故障・修理
更新日:2020.11.18 / 掲載日:2020.11.18
トルクって何?馬力との違いやスペック上の注意点についても解説!

車の性能を示す項目の一つに、「トルク」があります。カタログや雑誌などで目にすることは多いものの、「馬力と似たようなイメージがあるけれど、正確には理解できていない」という方もいるのではないでしょうか?
そこで今回は、馬力との違いやスペック上の注意点など、トルクについて詳しく解説します。

まずは、トルクとはどのようなものか解説します。トルクの仕組みや定義を知れば、馬力との関係や重要性も理解しやすくなるでしょう。
トルクは自転車に例えられる
トルクについての説明では、自転車に例えられることが多いです。ここでも、自転車をイメージしながらトルクがどういったものか理解していきましょう。
自転車で前進するときには、左右のペダルを交互に下に向かって踏み込んでいます。このとき、ペダルを踏みこむことによって、左右のペダルをつないでいるクランク軸に回転させるためのねじり力がかかります。
自転車のギア比が固定されている場合、クランク軸にかかるねじり力の大きさ次第で自転車が前進します。例えば、力の強い大人がペダルを漕ぐと大きなねじり力が発生してより多くの距離を進み、力の弱い子どもだと、それほど大きなねじり力が生まれないので進む距離も短いということです。
トルクは、この「クランク軸とペダル間の距離」と「水平時のペダルを下に向かって踏み込む力」を乗算することで求められます。クランク軸とペダルとの距離を15cm、ペダルを踏みこむ力を20kgだと仮定すると、以下のような計算式になります。
0.15[m]×20[kg]=3[kgf・m]
エンジンに置き換えてみると?
ここまで自転車に例えてトルクについて説明しましたが、エンジンに置き換えてみるとどうなるでしょうか。
まず、自転車の場合、下に向かってペダルを踏み込んだときにしかトルクが働かないので、最大トルクとゼロの状態を繰り返していることになります。しかし、これが車のエンジンになると、燃焼室で起こる1回の爆発ごとにクランクシャフトにトルクがかかり、駆動系の部品を伝ってタイヤに力が加わります。
自転車の場合、ペダルを踏みこむ力に応じてトルクが変化することをお伝えしましたが、車のエンジンの場合はこれが「エンジンの回転数」に置き換わるのです。
1分間でのエンジンの回転数は[rpm]で表され、車のスペック表やカタログでは最大トルクを「51.0kgf・m/1,800~5,000rpm」というように記載します。この場合は「1,800rpmから5,000rpmの間で、最大トルク51.0kgf・mが発生する」という意味です。
トルクは一般的にエンジンの回転数が高くなると増加し、ある一定の回転数でピークを迎え、それ以降は徐々に減少します。これをグラフにしたときの曲線を「トルクカーブ」と呼び、最大トルクの発生回転数が高いほど加速力があることを示しています。
パワー(馬力)とトルクはどう違う?
続いて、パワー(馬力)とトルクの違いを確認しましょう。
パワーとは時間単位の仕事量を表す単位で、蒸気機関を発明したジェームズ・ワットによって定められました。1馬力は、75kgの重さの物を1秒間のうちに1m引き上げるのに必要な力のことです。
車においてのパワー(馬力)とは、1分間あたりの総出力トルクのことで、「トルク×回転数」で求められます。車の速度に大きく関係しており、エンジンの回転数が高い、あるいは、回転数が固定されていても排気量が大きい(トルクが大きい)エンジンであるほどパワー(馬力)が大きいということです。
トルクと回転数の関係

トルクについて理解したところで、次はトルクと回転数の関係も知っておきましょう。
先ほどの馬力の説明で「トルクが大きく回転数も高いエンジンを選べば良いだろう」と考えた方もいるかもしれません。しかし、トルクと回転数を両立させることは難しく、相反する関係にあるのです。
トルクが大きいロングストロークエンジン
トルクを大きくするには、ピストンの上下運動が大きいロングストロークエンジンが適しています。
ロングストロークエンジンの場合、クランクシャフトの中心からコンロッドの接続部分までが長く、支点と力点が離れているためトルクを稼ぎやすいのです。
自転車に置き換えるとすると、クランク軸からペダルまでが離れていていれば脚を大きく動かさなければいけませんが、ある程度の傾斜も簡単に登ることができるというイメージです。
また、支点と力点が離れていること以外にも、同じボア(シリンダーの内径)のショートストロークエンジンと比較すると排気量が大きいというメリットがあります。
ショートエンジンはより高回転
回転数が高くなると各パーツの動作にすばやさが必要とされるため、ピストンの動きが小さいショートストロークエンジンが適しています。ロングストロークエンジンではピストンの上下運動が大きく、パーツには慣性力が発生して抵抗となり、回転数を上げることができないのです。
このように、トルクが稼げて排気量の多いロングストロークエンジンは回転数が上がりにくくなり、回転数を高くできるショートストロークエンジンはトルクが稼ぎにくいため排気量も小さくなるという、相反する関係にあるのです。
トルクとパワー(馬力)はどちらが重要?

車を選ぶ際には、トルクとパワー(馬力)のどちらを重視するのが良いのかを確認しましょう。
トルクと発生回転数が重要
注目されやすいのはパワー(馬力)ですが、実はトルクと発生回転数のほうが重要です。
トルクが大きい車ほど加速が良いですが、高回転型のエンジンだと「低速がスカスカ」に感じられやすく、かなりの回転数まで回さない限り最大トルクが発生しないこともあります。
逆にトルクが低い車の場合、回転数を上げない限り出力も上がらないので遅いですが、最大トルクの発生する回転数まで回せば、高い出力によって「回すと楽しいエンジン」になるでしょう。
前述のとおり、パワー(馬力)は「トルク×回転数」で求められるので、パワー(馬力)だけで選ぶと乗り心地に大きく差が生まれる可能性もあるのです。
ターボ搭載車の注意点
ターボを搭載した車の場合は、エンジンとタービンの相性に注意が必要です。
タービンが駆動するための排気圧が高回転でしか得られないエンジンでは、低回転域のトルクがスカスカになります。こうしたエンジンは、タービンが駆動するタイミングで急にトルクが大きくなるため、いわゆる「ドッカンターボ」になりがちです。
低回転域でもタービンが駆動する場合は、実用域でもトルクが立ち上がるため運転しやすく燃費も良くなります。しかし、タービンの効率が悪く、高回転まで回しても出力が頭打ちになりやすいというデメリットも知っておきましょう。
モーターは低回転から最大トルクを発生する
EV車やHV車に搭載されるモーターは、回り始めた瞬間から最大トルクが発生するうえ、高回転域でもトルクの低下が起こりません。しかし、回した分だけ電力を消耗するため、バッテリーが切れるとトルクは急激に低下してしまいます。
ハイブリッド車の場合は、単にエンジンスペックだけでなく、モーターアシストの状態によっても性能が変化します。また、エンジンスペックが発電効率のみを意味している場合があるため、それだけでは性能がわからないこともあるので注意が必要です。
まとめ
今回は、トルクについてさまざまな観点から解説しました。
トルクはエンジンの性能と密接な関係にあり、車を選ぶうえでも非常に重要な項目の一つです。
これまでトルクについて詳しく知らなかった方も、ぜひこの記事を車選びやカスタムの参考にしてみてください。