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更新日:2020.06.23 / 掲載日:2018.03.21

2000GTが真剣バトル!? ドラマ「真夜中のスーパーカー」はクルマ好き必見!

愛知発地域ドラマ「真夜中のスーパーカー」より

文●ユニット・コンパス

 1台のクルマが開発し生産され、路上を走るまでには、本当にたくさんの人々が関わっている。彼らにとってそれは、生活の糧を手に入れるための仕事であると同時に、情熱、夢、想いを込めるという意味では、人生そのものでもある。
 2018年3月28日(水)夜10時からBSプレミアムにて放送予定の愛知発地域ドラマ「真夜中のスーパーカー」は、愛知県長久手市にある古今東西から集められた世界の名車が並ぶ自動車博物館を舞台に、自動車開発に命をかける人々の葛藤と軌跡を描いた、自動車をめぐる夢と興奮のファンタジードラマである。

 主人公の白雪(山本美月)は、世界最大の自動車メーカー・ナゴヤ自動車で働くカーデザイナー。伝説の名車であるナゴヤ2000GTを超えるスーパーカーを、いつか自らの手で生み出すことを夢に、ナゴヤ自動車で修業中の若者だ。
 ところが会社は、彼女を自動運転の開発部署への異動を命じる。意気消沈した彼女は、世界の名車が動態保存されているナゴヤ自動車博物館を訪れることに。閉館時間を過ぎても、一心不乱にナゴヤ2000GTをデッサンし続けていた白雪は、ナゴヤ2000GT盗難計画を企て、博物館に忍び込んでいた日系ブラジル人4世・リカルド(上遠野太洸)と出会う。
 リカルドの計画を阻止しようとする白雪、自らの意思を貫こうとするリカルド、対峙する二人。すると、ナゴヤ2000GTの運転席に、白いレーシングスーツに身を包んだ謎のレーサー(唐沢寿明)が忽然と姿を表す。レーサーの不思議な力によって、博物館に幽閉されてしまった白雪とリカルドは、果たして無事に元の世界に戻ることができるのか!?

演出:大橋 守さんインタビュー「2000GTがなぜ世界記録に挑戦したのか。調べていくうちに、これはドラマになるぞという手応えを感じました」

NHK名古屋放送局制作部の大橋 守チーフ・ディレクター(写真:川崎泰輝)

 現実の博物館を舞台に、迫力のレースシーンや伝説の名車誕生に隠された秘話が明らかにされるなど、わずか60分に見どころが満載のファンタジードラマ「真夜中のスーパーカー」。放送を前に、演出を担当したNHK名古屋放送局制作部の大橋 守チーフ・ディレクター、そして主人公・白雪を演じた山本美月さんにインタビューを行い、制作の裏側やドラマの見どころを伺った。

ーー:ドラマ「真夜中のスーパーカー」は、どのような着想から生まれたのですか。また、「地域発ドラマ」という枠組みについても教えてください。

大橋 守(以下:大橋):「地域発ドラマ」は、NHKの地方放送局が、それぞれの地域の特産品や観光資源、偉人などをモチーフにして制作するテレビドラマです。じつは名古屋でこの地域発ドラマが作られるのは初めてのことで、名古屋を代表する産業といえば自動車ですから、そこはすぐに決まりました。そして、長久手市にあるトヨタ博物館、ドラマのなかではナゴヤ自動車博物館として登場していますが、こちらを舞台に、映画「ナイト ミュージアム」の自動車版をやったら面白いのではないかという発想が生まれました。博物館に収蔵されているクルマは、手厚い整備を受け、動態保存されているのですが、それゆえに、クルマがもっと自由に走りまわりたいというジレンマを感じているのでは?という発想が生まれ、ストーリーラインになりました。
 さらに調べていくうちに、博物館にも収蔵されているトヨタ2000GTが、2017年で生誕50周年を迎えるというタイミングを知り、なにか運命的な符号を感じました。2000GTは世界のスーパーカーに対抗できる実力を備えた名車ですし、いまのクルマとはまた違った美しいデザインを備えている。なぜ現代ではこのようなクルマが生まれないのか、2000GTが当時世界速度記録にチャレンジしたのはどうして? そういった事柄を調べていくうちに、ドラマになるぞという手応えを感じました。

