故障・修理
更新日:2024.07.09 / 掲載日:2020.07.15
車のエンジンがオーバーヒートする原因や症状、対処法を解説

走行中、車に不具合が生じると、気が動転してしまう人は多いでしょう。しかし、対処法や原因を理解していれば、ある程度落ち着いて行動できるはずです。ダメージを最小限にするためにも、冷静に対応しなければなりません。
今回は、エンジントラブルの一つである「オーバーヒート」にスポットを当て、何が原因でどのような症状が起きるのかを解説します。発生時の対応や普段の予防法もご紹介しますので、いざというときのため、また日常のメンテナンスのためにも、ぜひご一読ください。

車のオーバーヒートとは、エンジン本体が熱くなりすぎた状態を指しますが、前触れもなく自然発生的に起こるものではありません。考えられる原因を、3つに分けて解説します。
冷却水の漏れや不足
稼働中のエンジンは、動力を作るうえで高温になることは避けられません。しかし、熱くなりすぎるとオーバーヒートなどを起こしてしまうため、そうならないように冷却水と呼ばれる専用の液体で冷やされています。
エンジンを冷やした冷却水の温度も当然上昇しますが、熱くなった冷却水は以下の流れで冷やされて循環する仕組みとなっています。
冷却水がエンジンの熱で温まる
↓
温まった冷却水がラジエーター・冷却ファンなどの働きで冷やされる
↓
温度の下がった冷却水がウォーターポンプにより再びエンジン内部に循環
何らかのトラブルで冷却水が漏れて量が不足してしまうと、エンジンを冷やすことが難しくなります。
ウォーターポンプの不具合
ウォーターポンプは冷却水を循環させる重要なパーツです。
冷却水が劣化してしまうと、このウォーターポンプ内の軸を支えるベアリングや外部と遮断するメカニカルシールがダメージを受け、金属の腐食を招きます。
その結果、ウォーターポンプ内で水漏れが起き、エンジンの冷却ができなくなってオーバーヒートにつながってしまうのです。
ウォーターポンプ自体は耐久性がありますが、交換が必要な消耗品となり、走行距離10万km前後が使用限度といわれています。この数字はタイミングベルトの使用期限とほぼ同じです。
どちらも、交換時は工程が重なる部分があるため、タイミングベルトの交換時にウォーターポンプも交換することが推奨されています。
エンジンオイルの不具合、不足
エンジンオイルはエンジンの摩耗や摩擦を防ぐ役割を持ち、エンジンのスムーズなピストン運動をサポートします。エンジンオイルを交換しないまま長期間使用するとエンジンオイルの劣化が起きてしまうため、機能の低下は避けられません。また、揮発や漏れでエンジンオイルが規定量以下になった場合にも、同様に不具合を引き起こします。
エンジンオイルが劣化する原因はいくつかありますが、加熱と冷却の繰り返し、排気ガスの混入、空気による酸化などが挙げられます。さらに、清浄作用が強いタイプのエンジンオイルは、エンジンについた汚れを分解するため劣化が早まりがちです。
エンジンオイルの不具合を放置してしまうと、最悪の場合にはオイルへの引火で火災に発展することもありえます。エンジンオイルはあくまでも消耗品なので、定期的に交換しましょう。
高回転・高負荷による低速や長時間の走行
冷却水周りやエンジンオイルなどに問題がなければ、オーバーヒートは起きないのでしょうか?残念ながら、これ以外の原因でもオーバーヒートが起きてしまう可能性があります。
それは、車が本来持っている能力を超えた運転がエンジンに異常な負担をかけ、冷却が間に合わなくなってオーバーヒートを引き起こすケースです。
以下が具体例ですので、このような運転は注意しましょう。
・低速ギアで長い坂道を走ってしまう
・長時間の渋滞によって、車に十分な風が当たっていない
坂道の低速ギアは誤った選択ではありませんが、エンジンに過剰な負担がかからないようにする配慮は必要です。また、長い渋滞に巻き込まれたら、渋滞から抜けられた時点で早めに安全な場所に移動し、いったんエンジンを停止したほうが良いでしょう。
特殊な原因でオーバーヒートが起こることもある
上記で挙げた要素以外が原因でオーバーヒートが起こる、少し特殊な事例もあります。
寒冷地や雪国で多いのは、ラジエーターに雪が付着し、走行風がラジエターにあたらずエンジンが冷やされなくなってしまうケースです。
雪以外にも、紙・ビニールなどが付着してラジエーターを塞ぐと機能不全になり、オーバーヒートが起きてしまうことがあります。
車のオーバーヒートで生じる症状

