中古車購入ガイド
更新日:2022.11.01 / 掲載日:2022.10.28
【アルファード 中古車事情レポート】中古車市場が超高騰している理由

文●大音安弘 写真●トヨタ
ミニバンだけでなく、国産高級車の王者の風格さえ漂わせるトヨタ アルファード。2020年の年間登録台数は、90748位の5位となるが、上位はヤリスやカローラ、フィットなどの大衆車のみ。高価格帯車だけを抜粋すると、ダントツの1位だ。そんな人気者アルファードの中古車価格が高値ではなく、超高騰という事態に陥っている(※以下の中古車価格は、2022年10月26日の調査によるもの)。
即納可能な「登録済み未使用車」はプレミア価格

その動向が最も強く反映されているのが、本来、新車を狙うよりもお買い得な選択として知られる登録済み未使用車だ。
アルファードの場合、これが超プレミア価格となっている。その一例を紹介したい。ガソリン車の人気グレードある「S Cパッケージ」は、2.5Lエンジン車をベースにエアロと18インチアルミホイールによるスポーティな外装に加え、合成皮革のシートや本革巻き+メタルウッドのスタアリングホイールなどの豪華な内装を組み合わせたもの。新車時の車両本体価格は468.18万円である。
しかし、とある中古車は、2022年式で今秋登録したばかりの走行数十kmのものが、なんと870万円のプライスを掲げる。もちろん、メーカーオプションも装着されているが、推定される装備を加えた新車時車両本体価格でも約500万円である。つまり、中古車なのに新車の1.74倍もの価格を提示しているのだ。ただプレミア価格でも、SDナビとETCのディーラーオプションが非装着となる違いのある同色の「S Cパッケージ」が走行距離数kmの車両で、640万円と230万円も安い。オプションの装備差により新車時の推定車両価格が10万円ほど下がり、価格上昇が約1.3倍まで落ち着く。
現状では、同等の仕様でもプレミア価格にも大きな変化が生じているようなのだ。その一方で、ガソリン車のエントリーグレード「X」は、今秋登録の走行距離数kmのものが、380万円。車両本体価格が359.7万円なので、プレミア価格ではあるが、価格上昇率は1.06倍と、即納可能という点を踏まえれば、時間をお金で買うと考えれば、納得できる内容ではないだろうか。もちろん、これらは一例に過ぎないが、グレードや仕様、販売者により大きな差があることが確認できた。
「ハイブリッド」より「ガソリン車」のプレミア価格が高い理由

燃費の良いハイブリッド車は、燃料高の今、より注目される存在といえるが、こちらの場合、コロナ禍などによる半導体不足の影響により、新車全般で、エンジン車よりもハイブリッド車の納期が長期化している現状があるため、登録済み未使用車は希少であり、新車価格を大きく上回るプレミア価格を掲げる。
ハイブリッド車のエアロ付き豪華内装仕様となる「SR Cパッケージ」は、新車価格が572万円だ。しかし、今秋登録した走行数十kmの車両で、ツインムーンルーフ付で860万円となっている。新車価格は、ツインムーンルーフ付でも584.1万円なので、価格上昇率は、1.47倍にもなっている。
疑問として沸き上がるのは、同等の装備や仕様であっても、なぜガソリンエンジン車よりもハイブリッド車の方が高価となる場合があるのかということだ。今の燃料高と納期の長期化を鑑みれば、新車価格の高いハイブリッド車の方は、より高くなって良いようにも思える。
しかし、上記のサンプルでは、ガソリンエンジン車が1.74倍となったものがあるのに対して、ハイブリッド車が1.47倍に留まっている。その背景には、中古車の輸出が関係しているようなのだ。
昨今、アルファードは、海外でも人気を博している。世界的に、高級車のニーズもセダンからSUVにシフトしているが、特にアジア圏では、高級SUVだけでなく、高級ミニバンが新たな高級車として、富裕層の自家用車として、受け入れられるようになっている。
その象徴が、レクサスLMだ。アルファードをベースとしたレクサス初のミニバンで、母国となる日本では販売されていないものの、アルファードの新たなドレスアップ手法のひとつとして人気を集めている。そのLMには、日本のエグゼクティブラウンジよりも豪華な4人乗りのリムジン仕様も用意されるため、ファーストクラス感が満喫できる。しかし、それだけではない。家族想いの富裕層たちが、家族全員で快適に移動できる高級車としても支持しているのだ。もちろん、アルファードが正規販売される国はあるが、LMでなくとも、正規輸入車であるアルファードの新車価格が超高価であることや選べる仕様が限定されることなどから、日本の中古アルファードに価値を見出す人も多い。
輸出国により事情や法律は異なるが、概ね大排気量になるほど税負担が重く、特殊な機構を持つハイブリッド車では、メンテナンスなどが課題となる。それが圧倒的な2.5Lガソリン車の強さに繋がっている。またデザインでは正規輸入車にエアロ仕様が存在しないことで、エアロ仕様に価値が見出されている。つまり、2.5Lの「S Cパッケージ」は、そのニーズをしっかりと押さえた仕様なのである。
「買い」であることに変わりはないが、今後の価格変動を注視したい

もちろん、日本でも人気車だけに、アルファードのリセールバリューは、どの仕様を選んでも高く、購入しても損のない一台といえる。
ただし、現在の超高値相場がいつまで続くかは疑問がある。
実際、オークションの落札価格は下降傾向にあるようで、上記で示した「S Cパッケージ」のように、はっきりと店頭の価格差が見られることも出ている。定期的に愛車を乗り換えている人が、高騰したアルファードを手に入れても、将来、その見返りを期待するのは難しいかもしれない。
なので、購入するならば、なるべく状態が良いものは当然だが、あまりにも新車価格とかけ離れたものは、手を出さない方が無難だろう。
既に現行型がオーダーストップしており、来年には、新型登場の噂もある。定価以下で狙える新型を待つのもひとつなのだ。
今回は、分かり易く登録済み未使用車に絞って話をしたが、割高なのは登場より7年を迎えた現行型に共通する状況である。それらの価格も今後は変化が見られるだろうが、現時点では年式が新しく走行距離が短い良質なクルマは、登録済み未使用車とも競えるレベルにある。だからこそ、超人気者である中古アルファード(現行型)の購入には、慎重を期したいものだ。