切な交換タイミングといえるでしょう。
ただし、場合によっては半年~1年程度で劣化が進む可能性もあるので、普段から運転する機会が多かったり、スポーツ走行を行なったりする方は、早めの交換を心がけたほうが安全です。
また、ブレーキフルードは自動車を運転していなくても劣化が進行するため、たまにしか乗らないという方も注意しなければなりません。
ブレーキフルードの交換サイン
年数以外の交換サインとしては、ブレーキフルードの「色」やブレーキペダルを踏んだときの「フィーリング」も判断材料となります。
新品のブレーキフルードは無色透明、もしくはそれに近い薄い黄色やあめ色など、比較的澄んだ色をしていることが一般的です。しかし、劣化が進行していると茶色や黒色など、黒みがかった濁りのある色に変化します。
あまりシビアになりすぎる必要はありませんが、実際に目視して濁っていると感じたら、そろそろ交換タイミングだと考えたほうがよいでしょう。ボンネットを開けてリザーバータンクを覗くだけでチェックできるため、整備経験が少ない方でも確認しやすい方法です。
一方、フィーリングについては、ブレーキペダルを踏んで「フカフカする」「ペダルが奥まで入り込んでしまう」といった症状があれば、交換サインとなります。ただ、本来はフィーリングが変化する前に交換すべきなので、その辺りも注意しましょう。
ブレーキフルードはどこで交換できる?料金の相場は?

ブレーキフルードを交換する場合、整備スキルを身につけたプロの業者に依頼するのが一般的です。しかし、業者と一口にいっても種類はさまざまであり、料金や特徴もそれぞれ異なるので、どこに依頼すべきか迷ってしまうかもしれません。
そこで、ブレーキフルードの交換を依頼できる業者や料金の相場、業者選びのポイントなど解説します。
ブレーキフルードを交換できる業者は?
ブレーキフルードの交換作業を依頼できる業者については、以下のような候補が挙げられます。
・ディーラー
・自動車整備工場
・カー用品店
・ガソリンスタンド
・民間車検業者
工賃や施工時間、スタッフの対応は業者によって異なるため、きちんと情報を集めて自分に合った業者を選びたいところです。
また、料金があまりに安い業者の場合、リザーバータンク内のブレーキフルードのみ交換となる可能性もあるので、あらかじめ注意しましょう。
ブレーキフルード交換の費用は?
業者にブレーキフルードの交換作業を依頼する場合、工賃はおおよそ4,000~5,000円程度です。しかし、業者や店舗によって変動するので、あくまでも目安料金として覚えておきましょう。
また、ブレーキフルード自体の購入費用がかかってくることにも注意が必要です。純正品なら1リットルあたり2,000円程度が相場ですが、こちらもメーカーや種類によって変動するので、多少の増減はあるかもしれません。
工賃とブレーキフルード代をトータルすると、料金はおおよそ1万円前後となります。なお、車検でブレーキフルード交換も同時に依頼すると、割引が適用されるケースもあるので、その辺りも事前にチェックしておきましょう。
【ブレーキフルード交換】業者選びのポイント
ブレーキ周りの整備は命にも関わるため、以下のようなポイントを踏まえながら、確かな実績のある業者を選びたいところです。
・ホームページなどで対応実績や作業実績を公開している
・インターネット上での口コミ評価が高い
・明朗会計である
・スタッフの対応や雰囲気が良い
質の高い業者を探しているなら、作業実績も確認できるグーネットピットをご活用ください。
ブレーキフルードはセルフでも交換できる?

まず、結論から述べるとブレーキフルードのセルフ交換は可能ですが、安全性や作業効率の観点から考えるとおすすめできません。
先述したようにブレーキは自動車に乗るドライバーや同乗者、その周辺を行きかう歩行者などの命に関わる重要な装置です。作業ミスを起こすとブレーキの効きが悪くなったり、ブレーキ自体が故障したりする可能性もあるので、よほどの熟練者出ない限り、セルフ交換は避けたほうが無難でしょう。
実際、ブレーキフルードの交換は単にオイルを入れ替えるだけではなく、ジャッキアップしてタイヤを外すなど、難しい作業も一緒に行なう必要があります。特に「エア抜き」という作業は難易度が高く、車体を地面から浮かせて固定するか、もしくは高額な専用ツールを使わなければ実施できません。
エア抜きがうまくいかなかった場合、ブレーキが効かなくなったり、ABSユニットにエアが入り込んで抜けなくなったりする可能性もあります。このようなトラブルを踏まえても、安易に実施すべきではないといえるでしょう。
また、ブレーキフルードは車体の塗装面にダメージを与えることも、セルフ交換をおすすめできない理由です。もし、塗装面に付着した場合、すぐ洗い流せば基本的に問題ありませんが、業者に依頼したほうが安全・確実でしょう。
まとめ
ブレーキフルードは自動車のブレーキ作動に欠かせないものであり、命に関わるといっても過言ではない装置です。ブレーキフルードの劣化を放置すると、いざというときにブレーキが効かず、取り返しのつかない大事故を引き起こしかねないので、定期的に必ず交換する必要があります。
また、ブレーキフルードの交換作業は難易度が高いため、セルフで無理に実施すべきではありません。確かな整備スキルと実績のある業者を探して、作業を依頼してみましょう。