故障・修理
更新日:2020.07.30 / 掲載日:2020.07.30

えぐれたすりキズ/スプレーガン塗装 DIYボディリペア8

 モデル車マークXの後席ドア後方のキズ、上部は軽く研磨するだけで処理できたが、樹脂パーツのサイドステップ上のキズは深いため、かなり削り込む必要がある。とはいえ、目線よりかなり下で目につきにくい位置ゆえ、多少の歪みは無視できる。パテは使わずにキズ溝の底まで削り込みつつ形を整えてしまう。さて、その修正後の塗装、以前、修理した際に塗料が残っていたためスプレーガンで行った。このスプレーガン塗装、塗料の下準備や使用後のガンの清掃といった手間はかかるものの、塗り方の基本は缶スプレーに準ずる。缶スプレーを無難に扱える技量があったなら、臆することはない。塗装粒子が細かく噴射圧が安定しているため、缶スプレーよりむしろ塗装しやすく、広い範囲を塗る場合、作業性が格段に向上する。このため、スプレーガンを利用できる環境にあるならチャレンジしてみたい。

補修面に近接するドアのパネル端に、キズつき防止にマスキングテープを貼ってカバーする。#400の耐水ペーパーをサンディングブロックに巻き付け、きれいな水に浸してペーパーに水分を含ませる。水研ぎで周囲となだらかに繋がるよう、キズ溝の底まで削り込む。

研磨キズを落とし周囲を足付け

#400による研磨キズを落とすため、#800の耐水ペーパーで水研ぎする。円は描かず、縦横の繰り返しで直線的にムラなく研磨していく。ある程度研磨したら、研磨カスを拭き取って仕上がり具合を目視で確認。OKなら、塗装時に塗料が付着する可能性がある、補修面の3から4回り広めの範囲まで研磨して足付けする。

補修面以外のボディ全体をマスキング

ドアと接するパネル端の隙間にソフトテープを貼って隙間を塞ぐ。パネルの切れ目に貼ったマスキングテープにシート末端のテープ面を貼り重ねるようにしてマスキングシートを貼り、シートを広げる。タイヤ&ホイール側面もそっくりカバー。残りの面も同様にマスキングシートを貼ってボディ全体をスッポリカバーする。

脱脂してPPプライマーを塗布する

シリコンオフをきれいなウエスに染み込ませ、研磨した面を隅々まで拭いて、表面に残っている研磨カスや油分をキッチリ拭き取る。研磨したことで樹脂の地肌が露出してしまった面に、PPプライマーを塗布。そのまましばらく放置してよく乾燥させる。

金属ボディ面に生じた凹みは 可能な限り叩き出してからパテ盛りする

ボディ金属パネルの凹みは「パテを盛って成形すればいい」と考えがち。しかし、パテ盛りはどうしても叩き出せなかった凹みや凹凸を均すための最終手段。できるだけ薄く塗り込むのが基本となる。このため、凹みは可能な限り、叩き出す。裏側から当て盤で傾斜面を支えつつ、凹みの周囲の盛り上がっている面を叩いていくのだ。きれいに叩き出せなかったとしてもパテの使用量は必要最小限で済むので、DIY補修するならチャレンジしてみたい。

プラサフを塗布して平らに均す

プラサフのスプレー缶をよく振って撹拌し、補修面全体に塗布する。1回目はうっすら塗布。15分ほど乾燥させたところで、補修跡がムラなく隠れるまで均等にスプレーする。乾燥したら、#800の耐水ペーパーでプラサフ塗布面を空研ぎして滑らかに整える。

1Kマルチプラサフ グレー スプレー※

2液型ウレタン系プラサフに迫る仕上がり感とラッカープラサフに迫る速乾性を兼ね備えた、特殊変性アクリル樹脂ベースの1液型プラサフのスプレー缶仕様。新車塗膜やウレタン塗膜、ラッカー系塗膜のいずれの旧塗膜に対しても使用することができる。

既定量の硬化剤を混ぜ、シンナーで薄める

ベースカラーの塗料を攪拌して底に沈殿した溶剤を確実に混ぜ合わせ、必要量を計量カップに取り出す。軽量カップに取り出した量の10%に相当する分量の硬化剤をスポイトで吸い出す。計量した硬化剤を計量カップに添加し、撹拌棒を使用して素早く混ぜ合わせる。硬化剤を配合したところでシンナーで希釈する。40から60%に相当する分量のシンナーを注入し、よく攪拌して混ぜ合わせる。

