中古車購入ガイド
更新日:2020.04.28 / 掲載日:2020.04.28
【有名自動車ジャーナリストが語る、いま欲しい1台!】石井昌道が選ぶオススメ中古車はコレだ!

石井昌道(いしいまさみち)。内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)自動運転にも参加する自動車ジャーナリスト。2020-2021 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
文●石井昌道
※ナンバープレートは一部はめ込み合成です。
いままで所有してきたクルマで、もっとも自分の価値観を変えてくれたのがW126型のメルセデス・ベンツ Sクラスだった。それまではまだ若いということもあって、スポーツカーにしか興味がなく、とにかく運転が楽しめることが最優先。ピュアスポーツではないとしても、スポーティなハッチバックなどを好んでチョイスしていた。W126は兄から譲ってもらったもので、走行距離は10万km超、10年落ちと、中古車市場でほとんど価値がつかない代物だったが、その頃は自分でレースに出ていたこともあり、お金がなかったのでありがたく頂戴した。
10年落ち、走行10万kmでも長距離運転が快適! メルセデスの安全哲学に触れたW126型Sクラス

80年代を代表する名車がメルセデス・ベンツ Sクラス(W126)。5mオーバーの堂々たるボディ、天然素材をふんだんに使ったインテリアによる豪華さはもちろん、クルマとしての完成度の高さにファンが多い。
あまり興味がないままに乗り始めたW126。古くなってもボディのがっちりとした感触やサスペンションの安定感などは健在で、ロングドライブでドライバーが疲れないという性能に感銘をうけた。当時は地方のサーキットに行くことも多かったのだが、300km程度ならまったく休憩の必要を感じないほどだった。その、「ドライバーを疲れさせなければ結果的に安全に繋がる」という考え方から、メルセデスの安全思想に興味をもち、深く知りたいと思うようになっていった。
そんな背景があるからメルセデス・ベンツにはつねに注目しているし、なかでもフラッグシップのSクラスには、いつかまた乗りたいと思っている。
いま惹かれているのは現行W222のなかで、2015年に発売されたクリーンディーゼル・ハイブリッドのS300h。欧州が得意とするディーゼル、日本が得意とするハイブリッドは、それぞれ低燃費性能に秀でており、これを組み合わせればすごいことになるのでは? とその可能性を期待されつつも、高価になりすぎるから現実的ではないと思われていたところ、メルセデスがいち早く送り出してきた。2080kgの車両重量ながらカタログ燃費は20.8km/L(JC08モード)! しかもSクラスとしては破格の998万円というプライスタッグがつけられていたのも驚きだった。
無給油で1500km以上を走行したSクラスのディーゼルハイブリッドモデル

2013年から販売されている現行型Sクラス(W222)。ガソリン、ディーゼル、ディーゼルハイブリッド、プラグインハイブリッドと多彩に用意されたパワートレインも魅力。
このS300hには特別な思い出がある。発売当時、その燃費のよさを実走行で試してみようという企画で鹿児島から東京まで運転したことがあるのだ。目標は無給油で走りきること。距離は約1500km。燃料タンク容量は70LだったのでJC08モードとおりに走り切っても1456kmでちょっと届かない。それでもエコドライブ・インストラクターを務めた経験から、燃費にはちょっと詳しいほうだったので勝算はあった。ただ、決行が夏休みど真ん中で、なるべく避けたとはいえ一部で渋滞に巻き込まれるなどの不利はあったものの、結果的には1541kmを無給油で走り切り、平均燃費は25.6km/Lと悠々とカタログ超え。燃料タンクには約10Lが残り、まだ250km程度は走れるほどだったのである。
燃費のよさはもちろんのこと、大事をとって途中で一泊しながらも1500kmを走破しても疲れを感じなかったのはさすがSクラスだった。だからS300hの市場価格はよくチェックしているのだが、問題はいまの自分のライフスタイルには合わないこと。もう少しコンパクトで同じような魅力があるといいのだが。
エンジンの気持ちよさは世界トップレベル! ホンダS2000は日常でも楽しめるリアルスポーツカー

ホンダが1999年から2009年まで販売していた2ドアオープンスポーツ。剛性の高い専用ボディやフロントエンジン・リヤドライブによるスポーティな走りは評価が高い。
スポーツカーにもあいかわらず興味を持っているが、好みなのはそれほど速くなくてもいいけれど、何か心を豊かにしてくれるようなモデル。ワインディングロードを走らせるときの楽しさだけではなく、街中や高速道路を普通に移動しているだけでもウキウキさせてほしい。もともとマツダ ロードスターが好きでいままでに3台所有してきたが、もう少しだけ広く、パワー的にも余裕があるモデルがいまの気分には合っている。
そう考えると、まず頭に浮かぶのがホンダ S2000。さすがはホンダでエンジンの気持ちよさは世界的にみても直4でトップと思わせるほど。前期の2.0Lは9000rpmまでまわるのが特徴でおもしろかったが、後期の2.2Lは常用域のトルクが充実してドライバビリティが向上しているので甲乙つけがたい。ハンドリングについては、前期はちょっとピーキーで、後期のほうが乗りやすいので総合的に考えれば最終に近いモデルがいいだろう。ただ数があまり多くなく、市場価格が上昇してしまっているのが悩みどころだ。
絶品の自然吸気フラット6エンジンを味わえるポルシェ ボクスター

ミッドシップ・オープン・2シーターであるポルシェ ボクスター。石井氏が挙げたのは2012年から2016年まで販売された3代目(981型)で、自然吸気の6気筒水平対向エンジンを搭載する。
もう1台の候補はポルシェ ボクスターのフラット6モデル。現行の718はフラット4ターボになってファンにはあまり好評ではない。きちんと評価すればエンジンもシャシーも素晴らしい出来であるし、フラット4ターボにはそれ相応のよさ、以前よりもヤンチャな性格になって911とのキャラの棲み分けができている面もあるが、やはり自分もNA(自然吸気)のフラット6の吹き上がりの気持ちよさは認めざるをえない。同じように考えているひとが多いのでこれもまた超人気車種になってしまっているので出物を探すのはたいへんだが、気長にかまえてチェックし続けるのがいいと思っている。
オープンカーにはいつでも乗りたくなる魅力がある

2016年に累計販売台数100万台を突破しギネス記録となったマツダ ロードスター。現行型(2015年-)で4代目となるが、どの世代にもファンがいる日本を代表するクルマだ。
ロードスターにS2000、そしてボクスター。じつは3台ともオープンなのだが、日常を彩ってくれるスポーツカーにとっては大切な要素でもある。あまりスピードを出さなくても楽しませてくれるからだ。いま所有しているクルマにも満足しているから急いで探しているわけではないけれど、よきタイミングがきたら乗り換えてもいいと思っている。