バンパー補修 Step4 補修跡が透けるのを防ぎ、平滑に整える
プラサフを塗布して下地を整える
塗装する場合、特に補修塗装では補修跡が透けるのを防いだり、細かな凹凸を埋めて平滑に整える下地塗装が必須。
その下地用として一般にプライマーの「付着性の確保」とサフェイサーの「塗装面の調製」という2つの役割を発揮するプラサフ(プライマー・サフェイサーの略称)が利用されている。ところが、プラサフは鉄部(鋼鈑)に対してしかプライマーとしての効果を発揮しないのだ。
このため、プラスチックやアルミ、ステンレスなど、鉄以外の素材に塗装する場合、専用のプライマーを予め塗装する必要がある。そこで用意したのが「ミッチャクロンマルチ」で、サフェイサーとしての効果を担って乾燥後も十分な柔軟性がある「1Kマルチプラサフ」をその上に塗布する。
【使用した用品】
■1Kマルチプラサフ(グレー ) ■価格:300g 1,188円(税込)特殊変性アクリル樹脂をベースにした速乾タイプの1液型プラサフ。ウレタン塗膜、ラッカー系塗膜のいずれの旧塗膜に対しても使用可。
■ブルドック ストレーナー ■価格:300g 1,188円(税込)調色・配合した塗料を、スプレーガンの塗料カップに注入する際、混入したゴミなどをこし取る使い捨てのフィルター。
■使いすて塗料容器 600ccセット ■価格:540円(税込)硬化剤・シンナーの配合や調色作業時に重宝する、薄いポリ製の使いすて内容器をホルダーにセットして使用する塗料容器。
■問い合わせ先:ぺいんとわーくす
【1】リヤバンパーに組み付けられたパーツを取り外す
穴があいていたリヤバンパーは、きれいな面は僅か。ほぼ全体が細かなキズに覆われていたため、フロント同様、そっくり塗装してしまうことにした。
そこで、組み付けられているパーツを可能な限り取り外す。反射鏡はネジ留めで容易に外すことができた。
同色で塗装されているマッドフラップも取り外す。
取り外し完了。 【2】水洗い後、水研ぎで足付けする
リヤバンパーを水洗いして泥汚れをきれいに洗い流す。
汚れを落としたら、はがれずに残っている塗膜面を#1000の耐水ペーパーで水研ぎして足付けする。
足付けは旧塗膜への塗料の密着性を高める下処理で、このように艶があったり水を弾くようなら研磨が不十分。
ムラなく艶消し状態となるよう、隅々までキッチリ研磨する。 【3】無塗装面をマスキングする
フロントバンパーも同様に足付け処理を行い、残った水分を拭き取って乾燥。
乾いたら無塗装で樹脂の地肌が露出している面にマスキングテープを貼ってカバーする。
広い面は隙間が生じやすいので注意! 隅々までムラなくキッチリマスキングする。 【4】シリコンオフで拭いて脱脂する
乾いたきれいなウエスにシリコンオフをたっぷり染み込ませる。
補修面と共に足付けした面を隅々までムラなく拭き、表面に残っている油分を確実に取り除く。
送風路の奥や隅といった汚れが堆積しやすい面は特に念入りに拭き取る。 【5】地肌が露出した面にプライマーを塗布
バンパーの置き台をマスキングシートで隙間なく覆って塗料が付着しないようカバー。作業中にズレないよう、安定する配置を探りつつバンパーを載せる。
まず、塗膜が削れて樹脂の地肌が露出してしまっている面に「ミッチャクロンマルチ」を塗布する。
マスキング面に試し吹きして粒子が均等か噴射圧が安定しているか確認する。
樹脂の地肌が露出した面にムラなく均一に塗布し、そのまま15から20分放置して十分乾燥させる。 【6】スプレーガンにプラサフを注入する
「1Kマルチプラサフ グレー」の缶を振って軽く撹拌後、蓋を外し、ミキシングバーで底のほうまでムラなく攪拌する。
使い捨てカップをホルダーにはめ込み、プラサフを200ccほど取り出す。
指定の配合比率(プラサフ100に対しシンナー40から60)のパナロックシンナーを注入して希釈する。
ミキシングバーで十分攪拌してよく混ぜ合わせる。
スプレーガンの塗料カップに使い捨てフィルターをセット。シンナーで希釈したプラサフを注入する。 【7】研磨した面にプラサフを塗布する
エアを噴出させてエア圧が0.2から0.3Mpaとなるようをレギュレーターを調整後、ダンボールに試し吹きして噴射量を調整する。
塗装面から手の平ひとつ分くらいの距離を維持しながら、樹脂の地肌が露出した面にプラサフを塗布する。
1回目は薄っすら塗布。
薄め塗布の仕上がり。
15分ほど乾燥させたところで、補修跡が隠れる程度に薄く均等にスプレーする。
プラサフ塗布面を#1000の耐水ペーパーで空研ぎして滑らかに整える。
