故障・修理
更新日:2019.01.04 / 掲載日:2019.01.04
トヨタ86のパワートレーンを完全オーバーホールしてみた【Overhaul 06】
大規模な改造をしなくても気持ちよく回るエンジンにするには、各部のフリクションを極力下げていくのが効果的だ。そこでオーバーホールを機会に、しゅう動部のパーツに各種の表面処理を行った。
【PART1】フリクションを極限まで下げて、耐摩耗性を向上させる WPC処理などの表面トリートメントを実施
レーシングカーでも使われる最先端の表面処理を施す
前回まではエンジンパーツの分解や液体ガスケット剥がし、インジェクターのチェックを済ませ、エンジンのオーバーホールは折り返し点にきた。まだ走行距離が少ないので、性能が落ちるような摩耗は見られないのだが、バリの噛み込みと思われる細かなキズや、カムシャフトの1番ジャーナルのキズの多さなど、部分的には想定外の摩耗を起こしている部分もあった。br>
オーバーホールしたら、できるだけパーツのコンディションをキープし、できれば少しでも気持ちよく回るエンジンにしたいものだ。そこで、この機会でしかできないパーツの表面処理を実施する。これは、WPC処理を筆頭に各種の金属鏡面処理を行う不二WPCの協力により、現在行われているメニューをフルに投入してもらった。br>
同社の表面処理は、スーパーフォーミュラをはじめとするモータースポーツでも採用され、86のレンタルレーシングカーである86レーサーズの車両でも使われている。特に6MTの耐久性が飛躍的に向上するという。ミッションについても、処理を進めているので、チャンスがあれば紹介したいと思う。
【PART2】エンジンが新しいので摩耗は少ないが、表面処理後のため計測 ピストン&シリンダーのクリアランス測定
ボクサーエンジンはクランクの全長が直列エンジンに比べると極端に短く、フライアームが薄い。クランクのメインジャーナルの1、3、5番に穴が開いていて、ここから各コンロッドメタルへオイルが送られる。2と3のコンロッドへは、3番の油穴から両方へ分岐してオイル供給が行われる。
ボクサー特有の測定法が必要なのでじっくり作業する
シリンダーブロックに収まるパーツは、バリによる引っかきキズを除いては、寸法が変わるほどの摩耗はないので、そのまま組んでもエンジンは問題なく動くはず。しかし、新品パーツでも加工精度のばらつきがあり、さらには組み付け後のトラブル発生などにも備えて、各部の寸法はできるだけ測定してデータ化しておくのがいい。
水平対向4気筒ならではの部分は、ピストンやシリンダー2×2の2セットになるところだが、ピストンクリアランスの測定自体は特に変わったところはない。むしろ分割されているので、シリンダーの持ち運びはラクである。直列やV型に比べて著しく面倒なのが、コンロッドやクランクのオイルクリアランス測定だ。特にプレスゲージを使う際は、クランクあるいはブロックを台にしっかり固定して、組み付けを行う必要がある。そうしないと測定中にパーツが動いてゲージが必要以上につぶれることがある。ただし、測定機材を揃えているプロは、ボアゲージやマイクロゲージを使って内径と外径の差から軸受けのクリアランスを計算している人もいる。クランクメタルのクリアランス測定なら、シリンダーブロックにメタルをつけた状態で、二つのブロックを組み付けて、ボアゲージで内径を測定する。
【PART3】クランクやブロックを台に固定して作業する コンロッド&クランクメタルのオイルクリアランス測定
2本のボルトを2段階のトルクで締め付けてから、3回目の増締めで92.5度締め込む。