タイヤ交換
更新日:2021.11.05 / 掲載日:2021.11.05
スリップサインって何?確認方法と基準を解説!

タイヤ交換の時期を把握する一つの指標として、「スリップサイン」があります。ディーラーやガソリンスタンドなどでもよく聞く言葉ですが、「どこにあるのか?」「どう見るのか?」と疑問に思う方もいるでしょう。スリップサインが出ているタイヤは安全性に問題があるだけでなく、車検にも通らないため、ドライバーなら必ず覚えたい知識です。
そこで今回は、スリップサインの確認方法や基準を解説します。スリップサイン以外のタイヤ交換サインも解説するので、安全なカーライフのための参考にしてください。
スリップサインは残溝1.6mmの目安!

スリップサインを一言で表せば、「タイヤの残溝を示すサイン」です。タイヤの溝の間にある突起を指しており、タイヤがすり減ると表面に露出します。スリップサインが出ているタイヤと新品のタイヤを見比べると、溝の深さに大きな差を感じられるでしょう。
スリップサインは、残りの溝が1.6mmになった際にトレッド面と同じ高さになります。トレッド全周の4~9ヵ所に設けられており、サイドウォール(タイヤ側面)に刻まれた△マークが目印です。
1ヵ所でも現れたらタイヤ交換必須
スリップサインはトレッド全周の4~9ヵ所に設けられていますが、どれか1ヵ所でも表面に現れたらそのタイヤは公道で使用できません。これは道路運送車両法で定められており、残溝1.6mmが公道を走行できる「最低ライン」です。
参考:https://www.mlit.go.jp/common/001056255.pdf
では、スリップサインが出るギリギリまで走行して良いかといえば、安全に車を走らせる観点で推奨できません。法律上で問題ないとされても、最低ラインの性能しか残されていないタイヤでは事故につながる恐れがあります。
もし、スリップサインが1本のタイヤのみに現れたとしても、4本同時に交換するのがおすすめです。
スタッドレスタイヤはプラットフォームで確認
スタッドレスタイヤの場合、スリップサインの他に「プラットフォーム」という目印があります。これは溝の深さが50%に達するとトレッド面に現れ、スタッドレスタイヤの使用限界を示すものです。タイヤのサイドウォールに4ヵ所の↑マークが目印として刻印されています。
なお、タイヤとしての使用限界を示すスリップサインとは異なり、プラットフォームは冬季使用での限界を示すため、露出しても道路運送車両法に問われることはありません。このことから、「プラットフォームの出たスタッドレスタイヤも冬季以外なら使えるのでは?」と考える方もいるでしょう。答えとしては、やはり安全面でおすすめできません。
スタッドレスタイヤと夏タイヤ(ノーマルタイヤ)では根本的な設計が異なるため、十分なグリップ力の確保が難しくなります。基本的にプラットフォームが出た時点でスタッドレスタイヤは寿命と考えたほうがよいでしょう。
タイヤ溝の必要性とハイドロプレーニング現象

そもそもなぜタイヤに溝が刻まれているかというと、路面の水を排水するためです。排水が滞ると「ハイドロプレーニング現象」を引き起こし、ハンドルやブレーキが効かなくなってしまいます。
ハイドロプレーニング現象とは、タイヤと路面の間に水の膜ができて浮いてしまう現象です。スピードが上がるほど排水が追いつかなくなるため、特に高速道路で発生しやすい傾向があります。
新品のタイヤであっても速度を出しすぎると起こりえる現象ですが、溝が浅いほど低速での発生率も高まるため注意が必要です。溝が浅くなったスリップサインギリギリのタイヤは、安全性を考えて使用を控えましょう。
ちなみに、タイヤの溝は縦溝と横溝がありますが、それぞれ異なる役割を持っています。
・縦溝:排水がメイン
・横溝:路面をつかむ(排水の補助も担う)
雨天時に限らず、さまざまなシチュエーションに対応しながらグリップ力を確保するためには、縦・横どちらの溝も欠かせません。
スリップサインを放置すると罰金の対象になる?

