車のエンタメ
更新日:2018.11.08 / 掲載日:2017.04.03
【5大陸走破プロジェクト】南米を走ったトヨタ社員の体験記

先日、GooMAGAZINEでもご紹介したトヨタの「5大陸走破プロジェクト」。参加したトヨタの社員が、行って、見て、走って、感じたリアルな声を寄せてくれました。
2014年にスタートした5大陸走破プロジェクトは、トヨタの社員が「クルマ」と「クルマが走る環境」を徹底的に体感することで、「もっといいクルマ」づくりにつなげていこう、という挑戦。モータースポーツをはじめ、クルマにまつわる楽しさや夢を追求する「TOYOTA GAZOO Racing(トヨタ ガズーレーシング)」のプロジェクトです。
プロジェクトには、日本からと現地から、計116名のトヨタの従業員が参加。昨年8月22日から12月6日までの78日間で、ブラジル、パラグアイ、ペルー、ボリビア、チリ、アルゼンチン、ウルグアイと、気象条件も道路事情も異なる7か国、約2万kmを走破しました。トヨタが日本から現地に赴いた30名の社員を対象にアンケートを実施したところ、彼らは一様に「実際に行かなければわからないことばかりだった」と振り返ります。彼らの生の言葉からは、工程の過酷さが伝わってきます。

ブラジルからパラグアイにかけてのルートを走ったチーム1は、砂埃と泥地に悩まされました。乾燥した未舗装路は、走行時に巻きあげた土埃で対向車さえ見えなくなるほど。埃の粒子も細かく「砂」というより「粉」に近い状態で、エアフィルターの交換頻度は日本で想定した10倍以上、窓を閉め切った状態でも2時間も走ればダッシュボードに土埃がうっすらと積もったそうです。
「ブラジル中西部の都市、シノプでは、ディーラーで“車内に埃が入る”と苦情のあったクルマを見せていただいた。お客様が入庫したクルマを毎回ていねいに清掃したり、少しでも埃が入りにくくなるようにサービスが手直ししたり、ひとつの設計配慮不足がお客様にもディーラーにも多大な迷惑をかけてしまうのだと実感した」

「乾季の、比較的水の溜まっていない原野を走ったとき、ランドクルーザー200がいともかんたんにスタックしてしまった。オーストラリアや北米の大陸走破でも無敵だったランドクルーザーでさえ歯が立たない環境があることに驚き、その状況をカバーしたチームの連携に感動した」
そのほかにも数々のコメントが寄せられています。
ペルー→ボリビア→チリを担当したチーム2は、人とクルマの限界付近ともいえる4000mを超える高所での走行を体験。富士山の頂上よりもはるかに高い場所でトラブルなく動くクルマが必要とされていること、高地におけるクルマの品質について考える機会となりました。
「チリ北部のサンペドロ・デ・アタカマにあるTAO(東京大学アタカマ天文台)。標高約5000mというアタカマ砂漠のチャナンルート山頂にあるTAOを目指して走行したが、酸素が不足し、出力が低下、登れなくなるクルマがあったことが忘れられない」
「ウユニ塩湖の湖畔にあるコルチャニ村で、1964年製のFA100型トラックが現役で活躍していた。エンジンが始動する音を聴いた瞬間、震えるような感動を覚えた。新車販売データだけでは見えてこない、リアルなトヨタ車オーナーの顔と使い方に触れられたことは大きな財産。トヨタが高く評価されていることを嬉しく思うと同時に、期待の大きさ、責任の大きさに気が引き締まった」
チーム3は、アルゼンチンからウルグアイへ。ここでも日本では想定していない過酷な環境が待ち受けていました。強風吹きすさぶ4000m級のワインディングの走行、トヨタの規格を超えた重量を牽引する酪農家……。
「酪農家のお客様は“牽引できる重量が自分たちの規格”とおっしゃった。お客様目線を意識してきたつもりだが、自分の想像とはまったく異なる“現実”があった。現地・現物のなかでの現実を知り、お客様やクルマと向き合うことで“いいクルマとはなにか”を考えさせられた」
「トーイングキャパシティを超えた質量(約20t)でも、お客様はふつうにトーイングしているし、ここまで牽引できるということが購入動機にもなっている。トヨタの基準で判断するのではなく、旧車の実力から物事を判断することも必要だと感じた」
「アルゼンチンの4000m級の高地、プルママルカでの昼食中、メンバーのひとりに高山病の症状が表れた。レストランでドクターの診察とお薬の処方を受け、ドクターと酸素ボンベとともに強風のワインディングを下山。無事にメンバーは回復した。酸素の薄い高地で走ることができ、壊れない、乗り心地もよいランドクルーザー200が命を救ってくれた」

以上、日本での最善がけっして世界での最善ではなく、最新技術が必ずしも最善ではないケースがあることなどを、身をもって知った旅の詳細な記録は、豊富な写真とともに公式サイトに掲載されています。トヨタがクルマづくりにかける情熱の一端を、垣間見ることができますよ。