故障・修理
更新日:2018.10.16 / 掲載日:2018.10.16
絶対やっちゃダメ!禁断のクルマ実験室12 冷媒入れすぎ&高圧配管から缶へ逆流

冷媒の過充填で安全装置はどう働く?





プリウスのエアコンには電動コンプレッサーが使われている。普通のエンジン車や一部のハイブリッド車はエンジンでコンプレッサーを回すので、特に夏場はエアコンのためにエンジン停止ができなくなり燃費が悪化する。
でも電動なら、駆動用バッテリーの電力があれば、エンジンと切り離して制御できる。さらに、電動だとコンプレッサーの回転数を自由にできるので、必要な冷房能力に応じて制御でき、最大ではコンプレッサーを6000rpm台で回せるのだ。
エンジン車だと渋滞中にコンプレッサーを速く回して能力を上げたいと思ってもムリ。そういうことへの対応として可変容量式などの機構を採ることもある。
このように電動ならではのメリットがあるのだが、冷媒を過充填するとどうなるのかを試してみた。通常、あるところからエアコンの高圧側が異常高圧になり、コンプレッサーが停止する。
しかし、プリウスでは冷媒が充填しやすく、かなりの量が入る。気がつくと高圧側が恐ろしいほどに上がっていた。エンジン車だと、もう少し目盛りを読む余裕があり、3000kPa手前で安全装置が働いて停止するはずだ。プリウスも安全装置は働くが、電動コンプレッサーの立ち上がりがあまりに速く、瞬間的に3000kPa超えになるようだ。そのまま何度か高圧の異常を検知すると、2000kPa台に収まるが、オフ後に時間を置いてからオンにし直すと再び異常高圧になる。
この状態を作ってから、マニホールドゲージの高圧側を開いて缶への逆流を試してみた。爆発するかと思ったが、液冷媒が缶に戻されて、車両側が冷媒不足になった。大事故とはならなかったが、エアコンオイルも外に出る可能性もあるので、後々のダメージに繋がる可能性がある。
電動コンプレッサーは、エンジンの回転に依存せず好きな回転が得られるので、最大冷房にすると物凄い勢いで冷媒を圧縮できる。そのため、過充填で起こる異常高圧もエンジン車では考えられないような値になる。





プリウスの高圧側ポートは、サイトグラス横の液冷媒の流路にある。液冷媒が逆流した結果、車両側から冷媒を回収した状態になって減圧されたために缶の破裂は起こらなかった。もし高圧ガス側(コンプレッサーとコンデンサーの間)に高圧ポートがある機種だと、ガス圧が加わり破裂したかもしれない。