故障・修理
更新日:2020.10.19 / 掲載日:2020.10.19
タイヤの空気圧は高すぎてもダメ?正しい点検・調整方法について解説

タイヤの空気圧点検・調整は、ディーラーやタイヤ専門店・ガソリンスタンドにお任せという方が多いようです。空気圧が「高い」「低い」にどのような意味があり、どう対処すべきか理解しておくと、車のメンテナンスの質が上がり、より快適なドライブにつながるでしょう。
ここでは、空気圧とは何か、空気圧が「高い」「低い」それぞれのメリット・デメリットを解説し、具体的なタイヤの空気圧の点検・調整方法をご紹介します。タイヤの空気圧に関する理解を深め、運転の質をアップするためにお役立てください。

タイヤの空気は、路面からの衝撃を吸収するクッションの役割を持っています。空気は軽くて劣化しないので、車の重量を支えるのに最適です。重い重量を支えるためにはより多くの空気が必要なので、車両サイズとタイヤサイズは基本的に比例します。
空気圧が不適正だと、車とタイヤは本来の性能が発揮できません。空気圧は低くても高すぎても問題が生じ、タイヤがダメージを受けたり、事故につながったりするリスクがあります。車とタイヤが本来持っている性能を発揮しトラブルを回避するためには、空気圧の定期的な点検と調整が重要です。
基本的に、タイヤの空気圧は時間の経過とともに自然に少しずつ減少します。1ヵ月に1回程度は空気圧の点検を行ない、適正な空気圧をキープするのがおすすめです。
適正空気圧は車やタイヤサイズによって異なる
タイヤの適正空気圧は、自動車メーカーが車種ごとに指定している「車両指定空気圧」です。そのため、タイヤサイズが同じでも、車種ごとに適正空気圧も違います。同一車両・同一サイズの場合、タイヤのメーカー(あるいはブランド)が変わっても、適正空気圧は同じです。
適正空気圧の確認方法は、後述する「正しい空気圧の点検と調整方法について」の項で詳しく説明します。
タイヤの空気圧の単位について
以前はタイヤの空気圧の単位は国・対象領域などによってバラバラで、kgf/cm2、bar(バール)、psi(プサイ)などが使われており、日本ではkgf/cm2が主流でした。1993年に施行された新計量法にともないタイヤの空気圧の単位はkPa(キロパスカル)に統一され、「国際単位系」に準拠するものになっています。
かつて主流だったkgf/cm2は、1平方センチあたりに何キログラムの力が加わるかを表し、一方Pa(パスカル)は、1平方センチあたりに何ニュートン(物体に働く力を表す単位)の力が加わるかを表したものです。
一部では現在でもkgf/cm2が使われているようです。この場合の単位換算は難しくなく、「1kgf/cm2=98.0665kPa≒100kPa」で、実用上「1kgf/cm2=100kPa」の解釈で問題ありません。
パンクしていなくても空気圧は変化する
タイヤの空気圧が変動する要因は、いくつか挙げられます。代表的なものは、タイヤに穴が空いて空気が抜ける「パンク」ですが、それ以外の原因として次のようなケースが考えられるでしょう。
新品タイヤで圧力低下
内部に最初に空気を入れると、タイヤの構造部材(ベルトなど)が膨張し、内部容量が増えて圧力が低下します。
空気漏れによる圧力低下
タイヤ内側には気体が透過しにくいゴム製シートが貼られ、空気が抜けにくい構造です。ただし空気の分子はゴムの分子より小さいため、ゴムの層に空気が入り込み、1ヵ月間で10~20kPaほど自然に空気が抜けるといわれています。
タイヤ内部の気化で圧力上昇
組み込み時などに侵入したタイヤ内部の水滴が熱で気化すると、内部体積が増え、圧力が上昇します。逆のケースでは圧力が低下します。
温度・大気圧の変化による影響
温度と空気圧はほぼ正比例し、温度が約10度上昇すると約10kPa圧力が上昇します。また、標高が高くなるごとに大気圧が下降し、反比例してタイヤの圧力は上昇します。
タイヤの空気圧が低いとどうなる?

