車のエンタメ
更新日:2020.11.10 / 掲載日:2020.11.10
「はたらくくるま」図鑑 空港編 トーバーレス・トーイング・トラクター

KALMAR TBL190
旅客機の前輪を抱えて移動させる
KALMAR TBL190 SPEC
寸法:全長8100×全幅3450×全高2050mm、ホイールベース:3318mm、乾燥重量:15150kg、エンジン:水冷6気筒ディーゼル(CUMMINS)、総排気量:6700cc、最高出力:175kW、トランスミッション:前進4速・後退3速AT、最大牽引力:35000kg、最高速度:30km/h
※数値はKALMAR社の標準モデルのもの

ハンドルの左のレバーがウインカー、右がシフトチェンジ用。運転席右のレバーでクレードルの操作をし、旅客機のタイヤとドッキングする。
クルマの前方を向いた運転席。ステアリング系統がシートと一体になっている。足元のペダルは2ペダルだ。
旅客機を後退(プッシュバック)させる時の運転席。ハンドルごと半回転する。足元のペダルは前後に同じものがある。
旅客機の前輪とドッキングして移動するトーバーレス・トーイング・トラクター。器材自体は、別の車種となる。
旅客機の前輪とドッキングするための車体後部の装置。黄色い部分で旅客機の前輪を固定するのだ。
運転席のあるキャビンは、前だけでなく後ろ方向にも大きな窓がついており、後退(プッシュバック)時の視界を確保する。
車体の側部に旅客機に電気を供給する発電用装置(GPU:グランド・パワー・ユニット)を備えている。写真はGPUのマフラーだ。
移動用のエンジンは、アメリカの産業用・商用車用エンジンなどを提供するCUMMINS社のディーゼル・エンジンを搭載。
独特な車体構造のため 運転感覚も独特なものだ
最初に紹介する空港の“はたらくくるま”はトーバーレス・トーイング・トラクター。その仕事は旅客機の移動のサポートだ。
旅客機は地上において、自身のエンジンを使って前進走行が可能だ。しかし、後退ができない。乗客を乗り降りさせるために駐機場に前進しながら近づくことはできる。だが、自力で駐機場を離れることはできないのだ。
そこでトーイング・トラクターの出番となる。ここで紹介するトーバーレス・トーイング・トラクターは名称にもあるように“トーバー”を使わない。その代わりに旅客機の前輪を抱え込むように車体後部にドッキングして旅客機を動かすのだ。また、エンジンを停止した旅客機に電気を供給するのも、トーイング・トラクターの仕事。そのために移動用エンジンだけでなく、もうひとつの発電用エンジンが搭載されている。
JGSでは羽田空港に4種類で計16台のトーバーレス・トーイング・トラクターを運用しているという。取材したのは、KALMAR社のTBL190という車両だ。
KALMAR社は北欧の重機メーカーでサイズの異なるトーバーレス・トーイング・トラクターやトーバーを使うタイプのトーイング・トラクターを用意している。TBL190は最大級ではないが、ラインナップ中では大型に属するものだ。
運転方法の説明を聞くと操作はシンプルそのもの。ハンドルと2ペダル(アクセル&ブレーキ)、変速のためのシフトノブ。これにウインカーとワイパー、ライトのスイッチ。クルマそのままだ。特殊な操作系は、旅客機の前輪とのドッキングのためのレバー、そして座席の回転用のスイッチだ。このTBL190は、旅客機を押して後退させる(プッシュバック)時に、運転席が座席とハンドルごと反転するのだ。
操作はシンプルだが、思ったように動かすのは、また違った難しさがあるという。全長に対してホイールベースが非常に短く、しかも運転席が異常なまでに前方にある。クイックに曲がり、独特の運転感覚となる。
運転するにはJALの社内資格が必要とされる。しかし、旅客機の移動は、10センチ単位で精密に動かさなければならない。そのため、乗客の乗った旅客機を上手に動かせるようになるには、最低でも5年以上の経験が必要になるという。