ーー:ファンタジードラマとして、エンターテインメントでありながらも、単なる娯楽作品に終わらないよう、テーマを盛り込んでいると伺いました。

大橋:NHKには、これまで先輩たちが作ってきた自動車についての優れたドキュメンタリー作品がたくさんあります。ドラマであっても、社会を映す鏡であるべきと考え、気を引き締めて取り組みました。物語の柱は、主人公・白雪の成長物語です。彼女は社会人として成長していく過程で、自分の夢と現実との間で悩みます。働き方改革が叫ばれる昨今、『職業 = 自己実現の方法』という価値観にしがみつくのは時代遅れと言われかねない風潮の中、「自分にとって仕事とはなにか?」に悩む若者が少なくないはずだ……そんな思いをストーリーに託しました。そして、彼女と対峙することになるリカルドも、単なる敵役ではありません。脚本を担当してくださった會川 昇さんは、このお話を作るにあたって、各方面を丁寧に取材されました。自動車産業が、数多くの中小企業を巻き込んで成立していること、それら中小企業が社会にとっての雇用調整弁的な役割を与えられていることにより、働きたくても働けない人がいるという現実についても、実際に日系ブラジル人の方々とお会いし、脚本に生かしていただきました。白雪とリカルドは、観ている方がどちらにも感情移入できるように描きましたし、立場や考え方の異なるもの同士でも、ギャップを埋めていくことはできるのかできるのではないかという我々の願いも込めて、それぞれ抱く感情の変化については、大切に撮影しました。
 じつは白雪というキャラクターをつくるときに、山本美月さんの存在が頭のなかにありまして、完全に彼女をイメージしながらストーリーを組み立てました。これまで長年活躍されていたCanCam専属モデルを卒業し、今まで以上に女優に邁進し、成長を続けている山本さんは、漫画やアニメに造詣が深いというマニアックな側面も含めて、まさに白雪にぴったりでした。そして、リカルドが内包する繊細さを見事に演じてくださった上遠野さんの演技にもぜひ注目してください。

愛知発地域ドラマ「真夜中のスーパーカー」より

ーー:すでに公開されている動画のなかで、2000GTとLFAがバトルしているシーンがあるのに驚きました。どちらも希少かつ特別なクルマですが、撮影時のエピソードを教えてください。

大橋:これは裏話になってしまうのですが、地域発ドラマは、地域の魅力を伝えるのが使命であると同時に、限られた予算や人員でもドラマは作れるんだという我々の挑戦でもあります。ですので、博物館を舞台にすれば、天候や時間に左右されずに芝居が撮れるぞ、という目算が当初はありました。ところが、進めていくうちに、これはどうしてもクルマを走らせたいとなりまして、2000GTとLFAのレースシーンが生まれました。制作の都合上、博物館でのお芝居は2018年1月から、レースシーンは2017年の8月に撮影する予定となったのですが、ちょうどその2カ月ほど前に、白いレーシングスーツの男役として登場していただくため、唐沢寿明さんに出演交渉に伺いました。連ドラや映画で主役を張る方にとっては役不足かと思いつつお願いしましたが、驚くべきことにご快諾いただけたんです。唐沢さんご自身、2000GTに対する並々ならぬ思い入れがおありだったからに他なりません。それどころか、すでに脚本も熟読され深く理解された上に、「レーシングスーツも発注してある」とおっしゃるんです。後からわかったことなのですが、本物のレーシングスーツは、オーダーしてから2カ月ほど製作に時間がかかるそうなんです。それをご存知だった唐沢さんは、レーサーが映るレースシーンを2017年8月に撮影するには、急いでスーツを発注しなければ間に合わない…と判断してくださったんですね。そして、出来上がったスーツを見させていただいてまた驚きました。我々がイメージしていたどおりの60年代テイストだったからです。脚本を読んだだけで、撮影の段取りや制作事情、そして最終的な仕上がりまで完璧に想像できてしまう唐沢さんは、まさにプロのなかのプロです。

主演・山本美月さんインタビュー「文化祭のように、みんなで一生懸命に作り上げた作品です。クルマ好きの方にも楽しんでいただけるような作品になったと思います」

愛知発地域ドラマ「真夜中のスーパーカー」より

 続いてインタビューに答えてくれたのは、主演の山本美月さん。大学では生命科学科に進学するほどの生き物好きで、地方ロケでは、各地の水族館を巡るのを楽しみにしているというほど。今回の作品では、クルマ好きでスーパーカーを自分の手で作ることを夢見る女性・白雪を演じているが、そんな彼女は、今回の作品をどのように感じたのだろうか。

ーー:山本さんは白雪というキャラクターをどのように感じ、演技されましたか?