リヤバンパーも同様に下地を整え、仕上がったらエアダスターで表面に残った研磨カスを吹き飛ばす。
カスを吹き飛ばして工程完了。 スプレーガンは塗料の噴射量や噴射パターンを細かく設定することができる
エアコンプレッサーで安定供給される高圧エアで動作するスプレーガンは、エア圧の微調整は元より塗料の噴射量や噴射パターンも細かく調整できる。
それゆえ、試用時は塗装環境に応じた調整が必須で、使用後はキッチリ洗浄して塗料の残留物を取り除く必要もある。このため、キャップを外したら噴射ノズルを押すだけで塗装できる、缶スプレーの手軽さにはどうしても勝てない。
しかし、スプレーガンから噴き出される塗料はきめ細かく、なんといっても噴出圧が安定しているため缶スプレーよりきれいに塗ることができる。
塗り方は基本的に缶スプレーに準じており、缶スプレーで普通に塗装できるスキルがあったなら意外と簡単! 基本的な設定方法を頭に入れてしまえば初めてでもそこそこ塗ることができ、ある程度コツをつかんでしまえば缶スプレーより楽にきれいに仕上げられる。エアコンプレッサーを持っていたなら、スプレーガン塗装にチャレンジしてみたい。
■スプレーガン(重力式) ■価格:4,000から20,000円燃料カップが上部に設置されている重力式が、普及品ならホームセンターで数千円で手に入る。DIYならこれで十分。ただし、格安ツールセットに入組された塗料タンクが下部接続の吸上式は補修には向かないので注意!
■エアフィルター ■価格:3,242円(税別)空気は湿気を含むためエアコンプレッサーのタンク内には水が溜まりやすく、吐出エアには水分が混じり込むため、スプレーガン塗装を行うなら水分を取り除く「エアフィルター」が必須!
■問い合わせ先:モノタロウ
スプレーガンの各部名称と設定
■空気キャップ
ノズルの外周リングを緩めることで空気キャップの向きの調整が可能で、上記のように噴射パターンを変更することができる。
【縦向き】エアの噴射孔が上下に配置されることで噴射された塗料が上下から圧縮され、パターンが横方向に広がる。
【横向き】エアの噴射孔が左右に配置されることで噴射された塗料が左右から圧縮され、パターンが縦方向に広がる。■トリガー(引き金)
軽く握るとエアが噴出。
さらに握ると塗料が噴出。 ■空気調整ツマミ
エア圧はコンプレッサー側の圧力調製器で調節するのが基本だが、簡易的にこのツマミで微調整することもできるようになっている。
■塗料カップ
スプレーする塗料を溜めておくカップで、塗料は塗料自体の重みで供給される。このため、分量が少なくなても安定供給される。
■パターン開き調整ツマミ
楕円形となる噴射パターンの噴霧幅を調整するツマミで、いっぱいに閉める丸い円形になり、緩めるに従って楕円の幅が広がっていく。
■塗料調整ツマミ
■エア接続口
他のエアツールと同様、ワンタッチカプラを取り付けて運用する、エアコンプレッサーに接続されたエアホースの接続口。
バンパー補修 Step5 モデル車は干渉パールの複雑な発色を利用した3コートパールで、3層に塗り重ねる
ホディと同色のカラーで上塗りする
カラーペイントには特殊変性ポリエステル樹脂の使用で、乾燥後も塗膜に十分な柔軟性がある、「1液型ベースコート塗料プロタッチ」を選択した。硬く強固な被膜を形成する2液型ウレタン塗料とは異なって、柔軟性のある素材に塗装する場合でも特別な措置(柔軟性硬化剤の使用)が必要ないからだ。
ところが、モデル車の塗装色「日産QX1」はちょっと特殊。ベースカラーとなる「ソリッドカラー」を塗装後、より透明性を出すためにクリアで希釈した「パールベース」を塗装し、上塗りの「クリヤー」で仕上げる3層構造の「3コートパール塗装」だったのだ。
【使用した用品】
■日産 QX1 ホワイト3P/カラーベース 0.9kg ■価格:5,184円(税込)1液型ベースコート塗料プロタッチによる3コートパール塗装用の下地塗装の上に塗る「ベースカラー」で、日産QX1では白のソリッド。
■日産 QX1 ホワイト3P/パールベース 400g ■価格:5,184円(税込)内部の複雑な構造から太陽の光を2色に分光する性質がある「干渉パール」をクリヤーで希釈した「パールベース」。
■マルチトップS硬化剤 100g ■価格:864円(税込)トップコート専用品として開発された自動車用2液型ウレタンクリヤー「マルチトップクリヤーSH」の専用硬化剤。
■問い合わせ先:ぺいんとわーくす
【1】カラーベースに硬化剤を添加する
カラーベースの缶を振って軽く撹拌後、蓋を外し、ミキシングバーで底のほうまでムラなく攪拌する。
