故障・修理
更新日:2021.08.13 / 掲載日:2021.08.06
HONDAスーパーカブ復活大作戦!

以前、オートメカニック誌の企画でレストアしたスーパーカブ。苦労して完成させたものの、その後あまり乗る機会がなく、気が付けば3年間も放置。その結果あろうことか不動車に逆戻り……。でもちょっと手を加えればOKな感触も。再び走らせるためのメンテナンスを行ってみた。
●文&写真:橘 祐一
カブの頑丈なエンジンは軽い整備で息を吹き返す
2017年から2018年に約1年間にわたってオートメカニック誌に連載していた「HONDAスーパーカブ復活作戦」。錆だらけで不動だった個体を全バラにして、フレーム塗装やエンジンのオーバーホール(以下OH)を行い復活させた。完成直後は林道ツーリングやお買い物にちょこちょこ乗っていたものの、駐車場の隅にカバーをかけ、3年近くが経過してしまった。
筆者はこの春、歩いて行ける距離にコンビニすらないほどの田舎に引っ越したため、ちょっとした買い物に行ける足が欲しくなり、埃だらけのこのカブを引っ張り出してきたのだった。ずっとカバーをかけていたので酷いサビはないものの、シートにはカビが生え、埃だらけ。当然エンジンはかからないし、ブレーキも引きずっている。これを安全にかつ快適に走らせるためにメンテすることにした。
まずはエンジンを動かすためにキャブレターをOH。古くなったガソリンがワニス状になり、あちこちにこびりついているのでクリーニングした。今回、パッキン類はまだ柔らかかったので交換しなかったが、OHと同時に交換するのがベストだ。ドライブチェーンも本体から取り外して洗浄。カブにはチェーンカバーが付けられているが、意外にも結構汚れていた。ホイールを取り外して錆の出ていたブレーキドラムをワイヤーブラシで磨き、シューのカム部やホイールベアリングはグリスアップしておいた。ワイヤーやレバーなどの可動部に注油し、サビ落としとシートのカビを落として完成! 工程は多いものの、それほど難しい作業もなく、無事に走行できる状態になった。燃料やエンジンオイルが古いままだとトラブルの元になるので、この後すぐに交換しておいた。
キャブレターを徹底的に洗浄!

キャブレターを取り外す場合、コック付きのモデルは燃料コック部分を先に取り外せばガソリンが漏れることがない。

スロットル付近など、吹き返しで付着したカーボン汚れにはエンジンコンディショナーが効果的。泡状になるのでスロットルにたっぷり吹き付ける。

ジェット類やホルダー、アイドルスクリュー、ネジ類などをすべて取り外して、穴という穴にクリーナーキャブをスプレーする。

取り外したジェット類はフロートチャンバーに入れ、クリーナーキャブをたっぷり注ぎ、揺すって汚れを落とす。長時間のつけおきはNG。

ジェット類は穴部分にクリーナーキャブのノズルを差し込んで吹き付け、小さな穴がすべて通っていることを確認しておく。

パーツクリーナーで液剤を洗い流し、汚れがついていないかを再度確認。これらを再び元どおりに組み立てれば完成。
ドライブチェーンのクリーニング&注油!

スーパーカブにはチェーンカバーがついているので、チェーンオイルで周囲が汚れず、チェーン自体も汚れがつきにくい。

カバーを取り外し、チェーンを取り出す。小排気量車には420サイズが多く使用され、カシメではなくクリップで繋げられているので取り外しも簡単。


取り外したチェーンはトレイに入れ、チェーンクリーナーを吹き付ける。カバーがついているのに、チェーンは意外なほど汚れていた。

チェーンを車両に取り付けたら、手でゆっくりとホイールを回転させながら、スーパーチェーンルブを吹き付ける。飛び散りにくいので安心。
重要なブレーキは丁寧にメンテ!

うっすらと錆が出ていたブレーキドラムとブレーキシューをワイヤーブラシで磨き、ブレークリーンで汚れを落としておく。

ブレーキカムなどの可動部にはシリコングリースメイトでグリスアップ。ハブベアリングはペースト状のグリスを塗っておく。後輪も同じ作業を行なった。
サビ落としとサビ止め!


ホイールリムやペダルには錆が浮き出しているので、消しゴム状のサビ落とし「オーマイゴシゴシ」を使って錆を落とした。擦るだけで面白いように錆が取れる。

ブレーキの調整部分やチェーン引きのネジなど、錆びたら困る部分には、防錆・潤滑剤の6-66をスプレー。本来はボートなどのマリーン用で防錆力が強く、雨ざらしのバイクにはぴったり。
可動部へのグリスアップも忘れない!

レバーやペダルなどの可動部には潤滑油の5-56をスプレー。埃の付着が気になる部分にはドライファストルブを使うのもいい。

ワイヤーやケーブル類には、ワイヤーインジェクターを使って注油。ワイヤーにはシリコングリースメイトがいい。

バイクのスロットルはハンドルと擦れ合っているので、動きが渋くならないように潤滑油を塗布。速乾性で埃が付着しにくいドライファストルブが合っている。
シート&外装の汚れ落とし!

ずっとカバーをかけて屋外で保管していたので、シートには黒カビが生えてしまった。フォーミングウルトラクリーナーを吹き付け、少し待ってからスポンジでこすった。

カビはシート生地の奥にまで根が張っており完全には落とせないが、かなり綺麗になった。ついでにレッグシールドやボディの樹脂部分もフォーミングウルトラクリーナーで綺麗に。
さほど苦労せず作業完了!

各部をクリーニング&グリスアップし、復活したスーパーカブ。これからは不動車にならないよう、日々の買い物の相棒として活躍してくれるはず!3年放置しても軽整備で走り出すことができた。さすが世界のスーパーカブだ。これで田舎生活も少しは楽になるかな?