故障・修理
更新日:2018.04.13 / 掲載日:2018.04.13
W123復活大計画 「エンジンOH計画」
ようやく念願の車検までたどり着いた我がベンツちゃんだが、ガレージがある北海道・札幌はまだまだ雪だらけ。必然的に巣ごもりするしかなく、どうせならば現状で気になるところを、しっかり直しておこう、と考えた次第。ここでしっかり問題点を出し切っておけば、雪が溶けたら颯爽と走りまくれる、はずなのです。





大雪に囲まれて動けない、我がベンツちゃん。いい機会なので、エンジンOH計画を始動します!
気になるエンジンの振動音は正常なのか? トラブルなのか?
Dレンジに入れた時や加速時に微かに発生するトトトトトという軽いエンジンの振動。これがどうしても気になって仕方がない。5気筒ディーゼル特有の“正常な振動”なのか、何らかのエンジントラブルによるものなのか、率直にいって判断が難しい。
だが、困った時のユーチューブ頼みで見つけたW123のエンジン動画の音と聞き比べてみると、わずかに違う。一気筒が正常に燃焼していない? そんな“失火”している印象を捨てきれないのだ。
有り難いことに動画のコメント欄には、「バルブクリアランスを調整したらアイドル不調が直ったよ」とか「インジェクターノズルの清掃は効果的だよ」といった投稿者のアドバイスがあった。そんな先人のコメントに従って、まずインジェクターの状態を確認してみるぞ。










おかしいことだらけのインジェクション。不調の原因はここか?かなり怪しい
噴射が明らかにおかしいインジェクターを発見!
とはいえ、このベンツちゃんの整備履歴を見る限り、数年前にアメリカでインジェクターのクリーニング作業が行われている。もしかしたら失火の原因は、シリンダーの摩耗なのか? そんな嫌な妄想は広がるばかり。
そんな時に有効なのは基本から検証するやり方。今回のケースであれば、圧縮テストを試みることだろう。だが最近はユーチューブなどのネットから得られる同様の症例の解決策を参考にする方法が、結果的にトラブル解決の近道になることも多い。
そんなことを考えながらインジェクターを取り外してみると、取り外した5個のインジェクターを見る限りは、目立ってカーボンが付着しているインジェクターは確認できない。次に噴射状態を確認するため知り合いの工場から借りてきたインジェクターテスターで点検すると、噴射状態が明らかに異常なインジェクターを発見。正常では霧状のスプレーパターンで噴射されるのだが、異常が認められるインジェクターは、微細な霧状にならず水鉄砲のようにピューッと噴射され、噴射圧力も明らかに低い。
そこで問題のあるインジェクターを分解&清掃していくと、ニードルのノズル先端穴の詰まりが確認できた。この穴がカーボンで詰まるのは、どうやら定番トラブルのようだ。そこで再洗浄を試みたのだが、丁寧に洗浄を繰り返しても詰まりはまったく解消しない。顕微鏡で先端の穴の内部を確認してみると、細い針金のような金属が折れており、それが突き刺さったままの状態になっている。おそらくアメリカで行ったインジェクタークリーニングの際に、清掃用のニードルが折れてそのままの状態で組み上げたのではなかろうか? 解決策としてはやや乱暴な方法になるが、先端を削って細くした裁縫用の針でノズル先端の穴を広げて、インジェクターを組み上げテスターで噴射させる。その狙いは効果的で、穴に詰まっていた金属は吹き飛んだ。再テストしてみると、噴射パターンは他のインジェクターと同じに回復している。
特定の条件下で発生していた微細な振動は、これが原因だったのだろうか? さっそく検証してみよう。
















補機類を取り外してエンジンまわりを整理!「車上」OHがやりやすい環境を整える
一難去ってまた一難、やはりエンジンOHは必要だ
詰まりを解消したインジェクターを取り付けると、アイドル時のエンジン振動は明らかに低下。Dレンジに入れた際に発生していたトトトトトという振動もなくなり、アイドル不調問題は解決したかも。3月半ばのガレージは雪の中で試運転はまだまだ無理のため、アクセルを吹かしながら負荷をかけていく。神経を尖らせながらエンジン音や振動を確認していくと、また僅かな失火振動を感じるようになってしまった。一難去ってまた一難。どうやら失火の原因がひとつ解消した結果、隠れていた他の原因が表面化してしまったようだ。
今回感じた振動は僅かなもので、40年前のディーゼルエンジンと考えればこんなものかな?とも納得することもできるレベル。だが、気づいてしまったこともあり、どうしても気になってしまう。まだまだ雪に囲まれている事情も考慮して、予定を前倒しして、エンジンのOH作業を始めることにした。
エンジンOH作業はエンジンを降ろして行うのが普通だが、現状のハリーズガレージはスペースが手狭なことに加えて、出口が雪で塞がれているため、エンジンを降ろすスペースを確保するのが不可能。難易度が高くなる、車上エンジンOH作業で行うしかない。
車上エンジンOHの作業手順としては、車上にエンジンを置いたままシリンダーヘッドとオイルパンを取り外してピストンを抜き取る。さらにピストンリングやロッドベアリングなどの主要エンジンパーツを交換する予定だ。エンジンホイストがなくても可能なことが利点で、エンジンルーム内部でOH作業を進めることができる。スペースが狭いガレージ向きの作業といえるだろう。
ただしトランミッションとエンジンブロックは切り離さない状態で作業を行うため、クランクシャフトの後ろ側のオイル漏れを防ぐ“リヤメインシール”の交換は不可能という欠点もある。またクランクシャフトも取り外すことができないため、メインベアリングの交換も基本的には無理(裏技で、ベアリングを押し出して交換する方法もあるが)。
リヤメインシールが交換できないことと、車上でオイルパンを外すことができ、かつコンロッドキャップを外すことができる構造のクルマとエンジンに限定されることは問題だが、自分としては手狭な作業スペースでも一定以上の効果を挙げられるという点でDIY向きだ。
FR車で作業を進める際に問題になるのが、フロントのクロスメンバー。オイルパンを外すためにはクロスメンバーを取り外す必要があるのだが、残念ながらベンツちゃんのクロスメンバーは車体に溶接で取り付けられている。どうやら一工夫が必要だな~と修理書を確認したところ、エンジンマウントを外してホイストでエンジンユニットを数センチほど持ち上げると、クロスメンバーとの隙間が確保され、オイルパンを外すことができることが分かった。この方法ならば手間はかかるが、オイルパンを取り外すことができそうだ。
さっそく分解を進めていくと1番シリンダーのロッカーアームとカムシャフトに段付きの摩耗を発見。どうやらクリアランス調整時に見逃した摩耗のようだが、圧縮圧力のバラつきで微かなアイドル不調の原因になり得るほど、摩耗が進行している。全体的に汚れが少なく程度のよいエンジンだと思っていたが、分解を進めていくと、40年&40万キロの歴史を感じる劣化ポイントが目につく。再生(ボーリング)がほぼ不可能なシリンダーの摩耗具合も心配。果たして、車上OHは成功するのだろうか?














次回はいよいよヘッドを開けて
エンジンの真の状態を
チェックします!
提供元:オートメカニック