スリップサインが出たタイヤは安全上の問題があるので、法律や罰則に関係なく使用は控えるべきです。それを踏まえたうえで、スリップサインを放置したまま走行するリスクについても知っておきましょう。
違反点数の加算・罰金の発生
スリップサインが出たタイヤを使うことは「整備不良」に該当するので、以下の違反点数および罰金が発生します。
車両のクラス | 違反点数 | 罰金 |
普通車 | 2点 | 9,000円 |
大型車 | 2点 | 1万2,000円 |
引用:https://www.police.pref.saitama.lg.jp/f0120/menkyo/tensu-hyou-itiran-1.html
普通車大型車も違反点数は同じですが、罰金に違いがあります(金額は2021/09/30時点のものです)。
車検に通らない(公道走行が困難)
スリップサインが出たタイヤは整備不良とされるため、車検にも通りません。車検の検査項目は多岐にわたりますが、どれか1つでも不備があると判断されれば再検査が必要になります。
タイヤも検査項目の一つで、スリップサイン以外では、タイヤに極端なひび割れや偏摩耗がないかもチェックポイントです。トラブルがないか、タイヤ全体を確認しておきましょう。
ちなみに、車検に通らなかったり有効期限を過ぎたりした車で公道を走行すると「無車検運行」となり、道路交通法に違反します。安全性の問題もあるので、速やかにタイヤを交換して再検査を受けましょう。
スリップサインは車種で残溝数が違う?

スリップサインが出るのは「残溝1.6mm」ですが、実は残溝が1.6mm以上あれば一般道路も高速道路も走行できるのは乗用車や軽トラックに限られます。車種によっては、一般道路と高速道路で必要な残溝数に違いがあるので注意しましょう。
乗用車・軽トラックは残溝1.6mm以上に統一
乗用車は一般道路・高速道路を問わず残溝1.6mm以上が基準となります。軽トラックについても、軽自動車の枠に収まるため同様です。
小型トラックは残溝1.6mm以上と2.4mm以上
小型トラックには乗用車と異なる基準が適用され、一般道路で残溝1.6mm以上、高速道路では残溝2.4mm以上と定められています。一般道路については乗用車と同じ扱いですが、高速道路では車体の重さに耐えられるよう基準が厳しくなっています。
大型車両は残溝1.6mm以上と3.2mm以上
大型車両(大型トラックやバス)の場合も、一般道路は乗用車と変わらず残溝1.6mm以上が基準となります。しかし、高速道路においては小型トラックよりもさらに厳しい基準が適用され、残溝3.2mm以上が必要です。
高速道路で必要残溝数が増える理由は小型トラックと同じですが、車両が重い分さらに多くの安全マージンが確保されています。
スリップサインの原因は摩耗!長持ちさせる対策

スリップサインは、タイヤが摩耗することによって表面に露出します。タイヤの性質上、摩耗すること自体は避けられませんが、できる限り長持ちさせたいところです。
運転の仕方によって摩耗度合いが変わることは知られていますが、実はメンテナンス不足によって摩耗が加速するケースもあります。以下の症状は日頃のメンテナンスで予防できるので、定期的にチェックしてタイヤを長持ちさせましょう。
「ショルダー摩耗」:空気圧の低下が原因
タイヤの両肩部分が早く減っていくショルダー摩耗のおもな原因は、空気圧の低下です。空気圧が低いとセンター付近の接地圧が下がり、両端ばかりに負荷がかかってしまいます。
適切な空気圧に保っていれば予防できるので、「ガソリンを数回給油したら空気圧を点検」など、目安を設けて定期的にチェックするとよいでしょう。
「センター摩耗」:空気圧過多が原因
空気圧を入れ過ぎると、ショルダー摩耗とは逆にタイヤのセンター部分が早く減っていくセンター摩耗が起こります。過剰な空気圧によってタイヤが膨らんでしまい、センター部分だけが路面に設置することで起こる症状です。
こちらも適正な空気圧管理によって予防できるので、ショルダー摩耗と同じく定期的な空気圧点検を習慣付けておくことをおすすめします。
「片側摩耗」:アライメントのズレが原因
文字通り、タイヤの片側だけが摩耗していく症状で、空気圧ではなくアライメントのズレが原因です。アライメントとは、「車体に対してホイール(タイヤ)が取り付けられている角度」を意味します。
おおまかには「トー角」と「キャンバー角」がアライメントを決める要素です。トー角は車を真上から見たとき、キャンバー角は車を正面から見たときのタイヤの向きを表しています。
進行方向に対して、タイヤの先端が内側を向いているならトーイン、外側を向いているならトーアウトです。キャンバーの場合は、タイヤが八の字になるのがネガティブキャンバー、その逆がポジティブキャンバーと呼ばれます。
片側摩耗はタイヤの外側、もしくは内側のみに発生しますが、それぞれの原因は下記のとおりです。
・タイヤの外側が摩耗:過大なトーイン、ポジティブキャンバー
・タイヤの内側が摩耗:過大なトーアウト、ネガティブキャンバー
なお、車は若干のトーイン、ネガティブキャンバーに設定されていることが多く、両方が「0度」でなくても問題ありません。微小な片側摩耗は正常の範囲内なので、適度にタイヤをローテーションして予防しましょう。
「皿状摩耗」:急操作・バランス不良が原因
皿状摩耗とは、タイヤのトレッド面に平らな場所ができてしまう症状をいいます。一定のリズムで異音がしたり不快な振動が起こったりする場合は、皿状摩耗を起こしている可能性が高いでしょう。
皿状摩耗の原因はさまざまで片側摩耗の原因でもあるアライメントのズレの他、以下のような原因が考えられます。
・ ホイールバランスが狂っている
・ ホイールベアリングにガタつきがある
・ 足回りの可動部分にガタつきがある
・ 運転の仕方が影響している(急発進や急制動など)
タイヤ周りのバランスに異常がある場合、皿状摩耗の他に波状摩耗やピット状摩耗などを起こすこともあります。
どの症状が出たとしても、車のコンディションに不具合があることは確かです。タイヤの偏摩耗だけでなく、走行に支障をきたす恐れもあるので整備工場などで点検してもらいましょう。
整備工場探しには、グーネットピットの利用がおすすめです。すぐに点検の依頼をしたいときも、簡単に最寄りの整備工場を検索できます。
スリップサインだけじゃない!タイヤ交換の目安