山本美月(以下:山本):彼女はクルマオタクですが、私もオタク(アニメ)なので(笑)、彼女の気持ちはよくわかります。脚本家の會川 昇さんが手がけた私の大好きなTVアニメ「鋼の錬金術師」に登場するキャラクターのなかにもオタクの子が出てくるのですが、その子を意識して白雪を考える入り口にしました。

ーー:ファンタジードラマということで、アニメ的、漫画的なニュアンスも盛り込まれているそうですが、これまでの作品と比べて演じる上で違和感などはありませんでしたか?

山本:「真夜中のスーパーカー」は60分の作品なんですが、台本が100ページ以上あるんです。最初は90分くらいなのかと思っていた(笑)。台詞回しもものすごくスピーディで、感情の変化も激しいんです。すでに撮影と編集が終わっていたレースシーンに、アフレコで唐沢寿明さんと声を当てたのですが、そこでドラマの空気感がわかりました。これは漫画っぽく演じてもいいものなんだって。2次元でもないし3次元でもないし、2.5次元でもない。2.7次元くらいの感覚ですね。

ーー:レーシングスーツを着た感想はいかがでしたか?

山本:自分に合わせて作ってくださったので、すごくしっくりきたし、みなさんがほめてくださったので嬉しかったです。通気性がよくて、着心地もいいですよ。ちょっとコスプレしているような気持ちにもなれました(笑)。ただ、ヘルメットは本当に息苦しかった! ヘルメットのなかに、燃えない素材で出来た目出し帽を被るんですけど、それが本当に苦しくて大変でした。

ーー:撮影で苦労したところがあれば教えてください。

山本:セリフが本当に大変でした。まず、台本のレースシーンを読んでも、何が行われているのかがイメージできなかったんです。「ノーズ」とか、「グリップ」という言葉の意味も、発音もわからない(笑)。「リトラクタブルライトってどこ?」みたいな。なので、ネットで調べて台本に付箋つけて勉強しました。どうしても説明的なセリフが多く、長まわしでの撮影も多かったので、そこは苦労しました。「ダブルオーバーヘッドカムシャフト」とか、自分でもよく覚えられたなと(笑)。あと、2000GTのデザインについて話すシーンがあったのですが、そこでもちゃんとボディラインの正しい部分を示さないと失礼になってしまうので、そういうところは気をつけて演じさせていただきました。

ーー:今回のドラマではたくさんのクルマが登場しますが、山本さんはどんなクルマを素敵だと思いますか?

山本:キラキラとしたメッキの感じが好きなので、レトロな丸みを帯びたクルマが好みです。でも、乗り心地はいいほうがいいな。あ、2000GTは乗り心地もよかったです。すごくしっくりきました。博物館に、フジキャビンっていうひとつ目の可愛いクルマがあって、お気に入りです。あの博物館にいると、本当にクルマがしゃべりだすんじゃないかと思いました。

ーー:撮影を終えて印象的だったシーンは?

山本:今回、たくさんの印象に残っているシーンがあるのですが、唐沢さんが最初に登場するシーンでの、光の演出は印象的でした。撮影でも、スタッフのみなさんが一生懸命で、それこそ文化祭みたいな雰囲気で。照明がカラフルだったり、スモークを使ったり、みんなでそのシーンを作り上げている感じがしました。それに、地域の方々もたくさん協力してくださって。私が演じさせていただいた白雪は感情がとても豊かな子なので、いろいろな感情表現に挑戦できたように思います。「真夜中のスーパーカー」は、クルマにまったく詳しくないひとでも、お子さんでも「ナイトミュージアム」のように楽しめる作品ですが、クルマ好きの方からも、「よく調べてるね」と思っていただけるような作品になったと思います。

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グーネットマガジン編集部

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1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
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また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
誌面が主の時代から培った、豊富な中古車情報や中古車購入の知識・車そのものの知見を活かして、皆さまの快適なカーライフをサポートさせて頂きます。

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