故障・修理
更新日:2019.12.17 / 掲載日:2019.12.17
エンジンの冷却水として使われるLLC(ロング・ライフ・クーラント)とは
エンジンの冷却水として利用されているLLCは「ロング・ライフ・クーララント」の略称で、役割は読んで字のごとし。長期間、使用することが可能な不凍液の一種だ。
このLLCは凍結防止と防錆効果を発揮するが、これらの効力が持続する期間は2年間。2年を過ぎると水アカなどの要因も加わって劣化してくるため、定期的に交換する必要があるのだ。
点検して液量はOKでも茶色く変色していたら要注意で、ただちに交換する必要がある。水だけの補充などで濃度が薄まり、防錆効果が弱まっている可能性が大だからだ。ここでは、LLC(ロング・ライフ・クーラント)を交換する際の、LLCの選び方をはじめ、交換方法や手順について解説する。
LLC(ロング・ライフ・クーラント)の選び方
欧州車のLLCには黄色系が使われているケースがあるが、国産車は赤か青が一般的。これらの違い、実は色のみで性能的には同じ。同一メーカー品なら混ぜて使っても問題ないが、変色して見苦しくなる。このため、注入されている色に合わせるのが基本となるが、取材車は今後を見越して緑に変更した。また、LLCには真水で薄めて使用する「原液」と一定濃度に薄められた「補充用」がある。交換時は基本的に前者の「原液」を利用する。


LLC(ロング・ライフ・クーラント)の交換方法・交換手順

1.ロアホースの位置を確認
国産車はラジエーターロアタンクにドレンが設けられているが、取材車にはなし。欧州車はロアホースを外しての排出が一般的だ。

2.ホースクランプを緩める
ロアホースの下部に冷却水を受ける容器(飛び散るためタライがベスト)を置き、ホースバンドを緩めて後方にズラしていく。

3.ロアホースを抜いて排出
ホースバンドがズレて押さえが緩んだロアホースを徐々に引き抜いていき、抜ける寸前に受けの容器の位置を再度整え一気に引き抜く。

4.タンクのキャップを外す
排出を促進させるため、高圧タンクのキャップ(国産車の場合はラジエーターキャップ)を外して冷却経路内の内圧を抜いてやる。

5.抜けた量を確認する
取材車の冷却水の総容量は5リットル。これに対し、ラジエーターから抜け出てきた冷却水量は約3リットルで、エンジン内にまだ2リットル残っている計算となる。

6.エア抜きバルブその1
取材車には冷却経路のエア抜きが2か所ある。1か所はブレーキブースター右のヒーターホースの接続部にある。

7.エア抜きバルブその2
もう1か所はエアダクトとレゾネーターの接続部の下部。樹脂キャップを緩めれば、ほぼ全量排出される。

8.ホースを接続する
全量抜けたところで、エア抜きのキャップをキッチリ締め込み、ロアホースを元通り接続して冷却経路内のすすぎを行う。

9.真水を注入する
高圧タンクの注入口から真水を注入する。口元ギリギリまでたっぷり注入し、キャップを開けたままの状態でエンジンを始動する。

10.ヒーターを作動させる
エンジンが回ったらヒーターを作動させ、ヒーター回路内の冷却水も循環できるようにした状態でアイドリングをする。

11.水温が上がるまで回す
水温計が適温に達し、サーモスタットが開いて冷却水が全冷却経路を循環できるようになるまでアイドリングさせたらエンジンを停止。

12.すすぎ水を排出させる
ロアホースを抜いてすすぎ水を排出。エア抜きキャップも緩めて確実に排出させたら、再度真水を注入してすすぎをくり返す。

13.LLCを注入する
抜け出る水が透明になるまで2~3回すすぎ洗いをした後、エア抜きキャップは緩めたままLLC原液を2リットル(濃度40%の場合)注入する。

14.真水を補充する
さらに真水を3リットル入れる。エンジンの冷却経路まで水が満たされてエア抜きから水が漏れ出したら順次、キャップを締め込んで密閉する。

15.エアを確実に抜く
口元まで注入したらエンジンを始動。冷却経路内に残ったエアが抜けきるまで、キャップを開けた状態でアイドリングをする。

16.水量を調整して完了
エアが抜けきってタンク内の水面が安定したらMAXレベルまで真水を注入し、キャップをキッチリ締めたら作業は終了だ。
寿命が長いとされているスーパーLLCでも定期メンテが必要

近年の新車には「スーパーLLC」と呼ばれる長寿命LLCが充填されている。これは交換サイクルがトヨタ系で初回7年、以降4年毎、ホンダ系で初回11年、以降6年毎という長寿命のLLC。だから手入れ不要と捉えがちだが、実は添加剤の追加など、定期的なメンテナンスが必要なこともある。素性が不明なクルマだったら特に注意したい。