オーバーヒートを起こすと、さまざまな症状や異変が生じます。ここでは、オーバーヒートの症状として代表的なものを4つ解説します。
水温計が異常を示す
車の仕組みに詳しくない人でもわかりやすいのは、冷却水の温度を示す水温計の異常です。水温計はスピードメーター近くに「℃」や「H(HOT)」「C(COOL)」などで表示されています。
正常時
エンジンをかける→エンジンが温まる→「C」と「H」の中間あたりを示す
異常時
「H」に近づいていると、水温が高くエンジンがオーバーヒートしている疑いがある
※115度以上でオーバーヒートの可能性が高い
最近は水温計のない車種が増えていますが、その場合はメーターパネルにある水温警告灯の点滅もしくは点灯で異常をチェックしましょう。
水温警告灯は下部が波のような形のマークで表示され、温度の高低は赤=高温、青=低温と、簡単に認識できるようになっています。
運転中に次のような異変を感じたら、オーバーヒートの可能性があります。
・アクセルを踏んでも思うように加速しない
・普段のようにスピードがのらない
・エンジンの回転数が安定しない
・アイドリングが安定しない
エンジンの働きがおかしい状態が続くと、最終的にエンジンが停止する場合もありますので注意しましょう。
エンジンから異音・異臭がする
オーバーヒートが起きると、音や臭いも普段と変化します。オーバーヒート時に発生する、代表的な異音・異臭は次のとおりです。
エンジン
「カンカン」「キンキン」といったノッキング音 ※ノッキング音=何かをノックするような音
ボンネット
「キーキー」と聞こえる高い音
甘い臭い
冷却水漏れや蒸発による臭い
オイルが焼ける臭い
オーバーヒートのなかでも深刻な状態
ボンネットから煙のようなものが出る
ボンネットのすき間から、煙のようなものが立ちのぼることがあります。
この煙のようなものは気化した冷却水、すなわち水蒸気です。オーバーヒートでイメージされがちな症状ですが、これはかなりダメージが進んだ状態です。
水蒸気が出る理由を知れば、事態の深刻さが理解できるでしょう。
ラジエーターのキャップは一定の圧力を超えた場合に、この水蒸気を逃す「弁」の役割を担っています。
ボンネットから水蒸気が出るのは、冷却水が沸騰して圧力が高まって弁が開き、水蒸気を逃がしているからです。
その他にも、ボンネットから水蒸気が出る原因として、ラジエーターのホースが劣化など破けてしまい沸騰した冷却水が漏れていることが挙げられます。
車のオーバーヒートが起きたときの対処法

車のオーバーヒートが起きてしまったときは、焦らずにまず気持ちを落ち着かせましょう。事態が悪化して事故などを引き起こさないよう、以下の1から4の手順で対処します。
1.安全な場所に車を停める
異変に気付いたら、まず安全な場所に車を止めることが大切です。周囲に十分に注意しながら、他の車の走行を邪魔しない場所に移動して停車し、エンジンを止めます。
一般道路なら道路脇や路肩、高速道路なら待避所などが良いでしょう。
オーバーヒート「気味」の段階で適切な対処ができると、深刻な事態を回避できる可能性があります。水温が下がれば、走行可能なケースもあるでしょう。
2.ボンネット内をチェックする
次にボンネットを開けて、エンジンルームに風が通るようにしましょう。
ボンネット内のラジエーター本体の冷却水とエンジンオイルを中心に、次の説明に沿ってチェックしていきます。
ラジエーター
ラジエーターでは、リザーバータンクに入っている冷却水の量がLow以上あるかどうかをチェックしましょう。
Lowレベル以下の場合や吹き出した形跡がある場合、ラジエーターキャップの異常もしくはガスケット破損などが発生している可能性があります。
オイルが混入していない状態で冷却水が不足しているなら、応急的に水道水・ミネラルウォーターで代用することが可能です。
ただし、冷却水に白濁が見られる場合、エンジンオイルが混入している可能性があるので、この処置はできません。
エンジンオイル
エンジン停止から5分以上経過したら、エンジンオイルのレベルゲージをチェックしましょう。
レベルゲージを抜いて先端に付いたオイルをふき取ったあと、元の位置に差し込んで再び抜きます。先端に付いたオイルが目盛りの間なら問題ありませんが、減り方が極端な場合は整備工場・ディーラーに相談しましょう。
3.じっくり時間をかけて車を冷やす
ラジエーター・エンジンオイルを点検して大きな問題がないようなら、ボンネットを開けたまま放置してエンジンを冷やします。
エンジンが熱い状態のときに、ラジエーターキャップや冷却水のリザーバータンクを触ってはいけません。高温の冷却水が吹き出すリスクがあり、危険です。また、キャップを開けると圧力が抜けて冷却水の沸点が下がることにより、一気に沸騰してオーバーヒートの症状が悪化する危険性もあります。
4.回復しない場合はロードサービスなどに相談する
冷却水やエンジンオイルに明らかな異常が見られる、エンジンを冷やしても症状の回復が見られないなどの場合は、複数のトラブルが発生している可能性があります。
こうなってしまうとドライバーだけで対応はできませんので、速やかに自分が加入している自動車保険のロードサービスやJAFに連絡し、救援を依頼しましょう。
車のオーバーヒートの予防法とは