タイヤの空気圧は、低いのも高すぎるのも問題で、大切なのはバランスです。まず、空気圧が低い場合のデメリットを解説します。
燃費が悪化する
空気圧が低いとタイヤはたわみやすくなり、走行時に発生する「転がり抵抗」が上昇します。
タイヤは車両の荷重で路面との接地面・その近辺にたわみが生まれます。回転するタイヤは、たわんでは元の形に戻るという動きを繰り返し、走行に必要なエネルギーを熱として無駄に使用しますが、これが「転がり抵抗」と呼ばれるものです。空気圧が低いと「転がり抵抗」が上昇し、エネルギーが熱に変換されてしまい、燃費が低下します。
バースト(破裂)するリスクが高くなる
空気圧不足のタイヤで高速走行すると、タイヤは大きくたわんでウェーブ状に変形して過熱が進みます。そして、熱のダメージで構造材が回転に耐えられなくなり、最悪の場合、タイヤ全体のバースト(=破裂)につながります。これは「スタンディングウェーブ現象」と呼ばれる、高速道路の代表的なタイヤトラブルです。
このようなトラブルは二次災害などの大きな事故につながる可能性もあり、大変危険です。高速走行の際は、空気圧チェックが必須といえるでしょう。
操縦性が悪化する
タイヤの空気圧が低いと操縦の安定性が低下します。タイヤの剛性が下がるので、コーナリング時などにタイヤがヨレてしまい、本来のコントロール性能が発揮されません。ハンドルを切った際の反応も遅くなり、ドライバーは不安になるはずです。
また、空気圧が低いとタイヤがたわみやすく、変形によってタイヤの偏摩耗が進行し、適正なグリップの確保がむずかしくなり、タイヤの寿命が縮みます。
タイヤの空気圧が高いとどうなる?

次に、空気圧が高いとどうなるかについて、メリットとデメリットの両面を解説します。
メリット
燃費が向上する
空気圧が高いと、タイヤの変形が抑えられて接地面積が減ります。その結果、「転がり抵抗」が低減して運動エネルギーのロスが減り、燃費の向上が可能です。
ただし、通常タイヤの接地面は1本あたりハガキ1枚分ほどの小さな面積であり、必要以上に空気圧を上げて接地面積を減らすのは、走行安定性の観点からは問題です。乗り心地も悪化するでしょう。「燃費が向上する」という理由でむやみに空気圧を上げると、リスクも発生することを忘れないでください。
デメリット
1. 偏摩耗などでタイヤの寿命が短くなる
空気圧が高いとタイヤの偏摩耗が生じ、タイヤ自体の寿命が短くなります。一般的にタイヤは溝の深さで交換時期をチェックしますが、センター付近が早く摩耗してしまうと、ショルダー部の溝が十分残っていてもタイヤとしては寿命となり、交換が必要です。
タイヤ購入は数万円単位の出費になることから、予定外に早くタイヤが寿命を迎えると、所有者にとっては大きな痛手でしょう。
2. タイヤにダメージを受ける可能性が高まる
空気圧が高いとタイヤが衝撃を吸収しにくくなってしまい、外部からの衝撃やダメージに弱くなってしまいます。
衝撃吸収性が悪いとタイヤの柔軟性が失われ、縁石に接触した場合などに切り傷・すり傷が生じたり、タイヤ内部のワイヤーコードを切ったりしてしまうリスクが上昇します。致命的なバースト(=破裂)につながる危険性もあります。
3. 乗り心地が硬くなり悪化する
タイヤの空気圧を上げすぎると、乗り心地が悪化します。空気圧が高いとタイヤのクッション性が低下し、路面の段差や凹凸による振動が車内に伝わりやすくなるからです。
ただし、安全運転の範囲内で、「あえて路面状況を把握しながらスポーティなドライブをしたい」という方も存在します。
正しい空気圧の点検と調整方法について

