故障・修理
更新日:2019.12.12 / 掲載日:2019.12.12
自動車のサーモスイッチの仕組みとは
かつて縦置きエンジンのFR車が主流だった時代は、ラジエーターの冷却ファンをエンジンで駆動していたが、FF車の台頭に伴い、電動ファンによる冷却が主流になった。
今回は、自動車のサーモスイッチの詳しい仕組みについて、紹介する。
サーモスイッチはラジエーターのロワタンクや冷却水通路に取り付けられ、設定温度で電動ファンの電源を制御したり、冷却水のオーバーヒートを知らせるための過熱警告灯用として使用されている。
■ラジエーター用電動ファンのスイッチ

電動ファンのスイッチとして使われるサーモスイッチ。ラジエーターのロワタンクやエンジンの冷却水回路に取り付けられる。配線は1本と2本の2種類がある。電気回路としては、モーターを作動させるためのリレーを介することも多い。
■主なサーモスイッチの種類とその仕組み

規格上設定されているスイッチは3種類ある。サーモフェライト式は、内部にサーモフェライト、リードスイッチ、マグネットを持ち、サーモフェライトが設定上の温度になると急速に透磁率が低下する性質を利用して、リードスイッチをON-OFFする仕組みになっている。。設計上、広範囲な温度設定ができ、駆動部がないので破損や摩耗もないなど、様々な特性を持つが接点容量が小さい。サーモワックス式は、サーモスタットなどと同様にワックスの膨張でスイッチをON-OFFする仕組みで、接点容量が大きめとなっている。バイメタル式は、2種の金属の膨張率の違いで設定温度になると変形するバイメタルの特性を利用したもので、傘型の円板にされたバイメタルが反転することでスイッチを作動させる仕組み。こちらは、接点容量は用途に合わせて設定できる。いずれのスイッチも、作動する温度と復帰温度があり、ある程度のヒステリシスを持つ。
スイッチの規格は、取り付け部のネジサイズや作動温度、耐久性など様々な項目が定めてある。
■自動車のサーモスイッチの規格
JASO D404-86 自動車規格 エンジン冷却系用サーモメトリックスイッチ
規格上の正式名称は「サーモメトリックスイッチ」と長い。JIS(日本工業規格)ではなくJASO(自動車規格)だが、寸法や試験条件などの引用規格はJIS規格もある。
■自動車のサーモスイッチの形状や性能



■自動車のサーモスイッチの作動温度の表示

表示によると通常オフとなっており、設定温度が92℃になるとオンになる。スイッチはヒステリシスを持っており、図のように作動温度で一旦オンになると、ある程度下がるまではオフにならない。十分な作動時間を与え、頻繁にON-OFFするチャタリングを防ぐ。
■自動車のサーモスイッチのタイプ

■自動車のサーモスイッチの性能と耐久性の主な項目(抜粋して要約)
接点状態をオフにした端子間及び端子とケースの金属部の間で絶縁抵抗を測定する。
スイッチの接触抵抗による電圧降下を測定。正規の使用負荷に試験電圧を加えて、両端子間で測定した3回の測定結果の平均値を求める。規格値は耐久試験前で0.2V、試験後で0.3V。
試験液に浸けたスイッチを常温から毎分1℃以下の割合で作動温度になるまで上昇させその間にスイッチが作動する時の温度を測定。続いて、試験液の温度を復帰温度以下になるまで毎分1℃以下の割合で下げ、この間にスイッチが復帰するまでの時間を測定。
23プラマイ5℃の状態のスイッチを作動温度より20℃高く保った試験液の槽に入れ、接点が作動するまでの時間を測定。
スイッチを低温室でマイナス30℃にしてほぼ安定した後、約4時間放置してから、作動試験を行う。また、スイッチを高温室で120℃にしてほぼ安定した後、約4時間放置してから作動試験を行う。
耐水試験、耐振試験、耐久試験、端子の強さ試験がある。
■最近は水温センサー信号で作動させるサーモスイッチが多い