オーバーヒートは日々の点検やメンテナンスである程度防げます。予防のポイントを解説しますので、ぜひ実行してみてください。
水温計のチェック
オーバーヒートの症状は、まず水温計に表れます。日頃から、水温計に注意を払って運転する習慣をつけておけば、重症になる前に対処できるはずです。
これまで水温計を見たことがない人は、一度どれが水温計(あるいは水温警告灯)かチェックしておきましょう。
冷却水のチェック
リザーバータンク内の冷却水の残量をチェックします。量が足りないときは補充しますが、減り方が激しい場合は、水漏れを疑ったほうが良いでしょう。
水漏れの原因はラジエーターキャップの不良などが考えられます。冷却水を定期的にチェックする習慣をつけると、異変にすぐ気付けるようになるでしょう。
オーバーヒートなどの応急処置で、リザーバータンクに水道水やミネラルウォーターを入れた場合、そのままにしておくとサビが発生するリスクも避けられないですし、寒冷期に凍ってしまう可能性があります。
凍結・サビを防ぐために、冷却水は不凍液であるクーラント液に交換しましょう。水道水やミネラルウォーターは、あくまでも応急処置と考えてください。
エンジンオイルのチェック
エンジンを切ってしばらく待ったら、エンジンオイルのレベルゲージを抜き、先端に付いたオイルをキッチンペーパーやウエス(不要な布)などでふき取ります。
紙・布のホコリなどが残っていないかチェックしてから、レベルゲージを元の位置へ戻しましょう。再び抜いたときに先端に付いたオイルが目盛りの適正値なら、量に問題はありません。
次に、エンジンオイルの汚れ具合をチェックします。
オイルの汚れ具合を確認するには、レベルゲージの先端に付いたオイルを、一度キッチンペーパーに滴らせます。このとき中心にスラッジと呼ばれる燃えカスが残り、オイルだけが周りに広がる状態であれば、オイルの交換は不要です。
もし、周りに広がるのがスラッジ混じりの黒いオイルであれば、交換が必要なレベルまで汚れていますので、速やかに交換しましょう。
オーバーヒートとの関連性の高いパーツのチェック
オーバーヒートは、以下のパーツの問題でも起こるトラブルです。
・ラジエーターの劣化
・ウォーターポンプの劣化
・サーモスタットの故障
これらのトラブルは、残念ながら一般のドライバーが確認するのは困難です。整備のプロにお任せするのが賢明ですので、整備工場やディーラーで定期的にチェックしてもらいましょう。
まとめ
オーバーヒートが起きたとき、対処を間違うと車に大きなダメージが残る可能性があります。オーバーヒートの原因を理解したうえで応急処置をおこなえば、ダメージをできるだけ抑えられるかもしれません。
普段から、水温計・冷却水・エンジンオイルをチェックする習慣をつけておくことで、オーバーヒートの予防につながります。ただし、原因が専門家にしか確認できないケースもありますので、整備工場・ディーラーに定期的なチェックをお願いするのが良いでしょう。