使い捨てカップにカラーベースを100cc(バンパー2本で最終的に200ccで足りた)取り出す。
カラーベース100に対し10の比率で「マルチトップS硬化剤」を配合する。
計量目盛り付きスポイトで硬化剤を20cc吸い取り、カラーベースに投入する。
主剤+硬化剤を100として80から120の比率のパナロックシンナーを注入。
ミキシングバーで十分攪拌してよく混ぜ合わせる。
スプレーガンの塗料カップに使い捨てフィルターを介して注入する。 【2】数回に分けて除々に色をのせていく
段ボールに試し吹きして噴射パターンや噴出量を確認。どのように塗料が飛ぶかイメージできたところで塗装に入る。
本塗りは基本的に2から4回塗りで仕上げる。1回目は少し遠めから薄く吹き付ける。
全体に薄っすら色がのったら、バンパー端を意識して厚く塗っておく。
2回目からは手の平ひとつ分くらいの距離から噴射パターンの3分の1ほどを塗り重ねる。
艶が出るまで塗り込み、10分ほど乾燥させる。 【3】ウェット吹きしてキッチリ塗り込む
乾燥して塗り艶が消えたら3回目。艶が出て自分の姿が映り込むまでキッチリ塗り込む。
通風路、フォグランプ取り付け穴の側壁はムラになりやすいので注意。意識して確実に塗布しておく。
マッドフラップにも忘れずに塗布しておく。 【4】パールベースを塗り重ねる
「ベースカラー」の塗布後、10分経過したところで「パールベース」を塗り重ねる。使用した「カラーベース」の半量(200cc使用したため100cc)の「パールベース」を使い捨てカップに取り出す。
同量のパナロックシンナーで希釈。
ミキシングバーでよく攪拌する。
スプレーガンの塗料カップに注入し、段ボールに試し吹きして噴射パターンや噴出量を確認する。
手の平ひとつ分くらいの距離から全体にムラなく、キラキラした艶が出るまで塗り込んでいく。
艶がでてきた。
マッドフラップにも同様に塗布する。 【5】クリアに柔軟性硬化剤を添加する
使い捨てカップにマルチトップクリヤーSH(主剤)を300cc取り出す。
柔軟性硬化剤「フレックス」を主剤100に対し33の比率、約100ccを添加。
主剤100に対し20から30の比率のパナロックシンナーで希釈する。
ミキシングバーで十分攪拌してよく混ぜ合わせる。
スプレーガンの塗料カップに使い捨てフィルターをセット。濾過しながら配合した上塗りクリアを塗料カップに注入する。【6】全体にムラなくキッチリ塗り込む
上塗りのクリアは「パールベース」の塗布後、10分経過したところで塗布する。
1回目は少し艶が出る程度に薄く、10分ほど乾燥させてから2回目に塗り肌を見ながら光沢を出していき、乾燥後の3回目で全体にムラなく艶が出るまで塗り重ねる。 バンパー補修 Step6 数時間の乾燥ではまだ塗膜は軟らかいので注意!
1晩放置して完全に乾燥後、組み付ける
硬化剤で硬化させるウレタンクリアは、シンナーが蒸発することで塗膜が安定するアクリルクリアに比べて早く乾燥。室温30℃で2から3時間経過すればコンパウンドをかけられる状態となる。
しかし、ベタつかなくなったとしても数時間の乾燥では塗膜が軟らかく、指先で軽く押しただけで指紋状に凹んだ跡が残ったり、塗膜がズルッ動いたりはがれてしまうこともある。自然乾燥では室温30℃でも完全硬化までに40時間。特に今回のように柔軟性を持たせるために柔軟性硬化剤を使用した場合、ウレタン塗料の反応機構上、通常の硬化剤を使用した場合に比べて塗膜の硬化が遅くなる。
【1】1晩放置して完全に乾燥させる
数時間の乾燥でむやみに触ると指紋の跡がクッキリ残るので注意。このままの状態で1晩放置して、乾燥させる。
ただし、マスキングは半乾きの早いタイミングではがしておく。
また、1晩放置すればほぼ実用レベルまで硬化するものの自然乾燥では完全硬化には達しない。
このため、取り外したパーツの組み付けは慎重に! 【2】キズ付けないよう慎重に組み付ける
バンパーの中心付近を持って左右均等に持ち上げ、ぶつけてキズ付けないよう慎重に位置合わせして定位置にまっすぐはめ込む。
ズレ落ちないよう支えつつフェンダーとの接続面を合わせ、嵌合固定部の固定爪がカチッとはまり込むまで末端上面を確実に叩き込む。
定位置に収まったところで樹脂クリップをはめてバンパー上面を固定。
フロントグリルを元通り組み付ける。
インナー端をめくってバンパー末端の固定ネジをキッチリ締め込む。
クルマの下に潜ってバンパー底面の固定ネジ類を元通り組み付ける。 完成! まるで新品。見違えるぼどきれいになった
プロ向け機材は使いやすく、この通り的確に修復できる。
臆することなく試してみたい。 提供元:オートメカニック