車のエンタメ
更新日:2018.11.08 / 掲載日:2017.11.14
息子が父に贈った、想い出の愛車 シボレー「インパラSS」
次々に新しいモデルに乗り換える人と、1台のクルマに長く長く乗り続ける人。まったくタイプはちがいますが、どちらも「大のクルマ好き」ですよね。
この動画は、1台のクルマを愛したオーナーさんの物語です。
チョークボタン、デフロスターなどの調節レバー、ミラー仕上げのシフトノブ、細めの大径ステアリングホイールなど、インテリアにも往年の名車の風格が漂っています。
男性は、インターネットを駆使して、ご両親が断腸の思いで手放したインパラを探すことにしました。しかし、20年以上も前に手放したクルマを見つけるのは容易ではありません。解体されていてもおかしくない、と思いながら、数年間、根気よく探し続けたそうです。
一縷の望みをかけて有償検索サービスを利用し、車体識別番号からわかる詳細をたどっていきました。登録された住所は、アリゾナ、ペンシルバニア、ニューヨークと移り、見つけたときにはメイン州に住むオーナーの手元にあったそうです。しかし、彼が連絡したのは、トラックに載せてカナダに向かって出発したあとだったのです。
「これでは再会は永遠に叶わなくなってしまう」と思った男性は、即座に決断。カナダのケベック州モントリオールに売却されたインパラSSを買い取ることに成功します。
納車日は、待ちきれず、道路に出てトレーラーを待ちました。養生カバーのなかにあったのは、想い出のなかのインパラSS。しっかりとレストアされて、ひじょうにいい状態です。
2011年9月17日、カリフォルニア州レドンドビーチ。いよいよ父親とインパラSSの再会です。孫と遊ぶ初老の父のもとへかつての愛車を走らせると、一目見た瞬間、父親の顔に驚きの色が浮かびました。
「昔の愛車みたいだ」とつぶやく父に「父さんのクルマだよ」と語りかける息子。父は「冗談だろう?」と言いながら、何度も胸を叩きます。喜びのあまり、頬は紅潮し、声も心なしか震えているよう。心臓バクバク! という感じですね。
かつて、こどものようにかわいがった愛車を目の当たりにして思わず涙ぐむ父に、「5年かけて探したんだよ」と息子。父親は「ほんとうに驚いた。なんと言っていいのかわからない」と声を詰まらせます。ほんとうに、奇跡のような再会です。
「あのクルマだ」と何度もつぶやきながら気持ちを落ち着かせると、ドライバーズシートに乗り込み、エンジンスタート。懐かしそうな顔でアクセルを軽く踏み込んでふかします。かつて、何度となく繰り返した出発前のルーティーンだったのかもしれません。慣れた手つきでサイドミラーを調整すると、また感極まって涙……。
古いクルマを大切にレストアして乗り続けるひとも多いアメリカだからこそ、名車、インパラSSはスクラップにされず残っていたとも言えます。登録から10年以上経過したクルマに重加算税を課す日本とは、システムも風土もまったく異なりますが、大好きなクルマにずっと乗り続けたいと思う気持ちに国境はありません。日本も、旧車に乗り続けていきやすい社会になってくれたら、自動車が「消費財」ではなく「文化」として根付いていくのではないでしょうか。
あなたのクルマ人生で、もっとも印象に残っている1台はどんなクルマですか? その1台に、もう一度再会したいと思いませんか?