スリップサインは目に見えてわかる便利な指標ですが、タイヤの健康状態を測る目安はスリップサインだけではありません。他の目安も取り入れ、総合的に判断することをおすすめします。
走行距離3万2,000kmごと
一般的な新品タイヤの溝は深さ約8mmといわれており、約5,000kmの走行で1mm摩耗します。そこから計算すると、スリップサインが露出する残溝1.6mmになる走行距離は3万2,000kmです。走行距離が3万kmに近づいたら、タイヤ交換を検討するとよいでしょう。
製造年週から4~5年経過ごと
スリップサインまで余裕があったとしても、ゴム質が劣化したタイヤは安全とはいえません。製造年周から4~5年が経過したタイヤは交換がおすすめです。
製造年周とは「何年の何週目に製造されたか」を表す4桁の数字で、最初の2桁が週、後半の2桁が年を意味します。例えば「X1520」なら、2020年の15週目に製造されたタイヤです。
製造年周はタイヤのサイドウォールに表記されているので、保管しているタイヤも含めて確認しておくとよいでしょう。
タイヤの形状・状態で判断
タイヤの見た目からも多くの情報を読み取れます。目に見えるタイヤの異変にも気を配り、トラブルを未然に防ぎましょう。具体的には、以下のような症状をチェックしてください
・ 偏摩耗していないか
・ 切り傷がないか
・ 深いひび割れや擦り傷がないか
・ 釘や金属片などが刺さっていないか
ドライバーの感覚・走行状態
走行中にタイヤの音に耳を傾けることも、タイヤの状態を知る良い方法です。音だけでなく、ハンドルを切ったときの反応やブレーキの効き具合にも注意してみましょう。
ロードノイズ(走行音)が以前より大きくなった、雨の日に曲がりづらくなったなどの変化があれば、一度タイヤをチェックすることをおすすめします。
まとめ
スリップサインは、最低限の安全を確保するためにタイヤの使用限界を知らせるものです。タイヤの全周に4~9ヵ所ありますが、どれか1つでも露出していれば速やかにタイヤ交換をしましょう。
スリップサインの露出したタイヤはハイドロプレーニング現象を起こしやすくなり、非常に危険です。放置すると整備不良として違反点数や罰金が科せられ、車検にも通りません。
また、タイヤが偏摩耗している場合は、何らかの不具合が起きていると考えられます。走行性能に支障をきたす可能性もあるので、最寄りの整備工場に点検してもらいましょう。その際は、エリア検索機能のあるグーネットピットを活用してみてください。