濾過してから塗料カップに入れる

シンナーで希釈した塗料はストレーナーで濾過しながらスプレーガンの塗料カップに入れるが、塗料カップが小さ過ぎて濾紙が合わない。使用する小型スプレーガンのカップ取り付け口にはフィルターが設置されているため、今回は直接投入した。

数回に分けて色をのせていく

本塗りは2から4回塗りで仕上げる。1回目は少し遠めから薄く吹き付ける。パテ跡が薄く透ける程度が目安だ。2回は艶が出るまで吹き付け、10分ほど乾燥。ツヤが消えてきたら3回目を塗る。ムラなく色がのったらOK。ムラがあるようなら4回目を塗る。

Sutekus 飛散量抑え HVLP式スプレーガン

■ 購入価格:1,780円(税込)今回の取材の準備をしている時部分補修に最適なHVLP式の小型スプレーガンを発見。早々に入手した。HVLPとは「ハイボリューム・ロープレッシャー」の略で、大量の空気で塗料を包むように吹く特殊なスプレーガン。周辺への飛び散りが少なく、溶剤による空気汚染も少ないため環境に優しく、それでいて塗装面への付着率が高いという特長があり、前々から興味があったからだ。安価な中華製ゆえ不安もあったが、多少手は入れたものの問題なく使用することができた。

左から汎用タイプ/小型タイプ/エアブラシ。このようにHVLP式スプレーガンはサイズ的に汎用タイプのエアブラシの中間に位置する。

缶スプレーの噴射圧を安定させるためには湯煎して温める必要がある

缶に充填されたガスの圧力で塗料を吹き出させる「缶スプレー」は、外気温度が低いとガスが気化しにくくなることで噴出圧が下がり、スプレー粒子が粗くなってくる。また、連続噴射させるとガスの気化熱で缶に霜がつくほど急激に冷えるため、同様に噴射圧が低下してしまう。このため、冬場はお湯に漬けて缶を温めたり(ガス圧が安定。気化しやすくなることでスプレー粒子も細かくなる)、複数本用意し缶が冷えたところで取っ替え引っ替えしながら塗るなどの対策が必須だ。

クリアーに硬化剤を混ぜ、シンナーで薄める

計量カップの目盛りを目安に必要量のウレタンクリアー塗料を取り出す。計量カップに取り出した量の10%に相当する分量の硬化剤をスポイトで吸い出し、計量カップに注入する。添加したら素早く混ぜ合わせる。35から40%の希釈率となる分量のシンナーを計量。計量カップに注入し、よく攪拌する。

調色配合サービス2液ウレタン塗料パナロック 0.9kg パナロック速乾型シンナー※

変色や艶の変化が極めて少なく、長期間にわたって美しい状態を保ち続ける2液型アクリルウレタン塗料で、調色配合する塗料のランクに応じて4,800から20,000円(税別)。シンナーは専用品で、外気温に応じて乾燥速度の異なる4タイプが用意されている。価格は1L/1,400円(税別)。

使い捨て容器※硬化剤やシンナーの配合、調色作業時に重宝する薄いポリ製の「使い捨て内容器」とその容器をはめ込んで使用する専用ホルダーのセット。価格は600ccセットで500円(税別)。

上塗りクリア マルチトップクリヤーQR 1.8kgセット※トップコート(上塗り仕上げ)専用品として開発された、光沢性・耐久性を併せ持つ自動車用2液型ウレタンクリアー。戻りムラ・泳ぎムラといった現象が起こりにくく、美しい2液型ウレタンクリアー仕上げができる。価格4,700円(税別)。※購入先:ぺいんとわーくす http://www.paint-works.net/

前端に向かってボカシつつ補修面に塗布

希釈したクリアー塗料をスプレーガンの塗装カップに注入。1回目は少し艶が出る程度に均一に薄く、10分ほど乾燥させてから2回目を塗る。肌目を見ながら光沢を出していき、乾燥後の3回目で自分の姿が映り込むまでキッチリ塗り込む。

マスキングを剥がし、磨いて完成!

クリアー塗料が半乾きになったところで、塗装した面に触れないよう注意しながらマスキングシートおよびマスキングテープを取り除く。ドアの隙間に入り込んでパネル端に付着した塗料ミストをコンパウンドで磨き落として完成。なお、補修部位が目線より低く肌目が目立たないため、仕上げの磨きはあえて省略した。

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グーネットピット編集部

ライタープロフィール

グーネットピット編集部

車検・点検、オイル交換、修理・塗装・板金、パーツ持ち込み取り付けなどのメンテナンス記事を制作している、
自動車整備に関するプロ集団です。愛車の整備の仕方にお困りの方々の手助けになれればと考えています。

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