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故障・修理
更新日:2018.04.13 / 掲載日:2018.04.13

W123復活大計画 「エンジンOH計画」

ようやく念願の車検までたどり着いた我がベンツちゃんだが、ガレージがある北海道・札幌はまだまだ雪だらけ。必然的に巣ごもりするしかなく、どうせならば現状で気になるところを、しっかり直しておこう、と考えた次第。ここでしっかり問題点を出し切っておけば、雪が溶けたら颯爽と走りまくれる、はずなのです。

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ベンツちゃん=Mercedes-Benz 300D(W123)

今回のメニュー…●エンジンOH計画その1●インジェクタークリーニング ●エンジンOH計画その2●車上OH整備の下準備

40年前のクルマでも、並行輸入車のため初年度登録は平成30年1月になる。車検は平成33年1月まで有効。新車並みの優越感を体感(笑)。

日本のナンバーでいきなりJDMルックになったベンツちゃん! クルマの印象はナンバーのデザインでずいぶんと変わるものです。

3月下旬だというのにハリーズガレージは雪に阻まれ、公道デビューは無理。いつかはやろうと思っていたエンジンOH。挑戦することにした。

大雪に囲まれて動けない、我がベンツちゃん。いい機会なので、エンジンOH計画を始動します!

気になるエンジンの振動音は正常なのか? トラブルなのか?

 Dレンジに入れた時や加速時に微かに発生するトトトトトという軽いエンジンの振動。これがどうしても気になって仕方がない。5気筒ディーゼル特有の“正常な振動”なのか、何らかのエンジントラブルによるものなのか、率直にいって判断が難しい。
 だが、困った時のユーチューブ頼みで見つけたW123のエンジン動画の音と聞き比べてみると、わずかに違う。一気筒が正常に燃焼していない? そんな“失火”している印象を捨てきれないのだ。
 有り難いことに動画のコメント欄には、「バルブクリアランスを調整したらアイドル不調が直ったよ」とか「インジェクターノズルの清掃は効果的だよ」といった投稿者のアドバイスがあった。そんな先人のコメントに従って、まずインジェクターの状態を確認してみるぞ。

加速中に感じる失火症状は、アイドル時にも僅かに発生。だが、5気筒特有の振動なのか? エンジンマウントの劣化か? 判断が難しい微妙なレベルだ。

インジェクターパイプを緩めて燃圧を下げ、“人工的失火”状態にするバランステストを実施。問題の特定を試みたが、判別が難しい。

インジェクターの取り外しは簡単にできそう。5気筒すべてのインジェクターを取り外して点検することにした。

整備履歴を見ると、数年前にインジェクタークリーニングは行われていた。そのおかげでインジェクターは固着しておらず、簡単に緩んだ。

インジェクターとシリンダーの間には圧縮漏れを防ぐワッシャーが装着されている。これは再使用はできない。

インジェクター上部の左右に飛び出た角に当てないために、27mmのディープソケットが必要になる。今回使用したのはKTC製B4L27。

知り合いの修理工場から借りてきた燃圧テスター。主に国産トラック整備に使用していたそうだが、パイプのアダプターは使用可能。

油圧ジャッキのようにレバーを操作。表示圧力が110kg/cm2ほどになると、4本は正常に噴射されるが、1本だけ低い圧力だ。

噴射圧が低いインジェクターのスプレーパターンは、微細な霧状にならず、水鉄砲のようにピューッと噴射されてしまう。

他の4本は、非常に細かいミスト状のスプレーを噴射。左の水鉄砲インジェクターに何らかの異常があるのは明らかだ。摩耗か、詰まり?

おかしいことだらけのインジェクション。不調の原因はここか?かなり怪しい

噴射が明らかにおかしいインジェクターを発見!