ここでは、タイヤの空気圧の点検方法と具体的なタイヤ空気の圧調整方法を解説していきます。
まずは適正空気圧の確認から
適正空気圧の確認方法について説明します。車両ごとの適正空気圧、すなわち「車両指定空気圧」は、ほとんどの場合、運転席側のドア周辺に貼付された「空気圧表示シール」でチェックできます。ここで示されている車両指定空気圧が、空気圧の調整・管理の基本です。
車体以外に車載の取り扱い説明書にも記載がありますし、ディーラーなどに問い合わせても教えてもらえます。
点検・調整するならガソリンスタンドがおすすめ
空気圧の点検・調整スポットとして気軽なのは、給油で定期的に訪れるガソリンスタンドです。セルフのお店でもスタッフは常駐していますので、気軽に声をかけましょう。給油のタイミングなら声がかけやすくおすすめです。料金が発生するケースもあるので、事前に確認してください。
セルフの場合、多くのガソリンスタンドでは点検用機械が用意されているので、自分で点検可能です。また、カー用品店やディーラーなどで無料点検を実施しているケースもあります。
快適なカーライフのためには、気軽に相談できるお店・担当者を作っておくと良いでしょう。車の情報がある程度共有できていれば、万が一のトラブルの際も、安心して頼れるはずです。
エアタンク式の空気圧調整方法
エアタンク式の空気充填機を使った調整方法を解説します。エアタンク式の場合、機械自体が動かせるので、車の停車位置を細かく気にしなくても大丈夫です。
1. 適正空気圧の確認
まず「空気圧表示シール」で適正な空気圧をチェックします。
2. 現状空気圧の確認
タイヤのエアバルブのキャップを外し、空気補填機のホースの先をエアバルブに押しあて、エアゲージ(計測器)で現状の空気圧をチェックします。
3. 空気圧の調整
空気圧が確認できたら、空気充填機の「+」「-」ボタンを押し、空気圧を調整します。「+」で空気が入り、「-」で空気が抜けます。
4. エアキャップ取り付け
適正な空気圧に調整できたら、ホースをエアバルブから離し、バルブにキャップを取り付けます。
据え置き型の空気圧調整方法(デジタル式&アナログ式)
次に、据え置き型の空気充填機を使った調整方法を説明します。このタイプにはアナログ式とデジタル式があり、多少操作方法が違うので、注意してください。エアタンク式同様、事前に適正空気圧の確認をしておきます。
デジタル式の据え置き型
適正空気圧を入力すると自動的に調整されます。
1. 設置されている「+」「-」のボタンを押して適正な空気圧を入力
2. バルブキャップを外す
3. ホースの先をバルブに押しあてる
4. 充填完了のサインが出たらバルブからホースを離す
5. キャップをバルブに取り付けて完了
アナログ式の据え置き型
ダイヤルを回してメーターを適正空気圧に合わせると、あとは自動的に調整されます。大きな違いは1.と4.の部分です。
1. メーター横のダイヤルを回し、設置されているメーターの針を適正な空気圧に調整
2. バルブキャップを外す
3. ホースの先をバルブに押しあてる
4. 音が鳴りやんだら空気充填完了
5. キャップをバルブに取り付けて完了
タイヤの空気は窒素ガスがおすすめ
頻繁に点検ができない場合や車のメンテナンスに不安な方は、予防安全策として、窒素ガス充填がおすすめです。ただし、基本無料の空気と違い、窒素ガス充填はほとんどの場合有料なので、注意してください。
通常空気と比較した窒素ガスのメリット
タイヤの圧力変化の低減
窒素は分子の動きが遅く、ゴム分子のすき間を通り抜けにくい性質であるため、空気圧が下がりにくいです。
走行性能の安定・燃費の向上・偏摩耗抑制
適切気圧が維持されれば、安定走行・燃費向上につながりやすく、偏摩耗も起きにくくなります。
タイヤ・ホイールの劣化抑制
窒素は金属にサビを発生させないので、タイヤの金属部分・ホイールの長持ちにつながります。
バーストの予防
窒素は化学反応が少なく、タイヤ内部の圧力変化を抑制します。タイヤが過熱しやすい高速走行時のバースト予防に効果的です。
ロードノイズの低減
窒素ガスは音の伝導率が低く、走行中の車内のロードノイズがおさえられます。
スペアタイヤの空気圧点検も忘れずに
忘れがちなのが、スペアタイヤの空気圧点検です。急なパンクやバーストなど、タイヤ交換が必要になったときにスペアタイヤの空気圧が低いと、交換しても安全走行ができません。年1回程度は点検しましょう。
車載用のポータブルのエアコンプレッサーを積んでおくのも良いでしょう。スペアタイヤのない一部車種は「タイヤパンク修理キット」搭載ですが、このキットにエアコンプレッサーが含まれている場合もあります。
まとめ
タイヤの空気圧は高ければ良いわけでなく、バランスが大切です。まずはドア付近の「空気圧表示シール」で「車両指定空気圧」を確認し、点検・調整してください。スペアタイヤの空気圧の点検・調整も忘れずに行なっておきましょう。
タイヤの空気圧の点検・調整を行なうのは、ガソリンスタンドが手軽でおすすめです。作業に自信のない方は、なじみのガソリンスタンド・タイヤ専門店・ディーラーなどにお願いをしましょう。相性のいいお店か担当者をしぼり、いざというときに頼れる関係を作っておくと安心です。