 とはいえ、このベンツちゃんの整備履歴を見る限り、数年前にアメリカでインジェクターのクリーニング作業が行われている。もしかしたら失火の原因は、シリンダーの摩耗なのか? そんな嫌な妄想は広がるばかり。
 そんな時に有効なのは基本から検証するやり方。今回のケースであれば、圧縮テストを試みることだろう。だが最近はユーチューブなどのネットから得られる同様の症例の解決策を参考にする方法が、結果的にトラブル解決の近道になることも多い。
 そんなことを考えながらインジェクターを取り外してみると、取り外した5個のインジェクターを見る限りは、目立ってカーボンが付着しているインジェクターは確認できない。次に噴射状態を確認するため知り合いの工場から借りてきたインジェクターテスターで点検すると、噴射状態が明らかに異常なインジェクターを発見。正常では霧状のスプレーパターンで噴射されるのだが、異常が認められるインジェクターは、微細な霧状にならず水鉄砲のようにピューッと噴射され、噴射圧力も明らかに低い。
 そこで問題のあるインジェクターを分解&清掃していくと、ニードルのノズル先端穴の詰まりが確認できた。この穴がカーボンで詰まるのは、どうやら定番トラブルのようだ。そこで再洗浄を試みたのだが、丁寧に洗浄を繰り返しても詰まりはまったく解消しない。顕微鏡で先端の穴の内部を確認してみると、細い針金のような金属が折れており、それが突き刺さったままの状態になっている。おそらくアメリカで行ったインジェクタークリーニングの際に、清掃用のニードルが折れてそのままの状態で組み上げたのではなかろうか?  解決策としてはやや乱暴な方法になるが、先端を削って細くした裁縫用の針でノズル先端の穴を広げて、インジェクターを組み上げテスターで噴射させる。その狙いは効果的で、穴に詰まっていた金属は吹き飛んだ。再テストしてみると、噴射パターンは他のインジェクターと同じに回復している。
 特定の条件下で発生していた微細な振動は、これが原因だったのだろうか? さっそく検証してみよう。

ニードルノズルの先端に非常に細い穴があるが、カーボンなどの汚れでこの穴が詰まってしまうと、アイドル不調などの原因になるらしい。

インジェクターを写真のように逆さまにして万力に挟み、取り外しに使った27mmのソケットを使って分解する。(ノズル先端のダメージに注意)

メタルクリーンを溶かしたお湯で煮込んでカーボンを落とす。シムなどの組み合わせが変わらないように、一個ずつクリーニング作業を行った。

目視点検では問題のあるインジェクターも含めて、目立った摩耗箇所は見つからない。老眼なのであまり当てにはなりませんが……(笑)。

ノズルの刻印で検索すると純正や社外、コピー品も含め、多数ヒット。その中から安くて信頼性のある新品ノズルを見つけるのは難しそう。

デジカメの拡大モードで見ると、ノズル先端の横穴が確認できる。その他の接触部には摩耗箇所はないように感じる。

正常なノズルは先端穴から潤滑剤をスプレーすると左右に噴射されるが、問題のインジェクターは穴が詰まり噴射されない。

ノズルボディ側には目立ったピット状腐食や摩耗もなく、程度はよい印象だ。煮ても取れない頑固なノズル詰まりの理由は何なのだろうか?

顕微鏡を使って詰まった穴に細い銅線(ヨリ線の1本)を差し込むと、穴の奥になにやら金属片のようなモノが詰まっている。

裁縫針の先端を削って細くしてノズル先端穴に無理やり突っ込んで穴を拡大。組み上げた状態でテスターで噴射すると、金属片は吹き飛んだ。

荒業作業後に再確認すると、穴は貫通。前回のクリーニング作業の際に清掃用の針が折れ、詰まったままの状態だったのだろう。整備ミスだなあ。

トルクレンチで組み付けて噴射テストを実施。5本ともミスト状の噴射パターンになり、ほぼ同じ噴射圧に戻った。

整備書に書いてある先端穴から、噴射状態のテスト(燃圧をゆっくり上昇)を行う。洗浄したノズルも、他のノズルも、正しい線状噴射を確認。

インジェクター組み付け&取り付け時に締め付けすぎると、歪みによって内部の漏れが発生するケースもある。トルクレンチは必須。

仮始動テストなのでワッシャーを再使用。そのため規定トルクでは圧縮漏れが発生してしまった。ほんの僅かだけ増し締めすると漏れは止まった。

アイドル回転中にエキステンションバーが立つほど改善。インジェクターの先端穴の詰まりが、微かな失火の原因だったようだ。

補機類を取り外してエンジンまわりを整理!「車上」OHがやりやすい環境を整える

一難去ってまた一難、やはりエンジンOHは必要だ

 詰まりを解消したインジェクターを取り付けると、アイドル時のエンジン振動は明らかに低下。Dレンジに入れた際に発生していたトトトトトという振動もなくなり、アイドル不調問題は解決したかも。3月半ばのガレージは雪の中で試運転はまだまだ無理のため、アクセルを吹かしながら負荷をかけていく。神経を尖らせながらエンジン音や振動を確認していくと、また僅かな失火振動を感じるようになってしまった。一難去ってまた一難。どうやら失火の原因がひとつ解消した結果、隠れていた他の原因が表面化してしまったようだ。
 今回感じた振動は僅かなもので、40年前のディーゼルエンジンと考えればこんなものかな?とも納得することもできるレベル。だが、気づいてしまったこともあり、どうしても気になってしまう。まだまだ雪に囲まれている事情も考慮して、予定を前倒しして、エンジンのOH作業を始めることにした。
 エンジンOH作業はエンジンを降ろして行うのが普通だが、現状のハリーズガレージはスペースが手狭なことに加えて、出口が雪で塞がれているため、エンジンを降ろすスペースを確保するのが不可能。難易度が高くなる、車上エンジンOH作業で行うしかない。
 車上エンジンOHの作業手順としては、車上にエンジンを置いたままシリンダーヘッドとオイルパンを取り外してピストンを抜き取る。さらにピストンリングやロッドベアリングなどの主要エンジンパーツを交換する予定だ。エンジンホイストがなくても可能なことが利点で、エンジンルーム内部でOH作業を進めることができる。スペースが狭いガレージ向きの作業といえるだろう。
 ただしトランミッションとエンジンブロックは切り離さない状態で作業を行うため、クランクシャフトの後ろ側のオイル漏れを防ぐ“リヤメインシール”の交換は不可能という欠点もある。またクランクシャフトも取り外すことができないため、メインベアリングの交換も基本的には無理(裏技で、ベアリングを押し出して交換する方法もあるが)。
 リヤメインシールが交換できないことと、車上でオイルパンを外すことができ、かつコンロッドキャップを外すことができる構造のクルマとエンジンに限定されることは問題だが、自分としては手狭な作業スペースでも一定以上の効果を挙げられるという点でDIY向きだ。
 FR車で作業を進める際に問題になるのが、フロントのクロスメンバー。オイルパンを外すためにはクロスメンバーを取り外す必要があるのだが、残念ながらベンツちゃんのクロスメンバーは車体に溶接で取り付けられている。どうやら一工夫が必要だな~と修理書を確認したところ、エンジンマウントを外してホイストでエンジンユニットを数センチほど持ち上げると、クロスメンバーとの隙間が確保され、オイルパンを外すことができることが分かった。この方法ならば手間はかかるが、オイルパンを取り外すことができそうだ。
 さっそく分解を進めていくと1番シリンダーのロッカーアームとカムシャフトに段付きの摩耗を発見。どうやらクリアランス調整時に見逃した摩耗のようだが、圧縮圧力のバラつきで微かなアイドル不調の原因になり得るほど、摩耗が進行している。全体的に汚れが少なく程度のよいエンジンだと思っていたが、分解を進めていくと、40年&40万キロの歴史を感じる劣化ポイントが目につく。再生(ボーリング)がほぼ不可能なシリンダーの摩耗具合も心配。果たして、車上OHは成功するのだろうか?

ファンなどの回転系パーツを分解する前には、バッテリー端子を取り外し不意なエンジン回転による怪我&事故防止が大切。

重いレシプロタイプのエアコンコンプレッサーは、配管を緩めずにとりあえず横にずらす。ヘッドを取り外す際のスペースを確保。

40年前のボルト類はできるだけ再使用したいので、手間はかかるが元の位置や向きが分かるように整理。

新しめのリビルト品と思われるオルタネーターが装着されていた。車両すべての配線も交換済みなので、電装系の信頼性は大丈夫だろう。

パワステポンプも配管を緩めずに横にずらしておく。燃料系やブレーキ系の樹脂パイプは硬化しているので、折らないように神経を使う。

フィルター以降の燃料系は、パイプにゴミが入ると厄介なトラブルを引き起こす。カバーをするなどゴミ対策が重要だ。

エンジンを分解する前には、泥や汚れがエンジン内部に入りこむことを少しでも防止するため、しっかりと洗浄しておく。

前回のバルブクリアランス調整の際には見逃してしまったが、ロッカーアームに段付き摩耗が発生していた。

カムシャフトの山もカムプロフィールが変わるほど摩耗が進んでしまっている。失火トラブルにはならないと思うが、エンジン回転のスムーズさには影響を与えるはずだ。

日産L型のようなヘッド。この鋳鉄製の重いヘッドを自分一人で取り外すことができるのでしょうか? 腰痛がとても心配……。

確認作業はヘッド分解前の基本点検。

整備書の合いマークとピタリと合っているので、チェーンやチェーンガイドの摩耗は進んでいないようだ。

色を変え方法を変えて、チェーンとスプロケットの位置確認マークを付けた。ところがこれでも不十分だったことが次号で判明する。「時間よ戻れ」です……。

次回予告

次回はいよいよヘッドを開けて
エンジンの真の状態を
チェックします!

提供元:オートメカニック

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グーネットピット編集部

ライタープロフィール

グーネットピット編集部

車検・点検、オイル交換、修理・塗装・板金、パーツ持ち込み取り付けなどのメンテナンス記事を制作している、
自動車整備に関するプロ集団です。愛車の整備の仕方にお困りの方々の手助けになれればと考えています。

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